2009/04/22
【衆院海賊・テロ特別委員会 議事録】 海賊対処法案ついて

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 引き続き、海賊対処法案の質疑をさせていただきます。

 民主党からも、修正協議ということで、四点を中心にさらに二つを加え、提案をしているところでもありますが、やはり、この間の質疑を聞いておりますと、政府側のこの法案の説明、また、海上警備行動で今派遣をしていることの説明、非常に無理があるなということを思わざるを得ないわけであります。

 まず、警察活動であると。しかし、公海上、旗国主義といっても、ソマリア沖・アデン湾まで警察活動なんだ、これはなかなか、やはり無理があるんじゃないのかなということ。

 そしてまた、これまで、テロ特措法、イラク特措法、再三、政府が引用を前文でされてきた累次の国連決議が、なぜこの法案には盛り込まれていないのか。

 そしてまた、きょうも午前中指摘がありましたように、恒久法であることは間違いありません。恒久法であるということで、これまで唯一の恒久法はPKO法でございますので、やはりPKO法にのっとった枠組みがあってしかるべきであろう。なぜそれを、防衛大臣の判断で派遣ができるような、しかも、海上保安庁第一義といいながら、それが明記されていないのかということでございます。イラクあるいはテロ、それぞれ特措法でも国会承認もあったわけですので、これが盛り込まれていないということはやはり無理があろうというふうに思うわけであります。

 まず、国交大臣、資料一ページは国交省からお出しいただいたんですが、ちょうど一年前でしたでしょうか、原油タンカー「高山」の襲撃ということで、テレビあるいは新聞を通じて、日本の原油を運ぶタンカーが狙撃をされたと。さぞかし、日本の輸入量の多くがアデン湾を通過するのではないのかな、そういう印象を多くの国民の方は持っておられると思うんですが、この資料を見る限り、総輸入量の約四%がこのアデン湾を通過するという国交省さんからの資料でございますが、改めてこの点について確認をさせていただきたいと思います。

○金子国務大臣 日本向けの原油のうち、アデン湾を運航する原油量、これについて確認しましたところ、これは石油連盟に対して確認をとったところでありますが、二〇〇七年においては九百五万六千キロリットル、総輸入量の四%に当たるところであります。

 ただ、総輸入量の四%なので、アデン湾の航行というのが国益にとって重要なのかどうかということに関しての御指摘であるとすれば、アデン湾というのは、やはり年間二千隻の日本関係船舶が運航しておりますし、スエズ運河を経由し、アジアと欧州を結ぶ、我が国にとって極めて重要な航路である。

 平成十九年でいいますと、我が国の貿易総額百五十七兆円のうち、日本と欧州間の海上貿易というのは十四兆円、約九・二%。これらのほとんどの船舶がアデン湾を航行していると考えられますので、そういう意味で、アデン湾の航路は我が国の国益にとって経済的な意義が大変大きい、これは武正委員と極めて共通の認識ではないかと思っております。

武正委員 極めて大事な航路であることは共通の認識でありますが、ともすると、原油タンカーが襲われたという報道がテレビ、新聞で出ますと、どうしても、ほとんどあのアデン湾を通過して日本に来るのかな、そう国民の皆さんが思われるのではないのかなと。やはりある面の冷静な議論がこの国会で求められる点でありますので、きのうも、船主協会、海員組合、船長さんのそうした会ということで、参考人の方にも御出席いただきましたが、ただ、あのときでも、実際の通航料とか、あるいは喜望峰回りとの額の負担の件とか、なかなかそうした数字的なものがまだまだ十分、特にこれは国交省さんの管轄だと思うんですが、やはりそうした点をきちっと出していただくというのが冷静な議論に付せるという条件だというふうに思います。

 そういった意味で日本にとって死活的な意味合いを持つこの原油の輸入ということでは、マラッカ・シンガポール海峡の持つ意味、これは大変大きいということだというふうに思いますので、私は、民主党がテロ根絶法二十八条でも提案してまいりましたが、海上警察の国際連携を図っていく中で、ある面、その役割分担というものがあるのではないのかな。例えば、マラッカ・シンガポール海峡などは日本を中心としてと。

