2004年1月22日 【衆議院本会議代表質問】

■河野洋平議長
国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。武正公一君。

武正公一
民主党・無所属クラブの武正公一です。
小泉首相の施政方針演説について、総理に質問を行います。(拍手)

冒頭、きのうの松本議員への再答弁、再々答弁に触れます。
再答弁で、質問に全部触れている、答弁に不満があることはわかります、委員会でお願いします、再々答弁で、答えています、本会議と委員会は違います、議運で協議してくださいとは、国会軽視も甚だしい、まさに問答無用の態度であります。(拍手)

首相の言う国論を二分するイラク派遣だからこそ、丁寧な質疑が求められるのではないでしょうか。
総理は、所信表明演説で憲法前文に触れました。では、憲法第四十一条に何と書いてありますか。国会は、国権の最高機関で、国の唯一の立法機関であると。なぜか。言うまでもなく、国民主権であるから。その代表者が集うのが国会であります。

私たちは国会で、行政の、内閣のチェックを行います。三権分立であります。行政と国会は、お互い牽制し合うようになっています。本会議や委員会の質疑を通じてであります。それを封じたのであります。許されません。質問権の制約であります。御所見を伺います。(拍手)

既に予兆はありました。さきの特別国会で、衆議院選挙後にもかかわらず、総理所信表明演説がなかったわけであります。そして、イラクへの自衛隊派遣、その基本計画の閣議決定という時期にもかかわらず、臨時国会開催要求を拒否いたしました。首相には、国会の権威を冒涜したことへの陳謝を求めます。(拍手)

首相は、三年前、就任時に、国民に痛みをと言いました。私は、この場に初めて立ったとき、国民に痛みをという痛みは、安易に一人一人の国民に求めちゃいけない、痛みを求めるべき相手は、族議員であり、縦割り省庁であり、それにぶら下がっている業界団体、そして特殊法人などであると。今もその気持ちは変わりません。増税、減税取りやめ、そして支給額削減の前に、歳出の見直しです。それが相変わらずできていません。

日本経済、企業収益の改善は喜ばしいことです。しかし、それら企業収益のかなりの部分が国外で計上されています。企業の収益をあらわす指標は連結ベースであり、日本以外の国で稼いだ金額も加算されることを忘れるべきではありません。日本のマクロの企業業績回復と地方経済の回復は、同じ意味ではないからであります。
小泉改革の政策が、市場への信頼を高め、市場の厚みを増すことにつながっていないのです。そのためには、民主党が求める縦割り行政の打破が必要なのであります。(拍手)

質問に入ります。
雇用政策について伺います。

この春高校を卒業する高校生の内定率が五〇%を切り、大学生の就職率、これが七三・五%、過去最悪であったこと、昨年十二月、ことし一月、相次いで報じられました。若年者雇用については、職業教育を充実させ、トライアル雇用などの導入が必要であります。

また、高校の中退者約九万人の過半数は高校一年生です。これは、中学の進路指導に問題があると言えないでしょうか。そして、小中高と、将来どんな職業につくのかということを考えさせる指南役として、ガイダンスカウンセラーが必要です。これは、民主党が法案を提出したものであります。

ただし、卒業しても、就職して、また再教育を受けて、そして職につく、これには教育政策と雇用政策の連携が必要です。文部科学大臣と厚生労働大臣は連携をと言いますが、縦割り行政の壁が立ちはだかります。六月、経済産業省が主導して四省庁の会合を立ち上げても、前述の就職率のありさまです。また、求職情報を自治体に提供して、自治体の雇用施策に寄与することについても実現できていません。数値目標の設定など、総合的な取り組みには首相の強いリーダーシップが求められますが、御所見を伺います。

さらに、ハローワークで発表する就職率は約三〇%ですが、就職者を新規求職者で割った数字で、求職者で割ると実際は約六%です。首相の選挙区のある神奈川県、私の住む埼玉県はその半分、約三%台です。求人求職ミスマッチの正直な数字です。これは、国民年金の未納者の割合、これを未納率と言わず、払った人の割合、検認率を発表することと同じ、ごまかしであります。

雇用労働市場に信頼感をもたらすために、わかりやすさ、透明さが必要です。きのうの答弁で首相は、三年でサービス分野の雇用は二百万人ふえたと言いましたが、再答弁で何と言ったでしょうか。ふえたのは百五十五万人、減ったのは百五十七万人では、ふえた額もサバを読み、結局二万人減ったのであります。これでは雇用労働市場に信頼感は生まれません。正直に国民に伝える努力が必要と考えますが、御所見を伺います。(拍手)

