【国土交通委員会】 マンション建替えの円滑化等に関する法律案

2002年04月10日

武正委員

民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。マンション建替え法につき質疑をさせていただきます。  
まず、マンションは、言うまでもなく、敷地内に公園だとか、あるいはマンションの建物には通路、あるいはマンションの敷地のちょうど外縁部には街路灯など、それぞれの区分所有者の資産あるいは出資、出費によってかなり公的なスペースを補完しているというような指摘があるわけでございます。
そうはいっても、税額上、マンションの区分所有者に何ら優遇されているところは見受けられないわけでございますが、マンションの所有者が公的なスペースをかなりの部分補っているといった件について、国土交通大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

■扇国務大臣

マンションというものに対しての御質問でございますけれども、一般的に、他の個人住宅等々の住居と同じように、マンションの共用部分、そういうものは基本的には個人の、それぞれの所有者の財産だとみなされると私は思っております、常識的には。共用のスペースも含めての整備費用というようなこととか、あるいは今問題になっております、マンションの管理費の中から建てかえ用の費用をみんなで積み立てていくとか、そういうことに関しては、所有者においてそのマンションの保持というものに対してのそれぞれの認識のもとに負担していらっしゃるというのが私は現実だと思います。  
また一方、マンションは土地の有効利用を可能とする住まいの形態でございますので、その敷地内にオープンスペースなど共用のスペースの充実を図る、これはやはり、よい環境の中に住まいをする、そういう意味では、私は良好な住宅環境というものの形成には必要なものであると思っております。  
一定の割合以上のオープンスペースを確保するマンションの建てかえ等については、これまた問題が多々市場にも起こっておりますので、そういう点につきましては、費用の補助を行う制度というものを設けてありますので、できる限りはそういうものを利用しながら、良質なマンションの環境保持というものを図っていけるようにするべきだなと思っております。

武正委員

大臣から、戸建て住宅との比較がございました。戸建て住宅の場合は、住宅の前の道路を自治体が整備をしてくれる、あるいは街路灯もやってくれる、そういったところをマンションの所有者は御自身で負担をされている、こういった認識について私は指摘をさせていただいたわけであります。  
さて、今回の建替え法の中で、マンション管理組合等の方にお話を伺いますと、こんな御指摘もあります。せっかく三十年のローンを払い終わったら、今度は建てかえだと。せっかくローンを払い終わって、これからそういった負担を月々なしで住めるんだけれども、これでもし建てかえをするときに、今までのような等価交換だったらよかったんですが、それもなかなか難しいといったことになりますと、この建てかえに参加しない場合には何がしかのお金をもらって、それも今かなり低いといった指摘もあるんですが、今度は賃貸住宅に入らなきゃいけない、こういった指摘があるんですね。
せっかく今まで三十年のローンを払い終わって、やっと自分の資産になったなと思ったら、それが建てかえで、今度はまた負債が発生する。それを好まなければ、そこから出ていって、賃貸住宅に住んで月々お金を払う。こういったことについて、やはり問題点を指摘する声がマンション管理組合等からも出されております。  
この点につきまして、大臣の御所見とともに、法務省の政務官からは、財産権の侵害に当たらないのかどうか、この点についてお願いをしたいと思います。

■扇国務大臣

大体、日本のマンション、ちょうど年数的に建てかえの時期に、あらゆるところで時期が到来しております、許容年数が来ております。そういう意味で、今武正委員がおっしゃったように、あらゆるところで問題になり、それぞれの事例が発生しているところです。  
もともと、建てかえに対します負担の軽減というものは図らなければならない、それは当然のことだろうと思っておりますけれども、一定の要件を満たすマンションの建てかえについては除去費とか、あるいは新たに新築するマンションに対しての共用部分の整備費等、補助を行っておりますけれども、建てかえの参加者の住宅取得、それらに関しては御希望は変わるわけですね、今おっしゃったように。私は建てかえのところへは行かないで違うところへかわるのよという方もいらっしゃいますので、この場合には住宅金融公庫の優遇措置が受けられるようにという指導もしております。
その中には高齢者ですとかあるいは身障者でいらっしゃいますとかそういう弱者の方がいらっしゃいますので、そういう方には公営住宅の優先入居、あるいはそれだけではなくて従前居住者用賃貸住宅にかかわる家賃の対策補助、そういうものとか移転料の支払いに対する補助、それらを行っております。
高齢者とか低所得者等の居住の安定を私たちはまず図っていかなければいけない。
マンション自体の建てかえに対しては組合ができておりますから、それぞれの居住の皆さんで図られることですけれども、万が一その中に、今申しましたような高齢者とかあるいは低所得者、あるいは身障者の方がいらっしゃる場合には、そういう手当てをしなければならないと思っております。