 今のお話ですと、多分、ヨーロッパの石油の輸入ということでいうと、かなりの分がこのアデン湾を通過している可能性がありますので、それだけEUがアタランタ作戦などに熱心なのも、そういったところにあるのかなと。そういった国際的な役割分担というものもあっていいのではないのかということでございます。

 そこで、前回も質問をさせていただきましたが、新テロ特措法、給油支援法で派遣をされた補給艦が、今回、海上警備行動で派遣をされた護衛艦に給油をした、これについて防衛大臣にその根拠法を聞きますと、まずは、今回、海上警備行動でそのことを命令したんだ、給油新法で派遣をされた給油艦に、海上警備行動で発令をされた護衛艦に給油するように、こういうことでありました。

 ただ、きょうお手元の方の資料に、海上警備行動でいただいた、まずは七ページ、準備命令ですね。防衛省、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のための準備に関する命令あるいは準備に関する防衛大臣指示、それぞれことしの一月二十八日、そしてそれらを受けて、三月十三日の安全保障会議決定、閣議決定の、「海上における警備行動に係る内閣総理大臣の承認について」といういわゆる海上警備行動の中身、そして別紙と一緒に九ページにつけておりますが、これらにはどこにも、給油支援法で派遣をされた給油艦に、今回の海上警備行動で派遣をされた護衛艦に給油するべし、こういったことが盛り込まれていないんですが、これは一体どういうことなのか、どういう形でその命令は下されたのかもあわせてお答えをいただけますでしょうか、防衛大臣。

○浜田国務大臣 基本的に今回の海上警備行動の命令というのは、やはり海上自衛隊に対してこの命令を出したわけでございまして、その意味では、海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給支援を行うことについては、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことでございまして、海上警備行動によって派遣される護衛艦が給油等を必要としている際に、近傍の海域で補給支援活動を行う補給艦が補給支援活動に支障を生じない範囲で当該護衛艦に給油等を行うことは問題がないと考えているところでございます。

武正委員 私は、海上警備行動で今回命令を下したというふうに聞いておりますので、いただいた資料には記載がないわけなので、具体的にどのように指示をしたのかをお聞かせいただきたいと思います。

○浜田国務大臣 これは、私の方から命令、海上警備行動、十三日の日に出させていただいたものに関して、「その他」のところで、「補給支援活動の実施に関する自衛隊行動命令に基づき活動する部隊は、必要に応じ、同命令によって命ぜられた活動に支障のない範囲において、(一)により編成された部隊に対し、燃料等の提供を行うものとする。」という形で、「海上における警備行動に関する自衛隊行動命令の発令について」という中で出させていただいたところでございます。

武正委員 訓令というふうに聞いているんですけれども、ただ、私たちはそういった訓令を見ることができないということなんですが、それは、今言われたとおりであれば、ぜひ国会に、当委員会に御提出をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○浜田国務大臣 済みません、訓令ではなく私の命令でございますので、今申し上げたのは訓令ではなくて命令でございますから、これは確認して出させていただきます。

武正委員 あわせて訓令というものも出されているんでしょうか。

○浜田国務大臣 済みません、私の命令の方は出せますが、訓令の方はちょっと出せないということでございますので、よろしくお願いします。

武正委員 委員会の方に御提出をいただけるということであります。

 あわせて、既にインド洋に派遣をされている補給艦についての実施計画、これが二、三、四ページにありますが、これはもう既に国会の方に提出をされているわけであります。この「補給支援活動を実施する区域の指定に関する事項」、二ページから三ページにありますが、ここでは、いわゆる非戦闘地域なんだということを、既にインド洋に派遣している補給艦にはその活動海域を指定しておりますが、今回、海上警備行動で補給艦に、近くに行くんだから自衛隊の護衛艦に補給しなさいということを今命令を下した、その命令の文書は出せるというお話でしたけれども、既に国会に出されている実施計画、ここには非戦闘地域ですよというふうに書いてあるんですけれども、それとの検証、本当に非戦闘地域なのかどうかということは、今回の海上警備行動の発令では考慮をされたんでしょうか。

