【総務委員会】 地方自治法等の一部を改正する法律案について

2001年11月29日

武正委員
 民主党の武正公一でございます。
地方自治法等の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。

 今回の地方自治法改正の中で私がやはり一番問題と感じておりますのは、いわゆる住民訴訟を二段階に、訴訟体制、被告につきまして個人から機関へといった点がやはり非常に問題であろうというふうに考えております。きょうは、それにかかわる一連の質問をさせていただきたいと思います。  もちろん、地方六団体等からさまざまな御要望、御要請があるということは承知をしております。
そういった御要望については、私は、いろいろなやり方で対応が可能であろう、その点もきょうの質問の中で明らかにしていきたい、このように考えております。

 まず、この住民訴訟という制度でございます。  直接民主主義制度であろう、あるいはまた、大臣からは、戦後GHQの指導で導入されている、しかし本家本元アメリカではもう余りないよというようなお話もございます。やはりこの住民訴訟の功、プラス面、その果たしてきた役割というのは、私は大変重いものがあると。たとえそれが相手が個人であろうとも、個人であるからこそといった面もあろうかと思っておりますが、既に食糧費の訴訟、あるいは地方におきましては議員野球、あるいは空出張、やみ手当、放漫財政、具体的に言えば、また、自治省の指導を超えるような地方自治体職員の給与の高額化などにもさまざまな役割を果たしてまいりました。
加えて申せば、視察旅行、高額飲食、架空接待、そして談合、談合の中でもまた官製談合といった点、さまざまな点でのプラス面があろうかと。  特にこの住民訴訟の持つプラス面について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

■片山国務大臣
 武正委員お話しのように、私も、この戦後の地方自治制度で導入された住民訴訟制度が一定の役割を果たしてきたものと思いますね。それは、確かに、そういう意味で、いろいろな意味での抑止効果もあり、いろいろなことを明らかにする効果もあったと思いますね。このところ、情報公開制度がかなり地方にも入ってまいりまして、あるいは情報提供ということを行政機関もやるようになって、また局面は変わってきたと思いますけれども、私は、プラスの評価はしなければならない、こう思っております。

 あり方として職員の個人責任というのが、どうも私自身、地方でいろいろな経験をし、中央でもしておりまして、やはり個人の行為というのはないんですね。それはやはり職務に関係した行為なんですよ、背任だ、窃盗だというのはこれはまたちょっと別ですけれども。そういうことについて、今回はこの制度を改正した方がベターだ、私はこう思っております。

武正委員
 住民訴訟については、戦後のあり方について一定の評価をいただいたというふうに理解しています。これから特に、地方分権を進めていこう、これが小泉内閣での方針でもあろうと考えますし、総務大臣からもそういったさまざまな御発言がございます。
であればこそ、地方自治体のチェック機能としてのこの住民訴訟は、強めればこそすれ、弱めるあるいは後退する、こういうような改革はやはりあってはならないというふうに考えるのでございますが、この点についての御所見を大臣にお伺いします。

■片山国務大臣
 私も委員と全く同感なんですよ。
地方自治がそれだけ重要なものになる、大きな働きをするということになりますと、それだけチェック機能が発揮されなければならない、こう思っておりまして、そういう意味で、これを、単に個人の責任を問うということではなくて、機関の責任を問う、団体の機関の責任を問う、その機関と職員との関係を整理していく。

 それで、今の制度では、機関の責任を問うようになっていないんですよ。個人の責任だけ問うているんですよ。これはおかしいので、機関の責任を問うことによって個人の責任も問う、この方が制度としては筋が通る、制度としてはその方がわかりやすい、私はこういうふうに思っております。

武正委員
 機関の責任を問うことはほかの仕組みでできるわけでありまして、この個人の責任を問うといったことから、先ほど話がありました機関が持つさまざまな問題点、これをただしていくといった面での個人を相手にする訴訟というものの役割がやはりあるというふうに考えるわけであります。

 例えば、官官接待などを例に挙げれば、これは、自治省さん、旧自治省さんでありますけれども、やはり地方自治体を監督する立場から、各地方自治体が一生懸命中央省庁に対して官が官に対する接待をしなければ補助金がもらえない、こんなおかしなことがまかり通っていたわけでありまして、これが是正されるというのは、旧自治省あるいは総務省としてある面応援をしてもいいんではないかというぐあいに思うわけであります。

 こういった点も含めて、この地方分権時代にあっての個人を相手にする訴訟制度、これをやはり存続すべきだと思いますが、再度御所見を伺います。

■片山国務大臣
 今の制度はこういうことなんで、個人を通じて機関の責任を問うているんですよ。機関の責任をまず問うべきなんですよ。首長というのは、これは執行機関のトップですよ。職員というのはその補佐機関で、機関なんですよ。まずそこの責任を問うて、それから個人の責任を問うべきなんで、私は、今の制度は全く話が逆だと思っているんですよ、個人の責任を問うてそれによって機関の責任を問おうというのは。地方自治法の制度として、いろいろな指示行為を明らかにするという意味で、今の制度を直した方がいいと私は思いますし、それは官官接待云々とはまた別の議論ですから。

 私は、官官接待がすべて悪いなんて思っておりません。相当悪い部分があったと思いますよ。悪い部分があったと思う。だから、今の国家公務員法、倫理法についても、ああいう仕組みになっておりますけれども、私は、きょうは午前中、参議院の総務委員会でも言ったのだけれども、ちょっと常識を超えているところがあると言ったのです。その部分は直すということは、今後検討する必要がある。官官接待を認めているわけじゃありませんよ。
しかし、同窓会に行って、割り勘でも、利害関係者がおったらだめだなんということ、これが今の常識の中で全部だめだということになるのかどうか。