■下村大臣政務官

財産権の侵害に当たらないかという御質問がございました。  
建てかえ決議に反対した区分所有者が最終的に建てかえに参加しないこととした場合、その区分所有権を売り渡さなければならないということになります。
しかし、区分所有物件は物理的に一体不可分であるという特徴がございますから、大多数の区分所有者が建てかえを希望しても少数の反対者が存在すれば常に建てかえが実施できないものということになりますと、大多数の区分所有者の権利が不合理な制約のもとに置かれるということになるわけでございます。  
そこで区分所有法は、建てかえに反対する区分所有者に対しては、その区分所有権を時価で買い取ることを保証するとともに、合理的な要件を定め、その要件が満たされている場合に限って建てかえ決議ができるものとすることで、区分所有者の財産権との合理的な調整を図っております。  
したがって、建てかえ決議の結果、反対者が区分所有権を売り渡さなければならないということになったとしても、財産権の侵害には当たらないというふうに考えております。

武正委員

大臣の方から公的融資のお話がありましたが、融資といってもやはり借金に変わりはございません。また建てかえについて、国土交通省さんの検討委員会の報告では、区分所有者一人当たりの金銭負担は千五百万以上二千万が一番多いということでございます。建築後年数は平均三十八年といったことも出ておりますので、これは後ほど三十年か四十年かの議論でまた使わせていただきたいと思います。  
今、政務官の方からは時価というお話がありましたが、その時価が問題でありまして、極端に安い場合には、本当になけなしのお金をもらって賃貸に入らなければならないといったことが指摘をされているわけでございます。  
それでは、引き続き法務大臣政務官には、建てかえ決議のルールの明確化の環境整備が必要と考えるが、区分所有法の中間報告でどうなっているか、また今回の建替え法と区分所有法のすみ分けはどのようになされているのか、お答えいただきたいと思います。

■下村大臣政務官

建てかえ決議の要件の明確化に関しましては、法制審議会建物区分所有法部会におきまして議論が重ねられてまいりましたが、先月取りまとめられた中間試案では、老朽化を理由とする建物の場合と災害等で建物が損傷を受けたことを理由とする建てかえの場合のそれぞれについて、客観的に明確な要件を掲げております。  
具体的に申し上げますと、老朽化の場合には、基本的には築後三十年または四十年が経過したときに、災害等で建物が損傷を受けた場合には、建物をもとに戻すのに要する費用が一定の基準を超えたときにそれぞれ建てかえをすることができるものとする案を示しているところでございまして、現在意見募集、意見照会の手続をとっております。  
また、区分所有法と本法案との関係につきましてもお尋ねがございましたけれども、本法案は、主として区分所有法上の建てかえ決議がされたことを前提として、決議後の建てかえ事業を円滑に進めるための措置を定めるものでございますので、建てかえ決議の手続や要件について定めた区分所有法ともすみ分けができているものと考えております。

武正委員

今、中間報告の、三十年、四十年というお話がございましたので、国交省さんの御説明では、築後三十年超が平成十二年度で十二万戸のものが十年後九十三万戸になりますよ、こういった御説明を使っておりますので、ある面、築後三十年というのが一つ念頭にあるのかなと思うんですが、今法務省さんからは三十年、四十年ということが出ておりますので、副大臣におかれましては、この四十年についてどのように考えられるのか。  
あわせまして、マンションにおきましては、管理費平均月額一万一千百九円、修繕積立金七千三百七十八円、この使途に、今回の四条二項二号にありますが、建てかえに向けた合意形成を図るための検討費用を入れることが可能かどうか。これは法務大臣政務官に。  
また、あわせまして副大臣並びに政務官には、修繕積立金というのがありますが、マンション建てかえ基金、こういったものが考えられないかどうか。  
以上、あわせまして御答弁をお願いいたします。

■佐藤副大臣

区分所有法の建てかえ決議の要件につきましては、現行のいわゆる費用の過分性の要件の不明確性が強く指摘されていることは、先生御承知のとおりです。それが随分訴訟の原因にもなってきているわけであります。  
マンションの建てかえを円滑に進めるためには、決議の要件は国民にわかりやすく、そして明確なものでなければならないと思っております。先般公表された法制審議会の区分所有法改正中間試案において示されている建築後年数のみを客観的要件とすることは、このような観点から適切なものであると考えております。
この場合、これまでの建てかえの実績を見ると、先ほど先生おっしゃったとおり、築後三十年から四十年で建てかえているものが圧倒的に多いわけであります。
公営住宅や市街地再開発事業の要件に用いられている築後年数も三十五年程度であること、建てかえの合意形成には一定の年数を必要とする、そんなことを考えますと、築後年数としては三十年を採用することが適当であると私どもは考えております。  

