【総務委員会】NHK予算について

2003年03月19日

武正委員
民主党の武正公一でございます。
まず、海老沢会長にお伺いをいたしますが、平成十二年、二〇〇〇年三月十六日の衆議院逓信委員会で、会長はこのような御発言をされております。いわゆるCS百十度の件でございますが、データ通信に関してですが、「このCSの百十度のトラポンを使わせてもらって、そしてきめ細かい地図とか図形も使った情報あるいは番組広報、そういうものを、営利的でなくて公共放送にふさわしいものを少し幅広くやっていったらどうかということは私個人として今考えております。」と。

これについて、当時、小坂政務次官がこのように答えられています。その一連の流れの中でありますが、「テレビジョン放送の免許を受けた者がデータ放送等の周波数を自由に使える、」中略がありまして、必ずしもやはりこれは消費者の利益につながらないのではないか、また、電波の有効利用という面からも我が国においてはなかなか難しい面があるということで、その場での質疑では小坂政務次官もそれをある面否定をされた。

つけ加えて、「この点につきましては、希少有限な電波の公平かつ能率的な利用の観点から、現在のようなあらかじめ決められた周波数帯を使用することが適当ではないか、」こういったやりとりがあり、その後、秋に向けてこのCS百十度、トラポンを使ってのデータ通信、NHKとして取り組みたいということについての論争があったわけでございます。

海老沢会長からも、各新聞で、私は問題提起をしているんですというようなコメントもあったりして、さまざまなやりとりがありましたが、秋には、これについてはあきらめる、撤回というような報道がされたわけでございますが、今現在、このデータ通信への参入あるいはCS百十度等を利用すること、これについて会長はどのようにお考えでございますか。



■海老沢参考人

当時、BSデジタル放送、そして百十度にCSも乗り出してくる、そういう時代背景がありました。

私ども、BSデジタル放送の中でデータ放送が非常にメリットがあるということで今やっておるわけでありますけれども、帯域の幅が非常に狭い、二スロットしかない。これでは、例えば阪神・淡路大震災のときのように、安否情報が非常にたくさん入ってきた場合に処理できない。そういう面で、そういう安否情報なり非常事態にいろいろなデータを送るためには、やはり十なり十数スロットがないと視聴者の要望に十分こたえることができない。そういう面で、CS百十度ならば非常に幅広くいただけるんではなかろうか、それならばCS百十度を我々も借りてやれば視聴者のためになるだろう、そういう発言をしたわけであります。

その後、NHKの業務範囲といいますか、非常にNHKはそれではやり過ぎではなかろうかというようないろいろな意見が出ました。しかし、そういう中で今、これをなかなか無理だということで私も断念したわけでありますけれども、その後、この二スロットの中で今いろいろ工夫をしながら、技術の開発を進めながら、二スロットの中でもかなりの情報を出すことができるようになりました。しかし、まだそれでは十分ではありません。

そういう中で、今のこのBSのアナログ放送をいつ打ち切るのかという議論の中で、私ども、二〇〇七年の段階で今の衛星が寿命が切れますが、しかし、その段階でもやはり五百万世帯前後がデジタル化しないで残るだろうと。したがって、さらに、二〇〇七年ごろにまた新しい衛星を使って、二〇一一年の地上デジタル放送が始まる時期まで、そこまで継続していってもらいたいという要望を総務省に出して、その方向で今、最終的な詰めが行われるというふうに聞いております。

したがって、それが、我々の主張が認められますと、今、BSのアナログのハイビジョンの部分がそのまま残りますので、その部分を使わせてもらえば十分データ放送の役割を果たすことができるだろう、そう思って、そういう要望を今出しているところであります。
今のところ、CS百十度に我々が参入することは考えておりません。

武正委員

今、総務省に要望を出しているということでございまして、総務大臣には、ここではそれに対してはお答えをお聞きいたしません。ただ、そのCS百十度のときも、NHKがデータ放送、データ通信に参入するについてはやはり法律の改正が必要ではないかという議論もございました。あるいはNHKの肥大化を懸念する声もございました。これはさまざま、NTTからもあったと聞いております。
 
こういったことでございまして、NHKの会長として、NHKを経営されるその陣頭指揮に立っておられて、多分、ある面もどかしさも感じるところもあろうかなというふうに思っております。ある面やはり法律での縛り、そしてまた、これは逆に民放からは、NHKは優遇されているんじゃないかと。法律では縛られているというもどかしさも感じながら、民放からは、いや、NHK優遇だよと。そういった中で、会長もこうして年に一度、二度と予算、決算で国会に御登場いただいているんですが、なかなか言いたいことが発言できないというようなもどかしさを実は思っておられるんではないかなというふうに拝察します。
 
そういった中で、既に石原大臣や小泉首相からも、NHK独法化、特殊法人改革でどうか、もっと自由にやったらどうかというような発言もありました。まあこれはその後、矛がおさまっております。あるいはまた、経済産業研究所の池田信夫上席研究員からは、NHKのネット放送については規制を全面的に撤廃し、同時に株式会社化を検討すべきだというような、こういった提起もあります。やはりNHKのあり方について、今回、放送政策研究会から最終報告も出ておりますが、まだまだ、もっと大きなくくりで、放送法、電波法も絡めて議論をしていくべきときではないかなというふうに思います。
 
そういった中で、実は一九六二年、昭和三十七年十月、郵政大臣から諮問を受けまして、臨放調、臨時放送関係法制調査会、もう今から四十年前でありますが、民放連そしてNHKもそれぞれ要望を出しております。
 
