医療法の一部を改正する法律案

2001年06月25日

第一五一回

衆第五五号
医療法の一部を改正する法律案

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。
目次中「第五章の二 雑則(第七十一条の二―第七十一条の六)」を「 第五章の二 医療事故防止センター(第七十一条の二―第七十一条の十一)第五章の三 雑則(第七十一条の十二―第七十一条の十六) 」に改める。

第十五条の二の次に次の一条を加える。
第十五条の三 病院の管理者は、当該病院における医療事故(医療の実施の過程において、 医療を受ける者を誤認すること、医薬品等を誤用することその他の診察、治療又は看護上の誤りにより、 医療を受ける者の生命又は身体に被害が生じることをいう。以下同じ。)の発生を防止するための措置に 関する方針(以下「医療事故防止方針」という。)を作成し、病院所在地の都道府県知事に届け出なけ ればならない。
当該医療事故防止方針を変更したときも、同様とする。

2 医療事故防止方針には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 当該病院における医療事故の防止対策について調査審議する委員会等の組織及び運営に関する事項当該病院における医療事故の防止対策について調査審議する委員会等の組織及び運営に関する事項
二 当該病院の診療部門、薬剤部門、看護部門その他の部門ごとに医療事故の防止等に関する事項を管理する者の選任に関する事項
三 当該病院における医療事故及び医療事故の兆候 (医療事故又は診察、治療若しくは看護上の誤りが発生するおそれがあると認められる事態をいう。以下同じ。)の迅速かつ適確な把握及び報告に関する事項
四 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の職員に対する医療事故の防止のための教育及び研修に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、当該病院の実情に応じ医療事故の防止のために必要と認められる事項

3 厚生労働大臣は、医療事故防止方針の作成に関して指針となるべき事項を定め、公表するものとする。

4 都道府県知事は、第一項の規定による届出に係る医療事故防止方針が著しく不適当であると認めるときは 、当該届出をした病院の管理者に対してその変更を勧告することができる。
第二十五条第一項中「若しくは診療録、助産録」を「、診療録若しくは助産録」に改め 「物件」の下に「若しくは医療事故防止方針の作成及び実施の状況」を加える。
第五章の二中第七十一条の六を第七十一条の十六とし、第七十一条の二から第七十一条の五までを十条ずつ繰り下げる。
第五章の二を第五章の三とし、第五章の次に次の一章を加える。

第五章の二 医療事故防止センター

第七十一条の二 厚生労働大臣は、民法第三十四条の法人であつて、 次条に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、 その申出により、全国に一を限つて、医療事故防止センター(以下「防止センター」という。)として指定することができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による指定をしたときは、防止センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。

3 防止センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。

4 厚生労働大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。
第七十一条の三 防止センターは、次に掲げる事業を行うものとする。
一 医療事故の実例に即して、その原因等に関する科学的な研究に資するための調査を行うこと。
二 前号の調査に係る情報又は資料その他の個別の医療事故に係る情報又は資料を分析すること。
三 医療事故一般及び医療事故の兆候一般に関する情報又は資料を収集し、及び分析し、その他医療事故及び医療事故の兆候に関する科学的な調査研究を行うこと。
四 第二号の分析の結果又は前号の分析の結果若しくは調査研究の成果を、定期的に又は時宜に応じて提供すること。
五 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の者に対して医療事故の防止のための研修を行うこと。
六 医療事故の防止体制について、病院からの申出によりその評価を行い、及び必要な相談に応じること。
七 前各号に掲げる事業に附帯する事業を行うこと。

第七十一条の四 防止センターは、その事業を行う場合において必要があると認めるときは、 病院の管理者に対し、医療事故及び医療事故の兆候に関する情報の提供を求めることができる。

第七十一条の五 防止センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、 第七十一条の三第一号から第三号までに掲げる事業に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

第七十一条の六 厚生労働大臣は、防止センターの役員又は職員が前条の規定に違反したときは、 防止センターに対し、当該役員又は職員を解任すべきことを命ずることができる。

第七十一条の七 厚生労働大臣は、防止センターの事業の運営に関し必要があると認めるときは、 防止センターに対し、その事業に関し必要な報告をさせ、又は当該職員に、その事務所に立ち入り 、事業の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 第二十五条第五項及び第六項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

第七十一条の八 厚生労働大臣は、この章の規定を施行するため必要な限度において、防止センターに対し、その事業に関し監督上必要な命令をすることができる。

第七十一条の九 厚生労働大臣は、防止センターが第七十一条の六又は前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

第七十一条の十 厚生労働大臣及び都道府県知事は、防止センターに対し、 厚生労働省令で定めるところにより、その事業の円滑な運営が図られるように必要な配慮を加えるものとする。

第七十一条の十一 第七十一条の二から前条までに規定するもののほか、防止センターに関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

第七十二条の次に次の一条を加える。
第七十二条の二 第七十一条の五の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第七十四条に次の二号を加える。
 四 第十五条の三第一項の規定に違反して医療事故防止方針を作成せず、又は届け出なかつた者
 五 第七十一条の七第一項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による当該職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

附 則
この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ただし、目次の改正規定、第七十一条の六を第七十一条の十六とし 第七十一条の二から第七十一条の五までを十条ずつ繰り下げる改正規定、第五章の二を第五章の三とし 、第五章の次に一章を加える改正規定、第七十二条の次に一条を加える改正規定及び第七十四条に二号を加える改正規定 (同条第五号に係る部分に限る。)は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。