 これはまた別の話だと思いますけれども、今回の、そこは目的は同じ、効果の期待も同じなんですよ。そこのところ、今の制度を是認するというより、制度全体としてどうあるべきかを考えて議論される方が、私は適当じゃないか、こう思っております。

武正委員
 今、総務大臣が、官官接待は必ずしも悪いものではないという御発言で、それを補足する中で割り勘というお話がありましたが、では、接待というのが割り勘なのかというと、やはり通常の接待というのは、何らかの形でお招きをするというようなものが世間の常識でありますので、当初の、官官接待は必ずしも悪いものではないというのも、私は、やはり総務大臣の発言としては問題であろうということを指摘させていただきます。

 今、首長は個人であるというような形で総務大臣がお話を続けておられるのですけれども、個人といっても、選挙で選ばれた公人であろう、あるいは知事部局というような言い方でいえば機関というような見方もできようというふうに考えるわけですが、これについての御所見をお伺いいたします。

■片山国務大臣
 私は、首長は個人なんて言いませんよ、首長は機関なんですから。公人としての首長というのは、機関の長としての首長なんですよ。まさに公人というのは機関の長なんですよ。ところが、今は、個人、私人という個人をつかまえて訴訟を起こしているから、制度としていかがかなと私は申し上げているのです。

武正委員
 私人としての個人をつかまえている、でも、公人である、機関であるというようなお話ですが、公人であって機関であれば、今の仕組みは首長を訴えておりますけれども、例えば補助参加というような形で機関が裁判に参加することができるわけですね。
ですから、たとえ被告が個人というようなお話である、でも個人と公人で、先ほどのお話ですとちょっとこんがらがってしまうのですが、補助参加するということで機関として対応ができるのでありますが、これについてはどのように考えますか。

■片山国務大臣
 今はそうなっていますよ。ただ、逆に言えば、機関をつかまえて個人も参加できるのだから、効果は同じなんですよ。首長なり首長の部下の職員が財務会計制度にのっとって会計手続をやるときに、不正、違法があれば訴えられるという制度でしょう。それを勝手に個人として考えてやるわけじゃないのですよ。ちゃんと予算があって、手続があって、命令を受けて財務のいろいろな手続に参加するわけでありまして、そこに違法があれば、まさに機関としての責任を問うべきなんですよ。

 ただ、個人としての部分もあるから、それこそ補助参加してもらったらいいのですよ。今は、個人をつかまえているのですよ。公の機関の方を補助参加させているのですよ。だから、私は話が逆だと言っているわけであります。

武正委員
 首長が機関であって、あくまですべて機関で決定されているというお話でございましたが、個人として首長が、例えば議会や監査委員とのいろいろな関係も含めて、絶大な権限を持つ個人、選挙で選ばれた首長としてさまざまな判断、決定をするわけでありますが、それが機関を代表して決定をしていると必ずしも言えないところがある。個人の判断、個人としてのさまざまな決断、そういった意味で、今回、この被告対象としてすべて機関で受けますよというのは、やはり問題があるというふうに考えるわけであります。

 平成十三年六月十三日の日経を見ておりますと、小泉首相が、行政訴訟もやはり見直さなきゃいけない、これは司法制度改革審議会の答申を受けての発言であります。

 アメリカとの比較というものを大臣はよく口にされます。アメリカのGHQの指導で導入したけれども、アメリカ本国ではないのだよ、こういう個人を対象にというようなことを答弁されておりますが、もう一度それを確認したいと思います。

■芳山政府参考人
 我が国の住民訴訟制度は、米国の納税者訴訟を参考に、昭和二十三年の自治法改正により導入されたものでございます。

 今御指摘がありましたように、米国の状況でございますけれども、我が国の文献によりますと、米国の納税者訴訟においては、違法行為の事前差しとめを求める訴訟が一般的であるというようなことで、長や職員個人に賠償を求める訴訟は余り利用されておらないというように聞いております。

 なお、この今回の改正案は、米国における状況も参考にしつつ、両国の法体系の違い、成文法である、不文法である、また訴訟手続の違い等十分配慮した上で、我が国において地方分権時代にふさわしい住民訴訟制度のあり方を検討し、立案したものでございます。

武正委員
 私の手元にあるのは、「国家責任法の分析」ということで、宇賀克也さんの書かれたものであります。ちょっと一節を読みますと、アメリカでは、  不法行為に基づく損害賠償請求につき、公務員個人を被告とすることなく、合衆国、州、自治体を排他的被告とし、公務員の統制は、求償、懲戒、刑事訴追等の手続に委ねようとするものであるが、我が国では、昭和二二年に国家賠償法が施行されて以来、このシステムが採用されているのである。したがって、アメリカの国家責任法制の研究が我が国の立法論に直接資することは、それほどないと言わざるを得ない。 今、法体系の違いということをお話ししたその一つの論拠であります。

 また一方、「ニューヨーク州「納税者訴訟」制度 その制度と日米比較」ということで、財団法人自治体国際化協会の調査によりますと、職員が個人として賠償責任を負う場合というのがあるということを書いております。こういった例もあるわけであります。

