【総務委員会】 電波法改正案について

2002年03月20日

武正委員
民主党・無所属クラブの武正公一でございます。  
きょうは、電波について、海老沢会長の御所見をさまざまお伺いをさせていただきたいと思っております。  
先ほど、同僚委員から、アナ・アナ変換に伴いまして、当初七百億強が二千億ぐらいになるだろうというようなお話のやりとりがございました。その財源はと言われれば、これは昨年の電波法改正で、御案内のように、電波利用料からというような形になっているわけであります。そうすると、では、七百億が二千億になれば、今後、この電波利用料をもっともっとふやさなければならないのかなといったことも議論として出てくるのかなというふうに考えるところでございます。  
電波についてなんですけれども、「IT革命を実現させる電波政策に関する提言」ということで、通信と放送の研究会が提言書を昨年一月三十一日にまとめております。  
その中で、電波とはということで、電波は自由財である、電波資源の実質価格はゼロで、電波を無料で利用すること、これまでは何ら差し支えなかったというような形で、ただ、それが今激変しつつある。これがアナ・アナ変換の理由となっているわけなんですが、簡単にこれをわかりやすく、電波の今の状況をこの中ではこう書いてあります。

 「電波資源全体をかりに関東地方の土地スペースにたとえれば、利用に便利な都市部・平野部はすでに割当が終わっており、山岳・峡谷部でも悪条件を克服しながら利用が拡大中である。しかしながら、東京都区内や山手線の内側に当たる部分でも低利用の区画、つまり空き地や、古い平屋建がまばらに散在する区画がまだ残っているという状態である。」あるいはまた、「現状のように、一方において電波資源の非効率な利用を放置したまま、他方において高度利用技術の開発のみに依存することは、国民全体にとって有利な方策ではない。」このような形で提言をしております。
これがこの通常国会で、今回、電波法の改正で電波の利用状況、やっとこれから精査ができるようになるというような形で法案の準備もされているわけでありますが、同研究会もそのことは提言として述べているわけでございます。  
そこで、まず海老沢会長に、平成十四年度予算で、NHKさんはこの六千億を超える予算、支出の中で、どの項目でこの電波利用料を幾らお支払いになられる御予定なのか、御説明をお願いいたします。

■海老沢参考人
十四年度予算では二億円を計上しております。
予算書の中では、国内放送費における放送施設の運用維持経費という中にこの電波利用料が含まれております。

武正委員
六千億のうち二億円ですから、〇・〇三%ということでございます。  この日本の電波利用料、平成十四年度は五百四億円、これは収入の方ですね。そしてまた、歳出の方、歳出で昨年来、アナ・アナ変換を歳出から充てていくわけでありますが、歳出の方が五百二十六億円、これが平成十四年度でございます。  
平成十四年度の電波利用料収入五百四億円の中で、このNHKさんが二億弱、民放さんがやはり二億弱ということで、合計四億円ぐらい。
これは、平成十二年度でかんがみますと、平成十二年度の電波利用料の四百億円の約一%が放送局さんの負担分というような形になるわけなのですね。
これについて後でまたお話をさせていただきますが。  引き続きまして、電波は国民共有の財産というふうに言われております。
先ほど、関東地方でなかなか電波の利用状況、関東地方の土地利用でとらえると、まだまだもっと利用ができるのではないか、 特に都心部というような形でのとらえ方がございましたが、国民共有の財産というこの電波資源。ある電波帯では、 それこそ公的な機関がそのある電波帯の四割を占めるということで、公的な機関は電波利用料を払っていないといったこともありまして、 電波は国民共有の財産というようなことで、これをもっともっと活用すべきということが言われているわけでございますが、海老沢会長は、 電波は国民共有の財産という考えについていかが御所見をお持ちでしょうか。

■海老沢参考人
御案内のように、電波は国民の共有財産だということはもう当然であろうと思います。この国民共有財産をどのように国民のために有効に使うかということだろうと思っております。
私ども公共放送NHKもあるいは広告放送を主な財源とする民間放送も、同じ電波といいますか、これを免許という形で我々は扱っているわけであります。
そういう面で、国民共有財産でありますから、当然、NHKも民放も、ともに公共性を重んじなければならない企業体だろうと思っております。  
そういう面で、私どもは、国民共有財産の電波というものを、視聴者国民のためにできるだけいい番組を出すことによって貢献したい、そう思っております。