○浜田国務大臣 今回の場合は海上警備行動に関してのみの命令を出しておりますので、補給の面に関しては、要するに、非戦闘地域という部分はこれに載っていないというのは、なので載っていないということだと思います。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

武正委員 資料二ページから三ページをごらんいただきたいんですけれども、これはいわゆる給油支援法の実施計画でありまして、日時は平成二十年一月十六日から平成二十一年、ことしの七月十五日までの間ということでの実施計画でありますが、二ページ一番最後の行、「当該活動が、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるよう、また、当該活動の安全が確保されるよう、諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。」ということでありますが、これは自衛隊の艦船同士であるから、この非戦闘地域ということについては考慮しないということなんでしょうか。

○浜田国務大臣 そのとおりでございます。

 この件に関しては他国のことを書いておると思いますが、今回は自分の国同士で、自衛艦同士なので、それは入っていないということです。

武正委員 他国であると非戦闘地域であるかどうかを非常に考慮し、実施計画でもしっかり書いているけれども、自国の艦船同士であれば非戦闘地域であるかどうかは考慮しないというのは、非常に問題ではないでしょうか。

○浜田国務大臣 しかしながら、我々とすれば、今先生の御指摘のあった点というのを常に考慮に入れつつ我々自衛官は活動しているわけでありますので、そして我々の活動というのが警護任務に特化しているわけでありますので、戦闘地域にいるということは想定していないというのもあります。そういった意味においては、自国艦同士の中での確認作業ということになろうかと思いますので、その点は実施計画の中に入っていないということだと思っております。

武正委員 やはりこれも非常に無理がある一つだというふうに思うんですね。

 というのは、国会でこれまで、我々、最初のテロ特措法のときには、この国会の事前承認に非常にこだわってきたわけでありますが、それが政府は守られず、テロ特措法を可決された経緯もあり、そうした中で、新テロ特措法、給油支援法ということで、前よりも国会のかかわりはさらに緩くなってしまっておりますことは、六ページをごらんいただくとおわかりいただけると思います。

 旧テロ特措法では事後承認を求めたわけですが、新テロ特措法ではそうした承認規定もなくなっているということで、今回の海賊対処法案は、この新テロ特措法とかなり国会とのかかわりが似ているわけであります。ただ、対処要項を報告ということは、変更時のものも今回は抜けているという整理になっておりますが。

 こういった中で、改めてもう一度聞きますが、この給油支援法で、新テロ特措法で派遣された補給艦について、海上警備行動で、防衛大臣の命令、しかもこうした国会に今まで文書も出されていない中で補給をしなさいと。しかし、これまでは、その補給艦の活動というものは、この実施計画に限定された活動ということで、戦闘地域ではやってはいけませんよということをしっかり書いて、インド洋に出しているわけです。それを、今度、海上警備行動の命令だけで、この意味では自衛艦同士だったら戦闘地域か非戦闘地域かは考慮しないでいいんだと、いや、先ほどそういうふうに言われたんだと思いますよ、ということは、私はやはり無理があると思うんですよね。

 自衛隊という実力組織を海外に出す以上、これまで国会は、非常に慎重にその派遣についてシビリアンコントロールをきかせてきたわけです。ここで、海賊対策、警察活動ということで、海上警備行動で派遣をしている。それも、ソマリア沖・アデン湾ということでの公海上、旗国主義、国連海洋法条約にのっとった警察活動、かなり無理がある一万二千キロ。その上、これまで国会が大事にしてきたシビリアンコントロールで派遣をされた自衛艦船の補給艦が、その海上警備行動の護衛艦に補給ができる、しかも、戦闘行為、非戦闘行為については考慮せずと。