 そういったことで、アメリカのことをよくお話に出されるわけですが、先ほどの日経の記事を見ますと、行政訴訟の件数なんですが、九七年度新規受理件数で見た場合、日本が千七百十一件であるのに対して、米国は連邦地裁で国を被告とする訴訟だけで三万九千三十八件に上っている。これによって、自民党では、訴訟要件の緩和により日本の行政訴訟が活性化し、先進国並みに行政をチェックできる態勢が整うということで、行政訴訟の改革を御党でも取り組んでおられるという記事でございます。

 そういったこともございまして、アメリカでは、個人を被告とはしていないよというようなことをよくお話にしますが、被告としている例があること並びに法体系が違うこと、加えて言えば、例えばアメリカではディスカバリー制度などの徹底した、そういった証拠を提出しなければならない、証拠提出命令というのがございます。このような中であるわけでありますので、この日本の戦後五十年培ってまいりました個人を対象とする住民訴訟、これをここで対象を機関にするといったことの説明にはならないというふうに考えますが、御所見を伺います。

■片山国務大臣
 今、行政局長が答えたとおりですが、こういうあれもあるのですよ。連合軍総司令部の指示に基づき短時間で立法化されたゆえ、不明確で、解釈上疑問の点が多かった。これがため、運用において、住民による監査請求あるいは訴訟の提起に当たり、あるいは裁判所における訴訟の審理に当たり疑問となる点が多く、裁判所当局はその運用に苦慮し、我が国の制度になじみやすく、しかも解釈上疑義の生じないような制度に整備することが望まれていた。この制度のことですよ。アメリカでは州でやっているのですよね、訴訟制度というのは。

 だから、私は、その意味が全くないなんて言っていません。冒頭に申し上げましたように、一定の役割は果たしてきたと。しかし、この制度をさらにいい制度にするためには直した方がいいと思うのですよ。直した方がいい。それは、機関の長の責任を問うのだけれども、個人の責任もありますよ。だから、そこが明らかになったら、機関の長が個人の責任を問うのですよ。今は個人なんですよ、個人だけになっているのですよ。だから、そこのところを改めて、機関の責任も問う、その部分に個人の責任もあったらさらに個人の責任も問う方が、責任の問い方として、住民から見ればよりはっきりするのですよ。私は、その点の御理解が、武正委員のような人がなかなか御理解いただけないのかなと実は思っております。

武正委員
 大臣からお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 ただ、やっとちょっと整理がついたんですが、個人だ個人だと言いながら、先ほど大臣は、首長は機関であるというふうにお答えになりましたが、そのお答え、もう一度確認をしたいと思います。

■片山国務大臣
 例えば、どなたでも結構なんですが、武正さんが千葉県の知事に仮になるとすると、千葉県の知事という、これは機関ですよね、機関の長。天皇機関説、昔ありましたけれども、それと武正さん個人というものと、これは両方あるのですよ。そこで、財務会計に基づいていろいろなことをやる、いろいろなことをおやりになるかもしれぬけれども、それは公の職務としておやりになっているのですから、機関の長としておやりになっているのですよ。だから、その機関の長としての責任を住民は問うわけですよ。ただしかし、それは機関の長だけれども、別に個人として妙なことをやっているかもしれぬ。だから、こっちに問題があれば、機関の長である武正さんが、個人である武正さんの個人の責任を問うのですよ。

 今は逆なんですよ。武正さん個人の責任を問うているのですよ。ところが、この個人は全く自由にやっているわけじゃないのです。職務として、しかもいろいろな手続、意思決定の中で、財務のいろいろなお仕事をおやりになっているのですよ。だから、機関としてやっているのだから、まず機関の長としての責任を問うて、そこで個人との間の責任の分担関係が明らかになれば、今度は機関の長が個人の責任を追及するのですよ。しかも、これは補助参加させるのです。だから、今と実態は一つも変わらないのですよ。機関の長としてが表に出るだけ、住民から見れば、前よりは明確になるのですよ。そういうふうに私は考えております。

武正委員
 今のその説明だと、やはりなかなか理解ができないわけでありまして、首長は機関の長である、今の、その機関の長として首長を訴える、これでいいんじゃないですか。それで機関も補助参加できるわけですから、決して個人を訴えているわけではないわけです。それは、名前は個人でありますけれども、先ほど大臣が言われたように、個人である首長は機関の長である、機関を代表しているというふうに言われるわけですから、しかも補助参加できるわけですから、私は、今の制度で一向に問題がないというふうに、今の御答弁から考えるわけであります。

 この点、先ほど同僚委員からもよく御質問がございましたし、私もいろいろな方から言われるところなんですが、住民訴訟が、被告の方が亡くなられた後、相続人の方が相続する、これは大変気の毒であるというようなことを、やはり地方六団体からも御要望を受けております。私もまた、その心情、大変によくわかるところであります。現在、相続人が相続している訴訟件数は何件あるか、お答えいただけますでしょうか。また、その率もお願いいたします。

■芳山政府参考人
財団法人自治総合センターの調べによりますが、平成六年度から平成十年度までの五年間に提起された住民訴訟の件数が八百七十八件でございます。このうち、訴訟係属中に被告が死亡した事件であって現段階で把握できるものは十件でございます。全体に占める割合は一・一%。なお、十件の内訳は、相続人である妻と子が承継したものが七件でございます。被告の死亡によりまして訴えが取り下げられたものが三件でございます。

武正委員
 確率が低いからよしとはいたしません。ただ、そういった確率であること。それで、他の法との体系からいって、この面だけ相続放棄というのはなかなか難しいといったことも聞くところであります。その点、例えば相続人についてもそうでありますが、後ほど触れます賠償額を、議会の議決があれば公金を支出できるなど、いろいろな、さまざまな手をつけることによって、この相続人の問題も解決が可能ではないかなというようなことも考えるところであります。

