【総務委員会】 消防法改正案について

2002年04月04日

武正委員
おはようございます。民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。  
閣法、そして衆法ということで、消防法改正について質疑をさせていただきます。  
昨年九月一日の新宿歌舞伎町ビル火災からはや七カ月が過ぎました。改めて、犠牲となられた四十四名の方々の御冥福をお祈り申し上げるところでございます。また、原因究明、そして再発防止策を願う御遺族の気持ちにこたえなければならない、これが立法府、行政府の責務であります。  
昨年十一月二十八日、民主党が消防法改正案を出した理由は、既に趣旨説明で述べておりますが、一、命令の義務化、二、消防庁の取り組みの強化、この二点がポイントでございます。  
昨年の火災発生後、東京消防庁が行った緊急査察で、八七・五%の小規模雑居ビルから違反が見つかったことは、日本は法治国家とは言えないという思いを強くいたしました。  
また、閣法では、依然、八条の二の共同防火管理について罰則を設けていないことにより、行政指導条項のままになっていることも指摘をし、以下、質疑を行わせていただきます。  
まず、消防は自治体消防ですよという大臣の御答弁が昨年もございました。ただ、消防庁さんにやりとりしますと、例えば、平成十 二年度の違反件数、これは命令の件数は八十四件と把握をされているんですけれども、それでは分母となる違反件数 は何件ですかと聞いても、わかりませんと。
そういった意味では、消防庁として全国の自治体消防のデータ収集が不 十分ではないかと考えるんですが、この点についての御答弁をお願いいたします。

■若松副大臣
武正委員の御質問にお答えいたします。  
消防庁といたしましては、消防行政に必要な事項に係る実態を把握し施策に反映するために、毎年度、まず施設の安全対策を目的とした防火対象物実態調査と、あと、いわゆる消防能力を把握するための市町村消防施設整備計画実態調査等、当面必要な統計調査を行っているところであります。  
さらに、社会情勢の変化に対応した消防関係統計の充実を図る必要があると考えておりまして、それは委員の御指摘のとおりでありまして、例えば、小規模雑居ビルの違反が多いという現状にかんがみまして、平成十四年から、防火対象物実態調査に告発の状況に係る調査項目を追加したところでございます。  
なお、今後、統計調査につきましては、平成十五年度にデータオンラインシステム、これを構築することを予定しておりまし て、このデータオンラインシステムを活用することによりまして、消防機関の効率的、効果的な統計調査が可能となると考えております。

武正委員
十五年度というお話でしたが、一刻を争うわけでございまして、アメリカを例にとれば、既に、防火協会の基準九〇一を基礎とした災害と民間人の死傷者を報告する分類システムを改正、改正、改定、改定を繰り返しております。火災報告システムというのをきちっと充実させておりまして、連邦の消防局には全米消防データセンターということで、火災データの収集、分析をきちっと行っているということでございまして、これについては、今の十四年度、十五年度というお話でしたが、一刻を争うといったことを指摘させていただきます。  
続きまして、これは消防庁長官さんとそれから警察庁さんにお伺いをしたいんですが、三月七日に独立行政法人で実験をされております、燃焼実験。テレビでも放映をされております。
また、警察庁も三月十七日に燃焼実験をしておりますが、それぞれ、その実験の目的、方法、そして結果について触れていただきたいと思います。特に警察におかれましては、火災捜査の目的についても付言をお願いいたします。

■石井政府参考人
お答え申し上げます。  
今委員御指摘の消防研究所において行いました実験でございますけれども、階段部分において火災が発生した場合の効果的な火災感知や消火の対策を検討することを目的として行ったものでございます。  
この実験の結果、階段火災における熱や煙の発生、拡散、延焼拡大の状況に関するデータが収集できたところでありまして、また、消火設備についても作動データの収集が行われたところでございます。  
現在、消防研究所におきまして四月末を目途に実験データの整理及び分析を行っているところでございまして、消防庁といたしましては、今後、感知器の種類ですとか設置位置など、消防設備の設置基準を検討するに当たりましてこの結果を十分に参考にしてまいりたいと思っております。

■大山政府参考人
放火や失火など犯罪の疑いのある火災が発生した場合におきまして、警察といたしましては所要の捜査を行い、出火原因を究明し、出火行為者を特定しその刑事責任を明らかにするとともに、建物管理者等の管理責任を明らかにすることを目的といたしております。  
御指摘のビル火災事件につきましては、現在警視庁において出火原因等を究明するため鋭意捜査中でございます。また、先月には、火災の発生した建物の内部を再現した建物を使いまして、火災の燃焼状況を解明するための燃焼実験を行ったところでございます。  
こうした実験結果あるいは鑑定結果等をもとに、今後出火原因等の究明に努めていくところでございます。

