2009/05/27
【衆院外務委 議事録】 「3.5島返還論」について問う

武正委員 民主党の武正でございます。

 きょうは、三条約ということで質疑に立たせていただきたいと思います。

 また、谷内政府代表におかれましては、お忙しいところ、御出席ありがとうございます。

 それでは、政務官がおいででございますので、この日本・スイス経済連携協定をまず伺いたいと思います。

 お手元の資料で、EUの緊急措置の内容、一ページ目、二ページ目ございますけれども、このたび、スイスの方に盆栽等、これを輸出した場合の関税撤廃、これもEPAの中で盛り込まれているということであります。ただしかし、ゴマダラカミキリ、これがヨーロッパで見つかったということで、お手元のような、特に二枚目に書かれておりますような栽培施設の条件というものが付されているわけであります。

 スイスもEUに準じるということでありますけれども、具体的に今、農水省として、EU担当者と栽培施設の条件について何か協議を進めているのかどうか。例えば、これは二年間、二十四時間こうした施設にそうした盆栽等を入れておかないといけないということでありますが、これの緩和等を協議の中で進めていらっしゃるのかどうか、確認をしたいと思います。

○江藤大臣政務官 それでは、お答えさせていただきます。

 非常に御指摘のとおりの問題でございまして、せっかくEPAを結びましても、こういうことであっては減ってしまうことは容易に予想されるわけでありますが、ただ、今回、この対象となりますのが全体の輸出量の一一%という、少ないと言うと言い過ぎかもしれませんが、大きな影響ではないであろうというふうに思っております。

 そして、従前の国内的な対策につきましては、もう多分レクでお聞きになっていらっしゃると思いますので、御説明は申し上げません。もうやりませんが、その後、確かにこのカミキリムシが入ってまいりまして、先生がつくられたこのようなあらゆる対策をやりなさいということになっております。

 まず、一番目に申さなければならないのは、無発生地域において栽培されたものに限るというような条件も付されておるようであります。無発生地域を日本国じゅうにつくるのは無理ですので、これは無理だということを農水省としてはもうはっきり申し上げまして、EU各国もスイスも大体大筋で御了解をいただいているというふうに認識をいたしております。

 その他の条件としまして、国内園地管理、登録、これは今までどおりやってきたことですし、年二回の無発生地域確認、これも今までどおりやってきたことであります。四番の綿密な検査、これもやってまいった従前どおりの対策でありますから、今までのことを続ければいいわけでありますが、先生のペーパーの三番目にあります、アノプロフォーラキネシスですか、これが侵入する可能性のない温室、網室をやりなさいということにつきましては、農家にとってはさらなる設備投資が当然伴うことでありますので、やはり農水省としても非常に困るということは申し上げてまいりました。

 もともとこれが見つかりましたのは、平成十九年の大体三月ぐらいから十一月ぐらいに出荷されたものの中にどうも幼虫がまじっていたらしくて、それが発見されて、十一月になりまして、二十年に対策が発表されたわけでありますけれども、その間も、農水省としましては、こういう厳しい対策はやり過ぎではないかという申し入れもしております。

 それから、やはり技術的な検証が必要でありますので、技術的な検証につきましては、両国間で十分に共同してやりましょうという申し入れもいたしました。これもなかなか受け入れていただけませんので、それでは措置の発動の時期を後ろにずらしてほしいという申し入れを二十年の十月に行いましたが、残念ながらこれも断られてしまいまして、今申し上げましたように、十一月七日に発動してしまったわけでございます。

 さらに申し上げておきますけれども、それであきらめたわけではございませんで、ことしの三月にはブリュッセルに担当官を派遣いたしました。この担当官は、EUの植物検疫の担当者でございます。その人間と農水省の人間が、二年間というものを何とか一年に短縮できないかということで随分話をしましたが、担当者、会った人間とも話しましたけれども、どうもいい感触は得られなかったようでございます。いい報告ができなくて非常に申しわけないと思っております。

 先生の御地元は非常に盆栽等が盛んというふうに聞いております。我々自民党としても、農産物を一兆円輸出したいということを目標に頑張っておるわけでありますから、農家に対する負担増というものはいいことではないと思っております。ですから、網を張らなければならないとか温室をつくらなければならない、これにつきましての設備投資につきましては、御存じの、強い農業づくり交付金、これが対象になりますので、ぜひ先生、御地元の方々と御相談をいただいて御対応いただければ、農林水産省としても対応させていただきたい、そう考えております。

