2001/09/13
衆院総務委員会で新宿ビル火災事故を質疑

 衆議院で13日午前、総務委員会の閉会中審査が開かれ、9月1日未明に発生し、44人の犠牲者を出した新宿区歌舞伎町のビル火災事故について、質疑が行われた。民主党からは田並胤明、武正公一両議員が質問に立った。

 最初に田並議員は、「今回の事案で、東京消防庁が過去3回もこのビルに立ち入り検査をして、改善措置を指導している。3回目の99年10月には計8件にわたる改善指導をしたが、その結果が改善につながっていないのが事実。まさに無法地帯であり、ショックだ。東京消防庁は、改善命令に従わせるような法的な具体的措置をなぜとらなかったのか。全国的にこのような事例はたくさんあるのではないか」と指摘。

 さらに、前日に東京消防庁で幹部から取材した結果として、「一斉立ち入り指導をやる場合に、あの地域(歌舞伎町地域)では、消火活動をするのと同じくらい怖い気持ちで立ち入り検査をしなければならないとの話をきいた。恒常的な連絡協議会を常設して、警察や都と連携して立ち入り検査、改善指導をすべきだ。怖くて検査ができなかったでは、いつまでたっても抜本的な解決にはならない」と提言した。そして、「12月末までに各地の消防署が立ち入り検査をするが、その結果は国民に逐一公表して明らかにほしい」と要望して質問を締めくくった。

 続いて質問した武正公一議員は、99年の立ち入り検査内容にビルの関係者の誰が立ち会ったのかを質し、「ビルの関係会社の従業員だったと聴いている」との答弁に、「関係者ならビルのオーナー、経営者などが立ち会わなければ実効性がない」と指摘した。 さらに、設置が義務づけられているビルの共同防火管理者がおかれていなかった事実について、なぜ指摘しなかったのかを質したが、中川消防庁長官は「そもそも個々のテナントの防火管理者が選任されていなかった。このようなことで共同防火管理者の設置を求めても実効性がないと判断した。個々の消防署の判断だ」と答弁、ビルのずさんな防火管理体制が改めて明らかになったが、武正議員は「だからといって消防法の主旨がこれでは生かされない」と指摘した。

 また、建築確認では店舗として申請された後、飲食店、風営店に無断転用されても罰則や罰金の対象にならないことを問題視。国土交通省の三沢住宅局長は「大事な問題だと認識しているが、特定行政庁で手続きをどうやって守らせるかが問題。規定の実効性を担保するために、これからは罰則適用の告発を視野に入れて、特定行政庁にも呼びかけをしていきたい」と答弁した。

 さらに、武正議員は、「建築基準法93条で消防同意がある。建物を建てるまではいっしょうけんめいやっているが、作ったあとはいささか消防署任せではないか」として、行政庁の積極的関与が必要だと提案した。

 また「警視庁で風営法の許可申請をするときに、建築確認を任意ですることになっている。この制度は効果があると思うので、全国的に準用すべき。風営法の改正、建築基準法の改正を視野に入れるべきではないか」と提案し、質問を終えた。 (民主党ニュースより転載)

2001/09/13
【衆院総務委員会 議事録】

武正委員
おはようございます。民主党の武正公一でございます。
まず、新宿・歌舞伎町ビル火災でお亡くなりになられた四十四名の方、そして御遺族に心から哀悼の意を表させていただきます。
今、既に田並委員から指摘がございました、消防法に基づいた、八条、十七条、こうした命令、あるいは五条の命令、四条の報告徴収命令、これがほとんど発動していないといったことについては既に御答弁がありました。
こういった点がなぜ命令ができないのかということを以下の質問でお答えをいただければと思っておりますので、次に移らせていただきたいと思っております。

まず、民主党は既に九月一日に、民主党雑居ビル火災対策本部を立ち上げまして、去る十一日に第一回会議を行いました。そのときにも関係省庁の皆さんからそれぞれお話を伺ったわけでございますが、民主党としても、この雑居ビル火災対策につきましては大変重大な問題意識を持って臨んでいることを、まずお伝えを申させていただきます。