武正委員
過去の例でも、現場に災害研究者たちが入って、やはりその災害現場を見させてくださいと言っても、なかなか警察の捜査等の兼ね合いで難しいといったことが指摘をされております。
この当該雑居ビル事件、九月一日でございますが、新宿区役所の建築課の方々が現場に入れたのが十二月ということでございますので、九、十、十一、十二、四カ月目にやっと許されて中に入ることができております。  
今回、昨年末にも通知を出したりして、警察と消防が足並みをそろえて小規模雑居ビルの火災対策に当たろうといったことでの共同での安全点検などもやってきたわけなんですが、私はここでやはり、民主党案で提案をしておりますように、原因究明、再発防止の観点から、自治体からの依頼がなければ消防庁が調査できないという現行法制を、自治体からの依頼がなくても、例えば大規模火災、あるいは今回の小規模のビルであっても死傷者が四十四名、このような大きな被害をもたらしたような事件については、消防庁として独自に調査をするべきではないのかなというふうに考えるんですが、この点、大臣、御所見いかがでしょうか。

■片山国務大臣
今、委員の言われるような考え方も確かにあると思いますね。  
ただ、今の消防組織法の考え方が、戦後、あの法律ができたんですが、アメリカの自治体消防をまねていまして、大変自治体の意向を尊重する、国はできるだけ後ろに下がって応援する、こういう仕組みになっておりますから、調査をみずからはできないような、消防機関なり知事の要請に応じて、こうなっておりますけれども、大規模だとか特殊だとかそういうことについては、私は、消防庁みずから調査することもあり得ると思うんですよ。  
ただ、今の消防組織法の建前、関係の消防機関なり地方団体の意見を聞きまして、今後の貴重な検討課題にいたしたい、こういうように思っております。

武正委員
アメリカでは、既に、連邦政府アルコールたばこ銃器局、ATFに火災調査隊が置かれておりまして、ATFは十五人かそれ以上の隊員派遣を二十四時間以内に行う、九七年の出動件数は全米で三十九回、あくまでも地方消防局の支援である、聞き込みは警察と合同で行う、犯罪の起訴が確定すれば、収集された情報及び証拠は地方のATFに渡される、こういった形で、アメリカでも例えばFEMAに連邦消防局が統合されておるような形で、今、日本の消防はアメリカを範にというお話でしたけれども、このような形でアメリカでも工夫をしながら組織の見直しに取り組んでおります。この点についてぜひお取り組みをお願いしたいと思います。  

ただ、ここで、やはり警察と消防との関係で気になるところが、両省庁が交わしております覚書でございます。  
平成十四年三月六日付警察庁と消防庁の覚書では、三(二)、新法三十五条の十の照会は基準を策定し、地方に周知徹底し、警察庁の意見の申し入れには誠実に対応することとしている。
また、四(二)では、昭和六十一年覚書が引き続き有効であって、警察官の権限の行使に十分配慮するよう市町村長等を指導することというような項目が入っておるんですけれども、これは航空・鉄道事故調査委員会でもやはり指摘がされております。  

昨年一月末の日航機ニアミス事故のときにも、警察が先にボイスレコーダーを押収してしまったといったことで、同事故調査委員会の質疑でも、警察の捜査権、そして事故調査、事故調査の方は犯人捜しというよりもあくまでも原因究明、再発防止だ、ここのすみ分けというものを日本はそろそろきちっとしていくべきではないのかな、警察の方が大変御努力されているのはもう重々承知しておりますが、亡くなられた方、まして遺族の方にとっては、いち早く情報を知りたい、原因を知りたい、そして、二度とこういったことが起きてほしくない、これについての取り組みが必要と考えるんですが、再度、大臣には先ほども御答弁いただいておりますが、いま一度、こういった、アメリカも既にやっておりますよといったことを踏まえての御決意をお願いいたします。

■片山国務大臣
警察の関係は、これはいろいろありますので、十分これから検討していきたいと思いますが、今、武正委員言われたアメリカの例、こういうのも参考にしていかなければならないと思います。  
そこで、消防庁の中につくるのか、消防研究所を使うのか、あるいは別にそういう調査機関、審議機関みたいなものをつくってこれを利用するのか、いずれにせよ、十分な検討をし、警察の関係も調整しながら前向きに進めてまいりたいと思っております。

