2008/02/22
【衆院予算委】公聴会で公述人に見解を質す

 武正公一議員は、衆議院予算委員会公聴会で22日午後、それぞれの公述人に見解を質した。

 武正議員は「景気対策として地方自治体が国の手足と使われ、200兆円の借金となった」と指摘し、いわゆる三位一体の改革は地方に何をもたらしたかに関して、立谷秀清相馬市長と片山善博慶応大学教授(前鳥取県知事)に見解を質した。

 立谷市長は、裁量権が増えるとして三位一体改革に取り組んだとした上で、「補助金が一般財源になるのは賛成。しかし、道路は性質が違う。市を超えて広い地域にまたがる。私どもの裁量ではない。だが、市道はやらせてもらいたい」と述べ、基本的には分権型社会、地方自治体の裁量が増えることに賛意を示した。

 片山教授は、景気対策として、単独事業を借金で賄い全国でまい進したとした上で、「総務省や国は、後で交付金で手当する、交付金増やすからといいながら、結果交付金を削減した。人をたぶらかすようなことをしてはいけない。こんな不道徳なことをしてはいけない。モラルハザードを生み、地方財政を悪化させた」と批判した。さらに、道路特定財源については、地方の自由を縛るものとして批判、一般財源化するべきだとした。

 また、片山教授は、「ひも付き補助金は国に旨みがあり、官僚がこれを死守している」と現状を厳しく批判した。その上で、「地方分権は地方の自由度を増すことだ」として、地方分権に理解を求めた。

 最後に、武正議員は、2.6兆円のガソリン税等暫定税率を廃止することによる経済効果を質した。菊池英博日本金融研究所所長は、緊縮財政で、内需を押さえ込んだ小泉政権を批判した上で、「定率減税をもとに戻した方がいい」との見解を示した。
(民主党ホームページより)
【議事録】

武正委員 民主党の武正公一です。

 公述人の皆様、きょうはどうもありがとうございます。

 私は、平成七年に県議会議員に初当選をして、埼玉でございますが、二期目、五年経過をした平成十二年に衆議院に初当選をいたしまして、今三期目でございます。

 立谷公述人も同じく平成七年の四月の福島県議会議員当選ということでございまして、ちょうど同じ時期に県議会に籍を置いておりました関係もありますので、まず立谷さんにお聞きをしたいんですが、あのとき、私も県議会に籍を置いていますと、平成三年なり、バブル崩壊後でございましたので、国の総合経済対策ということで、地方に対して有利な地方債、具体的には地域整備総合債でしょうか、地総債と言われたもの、こういったものを、盛んに地方自治体に国が債券を発行して、わかりやすく言えば借金をして、そしてさまざまな事業を、特にインフラ整備、これで何とか景気を浮揚させよう、こういったことをやっておられました。

 私の県議会でも、自治省から来られた方が、これは有利な地方債なんです、将来交付税で補てんがされますからと、有利な地方債、有利な地方債と言って、それが耳に残るぐらい言われました。そうはいっても、でも借金だからなと思いながらも、やはりそうした国の政策には地方自治体はなかなか逆らえないというような中で、そうした有利な地方債を使いながら景気浮揚のさまざまな事業をしていったわけでございます。

 国会に来てそのことをいろいろと調べてみると、そうはいっても、当時、地方単独事業、地財計画で総務省が見込んだ額にはなかなか及ばなくなってきた、地方の単独事業で地方にやってくれ、また将来は交付税で補てんしますよといっても、地方はそれをやり切れない、そういったところも、国会でもさまざま、衆議院の総務委員会でも議論をさせていただきました。

 先ほど、いみじくも、道路特定財源がこの三月末で打ち切りになった場合どうなるかという話で、立谷公述人は、ちょうど、三億五千万円ぐらいでしょうか、道路特定財源分は実は起債の返済に充てているんだ、その分をそっくり一般財源から入れなければならないというようなお話でございました。この起債が一体どのぐらいの額なのか、ちょっと私も不勉強で知りませんが、年間三億円ぐらいの起債の返済、それが、もしそうした過去の国の、地方自治体に対して、私はやはり景気浮揚のある面手足として地方自治体は使われた面があったのではないのかなと。

 今、地方債の残高の総額は二百兆円です。それをこれからどうやって、夕張のこともありましたから地方自治体には厳しくというような法律もできましたけれども、そうはいっても、もう二百兆円の借金があって、では、これは一体すべて地方自治体の責任なのかどうかといったときに、やはり国のそうした政策の一端を担わされたというようなこともあったのではないかなというふうに思うわけであります。