年金改革について聞きます。
選挙後ようやく出された厚生労働省案も、担当大臣みずから、長期的な視点に立っていないことを認めたものであります。政府・与党が年末合意した、保険料率一八・三五%への引き上げ、支給額は五〇%を確保、これが抜本改革なのですか。年内に取りまとめるならば、その方向性を示してください。また、支給額五〇%は今後も必ず維持できるんでしょうか、確保できるんでしょうか。御所見を伺います。

四月から国民年金への国の拠出を二分の一に引き上げる財源は、取りやすいところから取る年金課税、そして働き盛り世代直撃の三兆五千億円に上る定率減税廃止であります。ビジョンが見えません。

国民の皆さんが怒っているのは、納めた保険料がいいかげんに使われたことです。厚労省の試算では、グリーンピアと住宅融資事業で計一兆三千百億円の損失を出しました。グリーンピア十三施設のうち、地元自治体が買うのは二つで、あとは引き受けてもくれません。この損失の責任は、だれがどうとるんでしょうか、お答えください。特別国会で岡田幹事長が求めた調査報告書を出すべきと考えますが、その考えはありますか。

国民が不安に思うのが、納めたお金の運用で昨年度末で過去最悪の六兆円の赤字を計上したことです。欧米では、株式運用を控えたり、リスクを分散したり、第三者の専門家に任せています。首相の言う郵政民営化による財政投融資改革の内実が、財務省資金運用部に預けないかわりに各省庁でお金の運用を行うのでは、国民の不安は解消されません。資金運用の透明性と信頼性をどう確保するのか、御所見を伺います。

介護保険は、昨年四月、改定前に比べ一三・一%保険料率が上がりました。保険料負担を現行の四十歳以上から二十歳以上にしようと政府は検討中とも聞きます。医療保険も二割から三割に上がりました。社会保障保険料の月額換算が年収換算に変わったこともあわせ、年収五百万円の四人家族で約十万円の負担増という試算があります。これに定率減税廃止と年金保険料引き上げが加わります。

実は、こうした法定福利関連諸制度転換により、事業主負担も増加しています。中小企業経営者が厚生年金保険料などの支払いのため、銀行から融資を受けているという実態を御存じでしょうか。これでは雇用抑制につながりかねません。御所見を伺います。

民主党案は、基礎年金部分の財源捻出は歳出見直しで可能と、将来、景気が回復すれば全額消費税で賄うことを掲げました。また、歳出削減の具体策として、特殊法人改革、公共事業抑制、国会議員の定数削減、公務員人件費の一〇%削減等を挙げています。

選挙中、首相は、民主党は役人集団の票を当てにしているから役所の構造改革ができないと言われましたが、民主党は公務員人件費削減を掲げ、自民党はそれに言及をしていません。総理の批判はこの点当たらないと思いますが、御所見を伺います。(拍手)

昨年十二月二十二日、道路関係四公団民営化推進委員会の田中委員長代理と松田委員が辞任をされました。一昨年の委員会答申を基本的に尊重するとの閣議決定を総理が守らなかったことに対する抗議であります。総理は、基本的に尊重したと言いますが、尊重した部分はどこですか。具体的にお答えください。

きのうの答弁では、債務は確実に返済と言っていますが、四十兆円以外に債務が拡大するという民営化推進委員会田中委員長代理の指摘をどう受けとめますか。お答えいただきたいと思います。

民営化委員会は、やっているふりを国民に示すためのポーズだったのでしょうか。民主党は、委員会発足時、行政により強い力を行使できる国家行政組織法のいわゆる三条委員会を求めましたが、政府・与党は、より力の弱い八条委員会にしました。

当委員会に限らず、行政改革に逆行の一点張りで拒否をし続けていますが、その真の理由は、担当省庁、担当大臣のさじかげんがきかなくなることを、そして族議員の無理を聞けなくなることを恐れてのものではないですか。御所見を伺います。(拍手)

また、八条委員会といっても、内閣総理大臣への勧告権が設けられました。それを初めて昨年十月二十八日用いて、法律案の中身を委員会にゆとりを持って国交省が提出するように首相の指示を求めたのに、それが来たのは二人の委員が辞任を発表する日の朝、十二月二十二日であったのはなぜですか。なぜもっと前に出せなかったのですか。一昨年半年で三十七回、昨年末までに四十九回の会合を重ねた委員の誠意に対して、余りにも失礼であります。

