【沖縄及び北方問題に関する特別委員会】在沖海兵隊の撤退・移動

2003年06月11日

武正委員 
 民主党の武正公一でございます。
 質問をさせていただきたいと思います。
 まず、五月二十九日付ロサンゼルス・タイムズの報道、米複数の高官によればということで、在沖海兵隊二万人のうち一万五千人をオーストラリアへ移動、これについて、オーストラリアンという新聞でも、オーストラリアは歓迎である、やはり雇用の面での効果が図れるというようなことも報道がありといったことでございますが、三十日の閣議後の会見で、川口外務大臣は、何も聞いていない、米国は否定をしている、そういう重要な問題について日本政府と相談なく話が動くということは全くないと。あるいは、同日の外務委員会でもそのような御答弁をされておりました。
 でございますが、五月三十一日時点で判明したのが、日米安全保障高級事務レベル協議、SSCでは今春から協議を始めていたと。具体的に、沖縄からということではないと否定をしながらも、昨年の2プラス2を受けてのいわゆる米軍の変革・再編、トランスフォーメーションの一環として議論の俎上に上っていたということが報道されたわけでございます。
 また、六月二日のウォルフォウィッツ国防副長官等の発言からも、あるいは六月九日付ワシントン・ポストの国防総省幹部の報道からも、さまざま、既に日本外務省を初めとして日本政府、こういった在沖海兵隊の撤退、移動について知っていたのではないか、あるいは協議をしていたのではないか、このように考えるわけでございますが、まず、外務大臣の御答弁をお願いいたします。
 
■川口国務大臣 
まず、ロサンゼルス・タイムズの新聞報道の件ですけれども、これについては、委員が今おっしゃいましたように、記者会見で、沖縄の海兵隊が豪州に移駐をするということについては何も聞いていないということは、確かに申しました。
 それで、照会を米国政府にし、おっしゃったように、その日でしたでしょうか、国会でそういう答弁もいたしましたし、それから、六月二日にウォルフォウィッツ国防副長官とお会いをしてお話をしましたときにも、副長官からもそのようなお話がございます。したがいまして、記者会見で一番最初に申し上げたとおりであります。
 それから、日米間の安全保障の協議でございますけれども、これは日米間で、安全保障のさまざまな問題については緊密に協議をいたしております。先般、日米首脳会談がありましたけれども、その際も、今後、日米間で安全保障の面での協力をさらに強化をしていくというために、両国間の、両政府間の協議をさらに進めるということになったわけでございます。
 ただ、報道されているような計画、これについて協議をしているという事実はございません。

武正委員 
ウォルフォウィッツさんもいろいろと言っておられました。グローバルな兵力配置の見直しは進行中であり、まだ結論は出ていないと、細かなことについては言及をしなくても、全体的な方向性はお示しをされておりますし、また、ワシントン・ポストの国防総省の幹部の話としても、沖縄の海兵隊二万人全員を展開させる計画はないが、沖縄やハワイ、グアムに展開する第三海兵遠征軍の再配置の可能性を検討していることを明らかにした。また、これはワシントン・ポストを読んでみたんですが、可能であればフィリピンに基地を再び建設したいと願っている、フィリピン政府が受けるかどうかはわからない、こういったことも九日付のワシントン・ポストには載っているわけなんですね。
 ですから、今のお答えでございますけれども、私とすれば、今回のロサンゼルス・タイムズの報道は、唐突な印象を受けていても、やはり日本政府としてしかるべき協議の中で対象であったのではないか、そういった話があったのではないかというふうに私は思うところでございます。
 さて、きょうは官房副長官もお見えでございますが、このときの官房長官の記者会見でございます、三十日午後の記者会見。
 実は、その前に沖縄県が、二十九日、外務省の沖縄事務所に照会をした。今、外務大臣の御答弁のように、米国防総省が在沖海兵隊を豪州に移転することを検討していることは承知していないと回答を受けた沖縄県が、三十日午前中、国防総省の国防長官室報道部のバーファインド少佐に電話で報道内容を確認した。このことですね。バーファインド少佐は、記事については注意深く読んでほしい、米国は沖縄から米海兵隊を削減させるということも考慮している、国防総省内では、こうした考えの話し合いがある、しかし、一つの考え方であり、最終決定ではないと。
 これを沖縄県が発表したところ、官房長官の記者会見。政府に聞いてくるなら話もわかるが、どこに問い合わせをしたのか、政府がそういう交渉をしていると、語気を荒げながら県の対応に不快感を示した、どれだけ権威ある情報なのかお聞きしたいと、こういった記者会見での官房長官の発言がありました。
 私は、いろいろな方が言っておられますけれども、沖縄に七五%の在日米軍基地の負担をお願いしている、こういった日本政府の立場、あるいは小泉内閣が地方分権を掲げる立場、あるいはまた今回の有事法制では、いわゆる県民を守るのは都道府県の役割、これは国民保護法制でこれから具体論に入っていくわけでございますが、このような中にあって、これだけ大事な問題を、しかも、外務省の沖縄事務所に照会したらこのような答えだったから国防総省に聞いたのに、それについて、これは国を越える越権行為ではないかと不快感を示す、これが政府の官房長官の記者会見であっていいのかどうかということを大変疑問に思うわけでございます。
 これは、きょうは、官房長官にお見えいただければいいんですけれども、それがかなわない中で、官房副長官に、内閣官房として、あるいは政府を統括する立場として、官房長官のこの記者会見のように、地方自治体は外交、安全保障に対して口を出してはならぬというような考えを小泉政権は持っておられるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。