 そこで、立谷さんには、こうした国と地方自治体との関係、これをどのように今見ておられるのか。どうも国と地方自治体の上意下達というような関係がやはりまだまだ強いこの日本にあって、私ども民主党はやはり分権だと。分権調査会というところでは中間報告も去年まとめましたが、基礎的自治体に権限を移譲していく、補助金は一括交付金という形で自治体が自由に使えるようにしていく、こういったことを私どもは提案しておりますが、地方分権、あるいはこれまでのそうした総合景気対策での地方自治体の役割、あわせて、ぜひ、三位一体改革、ここら辺の一連の流れを公述人としてどのように考えておられるか、お述べいただけますか。

○立谷公述人 非常に多岐にわたる御質問をいただきました。

 今の御発言の中で、相馬市に道路の起債残高はどのぐらいあるかわからないという話だったんですけれども、二十九億円ございます。これを、道路特財から入ってくるのが三億円ちょっとですから、十年かかるんですね。

 私が市長になった六年前に一番最初にやったのは、農業集落排水事業をとめたことです。こういうことは景気対策としてなされたんだと思いますけれども、実際検証しますと、いわゆる投資的経費、建設の財源を別として、維持管理費がどうかといいますと、大体甘く見て倍、きつく見て四倍、そのぐらいの非常に効率の悪い事業なんですね。一カ所つくった段階でやめて、今非常に正解だったと私は思っておりますけれども、こういうことは、やはり首長の判断でやめるものはやめなくてはならない、それが担保される社会でなくてはならないと思っております。これは基本中の基本だと思うんですね。

 ただ、道路の問題の、道路の借金の二十九億円、二十九億円に相当するだけの道路をつくって、その道路が何だったのかという精査を行っているわけではないんですけれども、相馬市内で見る限り、費用対効果あるいは投資効率ということを考えたときに、それほど悪い、こんな道路は要らないなというような道路は余り見当たりませんので、私は、それは一つの方法論として、その当時の考え方としては妥当だったのではあるまいかなと思っております。

 先ほどお示しした相馬市の行革の一覧表の中に、私が市長に就任したときは、三百五億円だったか、そのぐらいの起債残高がございました。行革をやりながら、ちまちま返していっているんですけれども、昨年二百九十ぐらいになりまして、ことしの末で二百八十五億円になる予定でございます。しかしながら、この道のりは遠いですね。山ほど遠いですね。ですから、私は、公共投資で世の中がよくなるという考え方には相当慎重にならざるを得ないと思っております。私自身の実感として、そのように思っております。

 そういうことで、私自身は、相馬市として、市長として、補助金行政というかそういうことも含めて、これが是か非かということをしっかり判断した上で、そのときそのときの政策を組んでいきたい。私がいろいろ展開してきた政策は、まず一番最初に思ったことは、金をかけないでいい地域社会がつくれないだろうか。例えば、相馬市民に救急救命教育を施しました。今、市民の四分の一、一万人以上が救急救命、蘇生術をマスターしてございます。それで助かった市民も数人いるというような状況になってございます。ですから、知恵の絞りよう。

 その知恵を絞る際に、例えば起債事業であっても、どのような条件で、将来の返済計画も含めて果たして我々の身の丈に合った事業であるかどうかということをしっかり精査することなんですね。精査した際に、我々の裁量権がふえるであろうと考えて、みんなで賛成しながら突っ込んだのが三位一体改革でございました。

 しかしながら、地方財政をやっておりまして一番最初に持っていかれるのは、義務的経費なんですね。この義務的経費のパーセンテージの高さというのが実は極めて大きな問題でございまして、自由に使える裁量のお金がなかなかない、そのような財源がなかなかないというのが今の地方自治体でございます。

 そういう際に、我々が考えなくてはいけないことは、三位一体の改革を踏まえていえば、やはり地方交付税の改革が一番最後に来てしまった、つまり、地方交付税がつじつま合わせのような形になってしまったというのが最大の反省でございます。多分そうなるだろうということは予想されてはいたんですけれども、地方分権という考え方を推進するに当たって、もっと警戒心を持つべきではなかったのかなと思っております。