武正委員
新宿雑居ビル事件を検討する座談会等、あるいはいろいろな専門家の方が寄せております「近代消防」の十二月号にも、ある消防経験者の方がこんなことを書いておりまして、それは、そういった火災が起きますと、翌日の新聞には、警察発表と警察からのいろいろな発表が新聞に出る。その消防の経験者の方は、マスコミに申し入れをしたと。消防法ですか、三十一条、消防には火災原因と火災損害調査を行う権限があるんだ。
ですから、消防がしっかり有している調査権をもとに調査をした結果を新聞で発表してください、そういった申し入れをしたら、ある新聞が、消防署発表という形で載せてくれたと言っておりまして、消防ができる権限というものがきちっと、まだまだ認識されていないといったこともあろうかと思っておりますので、警察とまた消防、お互い協力しながらも、消防の役割というのはまだまだ、もっともっと重いものがあるので、ぜひお取り組みをお願いしたいと思います。  

さて、新宿区役所によりますと、十二月に警察の方が当該ビル一階のかぎを所有者に返したので、慌てて改善命令を出し、五、六回区役所に来てもらって協議をし、二月四日に、改善については納得をしたというような形でありますが、それを受けて、三月二十二日、使用禁止命令を出すことができたと聞いております。
実に、ホテルニュージャパン以来二十年ぶりの使用禁止命令でございまして、これができたのも、安全点検、立入検査を警察、消防で共同でできた、これに新宿区役所も共同でということでございます。  
閣法には、関係省庁との連携という文字もあるんですけれども、国土交通省さん、きょうは政務官にもおいでいただいておりますが、そうはいっても、定期報告は三年に一回の確率が五〇%以下、あるいは小規模雑居ビルではその半分ではないのかとか、あるいは所有者にその定期報告の認識がないとか、こういったことも言われておりますし、この定期報告の実を上げるにはどうしたらいいのかといったことについて、政務官、御答弁をお願いいたします。

■菅大臣政務官
まさに委員のおっしゃるとおりであるというふうに思っております。  
我が省としても、今回のこの火災を教訓として国土交通省内に設置をした小規模雑居ビルの建築防火安全対策検討委員会においても、制度の周知の徹底や関係機関との連携など、定期調査報告制度の運用強化、このことが実は指摘をされておりますので、地方公共団体における消防等の関係部局や地域の商店街などと連携した建物所有者への制度の周知の徹底、そして、建築士等の関係団体に相談に応じることのできるような体制の整備、こういうものに努めてまいりたいと思っております。

武正委員
昨年の委員会での議論でも出ておりますのは、やはり、二方向避難、今回、フロアが百平米以下でしたので対象外ということでございました。
これは、用途別に二方向避難路が必要なのと除外規定があるのがある、この用途も申請のときと変わってしまう、所有者も変わってしまう、これはもう見直しが必要ではないかといったことも既に指摘されておりますし、また、スプリンクラーなどの設置、あるいは防火対策の根幹に関する事項については新築段階から整備させるよう法改正が必要だ、これは日本防炎協会理事長次郎丸さんが「近代消防」十一月号で述べているところであります。
これはやはり、国土交通省さんが建築基準法の見直し、あるいは省令の見直しによって取り組んでいただかないと、消防庁だけでは、あるいは総務省だけでは難しいところが多々あると思うんですが、再度、政務官の御決意をお願いいたします。

■菅大臣政務官
ぜひ連携をしてやっていきたいと思います。

武正委員
今度は、政府から行政機関の個人情報保護法が国会に提出されておりますが、これは、特定行政庁に伺ったとき、この法律ができてしまうと、例えば、今回警察からいただいた明星56ビルの見取り図とか、あるいは企業名とか、オーナーとか持ち主とか、その住所とか電話番号とか連絡先とか、そういったものが警察からもらえなくなるのではないかということを危惧する声が上がっておりました。  
これについて、警察庁さんそして総務大臣から、それぞれ御答弁をお願いいたします。

■大山政府参考人
警察といたしましては、先ほど申し上げましたように、放火、失火等の犯罪の疑いのある場合には、その刑事責任追及のため、消防を含めました関係機関とも十分連携し、捜査を行っているところであります。
今後とも、関係法令に基づきまして、関係機関と緊密な連携あるいは協力を行ってまいる所存でございます。