 さて、先ほど来、首長のお話を中心でやってまいりましたが、先ほどの調査によりますと、やはり職員の方も二五%ぐらい訴えを受けております。その職員の内訳を、例えば課長職以上とかあるいは予算執行職員以上、そういったことで、具体的にどういう内訳なのか、お答えをいただきたいと思います。

■芳山政府参考人
 全体の件数が、延べ件数でございますけれども、平成六年から十年までの五カ年に提起された四号訴訟でございますけれども、延べ件数は八百六十三件でございます。そのうち一般職の職員等が被告とされたものは二百二十一件で、全体に占める割合は二五・六%でございます。

 このうち、今お尋ねでありました部長、課長、課長補佐、係長というものが被告となっておりますけれども、その調べの中で、今具体的に管理職以外の職員、一般職はどういう形になっているかというのは把握されておりませんので、御了承賜りたいと思います。

武正委員
 把握をされていない状態でこういった法律の改正を出すというのは、国会の審議にとって大変問題があるというふうに考えます。二百二十一件の内訳について、早急な調査をこれは委員長の方にお願いをしたいと思います。

■川崎委員長代理
 後刻、理事会で協議いたします。

武正委員
 その職員の方が訴えを受けるについて、これはある面、組織として動かざるを得なかった、あるいは上司の命令でというようないろいろなケースが考えられると思います。

 そういった中で、予責法、予算執行職員等の責任に関する法律八条には、上司の命令がおかしい、法令に違反するのではないかと、その担当者、特に予算執行職員でありますが、考えた場合に、文書をもって上司を通じて任命権者にその意思を表明しておけば、後でその賠償請求など責任を免ずることができる、そういう条項があるわけなんです。やはり、これを地方自治法に入れ込むことによって、この職員の方の免責といったものを、国同様に地方自治体の職員にも認めていくべきではないかと考えるのですが、大臣の御所見を伺います。

■片山国務大臣
 機関の長と個人が同じではないかと武正委員言われましたけれども、機関の長でない個人なら、訴訟も全部個人で対応するのですよ。資料なんかも個人で集めたものしか出せないのですよ。機関そのものの長の責任は問えないのですよ。だから、私は、機関の長にした方がいいということです。機関の長にすれば機関そのものの責任が問えるし、訴訟対応も機関で行うし、資料だって機関の責任で出せるのですよ。個人なら限度があります。機関と個人との責任の関係は後ではっきり明確にすればいいのです、同じことを言ってもしようがありませんけれども。

 それで、この規定も戦後の、昭和二十五年にできているのですよ。一遍も使われていないのです。こんなもの言われたからあなたの言うことは聞けませんといって文書で突き返して、日本の職場の雰囲気や状況がそういうことになっていますか。それで責任を転嫁する。これは、およそ日本になじまない制度だと私は思いますよ。これはどういう経緯で入ったか知りませんよ。そういう一遍も実績がないような、我が国の職場環境になじまないような制度を地方自治法に書けと言われても、それはそういうわけにはいきません。

武正委員
 職場の雰囲気がそうであるというお話でございましたが、これがいわゆる組織ぐるみの犯罪といったことを招く原因になっているのではないかなと思いますし、それが今問題となって、外務省を初め問われているわけでありまして、これは日本人が、組織の一員であってもやはり個人として自分の意思を表明し、物を言い、そうでなければこれからの国際社会には到底、日本は置いてきぼりを食ってしまう。これは私の意見でありますので、これにとどめておきます。

 先ほどちょっと触れましたが、弁護士費用、今百万円以下が七〇%以上、こういった調査もあるのですが、この弁護士費用を負担していただくというのは、これは何とかならないかというようなことをやはり考えるわけであります。例えば、この対象範囲を拡大して、訴訟の取り下げや和解あるいは請求放棄などにも広げたらどうか。あるいはまた、先ほどちょっと触れましたが、賠償費用についても、議会の議決があれば公金支出の道を開いてもいいのではないかというような形での修正をして、私は、冒頭申したような、被告対象を個人のまま残して、そして地方六団体などの要望はこのような形で対応できるのではないかというふうに考えますが、今の弁護士費用と賠償費用について、副大臣、お願いいたします。

■遠藤(和)副大臣
 四号訴訟におきまして、職員が勝訴した場合の弁護士費用の公費負担制度は、平成六年の地方自治法改正により創設をされております。しかしながら、職員に対する弁護士費用の公費負担は、勝訴あるいは一部勝訴の場合に限定して規定されておりまして、事実上の勝訴とも言えるような原告住民の訴えの取り下げとか和解とかいう場合には対象にならない、こういう問題が生じているところでございます。

 今回提案させていただいている第四号訴訟の訴訟類型の再編成によりまして、地方公共団体の機関そのものが被告になるわけでございますから、御指摘のような問題はすべて根本的に解消される、このように考えております。

 それから、公金を支出できるような議会の議決制度をつくればという話ですけれども、これは今でも、地方公共団体が有する損害賠償請求権等の債権について、地方自治法第九十六条の規定に基づきまして、現行制度におきましても、議会の議決があれば権利放棄できる、こういうことでございますから、これで対応ができるということでございます。