 今、議員のおっしゃった補助金の問題でございますけれども、私も基本的に補助金が一般的な財源になるということについては賛成でございます。

 ただし、きょうのテーマでございます道路特定財源については、若干性格が違うのではないか。市町村に全部よこされても、広域的な道路をつくることはできません。やはり、国道あるいは県道として、ネットワーク道路等々の広い地域にまたがる道路、あるいは全国的な規模で企画すべき道路については、私どもの裁量にゆだねられてもしようがないということになります。

 ただ、相馬市がつくる市道については、できるだけ相馬市の裁量でやらせていただきたいと思うわけであります。

 これは、先ほど私は意見陳述の際に申し上げましたけれども、相馬市がつくろうとする建設予算全体、これは借金も含めて、人件費を除いた予算が来年度で六億三千万ございます。そこに入ってくる道路特定財源からの収入が三・四億円でございますから、約三億円、一般財源から持ってこなきゃいけないんですね。私は、その分を国からいただければこんなありがたいことはないなと。国の方では、余っているから一般財源化すると言っていますけれども、余っているから一般財源化する分があったら、それは地方の道路財源として、一般財源でもいいですよ……(発言する者あり)ですから、余った分があればの話ですね。

 相馬市で建設事業に使うべきところのその分については、いただければこんなありがたいことはないと思っていますけれども、ただ、何度も言いますように、今の問題はこの道路特定財源という税収の形態が維持されるかどうかということにあろうかと思っておりますから、その辺やはり国会議員の先生方に適切な議論をしていただいて、地方が困らないようにしていただいて、その上で私どもは、さっき片山先生がおっしゃいましたけれども、例えば教育予算を削って借金の返済に充てなきゃいけないような、そういうことがないようにひとつ御配慮を賜りたい、そのように考えておるところでございます。

武正委員 民主党は、一般財源化をしてそれをそれぞれの自治体に使っていただく、それぞれの中で選択と集中ということで御判断をいただくということであります。

 今、公述人からは、基本的に分権、これはやるべしということも確認もできましたし、特に市道については自由に使える、そういった仕組みであるべしというようなことも確認もできたわけでございます。

 そこで、同様に片山公述人に、ぜひ、知事としての二期八年を振り返られて、特に三位一体改革、これをどのように検証されているのか、これについて、特に、教育ということも既に言っておられますし、義務教育費の国庫負担金、この地方の負担増といったこともやはり問題であったというようなことも指摘をされておられるようでありますので、三位一体改革を御検証いただけるとありがたいと思います。

○片山公述人 三位一体改革の検証ということでありますけれども、その前に、先ほど議論になっておりました景気対策と地方財政との関係、これは非常に重要な問題でありまして、バブルが崩壊しました後の一九九〇年代に国は景気対策を非常に一生懸命されました。そのときに、地方自治体も総動員されまして、公共事業の追加、それからいわゆる単独事業、これは総務省の施策でありますけれども、これをやれということになったのであります。

 その際に、先ほど言われたように、一般財源といいますか、地方財源の方は全部借金で当面賄って、それを、後で交付税の上乗せをしてあげますから有利だ、こういうことになって、全国邁進したのであります。今、その借金の返済のツケが回ってきて、その段階がどうなっているかというと、交付税をふやしてやると言っていたのに、交付税は大幅激減ということで、これが実は自治体の財政破綻の大きな背景にあるわけなんです。

 ですから、そういう人をたぶらかすようなことを国はやるべきではないと私は思うんです。大体、何百兆円も借金をした国が、自治体に対して、おまえら借金しろ、後で全部面倒を見てやるなんて言えた義理ではないと思うんです。自分の頭のハエも追えないのに、地方自治体に借金をさせて、それを面倒を見るなんということは金輪際言われるべきではない。

 ところが、それをその後も言われて、実はそれでひっかかった自治体が、もう合併でもせざるを得なくなったときに、合併しろ合併しろとまた合併特例債で、その合併特例債の償還も、まあ今度は全部とは言いませんけれども、多くを交付税の上乗せで見てやるというような政策を、実はこの国会が法律を承認して、合併特例法の承認をしてつくっているわけであります。また今度、この合併特例債を発行して、その償還がいずれ来ますから、そのときにまた同じように、はしごを外されたとかだまされたとかという話になるのであります。こんな不道徳なことは絶対やめていただきたい。