民放連からは、NHKと民放二本立てでいくべし、あるいは、NHKは別の法律をつくるべし、編集の自由を確立すべし、免許制度を再検討すべし、いわゆる施設免許から事業免許にすべし、あるいは、放送に関する独立した強力な特別審議会、これが必要だ、そしてまた、NHKの現行の受信契約制の見直しが必要、民放も海外放送を行えるようにしてほしい、こういった要望が出ておりましたが、このとき、NHKさんからはどのような要望、意見を出されたかお話をいただけますでしょうか。



■山田参考人

お答え申し上げます。
NHKは、その翌年、一九六三年十一月、臨時放送関係法制調査会という調査会の意見聴取に対しまして、「日本放送協会の放送法制に関する意見」ということで、放送に関する基本問題、NHKや民放に関する事項など、NHKの放送法制に関する基本的な考え方を陳述しております。
 
要約して申し上げますと、その際の意見では、放送行政について次のような意見を述べております。
放送に関する行政につきましては、法律による行政の原則を確立し、放送行政の基準となる事項はもとより、放送事業者の権利義務に関する事項は、原則として、法律の定めるところによるものとすべきである。次に、放送行政には、特に、長期的見通しに立つ計画性と、政治的、経済的、社会的圧力からの中立性が要求される。さらに、放送行政の管理運営に当たる行政機関としては、放送行政に計画性と中立性を与え、客観的に公正な行政を行わせるため、郵政省の外局として放送委員会を設置するのが妥当であるというふうな意見を、これは、その当時としては、NHKとしてこういう意見だったということであります。



武正委員

放送についてのさまざまな根拠規定などを法定化すべきということや、郵政省の外局としての放送委員会、NHKからもこういうような要望、意見が出されておりました。

それを受けて答申として出てきたのが四本ほどありましたが、その中で、特に、独立した組織をつくっていこうよというような答申が出てまいりました。これは、番組審議機関やあるいは世論調査機関というのが望ましいというようなことでありまして、またあと、放送行政の公正中立と一貫性を保つため、放送行政に関する委員会を設置し、郵政大臣は放送局免許などの基本的事項について委員会の議決に基づいてのみ権限を行使するという、そういった答申も出ました。
 
特にこの放送行政に関する委員会は、いわゆる八条委員会をさらに強力なものにしようと、今のように。委員会が議決をしなければ当時の郵政大臣はそれについて権限を行使できないというような答申が出たわけでございますが、また、三条委員会にしろという一部意見の、少数意見でありましたが、そういった意見もありました。
 
私は、先ほどのNHKの会長のデータ通信に関する要望が今総務省に出されていることも含めまして、やはり総務省がこうした、例えばチャンネルプランの法的根拠についての法定化の要望も、実は懇談会から昭和六十二年にも出されております。こうした点はやはり独立性の高い委員会で判断をすべしというふうに考えるのでありますが、この答申、結局、当時は廃案になってしまったんですが、民放連、NHKからの要望、そしてこうした答申、これについて、総務大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。



■片山国務大臣

一九六四年に答申が出ているんですね。昭和三十九年ですから、相当な昔といえば昔でございますけれども、そのときに、今武正委員からお話しのように、三条委員会か八条委員会か、八条委員会の方がいいだろうと。三条委員会というのは簡単に言うと行政委員会ですから、八条委員会というのはこれは附属機関ですから、審議会ですからね。八条委員会でいいけれども、八条委員会が言ったらその決めたとおりに郵政大臣はやれ、こういうことなんですね。だからこれも、八条機関としては、なかなかそういうことを義務づけるということは八条機関の性格からいっていかがかな、こういう感じはするんです。
 
そこで、現在、電波監理審議会が御承知のようにありますよね。ここで我々がいろいろな電波に関するようなことについては諮問して答申をいただくんですが、答申どおりやっているんですよ、法律は、議決に基づきとかそのとおりやれとは書いてありませんけれどもね。だから、精神は、私はこのときの答申の精神を生かしている、こういうことでございます。
 
それから、アメリカにはいろいろな委員会があるとよく言われるんですが、アメリカは大統領制ですからね、大統領に権限が集中し過ぎているんですよ。だから、委員会をいろいろつくって分けるんですよ。日本は、もう何度も同じことを言いますけれども、議院内閣制ですから、総理はやはり、あれは閣議の議長みたいなものですから、簡単に言うと。今はもうちょっと昔よりは力がありますけれどもね。任命権はもちろんある、人事の。
 
そういうことでございますが、私は、委員会を日本に相当持ち込むのがいいのかどうかということは、前からこう思っておりまして、しかし、御意見は御意見として、今後とも中長期で検討すべきだ、こう思っております。
 
NHKの御要請については今どうするか十分考えておりまして、電波は有限ですから、電波の調査、公表については去年の電波法の改正でお認めいただきました。我々はそれに基づいて、やはり電波の再配分のルールをつくっていこう。これから電波需要はどんどんふえるわけですから、そういうことも考えておりまして、今回も一部電波法の改正を出させていただきましたけれども、より大きい電波法の改正が次の課題だ、こういうふうに思っておりますので、また十分な御議論をさせていただきたい、こう思っております。



武正委員

武正委員 昨年、FCCからのレポートも出まして、これまでの周波数は希少資源である、政府による配給が必要といった考えから、周波数は使い方によって供給を増加でき、政府は周波数へのアクセスを調整するというように、アメリカあるいはイギリスも今さまざまな改革をしております。日本はもっともっと大胆な改革に取り組むべきでございまして、特に放送の独立性を堅持するためには、私は、一昨年の一月六日ですか、一府十二省庁に統合されたわけですから、より強力な中央省庁になっているゆえに、準立法、準司法的なものは独立した行政委員会にすべしというふうに考え、再度再度このことを申し上げ、私の質問等を終わりにします。
ありがとうございました。

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