■片山国務大臣
三月の半ばに行政機関個人情報保護法案を国会に出させていただいております。そのうち御審議をいただくことになると思いますけれども。  
この場合、個人情報は保護するんですけれども、行政機関間で、法令に基づく事務の執行で、その必要な限度でしかも十分な理由があれば情報の提供を受けることができることになると思います。  
ただ、今回のこの雑居ビルや何かの場合には、国の機関じゃないのですね、都道府県警察と消防機関の関係ですから。
これは、今回の法律ではなくて、地方の、地方団体の条例でどういうふうに扱われるか、こういうことになると思いますので、その辺も関係の地方団体とは連携をとってまいりたい、こういうふうに思っております。

武正委員
やはり法律ができて、そして条例ができる、あるいは条例についてはモデル条例を当然のように御用意されるのが過去の例でございますので、ぜひその点、御留意をお願いしたいと思います。  
というのは、ここで先ほど触れました警察の捜査権といったものとの兼ね合いが出てくるものですから、そうすると、なかなか警察の方からの情報がとりづらくなるのではないかという危惧が出てこようかと思うのですね。その点をよろしくお願いしたいと思います。  
さて、これまで、現行設備点検につきましての有資格者が二十万人いらっしゃる、これに八十万人の消防設備士を加えて、消防設備の点検報告を義務化しているのが現行法制でございますが、閣法では、これをさらに、上の資格を設けようというようなことでございます。  

ただ、これまで、その二十万人の有資格者の講習は日本消防設備安全センターのみで行われております。
これは公益法人の枠を外しているのですが、依然この公益法人一つのみ。
それは、やはり税金の問題、あるいはさまざまな告示あるいは基準等を含めまして民間が参入しにくいといったことが指摘をされておりますが、このまま、また今回の閣法の改正で今までの消防設備点検者よりもある面上位的な点検者を設ける場合、またこの唯一の公益法人のみで講習、しかも試験というのは講習を終えた後の考査みたいなものですね、そういう形でいってしまうのではないかということが危惧されます。  
民間参入をしやすくするべきと考えますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

■若松副大臣
まず、現在の制度でございますが、今委員御指摘の消防設備点検資格者の講習を行う指定講習機関として、先ほど指摘された公益法人のほかにも、現制度では、「講習の事務を適確に実施するための組織体制を有し、責任と権限が明確にされていること。」等の法令で定める要件を満たせば指定される、このように制度がなっておりまして、現在でも民間の参入が可能となっております。  
一方、このような講習につきまして、先月、三月二十九日に閣議決定されました公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画、ここにおきましては、法令の基準に適合する登録機関が講習を実施する方針を示されたということになりまして、現在の指定講習機関につきましても、今後登録講習機関に改めていくというふうに考えております。  
今回のこの法改正案で導入いたします定期点検報告制度の具体的なあり方につきましては、ただいま御紹介いたしました閣議決定の趣旨を踏まえて、今後関係方面と意見調整をしながら検討してまいる所存でございまして、その際には、例えば講習を行う機関について民間参入が可能になるように配慮してまいりたいと考えております。

武正委員
大臣に続けて今の点をお聞きしたいのですが、アメリカでは、損害保険代理店の方がビルのチェックをしているというのを聞くのですね。  これは、二つの考え方があると思います。もし、そこのビルの契約をその損害保険代理店がとっているとすると、そこで火災がなければ、親会社と、アメリカは非常に独立性の高い損害保険代理店ですので、損害率が低ければ、それに応じて歩合が入ってくるから、一生懸命検査をする。こういう見方と、やはり契約が欲しいからここは目をつぶってくれよと言われて、なあなあになってしまうのかな。この二つの面が考えられるのです。  でも、やはり損害保険代理業にビルの点検をお願いしていく、あるいはそこの参入を促していく、これも一つの考え方ではないかなと思うのですが、この点について、大臣、先ほどの副大臣の御答弁も含めてお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

■片山国務大臣
アメリカの実態がよくわかりませんが、アメリカというのは保険が進んだ国ですね、いろいろな意味で。  恐らく、今武正委員言われたことなら、前者だろうと思いますよ、アメリカは。しかし、日本はまだアメリカまでいっていませんね。その辺は、十分今後総体的にいろいろな状況を見ながら検討する必要があると思いますね。