■安倍内閣官房副長官 
沖縄県、また沖縄県民の皆様が米軍の施設・区域や米軍の駐留の問題について関心を持たれるというのは、至極当然のことであると我々は認識をしております。また、政府としても、その気持ちというのは十分に理解をしているところでございまして、その中で、当然、県が米国側に対してそうした問い合わせをするということは、私は全く問題がないというふうに考えておりますし、官房長官もそのように考えておられます。その後の記者会見におきまして、官房長官も、当然、沖縄県がそういう関心を持って問い合わせをするというのは、沖縄県のそれは自由であるということもおっしゃっておられます。
 いずれにしても、安全保障の問題については国が責任を持って進めていくわけでありますが、国民の保護法制等々を進めていく上におきましては、地方自治体とも十分に相談をしていかなければいけないというふうに考えております。

武正委員 
内閣官房として、また政府としての見解をいただきまして、地方自治体が、その地方自治体にかかわる諸外国とのさまざまな関係、これについて、政府を飛び越えての諸外国との問い合わせ、連携連絡、これは何ら問題はないといったことを確認させていただいたわけでございます。
 一方、外務省の沖縄事務所、これは、私は沖縄大使のことも問題提起をさせていただいておりますが、ある面、沖縄県がいろいろ問題点を抱えている、照会をしたい、聞きたい、そのときに、外務省の沖縄事務所が、あるいは沖縄大使がそのバリアになっているのではないか、こういう疑念を前から持っていたんですが、今回もそれを深めてしまったというふうに指摘をさせていただきます。
 さて、次に移りたいと思うんですけれども、官房副長官にお見えをいただいておりますので、続いて、万景峰号の新潟港への入港、今回見送りをしたというふうな報道でございますが、これについては、二十三日に官房長官が関係省庁に厳しく点検をするよう指示をされ、そして国土交通省もPSCを十年ぶりに、そして海上保安庁、法務省、財務省、厚生労働省、経済産業省、警察庁、七省庁が一致をして強い姿勢を示した。私は拉致議連の一人に名前を連ねさせていただいておりますが、会長、役員を初め皆さんの大変な奮闘、御努力と、そして家族の会、救う会の皆さんの一致結束で、今回、ある面、政府が強い姿勢を示し、そして関係省庁に、しっかりとリーダーシップをとった、私は評価するに値する今回の対応ではないかと思っております。
 残念ながら、私もこの三年間国会に送っていただいておりますが、過去を振り返れば、北朝鮮の不審船事件あるいは瀋陽の総領事館事件等、首相官邸への連絡が十数時間かかる、海上保安庁から防衛庁への連絡が十数時間かかる、日本の危機管理は一体どうなっているんだと、さまざま問題点をかいま見てきたわけでございまして、今回は、やればできるじゃないかという思いを持っておるんです。
 官房副長官、今回のこの万景峰号が入港を見送ったこと、その理由として、やはり政府が強い姿勢を示して、官房長官、関係省庁への督励、そして七省庁の一致結束しての取り組みというふうに私は評価をするんですが、この点についての御所見を伺います。

