2007年3月15日
【総務委員会 議事録】平成十九年度のNHK予算案について質疑

武正委員 
 平成十九年度のNHK予算案について質疑をさせていただきます。

 まず冒頭、きょう午前中、衆議院の憲法調査特別委員会において、委員長職権で委員会が立てられ、二十二日の中央公聴会がまたこれも強行的な採決によって可決をしていることについて、改めてこの場で、与党の運営に対して、また、憲法調査特別委員会の委員長に対しても抗議を申すものでございます。

 御案内のように、当総務委員会も、三月二日には地方税法等がわずか三時間で審議が打ち切られ、委員長による職権採決といったことが、ちょうどきのう、ようやく衆議院ではそうした意味では与野党の正常化成ったその舌の根も乾かぬうちに、憲法調査特別委員会でのこうした強行採決、しかもその指示が首相官邸であるというような報道もこれあり、憲法改正、そしてそのための国民投票法案、これを数の力で押し通そうとするその与党のあり方に改めて抗議を申すものでございます。

 さて、質疑に移らせていただきますが、まず、会長には、未契約者一千万世帯、そして三割が不払いだ、こういうことが盛んに火曜日の当委員会でも出ておりますが、十三日の参考人、小林理事ですか、御答弁では、その一千万の内訳、転居など二百十万件、面接困難三百三十万件、対応中というのが四百六十万件、うち明確な拒否が五十万件ということですので、要は、接触不可能というところが五百四十万件もある。また、対応中四百六十万件のうち、明確な拒否五十万件以外の四百十万件について、つぶさにその内容をNHKにお伺いしましたが、それについては、定かでない、お答えできないというような御返事でもございました。

 要は、その一千万件のうち、大方が、どういう方がどういう世帯で、またどういう状況であるのかというのが、実態がつかめないというような現状において、推測、推計でいう、いわゆる総世帯からの世帯数の割り出し、それから現状の既契約世帯を除いた世帯数一千万というはじき方、これはいささか無理があるのではないのかな。

 やはり、既契約対象数での不払いは約一割、ことし一月でいうと九%、そして、未契約者の契約締結を進めているという丁寧な言い方が適切なのではないかというふうに考えますが、これについて会長の御所見を伺いたいと思います。

○橋本参考人 お答え申し上げます。

 武正委員御指摘のとおり、既契約対象者数による不払いというしっかりとしたこの定義といいますか、こういうところで言えば一割、あるいは、未契約者との契約締結を進めているということは、大変正確な言葉と存じます。

武正委員  昨年の当委員会の決議にも、その三割というのは推計されるというような言いぶりで決議になっておりまして、あくまで、やはり丁寧にその世帯数の割り出しというものがあってしかるべきというふうに考えております。

 そこで、お手元に「協会財政の推移(決算版)」、それから「外部資金の推移」をお配りさせていただいております。これを見てまいりますと、平成元年、二年に、受信料の約三割の値上げあるいは衛星受信料を新たに徴収する、こういったことで約一千億受信料がふえておりまして、それ以降の協会財政を見ると、やはりある面、企業でいえば、事業収支差金あるいは経常収支差金を見る限り大方黒であるといったこと、それから、二枚目をごらんいただきますと、いわゆる長期的な借入金、放送債券プラス長期借入金、これが十七年度で三百九十億ということで、毎年六千億のいわゆる受信料収入が定期的に入ってくる企業体と考えた場合、この三百六十億なり三百九十億の長期債務というのは、企業でいえば極めて健全な財政状況、こういうふうに言えるわけなんですけれども、こういった認識について、どのように会長として考えておられるのか。

 また、平成十九年度、一枚目をごらんいただきますと、二十億の経常収支差金、二十億の黒字を経常収支で見込んでおられますが、これは、いわゆる受信料の徴収義務強化を織り込んだ二十億であるのか、あるいは、そういったものは織り込まないでも二十億の黒字と見ておられるのか。

