【総務委員会】 新宿雑居ビル事件に関する質問
2001年10月30日
■武正委員
民主党の武正公一でございます。
きょうは、九月一日の新宿雑居ビル事件につきまして、また、昨日、同じく歌舞伎町三洋ビルで火災が発生ということでございます。
二名が亡くなり、五名がけがをされたということでございますが、亡くなられた方また御遺族に心からお悔やみを申し上げる次第でございます。
相次いでこうした新宿雑居ビルでの火事が発生をしているということでございます。報道によると、一月の新宿消防署の立入検査ではビル全体で二十一件の指摘があり、火元の五階部分は四件の指摘があった。
共同防火管理事項一部未決定、消火・避難訓練の未実施、自動火災報知設備感知器未警戒、避難器具操作障害。三月、オーナーからは改修計画書が出されたが、その後どうなったのかはわからない。
店舗もかわっている、把握できない。
しかも今回、九月一日の四十四名の亡くなられた明星56ビル以降の緊急査察では千平米以下を対象としたものですから、対象外といったことも重なっていたわけでございます。
いろいろとこうしたことが、またかといったことで言われておりますが、現場の区役所の方あるいは消防署の方、いろいろやっているのだけれども、把握できなかったり、郵送しても戻ってきたり、なかなか難しいのだということがきのうも記者会見であらわれておりました。
続いて、こうした火災が起きたことも踏まえて、大臣の御所見をお伺いします。
■片山国務大臣
今、武正委員お話しのように、今回のビル火災でございますけれども、このビルは、本年一月に行われた立入検査の際に指摘された事項が守られていない、今日までそのままにされているということについては、まことに遺憾だと考えております。
また、今お話がございました一千平米未満のものについては東京消防庁は立入検査する、こういうことでございましたが、今回のこともありまして、一千平米未満にこだわらずに速やかに立入調査したいという話を聞いておりますので、ぜひこれをやらせよう、こう思っております。
新宿というところの特性もあるいはあるのかもしれませんけれども、こういうことが二回も起こり、さらに今後もその危険がかなりあるとすれば、これは大変なことだ、早急な対策の取りまとめと実施が必要ではないか、こういうふうに私も考えておりまして、関係のところと、例えば警察庁や厚生労働省ともできるだけ早く協議いたしたい、こう思っております。
■武正委員
大臣にも大変前向きな御答弁をいただいておりますが、今回のこの件は、明星56ビルからの一連の流れでございますので、まず明星56ビルについて。
消防庁さん、全国で査察を実施されて、中間報告も四千七百七十六対象まとめておりますし、東京消防庁の結果も九月二十一日までの結果が出ております。二千四百六十九棟の対象について、違反は二千百六十棟、違反率八七・五%。二万五千十件の違反件数について、実際に改修した件数は千六百四十八件ということでありますから、違反を指摘して改修に至るということも事実でありますので、やはり査察がいかに大事かといったことと、そうはいっても二万五千のうち千六百しか改修していない。
また、では残りについて警告をどのくらいしたのかというと、三十九件しかしていない。警告した上で、今度は命令を下したのは二件。
命令を実際に下せばやはりすぐ改修した。命令を出せば改修するわけですので、やはり警告というものをもっとどんどんと出していくべきではないかというふうに私は思うのですけれども、警告件数を多くすべきではないかということについて、これは消防庁長官に。
■中川政府参考人
ただいま御指摘のように、東京消防庁におきましては、今回の火災にかんがみ、九月三日から立入検査を実施いたしておりまして、九月二十一日までの集計が公表されておりますが、その集計の結果、警告件数は三十九件となっております。
確かに二千四百六十九棟の二万五千件の違反に対する件数としては数が少ないという実態にございます。
ただ、これはもう先生御案内のように、立入検査において明らかになった違反について、改修指導、警告、命令などを順次行って、改善を図る措置をとっているものでございまして、現時点において、九月二十一日時点において改修指導を行ったものが五千四百、警告が三十九件でございまして、これから必要に応じて、さらに警告がふえていくということは十分予想されるところでございます。
東京消防庁におきましても、今後、改修の実態を見ながら、必要な措置を行い、是正を進める、このように聞いているところでございます。
■武正委員