結局、一昨年七月発足の与党三百人以上のメンバーによる高速道路建設推進議員連盟の建設ありきではなかったんでしょうか。

おまけに、二十兆円を削って十・五兆円にしたと胸を張るうちの新直轄方式三兆円分は、最も不採算のDランクからつくるというむちゃくちゃぶりです。コスト削減と言うけれども、非常電話一台二百五十万円などの個別の単価の引き下げは、このコスト削減の計算に含まれているんでしょうか。公団が公正取引委員会から指摘を受けたファミリー企業を初めとする談合体質をどう変えるのか。以上、総理の所見を伺います。(拍手)

個別路線の建設の判断をする国幹審も、質疑時間は、委員二十名で四十五分間足らずでした。抜本的見直し区間は百四十三キロのみ、それも、つくらないとは言っていない。結局、丸々二千キロ全部つくるなら、なぜ、政権公約、マニフェストに書かなかったのですか。国民をだますことになりませんか。御所見を伺います。(拍手)

民主党案に触れます。
道路公団廃止、高速道路原則無料化案は、小泉首相が就任当時盛んに触れ、最近とんと触れなくなった道路特定財源の一般財源化もあわせて盛り込んだものであります。政府にある三十二の特別会計、総額三百七十兆円になるにもかかわらず、各省庁が自由に使える財布として、国会もノーチェックであります。自民党、公明党両党ともこの改革をマニフェストにうたっていますが、どう具体化するんでしょうか。総理は、道路特定財源の一般財源化の旗をおろしたのですか。伺います。

三位一体改革について伺います。
総理は、平成十八年度までに四兆円の補助金削減の数値目標を掲げ、十六年度、一兆円の削減をうたいました。しかし、社会保障関係の補助金で一兆円以上の大幅増があり、合計の補助金額は増額しているのではありませんか。合わせて幾ら減ったのか、ふえたのか、明確にお答えいただきたいと思います。

具体的な項目も、地方にとっては、歳出を削りがたい、使途に自由度のない項目が並んでいます。こうした項目を選んだ理由は何なのでしょうか。

民主党は、約十八兆円の補助金を削減し、全国知事会も九兆円の補助金廃止を提言しています。四兆円というのは余りにも少ない。補助金削減の数字を見直すつもりはありませんか。

税源移譲については、約四千二百億円の所得譲与税という暫定措置にとどめています。税源移譲は平成十八年度までにどのような規模を想定しているのですか、お示しください。

郵政民営化について伺います。
首相は、この本会議場で、信書便法案、郵政公社化法案提出時に、民営化の一里塚と言い、総務委員会に出席したときは、民営化の第一歩と後退し、政府提出法案も修正に応じました。具体的には、公社の資本金一兆七千億円を十兆円にふやすために内部留保を認める趣旨の改正であります。

十兆円とは、二百五十兆円の郵貯残高の四%、すなわちBIS規制を守るためであります。もしBIS規制にこだわるなら、一兆七千億円の二十五倍の四十二兆円まで郵貯は縮小すべきではないでしょうか。そして、二〇一〇年初頭のプライマリーバランスを目指すのであれば、内部留保せず、国庫に納付すべきではないでしょうか。

一方、郵貯、簡保で引き受けている百十兆円の国債は、民営化しても引き受けられるんでしょうか。その判断は、民営化会社の経営者にゆだねられていると考えていいんでしょうか。だとすると、国債を引き受けない可能性もあると思いますが、それで民営化は可能ですか。お答えください。(拍手)

BSE対策等、危機管理について伺います。
十九日帰国した調査団報告では、今後、米国においてBSEが発生しないという保証はないとしています。

民主党は、昨年、通称トレーサビリティー法案が政府から出されたときに、国内消費の六〇%を占める海外産牛肉を含めるべきとして、野党四党共同で輸入牛肉トレーサビリティー法案を提出しましたが、強引に政府案を可決した経緯があります。

政府が直ちにOIEカテゴリーに準じたBSE表示をすべての牛肉に求め、消費者がみずからの判断で牛肉を買い求めることができるよう改めるべきと考えますが、総理の御所見を伺います。