 それは、国会の議員の皆さん方が政策をつくられたわけじゃないでしょうけれども、政府がつくったんですけれども、それを承認されたのは国会であります。ぜひやめていただきたい。これがどれだけモラルハザードとか、それから地方財政を悪化させたかということ、これをよく肝に銘じていただきたいと思うんです。

 三位一体改革というのは、実は、きょうの議論と大いに関係あるんですけれども、これは、自治体に自由度を増してください、財政運営上の自由度を増してくださいという運動だったんです。自治体の財源というのは、地方税、地方交付税、それから国庫補助金等があるのでありますけれども、これをばらばらではなくて三つセットで改革しましょうというのが三位一体改革。

 そのときの趣旨は、国から自治体にいろいろな財源が交付されますけれども、多くはひもつきなわけです。道路特定財源も実はそのうちの一つ、ひもつきなのであります。それから、公共事業の補助金もひもつきであります。そういうひもつきで、その中でも特に恣意的性格の強いものをやめてください、官僚の恣意、裁量性の強いものをやめてください、それにかわる財源として、自治体が自由に使える一般財源をそれの見返りに下さい、交換してください、こういう運動だったわけですね。要するに、我に自由を与えよという自治体の運動だったんです。そのために、結果的にはかなり財源が減ったんですけれども、それにも甘んじてそういう取り組みをやってきたんです、小泉内閣のときに。

 私は、今回非常に不思議に思いますのは、そうやって取り組んできた地方六団体の多くの皆さん、私の元同僚なども、今回、道路特定財源に限ってはみんな、我に自由を与えるなと言っているわけです。国の道路特定財源も道路に縛ってくれ、我々が使う財源も道路にしか使えないようにしてくれと。これは全く地方分権の否定であります。私は、何とも情けないと思うんです、今までやってきたことは一体何だったんだろうかということを申し上げるんですけれども。

 国会議員の皆さん方も、地方分権というのは自治体に自由度を与えることだ、国の関与とかそういうものをなくすことだ、制約をなくすことだ、これが地方分権だということはぜひ共通の認識として持っておいていただきたいと思うのであります。

武正委員 先ほど、三位一体改革の中の義務教育費の国庫負担金の増額、これをあわせてお聞きしたんですが、それはどのように振り返っておられますか。

○片山公述人 義務教育費国庫負担金をどうするかというのは、三位一体改革のときに大きな問題になったんです。小泉総理から、四兆円の国庫補助金、負担金の削減のリストをつくれというのが宿題でありまして、その中に何を盛り込むかといったときに、本来ならば、さっき私が申し上げましたように、国の官僚の皆さんの恣意性とか裁量性が強いものから順番に盛り込んでいくべきなんです。それを一般財源に振りかえることが地方分権を進めることになるんです。

 ところが、それは、表現は悪いですけれども、国にとっては非常にうまみがあるんです。配分のうまみ、それから査定のうまみがあるわけです。ですから、そういうものを官僚の皆さんは死守しておきたい。それで、うまみのないものを放出したかったんです。うまみのないものというのは、例えば自動振り込みに近いようなものですね。これが義務教育費国庫負担金だったんです。

 そういう裁量のないものをもらったところで、自治体は、それをもらったから、一般財源にしたからといって、例えばそれを削るとか、合理的な活用ができる、そういうフィールドが非常に少ないのであります。例えば道路の補助金だったら、それが一般財源になれば、ことしやめて来年にしようかとか規格をちょっと下げようかとか、そういう効率化ができるのでありますけれども、教職員の給与費なものですから、ことしは出すのやめようかとか一挙に半分にしようかということはできないんですね。したがって、その一般財源化というのはほとんど意味のないものだったんですよ、自由度を増すという観点では。

 結果、何が起こったかというと、それは税にかえましたから、東京都のようなところは、税源がいっぱいありますから、じゃぶじゃぶ入ってくるわけです。ところが、私がいた鳥取県とか多くの自治体、県では、税源が少ないですから、入ってこないわけです。その穴埋めは交付税がするということが地方財政調整制度のルールなんですけれども、その交付税が、さっきおっしゃったような、はしごを外さざるを得ないような、総務省にとってははしごを外さざるを得ないほど疲弊してしまっているんです。財政調整能力が極度に低下しているのであります。したがって、ここで地方財政に大きな格差がついてしまった。