なお、マンション建てかえ基金の創設等を今御質問でございましたけれども、マンションの管理組合においては、将来の大規模修繕に備えて、管理規約等に基づきましてすべての区分所有者が毎月所定の修繕積立金を積み立てているところであります。
しかしながら、これと同様に、将来の建てかえに備えるために規約等により区分所有者間で基金を設け、建てかえ資金を積み立てておく仕組みを設けることについては、すべての区分所有者が建てかえに参加するとは限らないこと、途中で転居する者に対する取り扱いなど、検討するべきことがたくさん残っていると考えております。  
なお、マンションの建てかえ事業に対しましては、建てかえの検討段階から再建マンションへの入居に至るまで、調査設計計画費、共同施設整備費等への補助、住宅金融公庫の融資、公的債務保証等の制度により、資金面で総合的な支援を行ってまいりたいと考えております。

■下村大臣政務官

お答えいたします。  
区分所有法上、管理組合は建物及びその敷地等の管理を目的とする団体とされておりまして、その目的に含まれる費用であれば区分所有者から集めることができるものとされております。  
ところで、マンションの建てかえは、現在のマンションを取り崩して新たな建物を建築するということでございますので、一般論としては建物の管理には含まれない事柄と考えられますし、また、区分所有者の中には建てかえに反対する者が含まれていることから考えても、建てかえに充てるための費用を管理組合が区分所有者から徴収するのは検討すべき問題点が少なくないと考えられます。  
もっとも、建物を維持した場合に、今後どれだけ費用がかかるかは建物の管理に関係する事柄であり、建てかえを検討する場合にも重要な判断材料になると考えられます。  
このように、建てかえの検討に必要な費用についても、建物の管理に関係するものであれば、修繕積立金やあるいは管理費から支出することができるのではないかと考えられると思います。

武正委員

副大臣からは三十年が適当というような御答弁がございましたが、国土交通省さんの委員会は、平均の年数は三十七年といったことを出されておりますし、また、日本建築学会は、コンクリートづくりの共同住宅の耐用年数を四十七年と昭和六十三年に推定しておりますし、平成十年度の税制改正では、これまでの六十年償却が四十七年に改正されておりますので、私は一律に三十年というのはいかがなものかなというふうに考えるところでございます。  
そしてまた、今政務官の方からは、いわゆる管理と建てかえはやはり概念的にちょっと違いますよと。ただ、そこでクロスオーバーさせることは可能なんだというような前向きな御答弁をいただいたところでございます。  
そういったところで、引き続きまして、この建てかえについては専門的知識が必要なのかといったところが言われております。
もちろん、専門的知識には、いい形での専門的知識と、もしかすると、ある面、誘導的な専門的知識の両方が考えられるところでありまして、そういったいい意味で、マンション管理士さん、あるいは百万人いる建築士さん、そして五万あるマンション管理組合をサポートするようなNPO専門家集団、そしてまた行政、これがどういった形で専門家としてこの建てかえにかかわっていくのか、これについて国土交通大臣の御所見をお願いいたします。

■扇国務大臣

今、マンション管理士及び建築士等の専門知識の活用ということで御質問いただきましたけれども、マンションの建てかえを行うために、その合意形成でありますとか、あるいは事業の採算をとる上で、法律上とかあるいは建築基準法上とかのそういうものを、住民に対して開示をしなきゃいけないということで、不動産あるいは金融、税制等、広範囲にわたる皆さん方の専門知識が要るというのは今おっしゃったとおりだと思います。  
その建てかえを行う検討をした管理組合とか区分所有者に対しまして、マンション管理士、建築士等の専門家とか地方公共団体の公的機関から情報提供をしたり、あるいはアドバイスが行われる体制というものを整備していくのが一番重要なことだ、またそれが住民に納得していただける一番大事な原点だと私は思っておりますので、国や地方団体におきます建てかえに関する相談とか、あるいは情報提供ができる体制というものを、国土交通省が定めますその基本方針に盛り込むこと、これは大事なことだろうと私は思っております。  
それに基づきまして、国土交通省といたしましては、地方公共団体等と連携して、相談窓口の設置、あるいはインターネットを活用して情報提供体制の整備、または管理組合に対する建てかえ検討費の補助、それらを行って専門知識の活用というものが積極的に図られるように、今おっしゃったような一級建築士三十万人とかマンションの管理士、そういう資格のございます方々が大勢いらっしゃいますので、その方たちを活用しながら国土交通省も指導していきたいと思っております。