武正委員 話を聞きましたら、例えば、冬の間はそうした温室に置かなくてもいいのではないのか等、そういう交渉もやっておられるということも聞きましたので、ぜひこれについては、また外務省におかれましても、EPAがさらなる輸出振興につながるような対応をお願いしたい。これは要望にとどめておきたいと思います。

 それでは、政務官、ありがとうございました。

 きょうは条約の審議ということで、まず冒頭、一問だけ聞かせていただいたわけですが、政府代表に急遽出席をいただいたこと、感謝を申し上げます。この間、当委員会でも二回、谷内政府代表の三・五島発言を取り上げさせていただき、御出席をお願いしてまいった経緯がありまして、急遽きょう御出席をいただけるということで感謝を申し上げます。

 そこで、お手元の方に資料を配らせていただいております。三ページ目が、既に何度も引用されております、毎日新聞の谷内政府代表のインタビュー記事。特にこの中では、一番下の段、左から十一行目、「私は三・五島でもいいのではないかと考えている。」この発言が誤解を与えた、これは直接言っておられないと参議院の予算委員会でも明言をされております。

 加えて、四ページ目、ファクタの記事。この左側のページの一番上の段、左から五行目以下、「シベリア・パイプラインから百万バレルが極東に供給され、」云々かんぬん、「三・五島の返還でもいいということになるかもしれない」、これについても、参議院の予算委員会で同僚の民主党の委員から質問がありまして、それに対しては、大きな戦略的構図を描いているんだ、これについて直接このとおり言ったかどうかは定かではないというふうに言われているんですが、やはりこの一連の記事を見ておりますと、大きな戦略的構図を、エネルギーとかいろいろな要素を加味しながらも、でも、やはり領土交渉ですから、この三・五島というようなことも返還の選択肢であるというようなことが何となく一連のやりとり、報道からもうかがえるんです。

 改めて、この毎日新聞、ファクタの記事、そして参議院の予算委員会を踏まえて、政府代表から御答弁をお願いしたいと思います。

○谷内政府参考人 今回は、衆議院の委員会で初めての説明になりますので、ちょっと基本的なところも言わせていただきたいと思います。

 私は、もちろん、特別職の公務員でございますから、政府の基本方針、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これは当然の前提として考えておる、これがまず大前提でございます。

 他方、北方領土の問題につきましては、これまで諸先輩が物すごいエネルギーをかけて議論をしてこられまして、その問題そのものについては、ほぼ論点をこれまでもう尽くしているというふうに私は思っておるわけでございます。これをさらに続けて、議論はすべきですけれども、それでもって物事の展開が図られるかというと、私は個人的にはそこは疑問がある、こういうふうに思っておるわけでございます。

 私の考え方をあえて申し上げさせていただければ、これは今先生が既に御指摘いただきましたけれども、エネルギー、例えばパイプラインとか、原子力協力とか、あるいはまた環境、これは生態系の問題等々ございます。気候変動の問題もございます。それからまた極東、シベリア開発の問題、これまたたくさんあるわけでございます。さらに、政治的に言えば、アジア太平洋地域へのロシアの統合等々の問題もございまして、こういった問題を大きな構図で考えていく。そして、両国がそこに戦略的利益を見出すということが、議論の過程でそういった構図が浮かび上がってくれば、その中において、領土問題をどうやって解決すればいいのかということに双方が知恵を出して考える。基本的にそういうアプローチをとったらいいのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。

 他方におきまして、今先生から御指摘がありました、問題になっている報道の「私は三・五島でもいいのではないかと考えている。」これは、はっきり言えば、こういった大きな戦略的な構図を描いて、北方領土について知恵を絞って、それでその出口のところをどうするかという話でございますから、この出口のことを初めから言っちゃってこれだと言うのは、一部の方から批判をいただいていますように、決して賢明なやり方ではないので、そこのところは私たちが言っておりますように知恵を絞るべきだ、こういうふうに申し上げておるわけであります。

 それから、先生の方から多分質問が続いて出るでありましょうから、あえて先に言いますけれども、では、三・五島という言葉は使っていないのかとおっしゃられれば、いろいろな、四島とか二島とかゼロ島とかいう流れの中で三・五ということも言っています。ただ、出口としていわゆる三・五島論を言ったのかと言われれば、それは言っておりません、こういうことでございます。

 いずれにしても、私は、このインタビューに応じて、全体の流れの中で誤解を与えるようなことがあったかもしれず、また、関係者にも御迷惑をおかけしたという事実はございますので、そこは反省もし、深く遺憾としている、こういうことでございます。