 いかがですか、もう一度お答えをいただきたいと思います。

○浜田国務大臣 基本的に、あれだけの議論をした中で、我々は、防衛省・自衛隊の船が戦闘地域に行くということも考えておりませんし、そもそも、非戦闘地域で活動するというのが、これは我々とすれば当たり前の話でありますので、その中で、我々の命令、その枠の中で活動しているつもりでありますし、また、先生のおっしゃるように、自衛艦同士の補給というのは、基本的には、我々とすれば、当然、一つの命令のもとに自国の船同士が助け合ってやるというのは、これはもう当然のことだと思っております。

 別にそこで、今先生が御懸念のような、戦闘地域に行って何かをするとか、そういったことは全く想定をしていない中で、やはり自分たちの任務が、護衛という任務があって、その中でやっているわけでありますので、先生が今そういうふうに御指摘されるということに対しては、我々としては、そうではないというふうに今この場でお話をさせていただきたいと思っているところであります。

 通常一般、自国同士の船に関しては、どこの国でも同じような形をとっているものと考えますので、その点だけは御理解いただければと思います。

武正委員 質問を先に行きます。

 P3Cの派遣についてもちょっと聞きたかったんですけれども、ちょっと時間も押してまいりましたので、今言われたように、戦闘地域ではないというエリアなんだ、ただ、海賊が発生している、それに対して、国連海洋法条約で認められている警察活動であるということなんですけれども、海賊が場合によってはテロリストになるんじゃないのかというような指摘がありますよね。きょうもありました。いわゆる国及び国に準ずる組織になる可能性、あるいはそういった組織である可能性、こういったものは否定できるんでしょうか、今回の海上警備行動での発令。これは海洋担当大臣に聞きたいというふうに思います。

○加納副大臣 海洋政策担当副大臣の加納として回答させていただきます。

 御質問のことでございますけれども、ソマリア沖・アデン湾で頻発している行為が、テロリストということでしょうか、国とか国に準ずる組織であることがあるかどうかという、そこら辺がこの質問の一番ポイントだと思っております。

 実は、このソマリアの海賊の背景でございますけれども、これはやはり、御存じのとおり、経済状況が非常に悪化している中で、地元の漁民等により、いわば生活の糧として、金銭、主として身の代金を目当てに行っているものが多いようでございます。それからまた、小型船を使用して襲撃するといったようなことから見ますと、これは何かテロリスト国家とかその手先とかそういうテロリスト集団というよりも、これは私的目的による私人の犯罪行為である、したがって、私どもも、これを警察行為として対処しようということにしたところでございます。

 そこで、行動の態様そして周辺の状況から見て必ずしもテロリストとは思いませんけれども、たとえ万一、仮にテロリストのようなものであったとしても、私どもは、その人間がどんな人間かじゃなくて行為に、海賊行為に当たるかどうかで対処いたしておりますので、海賊行為に当たるということであれば、相手がだれであれ、対応をしたいと思っております。

武正委員 今のはちょっと無理があるんじゃないですか。だって、海賊行為をテロリストがしている場合は海賊行為だから海賊なんだというのは余りにもちょっと無理があると思うんですね。

 海洋担当大臣、どうですか。これまでの質疑で、ロケットランチャー、ロケットランチャーと随分出てきましたよ。この間、ちょっとスリランカの方にお話を伺ったら、今、タミールのトラですか、スリランカでももう掃討寸前まで行っているそうなんですが、このタミールのトラのテロリストの特徴というのは、小型の船を駆使してロケットランチャーを持って自由に移動する、これが一つ特徴なんだ、場合によっては、インドネシアの千の島のどこかに潜んでいて、要はスリランカとマラッカ・シンガポール海峡を自由に行き来すると。こういったことを聞くと、何かソマリア沖の海賊とある面符合するようなところも出てくるわけなんです。

 そういったところはどうなんでしょうか、海賊というものは、今の副大臣の説明はちょっと私は合点がいかないんですが、テロリストといっても海賊行為をしていればそれはこの法律ではあくまで海賊なんだということなんでしょうか。大臣、いかがですか。