武正委員

最近、マンションの内覧会に建築士さんを同行するようなことがふえているというふうに聞いております。  
この建築士さんの設計監理業務というものに名義貸しをしていた建築士などが厳しく責任を問われていたり、あと、私、県議会のときに、彩福祉グループ事件が埼玉県であったときに、契約書を見させていただいたんですが、いわゆる監理のところが空欄なんですね。
建築監理は、本当はそこにちゃんと署名捺印がなければいけないのですが、そういった契約書で、あの彩福祉グループ事件のときの契約が交わされていたこともあります。  
そういった意味で、建築士さんにもこの点については厳しく取り組んでいただけるとありがたいなと思っておりますのは、実際、例えば建築確認の、行政の建築主事は千七百人、これは消防法で、新宿雑居ビル事件で大臣に御質問したときにも触れた点でありました。年間百万件、とてもやりきれない、それで民間にということですが、逆に、行政が確認段階で入らないと、住民が反対する建物が次々に建つといった危惧もあるわけなんですね。  
そういった中で、先ほど、行政の窓口、地方自治体はふやすんだというような、それを方針に書き込むよという大臣の御答弁でありましたが、政務官からは、現状、市町村のマンション相談の窓口は幾つぐらいあるのか、御答弁をお願いします。

■菅大臣政務官

お答えをいたします。  
都道府県以外に政令指定都市、中核市及び特例市等で七十の市を指定いたしております。
さらに、マンションというのはこうした大都市に大部分が建築をされておりますのでこのようにしておりますけれども、しかし、その他の市町村におきましても、建てかえが必要である、そういう該当の市町村におきましては、これから体制を整えていきたいと思っていますし、所要の体制整備を行うよう協議してまいりたいと思っております。

武正委員

市町村にはまだ置かれていないのが実態のようでありますし、国土交通省さんも実際のところ把握がまだできていないようでありますので、引き続き把握に努め、またその開設を促していただければと思っております。  
そういった中で、そういった行政をサポートする民間の専門家集団という意味ではNPO、この育成というものがやはり必要ではないかなと思っております。  
実は埼玉県にはNPO埼管センターというのがありまして、マンション管理組合をサポートする専門家集団。ここでは、埼玉県が主宰するマンション管理専門の相談窓口、月二回あるのですが、そこに相談員を派遣したりしております。  
こういったNPOの育成あるいは活用について、副大臣の御所見をお願いいたします。

■佐藤副大臣

今先生おっしゃったとおり、専門の知識を持った人材やさまざまな方がNPOをつくって、営利を目的としないで活躍していただく、非常によいことだと思っています。
今先生、埼管と言いましたけれども、幾つかそういうものができていまして、一番の長い歴史を持っているのが、横浜マンション管理組合ネットワークというのがございまして、これが一九九五年六月からやっている。既にネットワークが二〇〇〇年の一月現在で百二十七組合、二万六千九百三十一戸が加盟している。
そういう意味で、非常に身近に相談をされる、またセミナーを開く、それは公的な面ももちろんでありますけれども、そういう方々がNPOをつくってやっていただくということは非常にいいことだと思っていますから、その育成をこれからも促進してまいりたいと考えております。

武正委員

浜管ネットと言われるところで、今副大臣がお話しのように百二十七組合ということで、行政の窓口も、許認可と立入検査でもう手いっぱいなんだという話もありますので、こういったNPOの活用をぜひお願いしたいと思います。  
そこで、今回の新法でありますが、四条二項二号に、「マンションの建替えに向けた区分所有者等の合意形成の促進に関する事項」の上に、マンションの建てかえに係る情報の提供に関する事項その他というものを加えることによって、いわゆる区分所有法の建てかえ決議の前に正確な情報を区分所有者が得られるようにしていくべきではないかなと。  
先ほど法務大臣政務官からも、この管理と建てかえのラッピング、重なるところが実はあるんですよというような趣旨のお話がありましたが、これについては大臣、御所見いかがでございましょうか。

■扇国務大臣

今お話にありましたように、まずマンションの建てかえありきではなくて、マンションの建てかえをする前に、今住んでおります建物の現状、どの程度なのかというようなこととか、あるいは、維持修繕を続けた場合と、しなかった場合とのマンションの格差ができております、そういうものについても確実な情報を集めて、なおかつ区分所有者間で十分な検討を行う、そのためにも組合はあると思われますので、そういうところで判断されることがまず重要である。  
自分の住んでいるところはどういう状況にあるのかと、それぞれが知ることが一番大前提であって、その後で基本的にどうするかということで基本方針を定めますと、今おっしゃったように、法案の第四条第二項第二号の建てかえに向けた区分所有者等の合意形成の促進等に関する事項、それには、マンションの建てかえまたは修繕の判断に関する技術的な指針でございますとか、あるいは適切な合意形成のためのマニュアルの作成、そして情報提供、相談体制の整備等が含まれるものと考えておりますので、このような考え方に基づいて、関係者に対して積極的な情報の提供を進めていきたいと思っております。