武正委員
先ほど、平成十二年、電波利用料収入四百億円のうち、放送局さんがお支払いの分が約、民放二億円、NHKさん二億円、 ですから一%というお話を申し上げました。電波利用料の八割は携帯電話の電波利用料から賄われております。一台当たり五百四十円。
ですから、平成十四年度の電波利用料収入予算は平成十三年度に比べて約五十億円ぐらいアップをしている。
それは、携帯電話の利用台数が一千万台、 毎年今ふえているから、掛ける五百四十円イコール五十億円というような形で、年々電波利用料収入はふえております。  
電波利用料収入に対して、放送局の、割合でいきますと一%、八〇%は携帯電話の利用者、国民が納めている。
これはやはりいかがなものかなというふうに私は思うのですが、この電波利用料収入に対して放送局の支出の割合が少ないことについての御所見をお伺いします。

■海老沢参考人
御案内のように、携帯電話がどんどん普及すれば無線局がふえるわけでありますから、そういう面で上がってくるだろうと思いますが、私ども、電波法という法律に基づいて、 一局当たり今二万三千八百円ということでお払いしておるわけであります。
ですから、法律で定めたことを忠実に守っているということであります。  安いか高いかは、これは私は論評いたしません。

武正委員
NHKさんが約一万六千、そして民放さんが八千というような形でそういった基地局があるわけでございますが、今、安いか高いかは話さないというかお答えにはならないというお話でございます。
私は割合のことをお聞きしたわけでございまして。  
放送法にうたう放送の独立性ということを考えると、適正な電波利用料を払うということが放送の独立性から考えてふさわしいのではないかなというふうに私は思うのですが、放送の独立性と電波利用料との関係ではどのような御所見をお持ちでしょうか。

■海老沢参考人
ですから、電波使用料といいますか利用料というのがどういういきさつでなったかということにまず問題が出てくると思います。
これはもう、総務省、当時郵政省がこれから電波行政を進めるための方策として特別財源としてつくったわけでありまして、我々は、その法律に基づいて支払っているというだけであります。  
ですから、この電波利用料がいいのかどうかは、なかなか、私が今ここで明快な答弁をすることは、頭の中で整理されておりません。

武正委員
なかなか議論が、ちょっとかみ合わなくなってきたのですけれども、電波資源の有効活用方策に関する懇談会というところの報告の中には、電波のオークション制についての記述がございます。
「放送へのオークションの導入の是非」ということでございまして、特にNHKさんについて、「NHKは法により放送事業を行うことを目的として設立された法人であり、目的達成のためには周波数の割当てがあることが前提。」あるいはまた「NHKの法定業務は電波を用いることとされており、周波数の割当てが必要。」という意見がある一方、「NHKは電波利用料を他の免許人と同じように納めているのだから、オークションの対象ともなり得るという言い方もある。」あるいは「周波数の割当てがなくても、有線等の手段により、NHKが法定業務を行うことは可能」、あるいはまた「AM、FM、地上波テレビ、衛星放送等、必ずしもすべてのサービスを行う必要はない。」というような、さまざまな意見がございます。  
この電波の入札制ということ、今の電波利用料ということで、国民が、携帯電話の利用者、約八割が負担をしているわけなのですけれども、電波利用料というような形で諸外国もやっているのですが、最近では欧米各国で電波の入札制といったものに取り組んでおります。この電波の入札制について、これも会長として御所見をお伺いしたいと思います。

■海老沢参考人
イギリス、ドイツ、フランス等、これまで周波数といいますか、電波のオークションをやったところ、聞いております。
欧米の通信事業者が数億のお金で落札した。それによって経営が非常に苦しくなって、競争力が失われたということも我々聞いております。  
ですから、それぞれの電波行政、いわゆる周波数の割り当てなり電波の利用というものはその国固有のものでありますから、それぞれの国の政策によって決められるものだろうと思っております。
ですから、日本に当てはめて、これが、オークションがいいのかどうかは、また日本は日本としてそういう産業面あるいは電波の有効活用という面から総合的に考えるものだろうと私は思っております。

武正委員
お答えいただきましてありがとうございます。  
私が電波の入札制にこだわるのは、先ほど触れたような、国民共有の財産であるということでの、もっともっと活用をしていくべきではないかといった意見に立っているからでございます。
ただ、例えばフランスでは、放送事業者に対してオークションとはまた別途の形で、それを公共放送というような形での対応もしておりますし、イギリスでもそのような対応をしているということでございますので、放送と、また通信ということで、すべてがすべてオークションに立てといったことを言っているのではございませんので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  