やるのだというお話ですが、実際はやっていないというのが実態でありますから、今の答弁では私は満足できません。
実際に告発に至るのも大変少ないわけなのですけれども、告発した例も、これは一九七八年十一月、渋谷東口会館についてあるといったことでございますが、建築基準法の改正が、遡及条項ということでされなかったといったことが、実はこういったいろいろな意味での、消防庁としての違反事例への厳しい対応を鈍らせているのではないかといったことで、やはり建築基準法改正といったものが大変大事ではないかなと思っております。 これについて消防庁長官の御所見をお伺いします。
〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕
■中川政府参考人
予防査察によりまして告発に至るケースというのはなかなか数は少ないものがございます。
平成十一年度に発出した命令等について、告発をした結果を聞き取り調査をいたしましたら、今年度一件の告発を予定しているということでございまして、全国的に見ても、ただいま御指摘のように、告発の件数というのは非常に少ない実態にございます。
ただ、告発の件数が少ない理由についてでございますが、我々がそんたくいたしますところ、あくまでもその改修、改善を目的とするということで、極めて悪質な事例に関して告発をしているということが実態にあるのではないか、このように考えておりまして、ただいま御指摘のように、昭和四十九年に提案されました建築基準法について遡及適用の規定が削除されたということがこの告発を抑制している原因ではないかという御指摘は、我々としては、必ずしもそういう実態ではなかろうというように考えているところでございます。
■武正委員
ぜひそのとおりしていただきたいと思います。
佐世保市の消防局の石田良文さんがこう言っています。
法的信頼の保護という観点から、関係行政機関での措置などで火災危険などの排除を図れないか、もちろん努力は行う必要があるのは言うまでもないが、結局は消防がやれるかどうかの問題に帰すると言われなければならないということで、いわゆる五条のただし書きについては、他の関係行政機関について余り考慮する必要はないんだ、余りに消防は気にし過ぎているよといったことだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
さて、十月二十七日の朝日新聞夕刊に、当該明星56ビルから、一一九番要請が当日十本あったうち四本が四階からあった、三階からは一本もなかったと。
なぜなのかということも書いてありましたが、四階からは、九月一日一時一分、三分、五分、七分ということで、六分間その電話がかかっていたわけですね。
横浜国立大学教授の佐土原聡教授によると、明星56ビルの規模の通常の火災であれば、六分あれば十分に避難できるんだといったことを新聞でも言っております。
そういった意味で、私は、歌舞伎町のような特定の地域では、用途を限らず建築物には二方向避難を義務づけるべきではないか、こういった意見について、これは国土交通省さん、おいででございますので、御所見をお願いいたします。
■三沢政府参考人
二方向避難の基準について、建物の用途を限定せず、特定の地域ではすべて義務づけてはどうかという御質問でございます。
地域を限って規制を強化するということについては、やはり公平性の観点からどうかという御議論があるということと、それから、その用途にかかわらず、風俗営業にかかわらず、一般の事務所、店舗まですべて一律に規制を強化するということがやはり規制としては過重ではないかという議論がございまして、これについては慎重な検討の必要があるというふうに考えております。
ただ、今回の火災を教訓といたしまして、避難上支障の大きい風俗関係用途につきましては、十分な安全性の確保という観点から、二方向避難の規制対象の見直しも含めまして検討する必要があるというふうに考えております。
これらの点につきましては、現在、小規模雑居ビルの建築防火対策検討委員会において御検討をいただいているところでございます。
■武正委員
武正委員 先ほど大臣が新宿という特性ということをまず開口一番言われましたし、今、一般店舗までというお話でしたが、今回の明星56ビルは一般店舗で建築許可申請、確認をとっているわけですね。
ただ、一般店舗でとっても、あれだけの繁華街で当然、転用が予想される、そういったことに対する、今の御答弁ではやはり納得できないということを再度申し上げておきます。