武正委員

私は、ぜひここの点については、先ほど提案したような形を新法には加えていくべきだろうというふうに考えております。  
さて、建設白書は平成八年に、一般論として欧米の建物との寿命の比較が出ております。日本は二十六年、アメリカ四十四年、イギリス七十五年ということであります。  
そうした中、今百年マンションというものを公団も含めてつくられておりまして、これはメンテナンスしやすいようにパイプシャフトを設けたり、あるいは床下配管方式ということで、コンクリートのはりの上端に床を形成して、その下には設備のための空間スペースを設ける、こういった形で、マンションの寿命を延ばそうといったことが行われております。  
これについて、大臣として、三十年という副大臣のお話もありましたが、逆にこれからはやはり国民のストックとして住宅も寿命を延ばしていく。その中で、今は新規着工戸数は一九八〇年から戸建てよりもふえているマンションの寿命を延ばしていくべきではないか、メンテしやすいように、改造しやすいように。この点について大臣の御所見をお願いいたします。

■扇国務大臣

これはマンションだけには限りませんで、ビル自体も私はそうだと思っております。こういうものすべてに対しましては寿命というものが当然あろうと思いますけれども、物理的には、仕様でありますとか、施工や維持管理の状況、あるいはまたその地域の気候等、それらの変動によってそれぞれの寿命というものが変わってくると思っております。
社会的には、住戸の面積でありますとか設備等の水準が今のニーズに果たして対応し得るのかどうか、そういう居住の皆さん方の御意見で私は定まってくるものと思っておりますし、一概には言い切れないと思っておりますけれども、今おっしゃいましたように、私も手元に持っておりますけれども、マンションの長もちをさせる、あるものを大事にする、そういう意味が一番大事だと。  
例えば、建てかえてもそのものを重要視する、そういうことでは、長期修理計画の作成とか、あるいは定期的な修繕の実施を支援する、これが一つ。住宅金融公庫融資の基準において耐久性に配慮する、これが二つ目。
また三つ目には、住宅品確法に基づく住宅性能表示制度において、劣化をおくらせる対策とか維持管理のしやすさ、そういうものについて表示して情報提供を行っていく。この三つの方法にかてて加えて、高い耐久性を持った構造の躯体と可変性の高い内装とにより構成します、今おっしゃいました、私もこのスケルトン・インフィル住宅の技術開発というものを持っておりますけれども、日々こういう新しい技術が開発されてまいりますので、そういうものに大いに取り組んでいくということが大事だと思いますけれども、これからもなお一層、耐久性のいい、そして品確、維持というものが一番重要だと考えております。

武正委員

ヒンカクは両方の意味があるということでございますけれども、今大臣からもそういった前向きな御答弁をいただいたのですが、先ほどちょっと私は所沢のダイオキシンと言いましたが、ちょうど私が埼玉の県議会にいたときに所沢でダイオキシン問題がありまして、そのときに、東京から年間三百万トンの建築廃材が埼玉に来て、そこで中間処理をして、最終処分場にまた県から出ていくといったことが指摘をされておりました。  
政府もこの通常国会には京都議定書の批准というようなことを伺っておりますが、この産業廃棄物の処理でもCO2が大変大量に排出されるわけでありますので、やはり先ほど触れたように、マンションが戸建てを上回ってもう二十年たつ、マンションの建築が上回っているわけでありますから、これから予想されるのは、激増する建設廃材の主役はマンションだという時代になりますので、ぜひとも、寿命の長いマンション、あるいはメンテしやすいマンションが必要であることを改めて指摘させていただきます。  
続いて、副大臣におかれましては、いわゆる既存不適格マンション、建築後に容積率が決められましたのでオーバーしている、これを建てかえようとするとき、ではそのオーバーしている分を認めることができるのかどうかというのが一点。
それから、都市計画で認められた一団地の住宅施設については、周辺と比べて容積率を低く設定していますが、これも同様に、これを建てかえるときに、周辺と同じようなことが、引き上げることが可能なのかどうか、その二点、お答えをお願いいたします。