第一問といたしましては、まず四条の立入検査、平成十一年の、東京消防庁において、だれが立ち会ったのか、関係者としてだれに話を聞いたのか、これについてお答えをいただければと思っております。
関係者としては、第二条に挙げられておりますが、ビルの所有者あるいは管理者、占有者ということになりますと、不動産の所有者の久留米興産、あるいは当然こういった不動産については介在する宅建業者さんがいらっしゃるはずであります。
そしてまた、テナントの経営者というような関係者がいるわけでございますが、だれが査察のときに立ち会ったのか、お答えをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

■東尾政府参考人
平成十一年にこのビルにおきまして立入検査が行われた際の立会人、立ち会い者でございますけれども、東京消防庁から聴取したところによりますと、当時、立ち会い者を立てて立入検査に入ったわけでございますけれども、この方は当該ビルに関係のある会社の従業員、この方が消防法第四条に言います質問対象となる関係のある者に該当するということを認識した上で、その人に立ち会いを求めた、このように聞いております。

武正委員
認識したということでございますが、昨日、私も理事会の東京消防庁への意見聴取に委員として同行させていただきました。委員長初め理事の皆さんの御許可に心から感謝を申し上げる次第ですが、そのときにもそういうような答弁、そして加えて、女性の方がということが東京消防庁から話がありました。

今、認識というお話でありましたが、関係者であるならば、やはり久留米興産の代表取締役あるいは会社の社員あるいは宅建業者、テナント経営者、こういった方が立ち会わなければ立入検査の実効性がないだろうというふうに思います。これを第一点として要望しておきます。

第二点は、このときの指摘事項が八項目ございましたが、この当該ビルは共同防火管理を行わなければなりません。
協議会を設け、代表者を選任し、統括防火管理者を選任、全体の消防計画ということで、テナント、雑居ビル、それぞれ経営者が分かれるがために、それぞれの防火管理者を設けるのはもちろん、共同で全体の統括防火管理者あるいは共同での防火管理そして計画と。
ただ、今回の東京消防庁の指摘には、この共同防火管理についての指摘がなかったんですが、この理由について、これは消防庁長官、お答えいただけますでしょうか。

■中川政府参考人
ただいま御指摘のように、このような雑居ビルにおいては、防火管理者の選任と同時に共同防火管理者の選任をするという義務がございます。

東京消防庁が平成十一年十月に立入検査を行った時点では、共同防火管理の協議事項の届け出をする以前の問題として、そもそも消防法に基づきます個々のテナントの防火管理者が全く選任されていないという実態にあったということでございます。

東京消防庁では、このような状態で共同防火管理を指導しても事実上実効性が上がらないということから、まず個々のテナントについて防火管理者を選任すべきという判断のもと、その旨指導をしたところである、このように報告を受けております。

なお、共同防火管理は、個々のテナントにおきます防火管理が確保された上で初めて有効なものとなるものでございますので、個々の防火対象物の状況にももちろんよりますけれども、各消防本部の判断によって、まずその個々のテナントの防火管理者の選任の指導を優先させて行う、こういう取り扱いをしたものではないか、このように考えているところでございます。

武正委員
今のお話でございますが、昭和五十二年に沼津市の三沢ビルで火災がございまして、死者十五名。
このときの新聞を見ますと、雑居ビルでは、一つのビルに何人もの経営者がいて、一貫した防火管理体制がとれないところに大きな欠陥があったが、消防法、同改正でビル全体として防火計画をつくることが義務づけられたというような形で、このときにも消防法改正がそういった観点から行われたということがあるわけで、今回それが、個々の管理者がいないからといっても、やはり指摘事項で共同防火管理が漏れていることは問題ではないかということも重ねて指摘をするところでございます。

続いて、無断転用について、国土交通省さんおいででございますので、お話を伺いたいんです。
当初、建築確認においては店舗ということで申請をしておりましたが、いつの間にか飲食店あるいは風営店ということでございましたが、建築基準法に基づく確認申請の取り直しは当該ビルはございませんでした。
さらにまた、三年に一回と、これも同じく建築基準法で義務づけられておりました定期報告もなしということでございます。
国交省さんにお聞きをしますと、これらそれぞれの案件について、全国で調べてみても、あるいは聞くところでも、無断転用や定期報告を怠ったことによっての告発あるいは罰金といったことはないということがお答えでございました。