 こんなことはもうわかっているわけでありまして、私は当時、知事をやっておりましたときに、義務教育費国庫負担金を優先的に三位一体改革のリストに入れればこんなことになりますよということは警鐘を発していたんですけれども、やはり今日案の定こうなってしまって、全国の田舎の自治体の知事さんあたりから、格差がついた、格差がついたと。これは当たり前のことなのであります。自業自得とまでは言いませんけれども、そういう問題なんです。

 ですから、よほど、やはり総務省がこうしろと言ったからとか国が言ったからとかじゃなくて、自治体の皆さんは本当に自分の頭で判断してどうなるかということを考えなければいけない、いいというか、悪い教材になるだろうと思います。

武正委員 あわせて、公述人は法人二税の配分の見直しということも言っておられまして、昨年の衆議院の総務委員会などでも、ふるさと納税ですね、前総務大臣がこのふるさと納税を持ち出されまして、確かに、地方にそれぞれ寄附をできる、寄附税制の見直しということは私ども民主党も言っていたんですが、税の基本からいえば、住んでいるところ、働いているところ、あるいは企業が立地をしているところ、こういったところがやはり納税の基本だろうといったことで、それは別な制度でやるべきだろうという議論もいたしましたが、そうしたふるさと納税の議論。

 そして、今回の法人二税の配分見直しと公述人が言っておられるところと、今回、東京都とか愛知県からある面税収を召し上げるというようなやり方をとったことも含めて、どのように評価をされているか、お願いいたします。

○片山公述人 私は、結論から言いますと、法人事業税の見直し、今回、地方税法の改正案がかかっていると思いますけれども、それは反対であります。それから、ふるさと納税の構想にも反対であります。

 どちらも、これをやろうと構想された皆さん方の善意は、私はそのとおり受けとめたいと思うんです。やはり田舎の方は非常に財政が困窮している、せめて何かできることをしてあげたいという、これは明らかに悪意ではなくて善意であります。ですけれども、その善意を、もっと大きな立場で解決に向けて努力をしていただければと思うんです。

 なぜかというと、それは、税体系の見直しであります。本来、例えば法人事業税というのは大変大きな格差がつくんです。特に景気が変動するときに格差がつきます。現時点でいいますと、大都市部に有利で、田舎に非常にしわ寄せが来る、こういうことになるのであります。そういう景気の変動に敏感な税制というのは、実は地方税には余り向いていないんです。特に景気が悪いときほど自治体の仕事はふえるという面もあります。

 ですから、そういうことを考えますと、今の地方税の体系というのはやはり見直す余地が十分あって、例えばどうすればいいかというと、法人事業税のような自治体間の格差がつく税目は国税の方に移換する、それに該当する、相応する税収を生み出す税、例えば個人所得課税である所得税から自治体の住民税にそれをエクスチェンジする、こういうやり方が実は本当に国がやるべきことなのであります。

 ところが、これはなかなか難しい作業です、骨の折れる作業です。でもやらなきゃいけないんですけれども、骨が折れます。骨の折れる作業はちょっとおいておいて、手近にできることは何だろうかというと、ふるさと納税とか、法人事業税の中だけで何かちょこちょこと見直そうということになるんですけれども、これは私は、百害あって一利なしとまでは申しませんけれども、副作用の方が大きいと思います。

 ふるさと納税というのは何かというと、住民でない人に資金提供をお願いするわけです。本来の税というのは、実は自治体と住民との対話のツールなんです、どれだけ仕事をしますからどれだけ税を下さいという。そうすると、住民の側、納税者の側は、それならもっとしゃんと仕事をしろ、無駄が多いじゃないかと。これが実は税の持っている非常に大きな意味なんです。ところが、ふるさと納税というのは、田舎の県の人が東京の県人会なんかに何か恵んでくださいみたいなことになってしまって、税としての本来の機能ではなくなってしまうんですね。そこが非常に問題があると私は思っております。

 それから、法人事業税の見直しは、一番問題なのは、これまで地方分権というのは、地方税源を充実しましょうと言ってきたんです。そのために、大きな痛手をこうむりながらも、四兆円の補助金等を削減して、交付税も削減して、それで三兆円の住民税の移譲をなし遂げたわけです。地方税源を充実させようとやってきたのに、ここに至って、何の議論もしないまま、ほとんど議論しないまま、あっという間に都道府県の一番の基幹税である法人事業税の半分が国税の方に召し上げられてしまう。国税が調整をしてあんばいをするという、こんな情けない状態になろうとしているのであります。