■佐藤副大臣

既存不適格マンション建てかえのときに、この対策が非常に重要であることを私たちも認識をいたしております。  
このために、空地の整備など、人が自由に通れる場所をつくって、そして、それに応じて容積率の緩和を行うという制度がございます。総合設計制度というものがございますけれども、既にこの制度も随分、全国で二千二百六十八件という多くの方々が利用しておりますけれども、この制度で対応していきたいと考えております。
さらに、一団地の住宅施設の都市計画が決定されておるわけでありますけれども、周辺よりも容積率が非常に低く抑えられておるわけでありますけれども、このままでは居住のニーズに見合った十分な広さの住宅への建てかえが困難であるわけであります。  
これに対しましては、建てかえに当たりまして、地区計画制度の活用などによりまして良好な環境の確保を図りつつ、一団地の住宅施設の都市計画を解除して、周辺や地区内の基盤整備とバランスのとれた容積率へと引き上げることなどによりまして対策は可能でありますから、その旨、公共団体に周知、助言してまいりたいと考えております。

武正委員

今副大臣が触れられました総合設計制度なんですが、これは阪神大震災で被災したあるマンションの例なんですけれども、震災から五日目に臨時総会を開催、一月二十二日ですね、建設会社に依頼して、大規模修繕か建てかえか、費用調査をした。
そうすると、一件当たり、小規模の補修で五百万、大規模だと千二百万、建てかえで千九百万という答えが来まして、それで、ただやはり、大規模修繕の場合は、中古住宅市場で高い評価を受けることは難しい、建物評価として低い位置にとどまらざるを得ないということで、建てかえの方に結束していった、そういった記録があります。  
その中で、総合設計制度を当初から提案を受けたらしいんですね。ただ、総合設計制度では、今お話しのように公開空地を設けることを条件としておりまして、多くの割り増し率を得るにはより大きな公開空地を設けなければならない。  
そうしますと、結局は、そこのマンションの場合ですと、建築可能面積やその形式に大きな制約を課すことになりまして、例えば、駐車場を地下につくらなきゃいけない、そうすると機械式にしなきゃいけないので費用がかさむとか、あるいは、では余剰床の売却はだれが責任を負ってくれるんだとか、良好な住宅環境がかえって得られないんじゃないかということで、総合設計制度を選択しなかったというマンションがございます。ですから、それも一つの画期的な制度なんですが、いろいろなケースがあるということを指摘させていただきます。  
大臣におかれましては、これはいろいろな施設についてよく言われるんですが、水回りにお金がかかるんだというような指摘がよくあるんですね。要は、配管設備等の修繕、これについてはちょっとお金がかかるんじゃないかという指摘がありまして、これを受けてではないんでしょうけれども、平成八年、規制改革で、いわゆる指定業者のまちまちだった基準を改めよう、きちっとつくろうという形になっているんです。  
そういった意味では、マンションの修繕、建てかえで、水道工事店につきまして、よりいろいろな業者さんが参加できるようにしていくべきではないかと考えますが、この点について御所見を伺います。

■扇国務大臣

今おっしゃいましたように、水道工事、水回りは一番大事なところで、女にとっても特に注目すべきところなんですけれども、残念ながら水道行政を所管するのは厚生労働省でございまして、私がお答えするのは適当ではないと思います。  
けれども、私は、マンションを建てかえますときに、一番費用がかさみ、また、水漏れとかそういうマンションに対しての害が出ますところが一番大事な水回りでございますので、そういう意味では、費用の軽減を図ることはもちろんですけれども、防水等々の安全性というものを認識しながらするというのはもちろんのことでございますので、今後とも、必要でございましたら関係省庁に働きかけていきたいと思っています。

武正委員

まさにおっしゃるとおりでありまして、水というのは大変大事なところで、所管が厚生労働省だというのが、ああそうなのかなといったところもあったんですけれども。  これで規制改革されても、どうしても指定業者の登録を今までのように重視するようなところがまだまだあったり、これまた排水の方も、やはり下水に全部流せるわけじゃなくて、貯留槽を設けて夜間流すというような形で、結構、水の入りと出というのが、実はマンションの修繕や建てかえでは大変ポイントになっているといったことを指摘させていただこうと思っております。  
それで、先ほど大臣から、ビル自体もそうである、マンションだけではないよ、寿命を延ばすには、というお話なんですが、既に国交省さんが取り組んでおられます外断熱でございます。これは、国交省の営繕部報告書の内容では、積雪寒冷地で高品質なグリーン庁舎を実現する最も有効な手段というような報告書もございますし、今度シックハウスについていろいろ法案も出そうとしておりますが、このシックハウス、ダニ、カビといった原因も、高温多湿な日本の風土にいわゆる内断熱、結露が生じやすいこの方式がシックハウスの実は原因となっているんではないかということが言われております。  