なぜ電波の入札制かということですけれども、これも先ほどの通信と放送研究会の中で、大阪学院大学の鬼木さんという方でしょうか、述べているのですけれども、「たとえば海難事故の場合、海水に触れると電源が入って自動的に海面に浮かび、位置情報を発信する「海難・漂流時用パーソナル・ブイ」があれば、救助に役立つはずである。
この種の警報装置は、ストーカー行為を被害女性が警察に通報したり、いじめにあった生徒が先生に知らせたり、あるいはお年寄りの介護・医療など福祉目的にと、さまざまな利用方法がある。」ただ、そのためには、電波が利用できるかどうか、容易にわかる制度になっていないと、有能なメーカー、とりわけ中小、ベンチャー型企業が開発、ビジネスに乗り出しにくいというようなことが言われているわけなのですね。  
まず、電波を、だれがどのように使用しているかというのを明らかにする、これが第一歩ということで、今回法律も出てまいりました。  

その次に、先ほど触れましたように、関東地方での電波の利用状況、家に例えれば、まだまだ利用されていないところ、これをやはり利用できるようにしていくというのが次の段階ということで、そこからまた新たなビジネスが生まれてくるんだといったことだと思います。  
ただ、こういったことをやっていくためには、私は、やはり電波監理審議会のありようというのも問題かなというふうに思っております。これは昨年電波法の改正で指摘をいたしましたが、戦後、昭和二十七年から平成十二年まででありますが、異議申し立ての処理件数が二十五回、勧告を行ったのが二回ということで、公平、公正、中立な立場で電波監理審議会があるということでいうと、いささか問題ありというふうに私は考えております。  
総務大臣、今まだお帰りではないんですけれども、総務大臣には、だからこそ国家行政組織法第三条の組織にすべき、あるいはまた電監審、通信と放送の融合もありますので、電気通信審議会との融合というようなこと、あるいは、これは民主党がかねてより日本版FCCといったことも主張しているのは、そういったところでございます。  

NHKさんにおかれましても、私はやはりNHKさんが、先ほど同僚委員がガイドラインについてお話ありました。
私はまた、新聞協会や民放連さんの危惧するところもわかるわけなんです。ですから、それは何かといえば、やはり公平、公正、中立な立場で電波行政を運営していただく、そういった第三者機関がきちっとあれば、NHKさんも正々堂々と経営をしていく、そういった時代になっていくのではないかな。
監督官庁にある面遠慮することなく、NHKが自主的な、きちっと経営をしていくためにも、私は第三者機関のそういった公平性が必要ではないかなと思っております。  

さて、最後になりますけれども、会長には、先ほど同僚委員からアーカイブスについてのお話がございました。私も昨年、横浜の放送センターの方に行きまして、これまでのコンテンツをDVD化したり、そしてまたギガネットですか、高速通信といった形で、それを瞬時に日本国内に送っているというような話も伺っておりまして、これは、今度川口でつくりますアーカイブス、これに対する期待が非常に大きいわけでありますが、国内のさまざまな機関との連携ということも、私は大変大事かなと思っております。  
川口アーカイブスの今の進捗状況とともに、先ほど触れた横浜のセンターなど含めて、そうしたネットワーク、これについても御答弁をいただければと思います。

■海老沢参考人
私どもの文化遺産といいますか映像の文化的な遺産というのは、国民に開放するといいますか社会還元するつもりで、今いろいろ諸施策を展開しているわけであります。  
今お話ありました横浜での放送番組センターによる公開ライブラリー、これにも三千本ほど提供いたしております。それから民放各社にも、U局を中心に、これまでも二万本程度、我々は提供しております。これは番組放送センターを通じての事業でありますし、それから海外には、数万本をODAの無償で提供する。  
今度は、川口のアーカイブスでは、とりあえず二千本を公開ライブラリーとして、無料でこれを見てもらうというふうにしておりますし、いろいろ著作権なりあるいは手数料等もかかるわけでありますから、その面で、これからどういうふうにそれを効果的に公開していくかというのは、いろいろ今検討しているところであります。  
いずれにしても、受信料で我々がつくった番組であります。しかし、それにはいろいろな方の協力もいただいております。
いわゆる著作権もありますし、またドキュメンタリーを放送する場合にも、いろいろな方の出演協力をお願いしているわけですから、その人たちの了解も得ながら、できるだけ多くのソフトを今後とも提供してまいりたい、そう思っております。

武正委員
平成十二年度NHK予算審議では附帯決議がつけられておりまして、「アナログ周波数変更に伴う経費等については、それを最小限にするよう努めるとともに、公的支援の在り方を含め検討すること。」ということがつけられております。  
先ほど来、私が電波利用料収入について触れておりますのは、これからアナ・アナ変換で七百億が二千億になったときに、電波利用料の増額ということも出てこようかと思っております。そのときに、放送と通信ということで、また放送の独立性といったことから、割合としての適正ということを申し述べたのであって、そのときにはやはり、電波の入札制ということをある面大きくとらえていく時期にもう来ているのではないかなといったことを最後に申し述べまして、私の質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

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