■安倍内閣官房副長官 
万景峰号の入港取りやめについては、どういう理由であったかということは、北朝鮮側に聞かないとこれはわからないことでございますが、しかしながら、今回も我々は、適正な、法令を駆使して対処をするということを決定していたわけであります。
 委員御指摘のように、もう今まで長年にわたって万景峰号が日本に入港してきていたわけでありますが、その間、いろいろな問題について報道がなされたわけであります。そして、拉致被害者の家族の皆様、あるいは救う会、そしてまた議連の皆様が、そこに大きな問題があるのではないかということで運動を展開してこられたわけであります。
 そうした運動の展開、そうした国民的な一種の盛り上がりというのは、政府が施策を実行していく上においては大きな力になる、私はこういうふうに思っているわけでありまして、適切に、厳正に対処する、このことは当然であるということを我々は今後も続けていきたい、このように思っております。

武正委員 
ありがとうございます。
 きょうは、防衛庁からもお見えでございます。赤城副長官がお見えでございます。
 先ほどの、この沖縄海兵隊、一万五千人が沖縄から移転をする、あるいは撤退をする、これが仮定の話というのか。あるいは、そうはいっても、やはり昨年の2プラス2以来の日米の協議も大きな枠組みの中で行われている。そしてまた、米軍のアジアにおけるいわゆる再編。
 こういったことの中になりますと、海兵隊はこれまでこのような説明をしていました。歩兵部隊の近くにヘリコプター部隊が展開することで陸空一体となった海兵隊の作戦の特徴が生かせると説明してきた。歩兵部隊が減るのならヘリも移るのか、すなわち、いわゆる普天間の代替施設は要らなくなるのではないか、あるいは、ヘリが数機残るのであれば嘉手納への統合ということが現実味を帯びるのではないかというふうに考えるわけでございますが、この仮定の話と、そうはいってもSSCで協議を進めている日本政府、これが、防衛庁として、普天間移設に与える影響、仮定の話でありますが、もしそれが本当であれば、あるいはこれから進捗していくのであれば、どのようなことが考えられるのか、取り組みが予想されるのか、想定されるのか、お答えをいただきたいと思います。

■赤城副長官 
お答えいたします。
 この在沖縄海兵隊の件につきましては、各種報道においてその削減とかオーストラリア等への移転ということが報じられているということは承知しておりますが、この点に関しまして外務省を通じて米側に確認したところ、先ほどの外務大臣からの御答弁にもありましたように、同盟国である日本に相談なく在沖縄海兵隊の兵力構成を大幅に変更することを決定することはあり得ないとのことでありましたし、また、現時点で報道されているような在沖縄海兵隊のオーストラリアやフィリピンへの再配置の検討が進められているという事実はないとのことでございます。
 したがいまして、現段階において米側が在沖縄海兵隊の再配置に関し具体的な検討を進めているということは承知しておりませんので、これはやはり仮定の御質問でございますので、それに対するお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 
仮定の質問と割り切ってしまえばそういうお答えになりますが、先ほど言ったように、SSCでは協議が進んでいるということでございますので、その協議の進捗状況、進行状況にあわせて防衛庁、施設庁としてもしかるべき取り組みが必要であろうというふうに考えるわけでございます。
 さて、五月二十三日、外務大臣はパウエル長官とパリで会談をされ、そのときにいわゆる十五年問題についても取り上げた、伝えたということでございました。沖縄県知事が言っていることを伝えたということでございまして、もし沖縄県知事が言っていることを伝えるのが外務大臣の役割であれば、私は、前から言っておりますように、沖縄県を2プラス2に、あるいはSSCにオブザーバー出席させて、そこで沖縄県の声を直接言えばいいというふうに思うのでございます。そして、もし、やはり外務省として、日本政府として十五年問題を言えないのであれば、言えないというふうに言うべきであろうと思うわけでございます。
 この2プラス2会談でございますが、外務大臣、三月十四日付、国防総省でございますが、米国政府に解決を求める問題としないことを日本政府は伝えて、既に合意していると。日本政府は沖縄県が十五年期限を求めていることを米国政府に伝えているが、単なるセレモニーかの問いに、まさにそのとおりと国防総省当局者が答えていると。
 本当にセレモニーなんでしょうか。そして、自分の言葉として、外務省として、日本政府として十五年期限問題はどうなのかというふうに、外務大臣は国務長官や2プラス2で言っているんでしょうか。あくまでも、沖縄県がこう言っているよとしかこれまでも言っていないんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。外務大臣、お願いいたします。