○金子国務大臣 武正委員、特にソマリア沖でありますけれども、この海域で頻発している船舶の強取、これは明らかに私人による私的目的による犯罪行為でありますので、やはりこれは海賊行為に当たるということであります。

武正委員 冒頭、指摘をしましたが、この法律に累次の国連決議を入れなかった理由というのは、やはり累次の国連決議でいわゆる国連憲章七章下の行動ということが書かれている、こういったことがあるからこの法律には累次の国連決議を入れなかったということでしょうか。海洋担当大臣、法律の担当大臣として。

○金子国務大臣 この海賊法制は、昨年来出ております個々の国連安保理決議に基づくものではありませんで、国連海洋法条約にのっとりまして、国連決議を踏まえてこの法案をつくったところであります。

武正委員 国連海洋法条約と、国連とちゃんと書いてあるんですよね。ですから、例のSUA条約でしたか、あれとはまた違うわけですよ。国連でみんなで合意をしてこの条約を決めて、そして署名をして締約をしていく。その条約にのっとってということが、これまでのテロ特、イラク特、みんな前文に累次のこういう国連決議ということを掲げてきたのに、今回なぜそれを入れないのかというのは、あくまで警察活動であるということで自衛隊を派遣する、こういったところの論拠になっているとすれば、私はやはりかなり無理があるなというふうに思っておりまして、過去、自衛隊を海外に派遣する唯一の恒久法であるPKO法、やはりこれに準じた国内法制の仕組みが必要ではないかなというふうに思います。

 そこで、PKO法との比較ということで、お手元に、五ページをごらんをいただきたいと思うんですが、これが、国際平和協力業務の仕組みということで、国連の決議あり、国連の要請ありということで、内閣総理大臣が国際平和協力本部長として閣議決定を経て国会へ報告、PKFについてはもう既に本体業務については凍結解除されておりますので、ここでやはり国会の事前承認が必要であるということで、自衛隊を国際平和協力隊の設置などを通じて派遣していく。こういったきっちりとした枠組みを、国会は、自衛隊を海外に派遣する唯一の恒久法であるPKO法でつくったわけであります。

 今回、午前中も同僚議員から意見があったように、自衛隊を海外に派遣する恒久法であります。警察活動であるということで国連海洋法条約が根拠であると。どのように言われても、自衛隊を海外にずっと派遣し続けられる法律であります。

 私どもは、例えば海上保安庁の能力の向上などを求めているところもありますので、やはりそうした推移を見守る必要もあるということで、見直し規定ということも提案をしているわけでありまして、PKO法に次ぐ第二の恒久法である本法については、例えば国際平和協力本部に準じたようなそうした本部をつくり、そしてその本部の隊員として、あるいは本部の隊の中に自衛隊が自衛隊として派遣をされる、これまでのPKO法と同じような枠組みがあっていいというふうに思うんですが、まずは防衛大臣、この点についてはいかがでしょうか。

○浜田国務大臣 今回の法律は、先ほど整理されましたように、海賊に特化して警察権ということでございますので、海上保安庁法に基づいての活動になっているわけでございますので、我々とすると、今回の法律に関しては、先生のおっしゃる部分というのは御懸念に当たらないということだと思います。

 ただ、一般論からいえば、先生のおっしゃられるようないろいろな自衛隊に対する思い、そして、いろいろな形での御意見もあることも十二分に承知をしております。そういった議論、我々とすれば、これに耳をしっかりと向けながら、今いろいろなお話し合いがされているというふうにも聞いておりますので、その推移を見守りたいと思いますけれども、今回の法律に関してはそういう方向で進めさせていただいたということだというふうに聞いておるところでございます。

武正委員 海洋担当大臣にはまたPKO法との比較についてお聞きをしたいんですけれども、先に外務大臣の方に次の質問をまず聞いてからというふうに思っております。

 自衛隊法の在外邦人の輸送ということで、自衛隊法八十四条の三では、「防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。」