さて、共同防火管理者でございますけれども、昭和四十三年の法改正で、共同で防火管理者というものを設けなければ、いわゆるテナントが階ごとに違うような雑居ビルへは対応できない、しかも、昭和四十七年の千日デパートビルなどを教訓に施行令で強化もしたといったことでございますが、先般の明星56ビルの東京消防庁の八項目の指摘には、この共同防火体制、統括防火管理者未選任、あるいはビル全体の防火計画なしということは東京消防庁は触れていなかった。
これについて、先般、当委員会で質問をしましたら、消防庁長官からは、個々のテナントにおける防火管理が確保された上で共同防火管理は初めて有効なので、まず個々のテナントの防火管理者の選任を優先させて行う、こういう取り扱いをしたんじゃないかというふうな答弁なんですが、実は、例えばこの千日ビルの後、「近代消防」昭和四十七年七月に、消防庁予防課長の話として、複合用途ビルを何とか一つのビルとしてとらえ整備させるようにしたい、こういった座談会での発言もあるんですね。
建物は一つなんだということで考えていかなきゃいけない、だから、共同防火管理者というものを強化したんですが、この御答弁では、やはりまた今回も、指摘をされておりましたように、共同防火管理体制が未整備と。同じことがまた繰り返されている、これについて、大臣、御所見をお願いいたします。
■片山国務大臣
いや、なかなか難しい問題なんですね。今の法制では、個々のものについての責任体制を固めた上で共同で、こういうことになっているんですね。
今の委員の御指摘は、個々が必ずしも全部そろわなくても、全体として一つの建築物ととらえて責任者を決めろ、こういうことなんですが、今の法制でそれがすっといくのかどうか、少しそれは、武正さん、研究させてください。
私も、基本的には思想は委員と似ているんですけれども、法制論としてうまくそれがフィットできるのかどうか、そこのところの研究をしたいと思います。
■武正委員
私は、共同防火管理者を優先とは言っていないので、長官の答弁が個々を優先という話でしたから、これは同時にやっていくべきだということですので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
さて、自治体消防の限界ということを、大臣が消防庁の次長さんのときに「自治研究」六十四巻一号でも触れておられます。
ちょっと引用しますと、もとより市町村消防であることに問題点もないわけではなく、都道府県消防制度の主張も一部にある、中略で、「引続き市町村消防維持の方向が基本的には正しいと考える。」というふうに結んでおりますが、やはり市町村だけにこの消防を任せて果たしていいものかということで、消防力の強化ということ、これは、阪神大震災のときも破壊消防ということで非常に議論もあった点でございます。
消防審議会からも国、県、市の役割分担のことも出ておりますので、この国、県の果たすべき役割について、大臣の御所見をお伺いします。
■片山国務大臣
御承知のように、警察は、警察制度は、昭和二十九年までは国家地方警察と自治体警察だったんですね。
そこで、これではなかなか機能しないのではないか、アメリカ風ではというので、今の都道府県警察につくり直したんです、御承知のとおり。
そこで消防は、戦後、市町村が中心の市町村消防になったんですね。それで、消防というのは、住民の生命、身体、財産を守る地方自治の原点だ、それは一番住民に身近な市町村でやってもらおう、こういう思想なんですね。
だから、それはそれで私は正しいと思うんですけれども、災害や事故や火災が広域化したり複雑に高度化したりする場合に、それでは普通の市町村で全部対応できるか、こういう議論があるんです。
そこで、都道府県消防論というのを、昔からあるんですけれども、私は「自治研究」にかつて書いたように、やはり市町村消防が基本だなと。
基本ですけれども、それで機能しないところは補わないといかぬですね。
その一つが、例えば広域消防で、一部事務組合その他で消防をやってもらう、あるいは都道府県単位の緊急消防援助隊というのをつくりまして、手薄なところに応援に行ってもらう、こういう仕組みを考えてきております。
今後とも、委員が言われるように、消防防災における国の責任分野、都道府県の責任分野、市町村の責任分野というのをもう一度見直してみる必要があるのではなかろうかと私は思いますが、市町村合併が進めばその問題はかなり解決できるのではなかろうか、こう思っております。
■武正委員
今回の明星56ビルの火災の後、ちょうど九月一日でしたから、首相は徹底究明を求めましたし、総務大臣も、事故対策委員会を設けたいということを九月一日に申されております。