武正委員
私も、損害保険代理業の方、よく知っておりますが、今金融ビッグバンを受けまして非常に淘汰が進んでおります。自分のところでコンピューターを入れて、自分のところで保険の帳票を打ち出したりしておりまして、今、アメリカのそういった保険代理業、アメリカではほとんど弁護士さんやそのぐらいと同じぐらいの資格を有するという大変高い位を持っておるのですが、そちらの方へ向かおうということでございますので、ぜひ、日本損害保険業協会とも御協議の上、そちらの育成も、育成と言ったらあれですけれども、含めてお取り組みをお願いしたいというふうに思います。  最後になりますが、共同防火管理体制についてお伺いをいたします。  明星56ビルは、九九年十月の査察時の八項目の指摘に、消防庁、新宿消防署がやったのですが、共同防火管理についても指摘していないのですね。このことは、昨年当委員会で指摘をいたしました。つまり、消防署も余り、この共同防火管理、八条の二にあるのですが、なかなかこれについても指摘もしていない、こういった実態なんですね。  これは、昭和四十五、六年のときの改正で、その前には罰則規定があったのですが、それを外したといった改正があったということで、これは元神戸市の葺合消防署長の森本さんが「近代消防」十一月号で指摘しておるのですが、千日デパートビル火災訴訟において、共同防火管理体制をとらなかったことにつき、この最も基本的な法令上の義務を懈怠したがため、大惨事を招いたとされた。つまり、消防法八条の二は行政指導条項であり、全く強制力を持たない。そもそも強固な防火管理を必要とするところにこの共同防火管理というものを設けたのに、この防火管理実施義務違反には、普通の防火管理実施義務違反には罰則があるにもかかわらず、共同防火管理義務違反に罰則がないというのは、およそ法的常識に欠けると言うほかない。明らかに立法ミスである。  こういった指摘があるのですが、副大臣、これについての御所見をお願いいたします。

■若松副大臣
今、第八条の二のお話がございましたが、この小規模雑居ビル、非常にいろいろな権利者が錯綜している状況がありまして、特定の一人にこの防火管理をさせるということは極めて非現実な状況であるというふうに理解しております。  そこで、今委員が御指摘になったこの消防法の第八条の二でありますが、今御指摘の点も私どもは認識している次第であります。  そういう状況にありまして、消防審議会、これの答申が実は出ておりまして、特に二点指摘がございます。一点目は、共同防火管理の協議事項におきまして、階段等の共用部分の責任者の明確化、これを図ること。二つ目として、共同防火管理協議会の代表者を所有権を有する等の主要な管理権原者とすること等が提言されておりまして、こういった提言を踏まえまして、今後、省令改正などの必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

武正委員
横浜国立大学の上原名誉教授が、「近代消防」十一月号でこう指摘をしております。「中央官庁はそれぞれ都道府県の担当部署に通知を出し、」中略「お互い何の協調や連携もなくである。中央官庁は一片の通知を出せばそれで済む。 これまでに何度この種の通知が出されたことだろう。この方法で問題が解決した例を聞かない。災害事例に真剣に学び、ふさわしい対応をとるという姿勢が全く見られない。」  このような厳しい指摘もあるわけでありまして、私も、おくればせながら、昨日現場を見てまいりました。前はなかなか、行っても中には入れませんよというお話もあったんですけれども、ちょっと場所がわからなかったのでうろうろしていたんですね。同じような雑居ビルがたくさんあります。その中にぽつんとありまして、シャッターが閉まっていて、禁止命令の紙がぽんと張ってある。本当にこのまま営業してもおかしくないというたたずまいでありました。ここで四十四名の方が亡くなったなんて到底信じられない。それが今のコマ劇場のそばの明星56ビルの実態なんですね。  これにつきまして、大臣には先ほど来さまざま御答弁いただいておりますが、再度、警察との協議も含めて、そしてアメリカからの事例も含めて、この明星56ビル、そしてまた国土交通省さんとの協議も含めて、もう三度目の新宿雑居ビルの事件を絶対起こさないぞという御決意を聞いて、終わりにさせていただきたいと思います。

■片山国務大臣
四十四名もあの狭いところでたちまちにして亡くなるというのは、大変な惨事ですよ。だから私は、あの事件が起きまして、消防庁だけでは限界があるんですね、消防だけでは。建築基準法なり、あるいは風俗営業等取締法なり、警察や国土交通省、そういうところと十分連携をとる、あるいは厚生労働省と。こういうことを言いまして、この消防法がまとまりましたけれども、今後、ああいう惨事を二度と起こさない決意のもとに十分取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

武正委員
以上で終わります。

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