また、都市基盤整備公団から御回答いただきますと、この外断熱については、連続的全室冷暖房には外断熱が有効だ、ただ、間を置いたり即座にといったときには内断熱の方が暖まりますよといったこと。
それから、ただ、躯体の保護効果はやはり外断熱の方がありますよ、寿命が延びますよといったこと。ただ、防耐火性能については配慮が必要だ、すなわち躯体のコンクリートの外側に断熱材や外装材を設けるからだといったことであります。
ただ、やはり難点はコストである。断熱材、外側の外装材の保持、窓周りなどの細部のおさまりなどの複雑化から、手間と材料費で割高になる、こんな御回答を得ているんです。  
やはり、外断熱によってマンションあるいはビル、そしてまた日本の建物を日本の風土に合ったような形で、そしてシックハウスへの対応もしっかり踏まえた上で、この外断熱というものを取り入れていくことが、先ほど言いました京都議定書をこれから批准していく中で、省エネといったことからも必要ではないかなというふうに思っておるんです。
まだまだ日本の省エネ、いわゆる断熱についての目標は、ドイツに比べると目標値が二倍から五倍ぐらい日本の方が高いといった指摘もあるわけなんですが、外断熱を日本の住宅に取り入れていくことについて、そしてマンションに取り入れていくことについての大臣の御所見をお伺いします。

■扇国務大臣

今おっしゃるとおり、外断熱工法と内断熱工法、それぞれメリット、デメリットがある、これはおっしゃるとおりでございますし、外気の温度変化に対して躯体が保護されるために劣化しにくい、これはもう当然のこと、素人が考えてもそうだろうなと思います。  
一方、これは施工が複雑なんですね。お手元にこういうものが行っていると思いますけれども、大変劣化しにくいことはあるけれども、施工が複雑で建設コストが大体割高になるということですね。しかも、二階以上の施工をする場合には足場を組まなきゃいけないというので、もっと割高になる。外断熱工法をするときにはそういう条件がある。  
また、このほか、省エネルギー性の面では、外断熱工法というのは冷暖房の終了時に効果が持続しやすい、これは当然のことですね。それがメリットです。けれども、逆に冷暖房の開始時には短時間で効果があらわれにくい、当然です、外ですから。そういう意味では、これがデメリットになる。  
メリットとデメリット、それから値段の安い高い、いろいろ考えていきますと、さて、どちらがいいんだろうと。一般の皆さんでも、あるいは専門家でも、まだそれぞれのメリットとデメリットで判断しにくいというようなところもございますし、地域によっても、この外断熱と内断熱の工法の適用の範囲というのは変わってくると思います。
そういう意味では、私は、個々の建築物の設計条件とか、適切に判断されるべき問題であると考えていますので、それぞれの地域とそれぞれの住民の選び方、それによってこの外断熱工法と内断熱工法、どちらを選ぶかというのをしていくべきであって、私はまだ一概にこちらがいいと、メリット、デメリット考えますと、私の口から一方的に言うわけにはいかないと思っています。

武正委員

メリット、デメリット相半ばというお話がありましたが、先ほど来、やはり建設廃材のこと、それにはやはり躯体を丈夫で長もちのものにしていく必要があります。そういった意味では、躯体保護効果があると都市基盤整備公団が御回答されておりますので、これはやはりメリットの方が多いんじゃないかな。  
あわせまして、京都議定書を政府は批准するわけです。ヨーロッパでは建築物理という分野がありまして、水蒸気理論というんですが、これが日本の建築分野では欠けているという指摘があるんですね。
ですから、例えば、建築主事さんも、これからやはり水蒸気理論とか建築物理、こういったことの教育とか、あるいは試験にこの科目あるいは項目を入れていく必要もあるといった指摘もあるぐらいなんですね。今まで日本になかった建築物理、水蒸気理論、並びに外断熱については、京都議定書を批准する今、やはり国土交通省としての取り組みが必要ではないかなというふうに考えます。  
あわせまして、先ほど品確法のお話がありましたが、品確法では、結露防止装置という項目があるんですが、多くの識者からは、品確法の中でも結露を防止することの取り決めがなし崩し的に骨抜きにされているという指摘もあります。ですから、この点についても、品確法もいま一度、結露を防止して、そして寿命を延ばすといった点では再検討が必要ではないかなということを指摘させていただきます。  

続きまして、今新法の第五十五条第二項に、暴力団とかオウムのような、善良な市民に受け入れられない集団の入居を、建てかえ時にはそういった集団がどさくさに紛れて入居してしまう可能性がある、それを事前または事後に阻止する機能が必要ではないかという指摘がありまして、その中で、五十五条二項に、建替組合の設立公示後の区分所有権の処分は、省令により施行者の承認が必要とあるが、ここをもっと踏み込んで、後刻いわゆる迷惑組織と判明した場合は裁判所をしてその承認を速やかに取り消すことができるという趣旨の内容にできないか。なお、公告以前三年にさかのぼって同様の措置も付加する、こういったことを提案するマンション管理組合の方がいらっしゃるんですが、副大臣の御所見をお伺いします。