また、政府は国民の生命財産等を守ることが最重要課題です。拉致事件、北方領土、救急医療など、枚挙にいとまがありません。しかし、危機管理体制が阪神大震災以来相変わらず変わっていないことをまたもや露呈したのは、SARS対策でありました。問題発生から厚生労働省に連絡が行くまで十六時間かかりました。

私が成田空港に行ったとき、まだサーモグラフィーはテスト中でした。一人いたお医者さんはアルバイトの大学院生で、その専門は整形外科でした。また、耳ではかる検温計も、売り切れて置いておりませんでした。検疫は厚生労働省、入管は法務省、税関は財務省の所管で、連携がとれていませんでした。

縦割り行政を打破しなければ危機管理は機能しません。また、現場に判断の決定権があるため、現場が対応できなくなって初めて上部機関の指示を仰ぐような行政の仕組みは、危機管理には不向きであります。見直しについて御所見を伺います。

信楽高原鉄道の遺族の方々が法案をつくりました。遺族からは、何で事故が起きたのか、なぜ犠牲になったのか知りたい、早く知りたい、そのためにも、犯人捜しではなく、原因究明、再発防止のための強い調査権限を持った組織が必要であるという内容です。御所見を伺います。

電子政府について伺います。
世界最先端のIT国家と首相は胸を張りますが、世界における日本の電子政府の位置づけは、国連で十八位、アクセンチュアで第十五位です。その理由として、日本は、利用者サイド、国民サイドの視点よりも供給者サイド、政府サイドの視点が先行しているからとのことです。

また、e―Japan戦略2には、行政の効率化という言葉はありますが、行政改革という言葉はありません。ITには、国、地方合わせて三兆円の巨費が投ぜられています。その入札、受注のあり方も問われています。さらに、IT化により、公務員人件費が一・四兆円、建設関係経費が一・三兆円削減できるとの試算もあります。

あくまでも電子政府化は利用者の利便性を中心に考えること、行政改革の視点を盛り込むことについて、総理の御所見を伺います。

国会議員になって驚いたことは、私たち国会議員一人一人に国政調査権がなく、両院に、そして委員会にあるとの解釈です。だから、委員会で多数決をしなければ国政調査権は行使できないとのことです。そこで、ある自民党の若手の議員が情報公開法で役所に資料請求をしているという記事が新聞に載りました。行政が、求める情報を国会に提供しないからであります。

これを打破するためにも、国会法百四条の見直しとともに、司法制度改革は必要であります。三権分立を働かせるため、裁判員制度導入に当たって、裁判員数は裁判官一人に対して十名前後とすべきというのが民主党案です。国民参加を進めるためです。御所見を伺います。

また、情報公開法を改正して、国民の知る権利を入れることの御所見を伺います。
さらに、さきの選挙はマニフェスト選挙、政権選択選挙とされました。総理は、政権交代の必要性を制度上認められますか。また、イギリスは、野党、影の内閣の報道を政府・与党と同程度に割くという暗黙の了解があるそうです。御所見を伺います。

規制改革に対する総理の意気込みについて伺います。
政府の総合規制改革会議の位置づけは、第三次答申が出されて以降、今後どうなるのでしょうか。
また、規制改革に対する意気込みについて総理の答弁を求めます。

環境政策について伺います。
京都議定書の早期発効を、ロシアへ働きかけが必要であります。また、EU等と連携を図り、アメリカに対しても強い働きかけが必要ではないかと考えます。御所見を伺います。

民主党では、百年間で三度上がった大都市の気温、東京の気温を三十年で三度下げる方策を講じるという提案をまとめました。数値目標とともに、関係省庁挙げての取り組みが必要です。御所見を伺います。

目指すべきは、世界、そして近隣アジア諸国から信頼される日本、日本スタンダードの確立。信なくば立たず。国民が信頼するために首相は説明責任を果たすことを求め、質問を終わります。果たさなければ、本会議のルールにのっとり、以上の質問に関連のある問題について再質問させていただくことを申し上げ、以上で質問を終わります。

ありがとうございました。(拍手)

■小泉純一郎内閣総理大臣
武正議員に対する答弁に先立って、昨日の松本議員の質問に対する補充答弁をいたします。

自衛隊活動に係る国会承認についてでありますが、イラク特措法によれば、国会承認の対象は、基本計画に定められた対応措置の実施についてであり、具体的には、人道復興支援活動または安全確保支援活動を自衛隊の部隊等が実施すること、及び、いかなる国において実施するかという点であります。一つの基本計画に定められている対応措置の実施に関して、既にその全体について実施命令が出されていることから、一つの国会承認を求めることは適当であると考えます。