武正委員
 この後ちょっと話をさせていただく談合については、今副大臣がお答えになった、すべて解決するということが実は問題であろうというふうに考えます。

 これはもう多くの方から言われているのですが、これまで住民の方が談合業者を訴訟対象としていた、これが今回の改正によって、機関を訴える、談合している業者を直接訴えられなくて、機関を訴える、地方自治体を訴える、そして、地方自治体が住民からの訴訟を受けて、裁判で住民と闘う、談合業者を、まあ代弁して、守るために裁判で闘う、負ければ地方自治体が談合業者に損害賠償を請求する、これは甚だおかしい。まして、今副大臣が言われたように、訴訟費用を地方自治体が負担してまで、なぜ談合業者の弁護をしなければならないのか。こんなことはやはり到底理解ができないのでありますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

■片山国務大臣
 団体と機関は違うのですよ。団体というのがこうあって、団体の中に意思決定機関である議決機関と執行機関があるのですよ。団体と機関は全然違うのですよ。

 そこで、今の談合の問題ですけれども、今度の制度でも、第三者である業者について訴訟告知がなされるのです。しかも、当然判決の効力は及ぶわけで、何の問題もない。談合談合と言われますけれども、もし談合が違法なら、これは機関が、機関の長が損害賠償を必ずとるわけですから、もし談合でなければ、それはとらないのは当たり前の話で、それは今の制度だろうが新しい制度だろうが同じであります。

武正委員
 この間民主党で、官製談合の防止法案を二十二日に提出いたしました。与党プロジェクトチームが提出提出ということで絶えず新聞に出ておりましたので、それへの対案を急がなければならないということで準備をしてきたのですが、臨時国会が始まってしまえば、いつの間にやら官製談合防止法案は提出できないというようなことを聞いたところであります。

 談合というものを、特に官製談合については、今もそれを取り締まる法律がない。今大臣のお話にありましたが、まず談合の事実を見つけるのが大変難しい、特に官が絡んだ談合についてはというようなお話であります。そんなことも含めて、今の御答弁では到底納得ができないわけでありまして、特に弁護士費用をなぜ自治体が負担してまで訴訟に応じなければならないのか、これについてはいかがでしょうか。

■片山国務大臣
 いや、それは自治体の機関が訴えられるからですよ。訴訟の対象になるからですよ、機関が。新しい制度ですよ、新しい制度は、機関が対応するのが当たり前の話ですよ。ただそこで、どちらが裁判の費用を持つかは勝った負けたで決まるのですから、御承知のように。

武正委員
 勝った負けたで決まるといっても、その弁護士費用を負担して、機関が談合業者の裁判を請け負って裁判に臨む、こういうことは到底理解できないわけなんですが、この点はいかがでしょうか。

■片山国務大臣
 言われることがよくわからないのですけれども、住民が、新しい制度ですよ、訴訟の対象にするのは機関の長なんですよ。機関の長が受けて立つのですよ。そこで、談合したのかどうか知りませんが、業者がいるとすれば、それは訴訟参加するのですよ。訴訟参加によって効力は当然及ぶのですよ、自動的に。そこで、費用負担の問題は勝訴敗訴で変わってくるのは当然ではないか、こう言っているわけで、別に、訴えられたのが機関の長だから、業者云々ということは出てこないわけであります。

武正委員
 訴訟参加できないということでありますけれども、この点、いかがでしょうか、大臣。

■芳山政府参考人
 先生お尋ねの談合企業と弁護士の費用の関係ですけれども、今回の四号訴訟は機関である長を被告にするわけです。そうしますと、今、住民訴訟の一号、二号、三号は機関である長を訴える、それで、今度の四号も機関である長でございますから、一号から四号まで、すべて自治体が被告になる。自治体が被告になると、一号も二号も三号も四号も弁護士費用は持つ。

 ただ、これは事前に住民監査請求というのが当然起こっております。住民監査請求が起こって、自治体と住民の間で意見が分かれております。住民の皆さんは談合であるではないか、ところが、地方団体の方はこれは談合ではないというようなことで意見が分かれた上で、その監査委員の勧告に、監査委員の意見なしなり措置について、住民は不服であります。そして、それに基づいて住民は訴訟に出るということでありますから、住民訴訟の段階では、談合であるかないか、有無は前提になっておらないというようなことでございますので、御了解賜りたいと思います。

武正委員
 前提に立っておられないというのは理解できないわけでありまして、訴訟を起こす当事者は、談合している会社がある、こういった確信を持って、その監査請求、却下なり棄却なりを受けて不服として訴訟するわけですから、まだはっきりしていない、確定はしていないというのなら答弁になりますが、前提であるというのは、これはそういった前提を、確信を持って訴訟を起こしているということで、これはもう御答弁は要りませんので、結構でございます。

 時間がかなり押し迫ってきてしまっているのですけれども、民訴法の改正で、文書提出命令が出せるように、今年度改正になりました。この点について、よく大臣は、機関が訴えられれば裁判に文書をたくさん出せますよというようなお話でありましたが、もう民訴法は改正されているのですけれども、この点についての御答弁をお願いします。

■芳山政府参考人
 さきの通常国会で民事訴訟法の一部が改正されまして、今御指摘がありましたように、公文書についての文書提出義務が一般化されました。しかしながら、裁判所による文書提出命令に従わなかった場合の効果が、今回の場合、命令の対象が、執行機関としての地方団体が訴訟の当事者となる、ないしはならないというときに異なるわけでございます。

 今度の新しい四号訴訟でございますが、地方団体を当事者とするということになりますと、不利益文書が存在しながら文書命令に従わない、文書を提出しないという場合には、被告であります執行機関等に訴訟上の不利益が生じます。法律上生じます。そういうことから、第三者としての参加に比べまして、地方団体に対する文書提出の効果が促されるというぐあいに考えております。