ただ、つくられたのが小規模雑居ビル火災緊急検討委員会、しかもこの間会合を二回しかやっていない。
果たしてこれで国としての責務を果たしているのかどうか。
いわゆる再発防止、原因究明、これはやはり国でなければできないのじゃないかなと思うんですが、消防法三十五条の三の二では、消防長や都道府県知事から要請がなければ調査できない。
この法律では国としての責務を果たせないのではないかなというふうに思うわけでございますが、この新宿56ビルのことにつきまして、いろいろな方も意見を言っています。 また、過去にも、尼崎で長崎屋の火災があったとき、神戸大学の教授がこんなことを言っています。
この火災で火災学会などが調査団を派遣したが、中に入ることを拒否された、専門家に現場が公開されたのは、あらゆる証拠が持ち去られ、きれいに掃除されてからのことであった、そのため、消防機関の概要報告と一部の専門家の印象記はあっても、科学的な報告はどこにも発表されることはなかった、刑事責任も明らかにすることも大切だが、予防のために原因を明らかにすることも大切である、予防という見地からの科学的調査を行う道が閉ざされたままであるが、この問題を解決しなければ防災科学の発展も建物の安全化もなし得ないと思うだけに、航空機事故のときのような第三者機関による災害調査委員会などのシステムをつくり上げる必要があると考えるというふうに、この神戸大学教授は言っております。
私もこの意見に賛成でございますが、かねてからこの委員会では、私は独立行政委員会の設置ということを大臣に何度もぶつけておるわけでございますが、三条でなくても八条でも、とにかく独立性の高いそうした災害の調査委員会の必要性を感じるのであります。
これは、大臣、御所見はいかがでしょうか。
■片山国務大臣
足らざるは長官に補っていただきますけれども、事故の原因究明なんというのは、これは一つは捜査権の問題があるのですね、警察庁その他の。
あるいは、私は厚生労働省の関係もあるのかと思いますけれどもね。
委員の言われるのも一つの考え方ですが、なかなか、しかし、そこまで、独立した行政委員会でというのは、三条はまず無理ですね。
八条について、今の警察庁の捜査権その他を含めてどこがどう所管するのか、その辺の議論がありますので、御意見を承って、これまた検討課題にさせていただきたいと思いますし、長官からもう少しあれがありますれば答弁させていただいて……(武正委員「時間がないので手短に」と呼ぶ)
■中川政府参考人
火災の原因調査は、消防庁の権限ということで消防法で規定されておりますが、現実にはいろいろな問題があってなかなか難しい場面がございます。
そしてまた、犯罪が関係する場合には、警察が中心となって捜査をするということも実態としてございます。
ただ、ただいま御指摘のように、民間有識者のいろいろな知恵をおかりするということも原因調査で必要なことだと思いますので、消防機関において必要があればそのような措置をとることができるように、我々としても消防機関に対してその旨指導をしてまいりたい、このように思っております。
■武正委員
実は、きょうの質問で、昨日の新宿の事件のいろいろな資料請求をしたのですが、東京消防庁がばたばたしてなかなかやりとりできない、こういった対応がございました。我が党から長妻議員もいろいろと告発について質問主意書でやっていますが、確たる答えがありません。
私は、今回、こうしたいろいろなやりとりを通じて、国の責任といったものでの原因究明、再発防止、これが非常に重いのではないかと。
消防法の改正、あるいは、実は改正しなくてもやる気になればできるのだといったところも各方面から言われております。
ですから、これについて、先ほど大臣から御答弁いただけなかったのですが、最後に警告などやれるところから前向きに取り組んでいくのだという御決意をお示しいただいて、質問を終わらせていただきます。
■片山国務大臣
小規模雑居ビル等の火災が引き続いて二件も起こって、前回相当な方がお亡くなりになりましたね、四十四名。
今回は少のうございますけれども、やはりこれも放置できないと私も思います。
今の法律でどこまでやれるか、それから法律を改正するとすれば、どういう改正の方向か、これについては、至急消防庁を中心に検討をさせていただきます。
■武正委員
質問を終わります。ありがとうございました。
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