新宿区役所の歌舞伎町地区における飲食店などに対する緊急監視では、この九月の上旬にやったわけですが、調査対象件数四千六十一件。
調査した台帳の数三千二百九十九件のうち、いわゆる台帳の名義と一致した件数は二千二百六十件、六九%。三一%はその店名が一致しないといったことが新宿区役所の緊急監視でも出ております。

こういった実態を受けて、建築基準法での無断転用あるいは定期報告、これについての告発、罰金がないといったことについてはやはり問題があるというふうに考えますが、御所見を伺いたいと思います。

■三沢政府参考人
今、先生御指摘のように、建築基準法上必要な完了検査とか用途転用の申請あるいは定期報告の手続等につきまして、これらの規定に違反した場合、建築基準法によって一定の罰金に処する旨の罰則規定がございます。
それで、この建築基準法の手続違反につきましては、私どもはこれは非常に大事な問題であると認識しておりますが、特定行政庁において、こういう手続をどうやって守らせるかということが非常に大事な課題でございます。

それで、罰則に行く前に、指導命令あるいは行政的な対応によってこれを守っていただくということがまず第一に必要なのではないかということでございますが、具体的には、例えば定期報告がない場合には、所有者に対してきちっと督促をしていくということとか、それから、正直申し上げまして、それぞれの体制の中で限られた人員でやるとすれば、平成十年に建築基準法を改正いたしまして、例えば建築確認とか検査、こういうものは民間にできるだけやっていただきまして、むしろ行政は行政でないとできないようなこういう違反建築物なり手続違反への対応、こういうのをやっていただくということで、いろいろな取り組みをさせていただいております。

ただ、こういった取り組みをしながらも、なおかつ指導とか命令に従わないで危険な状態にあるという場合においては、やはり規定の実効性をきちっと担保していくということが大事だと思いますので、これから罰則の適用のための告発ということも視野に入れて、そういった取り組みも含めて、特定行政庁にも十分呼びかけ、要請をしてまいりたいというふうに考えております。

武正委員
今のお話でございますが、実は建築基準法九十三条で、建築確認では消防同意をとるという規定がございます。
消防法七条でもこれは盛り込まれておりまして、今回の事件を振り返りますと、建物を建てるときまではいわゆる国交省さん、建設省さん、あるいは建築主事さんが一生懸命やっておる。そのときに、消防長さん、協力してくださいということで同意をとる。

つくった後は、今度は消防長さんあるいは各消防署さんがやってくださいよというような感じが若干ないかというところで、やはり消防長さんあるいは消防署に対して、もっと建築主事さんあるいは現場の特定行政庁の積極的な関与が必要ではないかなと思っておりますので、三年、五年に一回ということでの今回の査察でありますが、これは対象によって年数ももっと短くなっているようですが、これに基礎自治体の建築主事さんなど、建築主事さんに限らずやはり同行をすべきではないかというふうに思っております。
これは時間の関係ですが、要望をして次に移らせていただきます。

さて、同じく国交省さんでございますが、この当該ビルは、建築基準法百二十一条では、当初は店舗ということでございました。
これが、キャバレー、ナイトクラブということでは、二つの避難経路を義務づけられております。ただ、キャバレー、ナイトクラブということで、今回、四階がそれに当たるのではないかと思われますが、そうであっても、百平方メートル未満は適用除外になっております。ですから、今回は百平方メートル未満ということで、二つの避難経路を必ずしもつくらなくてもいいということになっておりますが、消防法八条、維持管理ということでもございますが、やはりこの避難経路をきちっと当初から、当該ビルであってもつくるべきであろうというふうに考えます。

これについての御所見を伺うとともに、今回、避難の妨害となる設備を設け、または物件を置かないということが、維持管理ということで消防法八条で定めがございます。
また、東京都の火災予防条例五十四条でも同じく定めがございます。ただ、これについては罰則規定がありません。
避難経路というか、階段に障害物を置いてあっても罰則がないということが、やはり今回の問題点になっているのではないか。モデル条例として、各市町村のモデル条例も同じく準用しておりますので、この点もやはり問題であろうというふうに考えておりますので、この点を指摘した上で、先ほど、当該ビルであっても二以上の避難経路を設けるべきではないか、この点について、御所見を伺います。

■三沢政府参考人
今の点について御説明させていただきますが、三階以上をキャバレー等の用途に供する建築物で、一定のものにつきましては、こういうものであっても、こういうものは二方向の避難経路はまずきちっと確保していただきたい、これは大前提でございます。これは、一方向でいいということは全くございません。