武正委員
 機関が訴えられれば文書を出しますよというようなお話でありますが、到底そうは思えないわけであります。被告になって、情報提供について裁判所からの文書提出命令があったとしても、そのときに、では裁判所がどの程度行政知識を有していて、どういう文書がそれぞれの被告の地方自治体にあるのか、これをすべて把握しているとは到底思えないわけなんでございます。

 この点について、大臣、いかがでしょうか。司法裁判ということの限界を私は感じるわけでありますが、司法裁判の裁判官が幅広い行政知識を有して、そしてさまざまな文書提出命令を出す、これはちょっと想像できないのですが、この点いかがでしょうか。

■片山国務大臣
 日本は三権分立で、裁判所が、持ち込まれたものを、あらゆることを判断するということになっていますから、専門の知識がなくても、アンパイアみたいなものですから、AとBの意見を聞いてどちらが正しいか判断すればいいわけでございまして、そんな行政の細かいことまで裁判官は知るわけないので、それは勉強もしていただかなきゃいけませんけれども、私は日本の裁判あるいは裁判所というのは信用していいと思っております。

武正委員
 先ほど局長が、裁判所から文書提出命令があれば出せるのだというお話でしたけれども、今の、そういった知識がないということになってしまうと文書提出命令も出せないわけなんですね。

 そういったところも含めまして、実は日本には行政不服審査法というのがあるのですけれども、ただ、これは地方自治体は対象ではないというふうにされておりますが、この点、確認をしたいと思います。

■片山国務大臣
 行政不服審査法というのがありますね。これはそれで機能していると私は思いますが、直接地方団体の事務については、機関委任事務以外は恐らく対象にはなっていないと思います。

武正委員
 機能しているというお話なんですが、ちなみに、これは平成六年度ですか、ちょっと古いのですけれども、行政不服審査法に基づく一万八百三十五件の申請に対して、棄却が七千五百七十七件、七割、却下が千二十三件、九%ということで、約八割が取り下げられてしまうということでありまして、この点も、先ほど小泉首相の行政訴訟取り組むべしといったところにあらわれておりますし、御党が改革をしようといったところにもあると思うのです。そういった意味で、行政不服審査法の対象にも地方自治体は外れているわけでありますから、そういった面では、住民訴訟、しかも大臣が先ほどから言われているように、機関の長である個人、首長を今は訴えている、この体系は変えるべきではない、このように考えるわけであります。

 議会が議決をし、監査委員の監査があるのに、なぜ首長だけがというようなお話がよく出てまいります。議会の議決と監査委員が、それぞれ議決に参加をし、監査委員も監査しているじゃないか、こういった中で首長の判断を問われるのはいかがなものかというようなことを答弁の中で言っておられますが、この点について、大臣、再度御所見を伺います。

■片山国務大臣
 ちょっと私、答弁を間違えまして、行政不服審査法の対象に地方団体の自治事務はならないだろうと言いましたが、行政という観点から、地方団体の事務は全部対象になっているそうでございます。

 それから、今の質問はちょっとあれでございますが、一番のポイントは監査が機能していない、こういうことでございますか。

武正委員
 議会の議決があって、監査委員が監査しているじゃないか、それで首長が個人の判断を問われるのはいかがか、それだけ組織を挙げてやった行為だよということです。

■片山国務大臣
 それは、今の地方団体の仕組みは、議会がいろいろなことを議決して長はそれに従ってやる、それについては監査委員が、これは内部監査ですけれどもチェックする、都道府県や政令市や中核市については外部監査もある、こういう仕組みになっております。

武正委員
 私はそういった認識を問うたのでありますが、今のような仕組みで首長さんは判断をし決断をし活動をしていくということでございます。

 ただ、議会の構成につきましては、もう大臣御案内のように、地方議会はよく言われるオール与党というような形で、首長の与党が多数を占めている、少数与党は大変少ないといったこと、あるいは監査委員も首長が選任をするといったこと、ある面やはり首長の意向が強い、あるいは首長の意向にはなかなか、逆らえないといったら言葉はあれですが、指摘しづらい雰囲気があるという指摘もございます。

 また、これは埼玉県の例でありますが、平成七年からの四年間で二千百七十件を監査委員さんは監査をいたしました。監査事務局数は三十人であります。ですから、四で割りますと年間五百件ぐらいの監査対象がある。これではなかなか、今の監査というものも機能していないというふうに言われるわけであります。もちろん、また事務局についても、出向人事でありますから事務局の専門性にも欠ける。こういった点があるわけなんですが、首長を取り巻く議会と監査委員とのチェック機能がある面働いていないという認識については、大臣、いかがでしょうか。

■片山国務大臣
 これも一概にどうだと私はなかなか言えないと思いますね。地方団体によっては、今の議会や監査委員のシステムが機能しているところもあると思いますし、しかし、地方団体では執行機関と議決機関の仲がいいところが多いですね。私は見ていてそう思います。

 私はいつも地方議会の関係者に言っているんですよ、つかず離れずがよろしいと。地方は大統領制ですから、執行機関と議決機関が車の両輪で、チェック・アンド・バランスなので、バランスの方だけウエートがかかってチェックの方が緩んだらおかしいでしょうということは申し上げているのです。

 しかし、私は、今の議会の制度なり監査委員の制度は、これもそれなりの効果を上げていると思います。そんなものが全部だめだ、こう言ったら、それは地方自治の制度そのものが成り立たなくなるし、しかも、首長さん、議会は住民が選挙で選んだ結果ですから、これについてもおかしいということになってしまう。それは民主主義の根底の議論につながると思いますので、私は、それなりに地方議会も頑張っているし地方の監査委員さんも努力されていると思います。