自衛隊による安全確保支援活動についてでありますが、自衛隊の部隊は、人道復興支援活動を中心にするとの方針のもと、人道復興支援活動を行う区域に限って、人道復興支援活動に支障を及ぼさない範囲で、医療、輸送、修理もしくは整備、補給といった安全確保支援活動を行うこととしております。したがって、現地における安全確保のための活動を行う外国軍隊に対しては、自衛隊が支援活動を行うことがあり得るということになります。

北朝鮮に関する諸問題の解決に向けた国際社会の理解と協力を得るために、中国に対しても積極的に協力を働きかけ、また、中国側からも積極的な理解と協力を得てきております。今後とも、中国を含む関係国と協力しながら、次回六者会合の開催に向けまして、できるだけ努力し、問題の解決に取り組んでまいります。

消費税についてですが、私は常々、私の在任中は引き上げませんとはっきり申し上げております。ただし、議論は大いに結構でございます。今後、税制改革の一環として、引き続き徹底的な行財政改革を断行しつつ、国民的な議論を進めていくことが必要と考えておりますが、これは、私のこれまでの方針と何ら矛盾するものではありません。

昨日の私の松本議員に対する再答弁などが、議員の質問権の制約ではないかとの御指摘がございました。

私は、松本議員の再質問に対して、一部について追加的に答弁するとともに、その他のお尋ねに対しては最初の答弁につけ加えることがない旨をお答えしたものでありまして、議員の質問権を制約したとの御指摘は当たらないと考えております。(拍手)

特別国会での所信表明や臨時国会の開催要求についてですが、先般の特別国会につきましては、国会においてお決めになったところに従いまして、本会議等の議事運営が行われたものと承知しております。

昨年十一月二十七日、憲法第五十三条の規定に基づく臨時国会召集の要求が内閣に提出されました。政府としては、これに適切に対応すべく検討してまいりましたが、諸課題を整理して予算編成等を行うとともに、これらを踏まえて施政方針演説を用意して第百五十九回通常国会を召集したところであります。決して国会を軽視するものではございません。

若年者の雇用問題につきましては、政府としては、この問題の解決のため、昨年六月に関係の四大臣で策定した若者自立・挑戦プランを推進することとしており、当面、三年間で若年失業者等の増加傾向を転換させることを目標として、関係府省が一体となって、我が国の将来を担うべき若年者の雇用の拡大に努めてまいります。

サービス分野の雇用についてですが、経済環境が急速に変化する中で雇用の安定確保を図るためには、雇用減少分野における余剰雇用を吸収し、新たな雇用機会を創出することが必要であります。このため、政府としては、サービス分野を中心に五百三十万人の雇用の創出に取り組んでいるところであります。

雇用情勢は依然として厳しく、二〇〇三年上半期を二〇〇〇年同期に比べると、全産業で百五十七万人の雇用が減少する一方、サービス業では百五十五万人増加しており、全体として雇用者は二万人の減少となっております。なお、サービス分野を中心とした五百三十万人雇用の対象分野では、約二百万人の雇用が創出されたと見込まれます。

政府としては、今後とも、規制や制度の改革、人材育成や公的業務の民間委託などをさらに進め、サービス分野を中心とした雇用の創出に全力で取り組んでまいります。

年金の改革についてでございますが、政府・与党が年末に合意した年金制度改革案は、将来の負担が過大とならないよう極力抑制して、その上限を国民に明らかにするとともに、少なくとも現役世代の平均的収入の五〇%の給付水準を維持しつつ、急速な少子高齢化が進行する中で、年金を支える力と給付の均衡をとることのできる仕組みに転換するものであります。また、課題であった基礎年金の国庫負担割合についても引き上げの道筋を示すなど、持続可能な制度の構築に向けた根幹にかかわる大きな改正であると考えております。

少子化、高齢化の急速な進行が見込まれる中で、どのような制度体系をとろうとも、給付と負担の長期的な均衡を図ることは不可欠であります。これを先送りすることはできないと思います。したがって、まずは、給付と負担の長期的な均衡を確保し、安定的な仕組みとするための関連法案を本国会に提出することとしておりまして、長期的な制度の体系論については法案の国会審議に当たって議論がなされるべきものと私は考えておりまして、そのような議論を私も歓迎いたします。