 きょうは地方税法の問題ではありませんけれども、私はぜひお願いしたいのは、こんな地方分権を踏みにじるような地方税法の改正案にはぜひ反対を与党の先生方もしていただきたいと思います。

武正委員 水谷、菊池両公述人に、限られた時間、五分間でありますが、きょう、大田大臣が関係閣僚会議で、いわゆる景気判断の下方修正、一年三カ月ぶり、これを提出するということであります。

 サブプライムローンの影響は、日本の邦銀八行で七千億弱ということで、欧米に比べれば低い量でありますが、さりとて、特にアメリカの景気悪化、減速、これは日本に当然影響もあるということでありますし、いろいろな物価が次々に値上がりをしております。これは家計を直撃するのは必至であります。

 私どもは、そういった中で、暫定税率の引き下げというものは、特に消費者マインドにとって、確かに、二兆六千億円を厳密に家計と企業で分けて、その消費に与える効果というものを見ていくという経済学的なことも伺っておりますが、やはりマインドとして非常に効果があるのではないかというふうに私は思っております。

 また、税は国民が決める、代表なくして課税なしという民主主義国家本来の、ようやくあるべき姿に日本が近づいた今回の通常国会だと私は評価をしておりまして、ぜひ、この減税効果により経済を活性化するという考えについて、今の景気判断とあわせて、それぞれ、短いんですけれども、水谷、菊池両公述人に御所見を伺いたいと思います。

○水谷公述人 今の景気は、下方修正は当たり前だと思います。私はもっと悪くなるだろうと思っております、それは余り細かくは申しませんけれども。

 その場合の対策としまして何が必要か。景気をよくするためには、物が売れればいいんですね。売れるためには、だれかが買わなければいけない。そこで、今先生おっしゃったように、個人が、消費者が買う、これが一番いいですね。あるいは、国が買ってもいいわけですね、公共投資はその代表ですけれども。公共投資をやる、あるいは減税をやるということによって、需要がそれだけ高まりますね。ですから、その分だけは赤字がふえる、赤字がふえるだけ需要が高まる。

 では、それだけ高まって、どれぐらいの効果になるか。これは、それによって収入がふえて買う、買った人のお金がだれかに回るからという、そういう波及効果はあると言われますけれども、現実にはそれほど大きいものではございません。それは、物がこれだけ余っていますと、波及効果はどうしても少なくなりますね。でも、このことは、やればやっただけの効果はあると私は考えています。だから、思い切りやれば思い切り効果があります。

 しかし、思い切りどれぐらいできるかといいますと、金額にしますとそれほど大きな余裕はないです。それによって下がっていくところの景気をどこまで支えられるかというと、微々たるものだろうと思います。その微々たるもののためにそれだけの減税をやった場合、それを取り返さなきゃいけないということをお考えになるかどうかという問題なんです。

 これは、取り返さざるを得ません。ということは、逆に言いますと、何らかの補てんをしないと事業ができないからです。それは、減税の分について何かの補てんをいたしますと、そのところでもとへ戻ってしまいます。

 こんなことをいつまでもやっていても、根本的な問題の解決にならないと私は思います。相当大きく減税をやれば別です。しかし、それは相当大きな赤字の増大になりますよ。

 本当にそこが許される段階へ来たのかどうかということを考えますと、もはや、そういう段階をはるかに超えちゃった、とてもできない。そんなことで全体の景気が動くほど日本経済は小さくはない、こんなふうに考えております。

○菊池公述人 今の御質問についてでございますけれども、私は、おっしゃられた、特に減税の政策、それから、これが予算全体に対してどういうふうに影響を及ぼすかということについて申し上げたいと思います。

 まず、我々国民の身近な感触としては、何といっても、定率減税がこの二〇〇七年、八年度で全廃されました。これは三・三兆円の増税です、所得税としまして。そうすると、これはこれからじりじりと響いてくる。今ちょうど確定申告の時期ですね。これでまた戻りがなくなっちゃったなとか、そういうような実感として出てくるだろう。だから、これはやはり消費にとって非常に大きなマイナスになってくると思います。

 それから、先ほど御案内のサブプライムローンというようなことがございましたけれども、この影響は、直接的には、日本についての大きな原因としては、この構造改革の大きな問題点といいますか、はっきり言いまして財政上でも失敗だったと思うのは、極端に内需を抑え込んできたからですよ。