武正委員 お手元の資料の五ページ、ちょうどこうした外務省のOBの方々が名前を連ねる、その中でもやはり三つの指摘があって、一つが国会の決議、二つ目が交渉のやり方、それから今の情勢判断というようなことで指摘をしているわけですが、この三点については政府代表としてはどのようにお考えになられますか。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

○谷内政府参考人 ここの緊急アピールに書いてございますように、「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」というところは、私もそういうふうに思っております。ただ、個々の論点につきましては、私なりに意見が違う部分もございます。

 ただ、これは今この場でまた申し上げて、新たな論点を今こういった形で提起するというのは余り適当だとは思いませんので、申しわけございませんけれども、私の個人的な意見というのは控えさせていただきます。

武正委員 この間の日ロ交渉を見てまいりますと、お手元の資料六ページ、七ページ、八ページということで、小泉内閣以来の日ロ間の諸文書を見てまいりますと、最初のいわゆる国際約束で見ますと、二十八のうち十七がいわゆる経済関連、そして、次の日ロ間の国際約束で見ますと、六つのうちの四つ、合計三十四のうち二十一がいわゆる経済。これに今谷内さんが言われた生物等も含めてまいりますともっと多くなっていくということでありまして、どこで日ロ間の交渉が転換点があったのかなというふうにかんがみますと、やはり二〇〇一年三月二十五日のイルクーツク声明、ここで初めて、その間余り触れられていなかった、もちろん触れられていましたけれども、五六年宣言が基本的法的文書であるということが位置づけられた、ここが一つ転換点なのかなというふうに考えるわけです。

 私は、やはりその前から進めてきた、エリツィン大統領との東京宣言を原点とする、橋本元総理も画期的な文書であるということで、二〇〇〇年末までの平和条約の締結、こういったことで来たことが、当然、相手がプーチン大統領になったという変化はあっても、ソ連からロシア、そして文書を、いろいろな諸合意を引き継いでいく、こういった中でやはり日ロ間の交渉の対応を変えたというのがそもそもその三・五島の話にも行き着くような問題があったのではないかというふうに考えるんですが、その点はいかがでしょうか。

○谷内政府参考人 歴史的なことを振り返って、今先生がおっしゃられたような事実があるのかどうか、この点については、正直に申し上げまして、そのような政策転換をやって今日のいわゆる三・五とかというこの手の議論につながっているんだというふうには私は認識しておりません。

 他方、先生がおっしゃいますように、一九九三年の日ロ関係に関する東京宣言、これは極めて重要な内容を含んでおりますし、これはまた我々としては当然維持していかなくてはいけない基本的なラインだというふうに思っています。その上にいろいろな、今先生御指摘の諸文書、これもでき上がっておるんだ、こういうふうに理解しております。

武正委員 今言ったように、イルクーツク声明で五六年宣言が基本的文書であることを確認というふうにうたってあるわけで、それまで東京宣言、これをまずベースとしてやってきたわけですね。ですから、私は、ここがやはり転換になって、なおかつ、先ほど触れたようなこうした諸文書を見る限り、どうしても領土よりも経済といったことが優先してきたのではないかなというふうに思うんです。

 そこでお伺いしますが、九ページ、十ページ目の東京宣言、これをよく政府が引用して、四島の帰属を確認して平和条約の締結というふうに言われるわけですけれども、この二項目めを見る限り、「両国の間で合意の上作成された諸文書」、そしてその前に「歴史的・法的事実に立脚し、」と。そして「両国の間で合意の上作成された諸文書」、そして「法と正義の原則」、この三つがやはり前提となって交渉をしていくということからすれば、そもそも、日本の固有の領土として一八五五年に、言うまでもない得撫島、そして択捉島の間に国境が画定をしたというのがまず原点でありますので、この「歴史的・法的事実」といった、やはりこの東京宣言にまず立場を立脚して行うというのが日本の立場あるいは日ロ交渉の基本ではないかと考えますが、政府代表の御所見を伺いたいと思います。

○谷内政府参考人 私個人の意見ということでお聞きなさっているという前提で申し上げますと、私としましては、先生のおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 ただ、私は、政府代表という肩書ではありますけれども、何といいますか、いわゆる現職ではございませんので、ここはもし差し支えなければ外務大臣の方からお答えいただくべき筋合いの御質問ではないか、こういうふうに思います。

武正委員 改めて、政府代表が、今官邸に部屋もあり、そして総理のもとでさまざまな外交交渉に当たっているというお立場できょうはお話を伺わせていただいたということでございます。

 時間となりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。