武正委員
 先ほど大臣から外部監査のお話がありまして、これも既に導入されて数年がたつわけですが、外部監査の監査について、これは昨年七月三日の日経でありますが、「外部監査 自治体を刺激」ということで、いわゆる財務監査以外の業績監査についてもかなり外部監査人が突っ込んだ指摘をしている。それを新聞で取り上げているわけなんですが、最後に自治省さんのコメントということで、「「財務内容をチェックするのが本筋で、やや目的から外れている」と困惑気味だ。」というコメントが出ているわけなんです。

 私は、外部監査人を、できれば監査委員と同格ぐらいにしていいんじゃないかと。例えば住民監査請求も、今は直接監査委員は監査いたしますが、外部監査人はワンクッション置いて監査ができるといったことですが、これを、外部監査人を監査委員と同格にして、住民は外部監査人も直接監査請求ができるようにして、選択肢をふやしてやったらどうか。また、それが監査委員にとっても、ある面切磋琢磨というか競争原理にもつながってくると思うのですが、大臣、これについていかがでしょうか。

■芳山政府参考人
 外部監査と監査委員の並立のお話ですけれども、個別監査について、議会からの要求とか事務監査の要求とか、また住民監査請求による要求、いろいろございますけれども、おのおのそのチェックについては議会で、その受け付けをするかどうかチェックするということになっております。

 ただ、住民監査請求の場合には、期間があることから議会でチェックがなかなかできないということで、監査委員において受け付けるかどうかの決定をするというようなシステムになっておりまして、制度ができたばかりでございまして、今後の動向を踏まえていろいろ検討してまいりたいというぐあいに考えています。

武正委員
 第三セクターについて、下関の訴訟が巨額な賠償責任を市長さんに課した、これが今回の法改正のきっかけにもなっているという見方もあるというふうに伺うところでありますが、今現在の第三セクターについての損失補償対象数とその額についてお聞きをしたいと思います。

■香山政府参考人
 お答え申し上げます。

 私どもの調査、これは二五%以上地方団体が出資している法人でございますが、六千七百九十四ございまして、そのうち、地方団体が損失補償をつけておりますのは七・七%に当たる五百二十法人でございます。損失補償限度額、これは当然これがすべて地方団体の負担になるというものではございませんけれども、限度額としては二兆六千三百十四億円でございます。

武正委員
 今の御答弁は、さきに私が通常国会で質問したときと同じ数字でありますが、それはいつ時点の調査でございますか。

■香山政府参考人
 平成十一年でございます。

武正委員
 平成十一年のいつでございましょうか。

■香山政府参考人
 十一年度という意味でございまして、調査期日は平成十二年三月三十一日でございます。

武正委員
 もう一年半を経過しているわけでありまして、この第三セクターについて、既にいろいろな方々が第三セクターの破綻あるいは損失補償の問題点を指摘しているわけであります。本改正で、いろいろな方々からも下関の例を挙げられているわけでありますし、これからも、第三セクターの破綻ということが地方の住民の方にとっても大変関心が強くなる、当然訴訟の対象にも挙がってくることが予想されるわけなんですが、この点の調査が十一年度、十二年三月三十一日以降新しい数字がない、前の答弁と同じであるというのは大変問題意識としていかがなものかというふうに思うんですが、再度、新しい数字はあるんでしょうか、あるいは調査をされているんでしょうか、お答えください。

■香山政府参考人
 お答え申し上げます。

 十二年度につきましても調査をいたしておりまして、現在集計中でございまして、近く公表できると考えております。

武正委員
 今もう十三年度なんですよね。もうすぐ十三年度も終わってしまうわけでありまして、これだけの大変大事な問題が、前回と、半年前と同じ答弁をこの国会でいただかなければならないというのは、特に第三セクターの問題が絡んでいる本改正の背景からすると甚だ遺憾であるということを申し上げたいと思います。

 さて、各首長さんが、第三セクター、これはそれぞれいろいろと今の経済状況、大変問題を抱えておられる。それが、必ずしも本人の意ではないところ、経済状況も反映して、土地の値下がりなどを含めてある。その大変な心配は六団体の皆様からもうかがい知るところであります。そういったときに、これをすべて地方自治体の首長さんの責任に果たして課していいのかどうかといったところが私はやはり問題があろうというふうに考えます。

 というのは、平成四年をピークにつくられました地方自治体の第三セクターでありますが、私は、九〇年代にあって、政府の進めてきた景気回復、雇用創出、これを地方単独事業でといったところがやはり限界にあると。あるいは第三セクターというものをもっともっと活用していけないかという国のさまざまな後押し、NTTの無利子融資などを含めた、あるいはリゾート法、あるいは民活法、さまざまな形で国はこれを後押ししてきたわけでありますので、これについて、地方自治体の首長さんにその責任を負ってもらうというのはやはり問題があろうというふうに考えます。この国の責任、第三セクターの今の行き詰まりあるいは破綻、そして先ほど平成十一年度末の二兆六千億円の損失補償が今幾らになっているかわからないというお話でありますが、これについて大臣の御所見を伺います。

■片山国務大臣
 バブルの前、バブルの最中、バブルの崩壊後、第三セクターがやり方として本当に一番いいんだみたいな時期が確かにありました。しかし、やるかやらないかは首長さんの判断が私はかなりあったと。ただ、首長さん全部の責任じゃありませんよ。しかし、それは相当部分は、やはり自分でやるかやらないか決めればいいんですから。