■佐藤副大臣

この法案は、マンションの建てかえを円滑化することを目的とする法案でありまして、おっしゃるような者の入居を防止する措置をこの法案に盛り込むことは困難であると考えております。  
今先生おっしゃった第五十五条第二項は、権利変換手続の円滑な進行の確保の見地から、権利処分の自由を制限する趣旨の規定でありまして、この修正によりお尋ねのような処分制限を行うことも、やはり困難であると思っております。  
なお、区分所有法第七節は、共同の利益に反する行為を行う者の排除等の措置を定めているところでありまして、そのような行為を行う者については、建てかえ前または建てかえ後のマンションの管理組合において、これらの規定に基づく措置を講ずることが考えられると思います。

武正委員

先ほど法務大臣政務官からもお話がありましたように、管理と建てかえはもう密接不可分あるいは重なっているわけでありますので、ぜひ建替え法でも、万が一移転しなければならないときについては先ほどいろいろお話がありましたが、まず区分所有者の立場に立っての法律が必要ではないかなというふうに考えるわけなんですね。  
これは建替え法とはなじまないというお話がありましたが、やはり建てかえ前にそういった善良な市民に受け入れられない集団が入居してしまうと、これがまた建てかえについてそれを阻害したり、あるいは大規模修繕を阻害したりという要因にもなりますので、私は、建替え法でやはりこれについても取り組むべきでありますし、もしかしたらこれは区分所有法でも取り組んでいただかなきゃいけない、両方の法律でカバーをしていくといったことが必要ではないかということを、区分所有法も今中間の案が出され、これから法改正といった中で指摘をさせていただきたいと思います。  

最後になりますが、阿久津委員の時間をちょっとおかりをしまして、お許しをいただきまして、マンションには当然庭に公園があったり芝生が植わっておりまして、これは本法とは直接は関係ないんですが、私は校庭の芝生化議員連盟の一員でありまして、この間、杉並区の和泉小が全面芝生化したときに、Jリーグの川淵チェアマンに来ていただいて話を聞きました。  
そうすると、子供が、二十年前はそれこそ十本の指で立っていた。今の子供は、足の裏に墨を塗って立ちますと、指が六つしか映らない。つまり、薬指とか小指ががちっと地面をかんでいないというのが今の子供の足だそうです。  
それはなぜかというと、やはりはだしで遊んだり、あるいは外で転げ回ったりすることがないからだといった指摘を川淵チェアマンがしておりまして、まさに私もそのとおりとうなずいたわけで、それこそ校庭の芝生化も進めるべきというふうに考えておりますが、東京駅前、一番皆さんが御利用されるところに芝生が植わっておりますが、そこには立入禁止という看板がございます。  
私は、今、国土交通省さんの芝生の概念が、いわゆる修景施設ということで、景色として芝生を見るといったことでくくられておりますので、芝生には立ち入っちゃいけないよ、こういったことが続いてきたわけなんですが、やはり私はここで、芝生は遊ぶもの、親しむもの、転げ回るもの、そういった形に見直していくべきではないかなと思うんですが、最後、これは大臣の方から御所見をお伺いします。

■扇国務大臣

武正議員は校庭を芝生にという議員連盟をしていらっしゃるようでございますけれども、私は、自分の子供を小学校に入れますときに、東京じゅうの小学校を見て回りまして、土の運動場のある学校に入れました。それは芝生以前の問題で、私は、いかに土というものが大事であるかということで、芝生よりももっと土の方が私個人としてはいいと思っております。  
それから、都市公園のお話が出ましたが、都市公園と指定されているところで立入禁止区域がある、あるいは芝生の育成状況があり、そういうところで立入禁止というのがあるというのも、もちろんこれは公園の管理者がおりますので、公園管理者の管理上のやむを得ない事情があるのだと私は思います。常識的には、芝生とか、芝生でなくても子供に立入禁止区域があるということを教えることも私は教育の基本だと思っていますので、芝生はすべて立入禁止というふうには教える必要もないし、時と場合によるし、まして、マンション等々の私的な公園では立ち入り自由だという意味で、私は、今おっしゃった中で、個人のものと、あるいは部分使用でその権利者のものと、あるいは都市公園等々は判断の基準が違うと思っておりますので、それぞれの場所でそれぞれの適応性を子供に教えるということを基本にしたいと思っています。

武正委員

以上で質問を終わります。  ありがとうございました。

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