 以上二点、会長にお答えをいただきたいと思います。

○橋本参考人 御指摘のように、財政状況、借入金、外部資金の推移、この点で考えますと、私は大変健全な経営をしているというふうに考えております。

 また、十九年度の予算案につきましては、いわゆる支払い義務強化という点については、考慮には入ってございません。

武正委員  支払い義務強化、会長の言われる、法律でしっかりとうたってほしいということが織り込まれているということですか。

○橋本参考人 この点については織り込まれておりません。

武正委員  織り込まれていないで二十億の黒字を見込んでいるということでございます。

 そこで、三月一日、会長は記者会見で、「支払い義務を放送法上にはっきりと謳うことで、支払い根拠をわかりやすいものとし、公平負担の徹底を図るため意味のあるものと認識している。」このように記者会見で述べておられます。また、おとといときょうも、当委員会でもそのような趣旨を答弁されておりますが、これまでに、会長として、受信料の徴収義務強化の制度改正あるいは法改正を、政府・与党あるいは総務省関係者に、具体的には、いつ、だれに直接依頼をされたのか。そうしたことがあったのか、なかったのか。あったとすれば、今言ったように、いつ、だれに、直接、NHK会長として、法改正、制度改正を依頼したことがあったのか。お答えをいただきたいと思います。

○橋本参考人 この点につきましては、明確に文書等、要望書でしっかりと出すような形ではしておりません。

 私は、いろいろな場合に、支払い義務の明確化という点につきましては、現在で二段構えになっている法律が一本化で放送法に明記されるということは、視聴者にとって大変わかりやすいものである、そういう意義について御説明は申し上げております。

武正委員  明確にNHKとして文書等をもって政府・与党あるいは総務省関係者にそうした要請をしたことはないということが今わかったわけでございます。

 そこで、既に会長は、やはり記者会見で、ことしの九月までに、あるいは九月に、総務大臣からも要請のあった受信料の二割削減など含めて検討をというようなことを言っておるんですが、現行制度での未収の回収とかあるいは未契約者の契約締結を進める努力、これがまず行われてしかるべき、先決というふうに私は考えております。

 おととい、きょうと、いや、昨年の六月の政府・与党合意でもう決めたじゃないか、もう一年たったじゃないのか、すぐ結論を出せ、こういうようなことが委員から、あるいは総務大臣からも出ておりますけれども、私は、先ほど触れたように、現在のNHKの財政状況を見ても、また現行での取り組み状況、またそうしたことを新年度でやろうという予算案がちょうど出ているわけですので、やはりそれをまずしっかりと見きわめる、これがあっていいんじゃないのかと。

 平成十九年度についていえば、九月といえば上半期の状況も大体見きわめてくる、そういったころだというふうに思うわけでありますが、もう既に議論はあったにしても、昨年の督促状送付、また、ことし二月の事業所の受信料体系の見直し、これはまだまだ民間事業所だけでありますので、それこそ衆議院の議員会館も含めて、中央省庁あるいは地方自治体、こういったところも改めて、会計検査院の指摘もあって、そうした未契約についてしっかりと見直しをしていく、まだまだやるべきことがたくさんあるだろう、こういうふうに考えるわけですが、改めて、九月以降にという会長の記者会見で述べたその方針、私は至極当然というふうに考えますが、その方針に変更はないかどうか、会長の御所見を伺いたいと思います。

○橋本参考人 この方針に変更ございません。

 我々、これから考えます、実際の増加目標あるいは削減の見通し、こういうふうなものを総合的に考えた上で、この内容につきまして九月末に御提示申し上げたいと思います。

武正委員  ぜひこの半年間、御努力をいただきたい。そういった思いを込めた予算案を提出されたものというふうに拝察をする次第でございます。

 ただ、やはり指摘をしなければならないさまざまな、まだまだ改革が必要である面、これを一点指摘させていただきます。

 協会の子会社などとの取引は千二百三十二億円というふうに聞いておりますが、この契約の随意契約率が高いことなど、改善の余地がまだまだあると考えるが、これについてはどのように考えられますでしょうか。