 これが、在外邦人の輸送ということで、ある面、外務大臣からの要請という形が入っている法律の条文だと思うんですね。今回、あくまで第一義は海上保安庁という本法でありますので、私たちは、やはり海上保安庁あるいは国土交通大臣がより積極的に今回のこの法律では主体的な役割を果たしていくべきだというふうに思っているんですけれども、一つ、その参考になる条文ではないかなというふうに思っております。

 あわせて、PKO法第六条がありまして、第六条の三項にはこういう規定があります。「外務大臣は、国際平和協力業務を実施することが適当であると認めるときは、内閣総理大臣に対し、第一項の閣議の決定を求めるよう要請することができる。」

 この第六条の第一項というのは、閣議決定ですよね。PKO部隊を派遣するための閣議決定を外務大臣が要請するというような形で、PKO本部の設置、そして本部の部隊員としての自衛隊の派遣について、そしてある面、内閣の中での相互牽制というか、そういった作用を加えているわけでありまして、私は、今回、第二番目の恒久法ともいうべき本法では、これもやはりあっていいんじゃないかなというふうに思うんですが、これはどうでしょうか、海洋担当大臣。(金子国務大臣「外務大臣に聞きたいんじゃないの」と呼ぶ)そうですね。

 外務大臣、これはそれぞれありますから、外務大臣として、こういった条文も参考に、この法律について、やはり内閣の中での相互牽制というか、これがあってもいいんじゃないかと思うんです。具体的には、海上保安庁あるいは国土交通大臣というものの要請といったものが必要ではないかと思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

○金子国務大臣 幾つかございました。

 PKO法に準じて本部をつくったらどうかというお話がありました。

 このPKOにつきましては、国際平和協力業務が、自衛隊だけでなくて広く関係行政庁が協力して、政府が一丸となって取り組むためにもこういう国際平和協力本部というものが設けられておるものでありまして、今回は、そういう意味では、自衛隊が実施する海賊対処行動、これは警察行動でありますので、本部というのをつくらず、海上警備行動と同様の枠組みとしたものであります。

 それから、要請ということについてお話がありました。この点については、まさに今、与野党協議をなさっている渦中であると思います。

 ただ、PKOとの比較でいえば、本法案は、公海等におきまして、国際法上認められた管轄権を行使して海賊行為という犯罪行為を処罰する、あるいは同行為への対処に必要な権限を規定するものでありまして、自衛隊による対処は、海上警備行動同様、警察活動。ただ、他方で、PKO法は、武力紛争の停止を受けまして、国際法上認められた管轄権の行使とは整理されない新たな業務を創設し、自衛隊員や海上保安庁以外の者も平和協力隊員として活動することなどを定めたものでありますので、そこは本法案とは性格を異にするものであると思っております。

○中曽根国務大臣 先ほど、委員が自衛隊法八十四条の三を御紹介いただきました。

 委員が御紹介されたとおりなんですが、外国における災害とかあるいは騒乱、そういう緊急事態における生命等の保護を要する邦人の自衛隊機等による輸送についてこれは規定をしているものでございますが、その中で、外務大臣は、当該輸送機について、防衛大臣に依頼をして、そしてまた、当該輸送の安全について同大臣と協議をすることになっているところでございます。

 PKOについては、今、海洋担当大臣からも説明がありました。

 一方、この法案におきましては、防衛大臣は、特別の必要がある場合に、内閣総理大臣の承認を得て自衛隊に海賊対処行動を命ずることができる、そういうふうにしているわけでございまして、この承認を受けようとするときは、原則として、対処要項を定めて内閣総理大臣に提出することとなっております。

 この対処要項につきましては関係行政機関の長と協議して作成されるということになっておりまして、その事案に応じまして外務大臣は関係行政機関の長に当たり得る、そういうふうに考えています。

武正委員 国会承認についてもやりたかったんですけれども、最後に一言だけ。

 海外の海賊対処ということでの派遣については、今回も一月二十八日の準備命令から三月十三日の海上警備行動発令ということで、これについては一定の時間の余裕があるということで、国会の関与、事前承認、これがやはり必要であることを申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。