 ただ、今委員が言われたように、なるほど国の民活法やリゾート法もありました。NTT株の売却代金の無利子貸し付けもありました。そういうことで、景気回復の一助としてそういうことをやってくれということは、ある程度進めた時期もあると私は思いますので、それは私は今、経済財政諮問会議でも、いろいろなところで言っていますよ、その責任を全部地方団体に負わせるのは酷である、国も景気対策ということで頼んだではないかと。そうでしょう、地方団体についても。だから、そこのところは認識してもらわにゃいかぬということを言っていますよ。

 ただしかし、最終的には、それではつぶれるような第三セクターを全部すべての首長さんがつくったかというと、そうじゃありませんよね。それは何人か、何カ所かでありますから、そこは首長さんも責任を感じてもらわなければならないし、その首長さんのもとにあるというか、車の両輪であった議会の方もそこはよく考えてもらわにゃいかぬ、こういうふうに思っております。

武正委員
 十一年度末で七%ということでありますので、損失補償の対象団体数は確実にふえている。また、その額も、一体幾らになっているのかといったところは想像できないところでありますが、確実にふえているというふうに思うわけであります。

 また、今、議会というお話がありましたが、ここにやはり議会の責任あるいは監査委員の責任といったものも問われてくるわけでありますが、そうはいっても、地方自治体では首長さんのやはり絶大な権限があるというわけですので、今回の改正で、その対象を首長さんあるいは職員さんではなくて、機関が受けるというのは、この第三セクターについて国の責任をきちっと首長さんたちにもしっかりと表明した上で、これはやはり首長の、あるいは個人を対象というのは変えるべきではないというふうに思うわけであります。

 最後になりますけれども、地方の首長さんがあくまで決めたんだよというようなお話でありますが、各地方自治体に中央省庁からたくさんの方々が出向されております。今、総務省さんから地方自治体に何人の出向者がいらっしゃって、そして、その方々の中で訴訟対象になっておられる方がいらっしゃるかどうか、あるいは過去の例で、中央省庁であるこの総務省あるいは旧自治省から出向した職員さんでどの程度訴訟対象になっているのか、参考になる数字で結構ですので、お答えをお願いします。

■團政府参考人
 お答えいたします。

 御質問の地方公共団体への出向者数でございますが、ことしの分は現在取りまとめ中でございますが、昨年八月時点で、この時点では総務省は発足しておりませんで、旧郵政省、旧自治省、旧総務庁の合計で二百七十七人、そのうち、都道府県へ二百二十一人、市町村へ五十六人でございます。ことしは、取りまとめ中でございますが、余り大きな変更はないものというふうに考えております。

 それから、その出向者に対する、住民訴訟の対象になっているのかどうかという御質問でございますが、出向の場合は、御承知のとおり、国家公務員を辞職しまして、同じ身分で地方公共団体の職員として職務を執行しております。したがいまして、そういう職責や職務に応じまして住民訴訟の対象となることもあり得ることでございますけれども、同じ身分でやっておりますので、出向者ともともとの職員さんとの別での数字は把握しておりません。

武正委員
 把握をしていないというようなお話でありましたが、日経の地方経済レポートによりますと、このときの数字でありますが、何といっても中央省庁からの出向は自治省さんがトップであります。特に、自治省さんからの指定席というふうに言われておりますが、「副知事で十三人と全体の二八%、総務部長で二十人と四三%、財政課長で二十六人と五五%と圧倒的な割合を占める。」という記事であります。

 平成八年末、当時の白川自治大臣が、同一ポストに連続して出向はしないというような方針を出したわけなんですが、出向について自治省幹部の方は、そうはいっても、これだけ中央が補助金などを含めて地方自治体に対する影響力を持っているので、これを引き揚げるというのはなかなか難しいんだよというような答弁というか記事もあるわけなんですね。

 こういった中でありますが、私は、地方分権を進めようというこの小泉内閣にあって、その担当大臣である片山総務大臣は、やはり地方への出向というものを減らしていく、そして地方自治体のことは地方自治体に任せていく。先ほど言われたように、第三セクターだって地方の首長さんがやるかやらないか決めるんだ。決して、中央からいろいろな補助をしてやってくれ、やってくれという過去の過ちはもう繰り返さない。そのためにも、中央政府から地方への出向は、一番数の多い総務省が先頭を切って変えていく、これを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

■片山国務大臣
 旧自治省、今、旧郵政省、旧総務庁と一緒になっていますけれども、総務省が特定のポストを言って人を押しつけるようなことは一切やっておりません。我々は、対等、平等、協力の関係で、適任者が欲しいと知事さんなり市長さんが言われれば、それではお送りします、こういうことをやっているわけであります。

 私は、一つの地方団体が閉鎖的な人事交流をやるよりも、その地方団体以外のところから適任者を求めて、二年か三年かわかりませんけれども、そういう人事交流をやっていく方が刺激にもなるし、いろいろな関係がありませんから思い切ってやれるというようなところもあるし、そこは首長さんの御意向を体してやっているので、だから、それを今、委員から減らせと言われても、減らすかどうかわかりません。ふやすことは、特別にふやさなければいかぬとも思っておりませんが、あくまでも御要請、御注文に応じて対応していく。あくまでも我々は地方自治を守り育てる役所ですからね。そういうふうに考えております。

武正委員
 地方自治を守り育てる役所として、ぜひ地方のことは地方に任せるという小泉首相の所信表明を体現していただきたいことを御要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

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