 平成十七年度、協会と関連団体との取引について、番組制作関係の業務委託を除く三千万以上の全契約千百六十五億円のうち、およそ四百六十八億円、四〇%が随意契約であります。ですから、番組制作を含めたり、あるいは、三千万以上というのは私は非常に高いというふうに思っております。昨年、中央省庁の五百万以上の全契約のうち七割以上が随意契約、これについて全省庁が今取り組みを進めておりますので、三千万ではなくて五百万以上でやはり数字を出してくるべきというふうに考えておりますが、こうした契約の見直し、これについて会長としての御所見を伺いたいと思います。

○佐藤委員長 発言表には出ていませんので、会長、お答えください。

○橋本参考人 我々、実際に、この随意契約の状況の公開という点につきましても、順次幅を広げ、公開しているところでございます。

 基本的に、可能なものから競争契約というふうなことに鋭意努めて、これまで進めてきてございます。これからも、金額レベルについても努力してまいりたいと考えております。

武正委員  ぜひ、五百万以上の全契約の随意契約率、これを委員会の方に御提出いただきたいというふうに思っております。

 さて、午前中、参議院の委員会でも大臣が民主党の議員との質疑をしておりました模様を院内テレビで拝見をさせていただきました。関西テレビの捏造をきっかけとした放送法改正、強化を政府、総務省は検討中との報道がありますが、私は、やはり放送業界全体の自律性強化、自律というのは、コンプライアンス、セルフガバナンスということでありますが、こうした自律性強化、それから制作会社における低廉な制作費の問題などをまず先に手をつけるべきであると考えております。

 全日本テレビ番組製作社連盟から話を民主党の部門で聞きますと、この二十年間、制作費が上がったことがない、こういうような話もございました。また、関テレについては、一次、二次下請、これが四次まである。こうした業界全体の問題点、こうしたものをまず先に手をつけるべきであるというふうに考えております。

 また、大臣はよく、いや、昨年も四件あったというふうに言いますが、これは白インゲンマメですか、あれはTBSであって関テレではなかったわけでありますので、あれもこれもごっちゃにして、さあ放送法改正だとこぶしを振り上げるのはいかがなものかというふうに思っております。今BPOの強化をNHKもそれから民放も考えておられるようですが、こうした自律性強化を考えるその考え方の意図というか、これを御披瀝いただくと同時に、民主党は、既に二回出しておりますのは、やはり電監審ではある面、総務省の意見を何となくやったふりという形になりがちであります。ということでありますので、独立行政委員会、通信・放送委員会がやはり必要であるというふうに考えるわけです。

 以上二点、会長に御所見を伺って、大臣にもお話を伺いたかったんですが、以上で私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

○橋本参考人 まず第一点目の、いわゆる今回の民放さんの番組にかかわるBPOの機能強化という点でございますけれども、我々、基本的には、それぞれ個々の放送事業者自身が自主的に、自律的にこのような問題に対応して再発防止に取り組む、これがまず基本だと思っております。当然ながら、こういうことが起こらないように日常的にするということが一番大事だと思っております。その上で、放送事業者全体が、放送事業全体の放送倫理観を高める、あるいはそれをしっかりとガードしていく、つくり出す、そういうふうなものが大事だというふうな考えで今回の取り組みを行ったわけであります。

 この点で、民放さんの制作会社との取引の価格につきましてはNHKは承知しておりませんけれども、NHK自身は、やはりそういう点にも心配りしながら、実際の番組を制作し放送するに当たっては、NHKとしてのチェック体制といいましょうか、これをとって行っているところでございます。

 また、当然ながら、こういうふうな活動自体につきましては、基本はやはり個々の放送事業者がきっちりと対応していくことを基本にしている中で、独立行政委員会という点につきまして提案されていることは承知しております。この点につきましては、さまざまな側面があり、その側面ごとに考え方があると承知しています。そういう点で慎重な議論が必要であろうかなと思います。

 とにかく大事なのは、表現の自由の確保ということをどういう場合であれ放送事業者、放送界がきっちり守っていくこと、これが一番大事なことだと考えております。

武正委員  NHKとして、公共放送として、そしてまた会長として、今の表現の自由、報道の自由が守られる、そういった意味での毅然たる対応を心から御期待を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。
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