医療事故対策ワーキングチームの活動及び提出法案

2001年06月25日

座長 今野 東
事務局長 武正 公一

医療法の一部を改正する法律案(医療事故防止)提出までの経過
■趣旨・目的
昨今、横浜市立大学病院での患者取り違え等医療事故が目立って参りました。それに応じて病院内でのマニュアル化の作業も進んでおります。
しかし、これら医療事故を未然に防ぐにはそれだけでも不十分であります。また、院内感染(MRSA)への対応等も関連するの言うまでもありません。
下記のように、11回のヒアリングを行い、被害者救済のための制度づくりを除いた部分をまとめ、法律案を作成いたしました。

■中間報告
1.医療事故報告の義務づけ
2.情報収集機関の設置
3.リスクマネジメント~質の良い医療を提供する病院が生き残るシステムへ
4.被害者救済のための制度づくり~医療事故裁判のための保険システム
5.患者の権利法

■背景
1.事故報告の義務はない。異常死のみ24時間以内に警察に報告義務。(医師法21条)
2.都道府県に対しては病院から管轄の保健所経由で報告(異常死)
3.都道府県が把握した場合は厚生労働省に対して報告する旨の要請をしている
  (医薬局監視指導課へ)
  ただし、平成13年4月より国立病院には業務報告の形で院内のリスクマネージメント部会で
  検討が行われている。
4.4病協が死亡事故の警察への報告に反対表明(平成13年4月25日)
5.安全管理に関する指針については43%(今年度75%)
6.リスク・マネージャーについて38%(今年度57%)
7.安全委員会については73%(今年度86%)
8.インシデント(事故に近いもの)レポートも病院内でまとめられているが収集目的が不明確。
9.病院数  (総数 9286病院)     
    病床別割合
      0~50床 15.1%
      50~100床 26.2%
      100~200床 28.1
      200床~ 30.6%
10.朝倉問題では医療監視が機能していないことがわかった。(医療法の精神)
11.日本の法制度では免責が認められていないため、事故報告を義務づけることは情報の
   隠蔽を招く恐れがある。
12.事故を恐れるあまり、医療技術の進歩を妨げる法制化は却って逆効果。

■方向性 
(中間報告の1.2.3に関して掘り下げる。5は患者の権利法がまとめられた)
1.医療事故とインシデント(事故に極めて近い)の情報を収集して原因分析を行い、
  再発防止に寄与すること
2.病院からの自主的な報告を求めていく(義務とはしない)
3.情報収集機関は第3者機関とする

■具体的取り組み
医療法の一部を改正する法律案を第151国会に提出。 本法案は、病院サイドに対する医療事故対策であり、患者サイドに対する法案は患者の権利法に書かれています。

■本法案の特徴
1.病院の管理者は医療事故防止方針を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
  (第15条の三)
2.病院には、①安全委員会②リスク・マネージャー③事故及び事故の兆候(インシデント)の
  院内での  把握と報告を義務付ける(第15条の2の一、二、三)
3.都道府県知事は、医療事故防止方針について変更の勧告ができる。(第15条の4)
4.都道府県知事は必要あるときは医療事故防止方針の作成及び実施の状況の立ち入り
  検査ができる。(第25条)
5.厚生労働大臣は「医療事故防止センター」を指定する。(第71条の二)
6.医療事故防止センターは、医療事故の調査、分析を行う。(第71条の三の一、二)
7.医療事故防止センターは、医療事故防止体制の評価を行うことができる。 (第71条の三の六)
8.医療事故防止センターは、病院管理者に医療事故及び兆候についての情報提供を求める
  ことができる。(71条の四)

■ヒアリング
第1回 議員打合せ (H12.10.18)

第2回 「ヒヤリハット事例の分析について」 (H12.11.2)
       厚生省健康政策局総務課 青木龍哉課長補佐
     「医療事故事例の分析について」
       厚生省医薬安全局監視指導課 小林秀幸主査

第3回 「エラー管理と品質管理~政治家は何をすべきか~」 (H12.11.9)
       医真会八尾総合病院 院長 森 功氏

第4回 「医療事故~Law and Economicsの視点から」 (H12.11.29)
       三宅坂総合法律事務所 児玉安司氏

第5回 医療事故被害者 関根萬司・関根美和 氏よりヒアリング (H12.12.5)
       東京南部法律事務所 弁護士 安原幸彦氏  弁護士 鈴木利廣氏
                     弁護士 福地直樹氏  弁護士 大森夏織氏

第6回 日本看護協会よりヒアリング (H13.2.16)
       日本看護協会 専務理事 岡谷惠子氏  常任理事 山崎摩耶氏
       常任理事 嶋森好子氏  政策企画室長 石田昌宏氏

第7回 議員による中間とりまとめ(H13.2.21)
党ネクストキャビネット厚生労働部門会議にて中間報告 (H13.4.5) 

第8回 日本医療機能評価機構よりヒアリング (H13.4.11)
       日本医療機能評価機構
         理事 河北博文氏 「病院機能評価(経緯・概要)」
         理事 大道 久氏 「評価体系・方法の見直しと更新審査について」
         理事 今中雄一氏 「患者の安全確保作業部会検討報告」

第9回 日本医師会よりヒアリング (H13.4.18)
       日本医師会 常任理事 星北斗氏

第10回 「医薬品分野における『患者の安全』を守るための方策」 (H13.4.24)
       東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長 土屋文人氏