 今の日本経済はどうかといいますと、まさに、この構造改革が始まってからの数年間というのは実質的に、内需の拡大というのは、基本的には名目GDPの国内の需要の面ですが、これはむしろ減っている分も多いです。だから、結局企業は輸出せざるを得ない。輸出依存度というのは、もう既に一六・四%ぐらい、かつてのバブルとかその後ぐらいでも一〇%ぐらいでしたから。

 それで、結局、何か円安的な様相の中で、円安がある意味ではこのサブプライムローンを助長したこともあるんです、円トレーディングとか円キャリーと言われまして。だから、そういう中で極端にこの問題が向こうから来ました。そうすると、今度は円高になる。円高になって、これはやはり企業収益も落ちますし、その関連の需要が落ちていくと思います。ですから、そういう意味での大きい影響になる。

 それから、国民所得の面で、先ほど申し上げましたとおり、今、ではどうすべきかといいますと、やはり定率減税は戻す方が簡略でいいと思います。それから、もう一つは、住宅ローンの減税ですね。

 先ほども少し触れましたけれども、この住宅ローンについては、住宅ローンの借入額の、当初は二%を税額控除するというようなところからスタートしたんです。それが一%になって、今は〇・五%だと思います。それで、金額的に今大体五千億ぐらいだと思います。構造改革の中で、内需が抑制されている中で、唯一、実はこの住宅ローンというのは比較的伸びていたんです。これは底支えしていたと思うんですよ。それを徐々に、財政赤字だというので、どんどん縮小してきちゃった。財政政策の中に、税収を上げるような経済効果というのをどんどん減殺していっちゃった。だから、税収が上がらないんです。

 ですから、やはり住宅減税というものはもっと拡充すべきだと思います。私は、とりあえず、借入残高の二%ぐらいまでは戻す、それから、自分の住むところだけではなくて、別荘といいますか、あるいは貸し家でもいいんですけれども、そういう面での投資面まで見ていいんじゃないか。ちなみに、アメリカの場合はそれも見ておりまして、円にしまして大体六兆円、このぐらいの税の減免をしています。アメリカは結構そういうことをやっているんですね。

 それから、もう一つ申し上げたいことは、先ほど来の公共投資の効果ということですけれども、これについて、こういう視点でもっと考えるべきだと思うんですよ。公共投資を出す、あるいは、私は先ほど申し上げたようにもっと幅広い社会的共通資本のような形まで広げて考えるべきだという考えなんですけれども、そういうものに政府支出を出しますね。それに伴って、必ず一定の効果というのは出てくるんです。これを一年ないし二年、そしてそれが民需を喚起してくる。だから、重要なことは、公共投資とかそうしたものを出すときには、民間投資を誘引するようなインセンティブのものに集中すべきです。そこら辺のところをよく、きちっと焦点を絞るべきだと思います。

 そして、全体の税構造からいいますと、何といっても、債務との関係でいけば、債務の国民負担率というのは分子が政府債務、分母が名目のGDPですね、これを下げていくことが、一つの健全財政といいますか、財政指標の好転する見込みなんですね。

 今、政府の問題点は、名目のGDPをふやすような政策は全くとらずに、上の債務だけ落とそうとしているわけです。ついこの前から埋蔵金論争みたいなものがありましたね。結果的には、十兆円を、どこかから出てきて、そのうち九兆円で、たしか、既存の国債を回収する、買い戻すように国債整理基金に入れたと思うんです。

 しかし、本当にその十兆円近い、九兆円のものがあるならば、これによって景気対策をやればいいんですよ。景気対策をやれば、それによって景気が増加して、それで、結局、名目GDPがふえるんです。名目GDPをふやして、さっき言った債務の国民負担率、つまり、分母が名目GDPで分子が政府債務ですね。それで、政府債務の伸びよりも名目GDPの伸びが多ければ、当然この比率が下がりますね。これをしなければならないと思う。この辺のところが今の財政に非常に欠けているところではないかと私は思います。

 だから、そういう視点で公共投資とかそういうものも御審議いただいて、もっと経済全体、経済は生き物ですから。死に体じゃないんです、死に体で、数字ばかり合わせて、バランスを調整すればいいというものじゃないんです、言い方が厳しいかもしれませんが。そういう御配慮と御指導をいただけたらというふうに思います。

武正委員 最後には、公共投資も選択と集中だ、民間投資を誘引するようにというようなことでございました。

 ありがとうございました。