■川口国務大臣 
今の御質問にお答えを申し上げる前に、先ほど、外務省の沖縄駐在大使がバリアになったということをおっしゃられましたけれども、これは全くそういうことはありませんで、沖縄大使は、米軍と沖縄県民の間に立って、さまざまな問題について、柔軟に、そして声を聞きながら対応しているということであります。
 具体的に何がバリアになったかということをもしおっしゃっていただけるのであれば、必要なことは適切に対応したいと思いますし、むしろ、具体的にそういうことがあれば、おっしゃっていただきたいというふうに思います。私どもの認識する限りでは、そういうことはないと思います。
 それから、今の御質問ですけれども、私は、五月二十三日にパリでパウエル国務長官とお会いをいたしまして、日米の安全保障関係のさらなる強化の必要性ということについてお話をし、そしてその中で、沖縄の問題について、普天間飛行場の移設、返還について、これは沖縄県知事より使用期限の問題が提起をされているけれども、今後とも政府として沖縄の負担軽減のために米国と協力をしていきたいということを言いました。単に沖縄県の知事がこう言っているということを伝えたということでは決してありません。
 それで、これに関してパウエル長官から、沖縄の問題の重要性については十分理解をしているというお話があったわけですけれども、政府として、この沖縄の普天間の使用期限の問題については、これは平成十一年末の閣議決定に従って対応をしていきたいと考えております。
 この使用期限の問題というのは、沖縄に米軍の施設・区域が七五%集中をしている、そういうことから、沖縄の県民の皆様には多大な御負担をおかけしているわけでして、そういった中、基地の固定化を避けて、基地の整理縮小を求める県民の感情ということについては、私は十分に認識をしております。その中で、沖縄県知事及び名護市長から御要望があったわけでございまして、私としては、これを非常に重く受けとめているわけです。そして、稲嶺知事がこの使用期限の問題について、着工までに政府として一定の方向性を出すということを強く要望されているということも、重く受けとめております。

武正委員 
官房副長官もお見えいただいておりまして、これをもう一度お聞きしたいんですが、閣議決定、平成十一年十二月二十八日、その関係箇所を読みます。「政府としては、代替施設の使用期限については、国際情勢もあり厳しい問題があるとの認識を有しているが、沖縄県知事及び名護市長から要請がなされたことを重く受け止め、これを米国政府との話し合いの中で取り上げるとともに、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議していくこととする。」あくまでも、これを米国政府との話し合いの中で取り上げていくとともにということなんですね。
 ですから、外務大臣が沖縄県知事の言葉ということで伝えたことではないよと言いながらも、やはり閣議決定を重視してということであれば、外務省として、日本政府として十五年期限問題をアメリカ政府に迫っていくということではないというふうに、この閣議決定から読めるんですね。ある面、妥協の産物、苦渋の選択、そんなようなところが、実は、外務大臣が国務長官とのパリでの会談で取り上げただけというふうに言われるゆえんではないかというふうに思うんです。
 そうであれば、先ほども触れましたように、2プラス2なりSSCなり、先ほど官房副長官も、沖縄県が日本政府の頭越しにいろいろと国防総省に照会したっていい、これはやって構わないんだというふうに言っておられますので、2プラス2やSSCに沖縄県をオブザーバー出席させる、これは私は外務省に求めているんですが、なかなかいいお答えをいただけないんですが、官房副長官、いかがでしょうか。地方分権、そして有事法制、国民保護法制、地方の声、これをしっかりと踏まえていく小泉政権、内閣としてお答えをいただきたいと思います。

■安倍内閣官房副長官 
2プラス2の会合と、この会合の下部機関でございますSSCについては、我が国の平和と安全をいかに確保するかという観点から、我が国を取り巻く国際情勢や日米安保体制にかかわるいろいろな問題について話し合いをする場所でございます。その観点から、日本側と米側が話し合いの上で出席者のメンバーを決めたわけであります。
 もちろん、沖縄県あるいは沖縄県民の皆さんの御意見もいろいろとあると思いますし、皆様のお気持ちを伝えたいということだと思います。その考えは私も十分に理解できるわけでありますが、しかし、この外交におきましては、川口大臣が我が国を代表してこのメンバーの中に入っているわけでございますし、また外務省も入っている、また防衛庁も入っているわけでございます。沖縄県とは十分に相談をしながら、沖縄県の皆さんのお気持ちも配慮した上で、その会議の場で我が国を代表して米側といろいろな話し合いを行っていく、こういうことであると思います。
 この方針については、今後も我々はこの方針で進んでいくということでございます。

武正委員 
以上で終わります。ありがとうございました。

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