第11回 「ヒューマンファクターの概念に基づいた事故防止戦略」 (H13.5.23)
       人間工学会 航空人間工学部会 委員 佐久間秀武氏

医療法の一部を改正する法律案(医療事故防止法案)
平成13年6月25日衆議院へ議員立法として提出
第一五一回
衆第五五号

医療法の一部を改正する法律案

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。

目次中「第五章の二 雑則(第七十一条の二―第七十一条の六)」を
「 第五章の二 医療事故防止センター(第七十一条の二―第七十一条の十一) 第五章の三 雑則(第七十一条の十二―第七十一条の十六) 」
に改める。
第十五条の二の次に次の一条を加える。

第十五条の三 病院の管理者は、当該病院における医療事故(医療の実施の過程において、医療を受ける者を誤認すること、医薬品等を誤用することその他の診察、治療又は看護上の誤りにより、医療を受ける者の生命又は身体に被害が生じることをいう。以下同じ。)の発生を防止するための措置に関する方針(以下「医療事故防止方針」という。)を作成し、病院所在地の都道府県知事に届け出なければならない。当該医療事故防止方針を変更したときも、同様とする。

2 医療事故防止方針には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 一 当該病院における医療事故の防止対策について調査審議する委員会等の組織及び運営に関する事項
 二 当該病院の診療部門、薬剤部門、看護部門その他の部門ごとに医療事故の防止等に関する事項を管理する者の選任に関する事項
 三 当該病院における医療事故及び医療事故の兆候(医療事故又は診察、治療若しくは看護上の誤りが発生するおそれがあると認められる事態をいう。以下同じ。)の迅速かつ適確な把握及び報告に関する事項
 四 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の職員に対する医療事故の防止のための教育及び研修に関する事項
 五 前各号に掲げるもののほか、当該病院の実情に応じ医療事故の防止のために必要と認められる事項

3 厚生労働大臣は、医療事故防止方針の作成に関して指針となるべき事項を定め、公表するものとする。

4 都道府県知事は、第一項の規定による届出に係る医療事故防止方針が著しく不適当であると認めるときは、当該届出をした病院の管理者に対してその変更を勧告することができる。

 第二十五条第一項中「若しくは診療録、助産録」を「、診療録若しくは助産録」に改め、「物件」の下に「若しくは医療事故防止方針の作成及び実施の状況」を加える。

 第五章の二中第七十一条の六を第七十一条の十六とし、第七十一条の二から第七十一条の五までを十条ずつ繰り下げる。
 第五章の二を第五章の三とし、第五章の次に次の一章を加える。

   第五章の二 医療事故防止センター

第七十一条の二 厚生労働大臣は、民法第三十四条の法人であつて、次条に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、全国に一を限つて、医療事故防止センター(以下「防止センター」という。)として指定することができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による指定をしたときは、防止センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。

3 防止センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。

4 厚生労働大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

第七十一条の三 防止センターは、次に掲げる事業を行うものとする。

 一 医療事故の実例に即して、その原因等に関する科学的な研究に資するための調査を行うこと。
 二 前号の調査に係る情報又は資料その他の個別の医療事故に係る情報又は資料を分析すること。
 三 医療事故一般及び医療事故の兆候一般に関する情報又は資料を収集し、及び分析し、その他医療事故及び医療事故の兆候に関する科学的な調査研究を行うこと。
 四 第二号の分析の結果又は前号の分析の結果若しくは調査研究の成果を、定期的に又は時宜に応じて提供すること。
 五 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の者に対して医療事故の防止のための研修を行うこと。
 六 医療事故の防止体制について、病院からの申出によりその評価を行い、及び必要な相談に応じること。
 七 前各号に掲げる事業に附帯する事業を行うこと。
第七十一条の四 防止センターは、その事業を行う場合において必要があると認めるときは、病院の管理者に対し、医療事故及び医療事故の兆候に関する情報の提供を求めることができる。

第七十一条の五 防止センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、第七十一条の三第一号から第三号までに掲げる事業に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

第七十一条の六 厚生労働大臣は、防止センターの役員又は職員が前条の規定に違反したときは、防止センターに対し、当該役員又は職員を解任すべきことを命ずることができる。

第七十一条の七 厚生労働大臣は、防止センターの事業の運営に関し必要があると認めるときは、防止センターに対し、その事業に関し必要な報告をさせ、又は当該職員に、その事務所に立ち入り、事業の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 第二十五条第五項及び第六項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

第七十一条の八 厚生労働大臣は、この章の規定を施行するため必要な限度において、防止センターに対し、その事業に関し監督上必要な命令をすることができる。

第七十一条の九 厚生労働大臣は、防止センターが第七十一条の六又は前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。 第七十一条の十 厚生労働大臣及び都道府県知事は、防止センターに対し、厚生労働省令で定めるところにより、その事業の円滑な運営が図られるように必要な配慮を加えるものとする。

第七十一条の十一 第七十一条の二から前条までに規定するもののほか、防止センターに関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 第七十二条の次に次の一条を加える。

第七十二条の二 第七十一条の五の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 第七十四条に次の二号を加える。

 四 第十五条の三第一項の規定に違反して医療事故防止方針を作成せず、又は届け出なかつた者
 五 第七十一条の七第一項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

附 則

この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ただし、目次の改正規定、第七十一条の六を第七十一条の十六とし、第七十一条の二から第七十一条の五までを十条ずつ繰り下げる改正規定、第五章の二を第五章の三とし、第五章の次に一章を加える改正規定、第七十二条の次に一条を加える改正規定及び第七十四条に二号を加える改正規定(同条第五号に係る部分に限る。)は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

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