県議会レポート21号

 

平成12年4月1日介護保険制度はスタートします。
これまでの老人福祉では、「措置(そち)」という言葉が使われていました。市役所に行き、特別養護老人ホームに入所したい旨の申請を行うと、「こちらがあいてますけどどうでしょう」といわれるまで順番待ち。2年待たなければ順番はこないとも言われています。しかも施設を選べませんでした。国民が利用者として、ユーザーとして施設を選べる仕組が必要です。そこに競争原理が生れ、良いサービスが生れます。

日本だけといわれる病院や施設での寝たきり老人。なぜ寝たきりになるのでしょうか。人手も足りずやむを得ず、ベッドに縛り付けたり、お年寄は寝ているのが楽だろうという誤解から生れた「寝かせきり」なのだと。そして、高齢者医療費が膨れていく。9兆2000億円。一方、老人福祉費は1兆1000億円。どちらも1996年度の統計です。これは、医療としてでなく福祉としないと医療保険制度がパンクすると。そして、自立を助ける仕組が必要であります。

施設に入れるのは世間の目がうるさいからと、家で家族が世話をする。それは嫁や「老老介護(お年寄がお年寄をみる)」など、負担が一人に集中しがちで、そこに「介護疲れ」や「介護地獄」という言葉が生れました。介護の専門家や、介護支援施設を気軽に利用できるようにする必要があります。また、150万人の痴呆症のお年寄が日本にいると推定されます。

痴呆とは脳に障害が生じて、物忘れが非常に激しくなる病気です。この痴呆を「恥」と考えず、専門家の相談を受けられる仕組が必要です。たとえば、口腔ケアと歯科医師の役割は、よい入歯でしっかりかむことが脳を刺激し痴呆を遅らせると言われます。これらの解決に考えられたのが介護保険制度です。

<医療保険制度にならって税金と保険料の半分半分により運営する仕組。民間事業者を参入させ、そして「措置」から「選択」に。>

■自自公合意と政府の対応策
「保険料は半年間猶予」「財源は国が負担」「40~65歳の負担増を軽減」「家族介護支援については慰労金やリフレッシュ事業を行う」との自自公合意を受け、政府は「保険料は半年間徴収しない」「65歳以上は徴収しない。40~64歳は健康保険組合に援助」「家族介護支援制度は介護保険の枠外で年10万円の慰労金、要介護4・5の低所得者(非課税世帯)を対象。他、おむつ支給、ショートステイなどのリフレッシュ事業なども検討。

■問題点
(1)介護地獄の解消につながらない「凍結論」は保険料の徴収延期や慰労金はサービス基盤の整備を遅らせるだけ。
(2)女性に介護を押しつける「家族慰労金」はこれまで介護を担ってきた女性への負担を固定化する。
(3)赤字国債の増発は無責任な「ばらまき」は1兆円を超える補正予算は次世代へのつけに過ぎない。
(4)国費は基盤整備や低所得者対策に使うべき→限られた国の財源は効果的に重点的に用いる。

そもそも地方分権といいながら10月1日から要介護認定も始めた矢先になぜ見直しなのか。全国の市町村長、政令指定都市長、都道府県知事からも反対論の合唱。ニュースステーションで東松山坂本市長が、ニュース23で宮城県浅野知事が。「お上」とも言われる「政府」「自治体」から与えられる行政サービスでなく、あくまで国民の皆さんが選ぶ行政サービス(民間、NPOのサービスとの比較により)に変るきっかけがこの「介護保険制度」。

もちろん要介護認定に当っては公平性を期して初期の訪問調査とケアプラン策定の担当者を分離。埼玉県のような都市型のサラリーマンの多いところは将来の財源不足への配慮を。介護サービスを十分提供できるように市町村の合併を促すこと。

なぜ、介護保険見直し合意が思いつきのようにまかり通るのでしょうか。それは、やはり衆議院の350議席をしめる巨大与党の成せるわざであり、この20年間構造改革を先送りしたのと同様に「政権交代可能な2大政党」により政治に選択肢を導入しなくては同じ轍をまた踏むことになります。

<介護保険制度は当初の原案どうりに導入をすべき>