ただ、その場合の方法といたしまして、二つの方法が認められているということでございます。一つは、二つ以上の直通の階段があるということが一つの方法。それからもう一つは、単なる直通の階段というだけではなくて、階段が屋外にある、屋外避難階段である。
その場合には、もう一つ、それとあわせて反対側に避難ばしご等を設けた避難上有効なバルコニーを設ける、そういう二つの方法を認めているということでございます。
したがいまして、繰り返しになりますが、二方向の避難経路を確保するということはもう大前提で、法律できちっと規定しているところでございます。

何でそれではその二つの方法を認めているのか。特に後の方法についてでございますけれども、二つ目の方法というのは、要するに、比較的小規模で避難対象人員が限られている場合を想定しているわけでございますけれども、そういう場合には、直通階段をむしろ屋外に出して、その屋外の階段というのは煙からきちっと遮断をいたします。
そういう煙に汚染されにくい屋外避難階段に限定するということを前提として、もう一つ、反対方向に、例えば避難ばしご等を備えた避難上有効なバルコニーを設置しなさい、そうすると、双方向に避難経路が確保される、こういう考え方でございます。

したがいまして、これは要するに、二以上の直通階段を設ける方法と防火上の安全性からいってほぼ同等の効果が期待されるということから、そういう規定をしているということでございます。

武正委員
やはり百平米以下であっても例外を認めるべきではないというふうに考えますし、また、特に当該ビルは四百九十七平方メートルということで、床面積が五百平米を超える建築物に適用される排煙設備あるいは内装制限、こういったものが除外されていたり、あるいは床面積三千平米を超える場合のスプリンクラー、これも除外ということでございますが、こういった点も改善が必要ではないか。
また、スプリンクラーについても、基準でいきますと二千万円ぐらい当該ビルはかかるといいますが、三十五万円ぐらいでできる簡易なスプリンクラーもあるということですので、基準の緩和ということも必要ではないかなということを要望しておきます。

さて、警察庁さん、お見えでございます。
東京都では、この風営法の許可申請をとるときに、建築確認、建築指導課なりの、この建物は風営店としてふさわしいかどうかの意見を任意でいただくことになっております。これは私は、警察、風営法とこの建築基準法との連携ということで大変効果があるのではないかなと思っておりますので、これをやはり全国的にも準用すべきではないか、そういった意味では風営法の改正あるいは建築基準法の改正を視野に入れるべきではないかなというふうに思っております。

先ほど沼津の三沢ビル火災のことを指摘いたしましたが、このときに、建設省住指発第十七号、昭和五十二年一月十二日に「風俗営業の用に供する複合用途建築物の防災対策について」という通知がもうなされております。
このときに、今回のビルと全く同じ指摘が昭和五十二年にございました。まずは、避難者が有効に階段を利用しがたい状況、開口部が利用し得ない状況、階段に可燃物が存在している状況、こういったことがほぼ同じでありますし、風営店の所有者、管理者が移動する、こういったことも含めて、さらにまたいろいろと指摘をしております。

このときに、風営法の目隠し規制とか出入り口一カ所、こういったことは風営法の方に実はある、これを勘違いしないでくれというようなことを言っておりますが、ここら辺もまだまだ現場は理解できていないんじゃないかなということでございまして、昭和五十二年にこういった指導が、通知があったにもかかわらず、また繰り返したといったことを痛感するわけであります。

最後に、警察庁さんにはこの点について、繰り返しますが、この東京都がやっておる風営店の許可申請の際の建築確認部署の意見を聴取する、これについてお答えをいただきたいと思います。

■黒澤政府参考人
いわゆる風営適正化法では、風俗営業の許可申請者が建築意見書等を添付する等の義務はございませんが、警視庁におきましては、許可申請がありましたときには、風俗営業の営業制限地域である用途地域に該当するかどうか等を確認するために、都の都市計画局に必要な照会を行っておりまして、回答を得まして、許可に当たっての審査の参考にしていると承知をいたしております。
今後は、ただいま御指摘の、御提案の点も含めまして、建築担当部局との連携につきまして検討してまいりたいと考えております。

武正委員
以上で終わります。ありがとうございました。