年金資金の使途についてでございますが、グリーンピア及び住宅融資については、平成十七年度末までに廃止することを決定しております。まず、その経緯や事業の内容についてきちんと整理し、これを国民に説明していくことは必要と考えております。

また、年金積立金は長期的な観点から安全かつ効率的に運用するものであり、一時点をとらえて評価することは適当でないと考えております。

いずれにせよ、専門性の徹底や責任の明確化の観点から十分検討を行い、国民の理解が得られる必要な改革を取りまとめてまいります。

グリーンピアについては、政府としてきちんと報告することは必要と考えております。

社会保険料の事業主負担が雇用に与える影響については、企業にとって、年金等の保険料を負担することは、労働者の老後の不安を解消し、安心して働くことを可能にするとともに、企業活動への貢献の動機づけを高めるなど、企業、労働者双方にとってプラスの面もあると考えます。

いずれにしても、社会保障に係る負担が過剰にならないように、今後とも、給付の効率化など不断の改革に努めてまいります。

民主党の提案についてでございますが、民主党の全額税財源の国民基礎年金の提案につきましては、給付と負担の連動のない税財源のみで費用を賄うことについての問題など根源的な問題がありまして、現時点において、現行制度にかわる現実的な選択肢にはならないのではないかと私は考えております。

私は、基礎年金国庫負担の費用は高齢化の進展に伴い増大していくことから、これに見合う安定した財源を税制改革により確保していかなければならないと考えております。

なお、提案された歳出削減等が実現可能かという問題に加えまして、大量の国債発行を伴わざるを得ない現在の財政状況の中では、歳出削減分は国債発行額の縮減に充てるべきではないかと考えます。

道路公団民営化につきましては、民営化委員会は、国会審議においてその位置づけを明らかにした上で、法律により設置されたものであり、平成十四年十二月にその意見が提出された後、直ちに、ファミリー企業について公団職員の役員への天下りの原則禁止や入札・契約方式の見直し等の抜本的見直しを行うなど、実施が可能なものから意見書に沿って取り組んできたところであります。

昨年末には、民営化委員会の意見を基本的に尊重し、債務を確実に返済するとともに、真に必要な道路について、会社の自主性を尊重しつつ、できるだけ少ない国民負担のもとでつくるとの方針のもと、あらかじめ複数案を提示して、民営化委員会を初め各方面の意見を伺った上で、民営化の基本的枠組みを取りまとめました。

具体的には、未供用の整備計画区間約二千キロメートルについて、費用便益分析等を厳しく実施するとともに、五区間、百四十三キロメートルの抜本的見直し区間を設定いたしました。これについては、現行の計画のままで整備を進めることはありません。

また、非常電話の単価を含む徹底したコスト縮減等により有料道路事業費をほぼ半減するとともに、その債務については、民営化時点の債務総額を上回らないようにし、民営化後四十五年以内にすべて返済いたします。

さらに、競争原理を導入するため、日本道路公団を三分割し、当面六社体制とし、一方的命令の枠組みを廃止して会社の自主性を最大限尊重する仕組みとするとともに、民営化までに平均一割を超える高速道路料金の引き下げを実施することとしております。なお、会社は将来、株式の上場を目指すものとしております。

これらの内容は、民営化委員会の意見を基本的に尊重し、戦後、有料道路制度の初の抜本的改革を行うものであります。

道路特定財源についてですが、厳しい財政事情のもと、平成十六年度においても、受益と負担の観点から納税者の理解を求めつつ、使途の多様化を図っているところであります。

いずれにせよ、民主党が主張するような一般財源化をすれば、高速道路を無料にするということは実現困難になるのだと私は考えております。(拍手)

また、特別会計については、十六年度予算から、事務事業の見直しによる歳出の合理化、効率化など、具体的な見直しを進めているところであります。道路整備特別会計についても、道路特定財源の使途の多様化等を図っております。

なお、一般財源化など道路特定財源のあり方については、今後とも納税者の考え方を踏まえるなど、幅広く検討を進めていきたいと考えております。
補助金改革につきましては、国の関与を縮小して地方の権限、責任を拡大するとともに、国、地方を通じた行政のスリム化を推進する観点から、平成十六年度に一兆円の廃止・縮減等を行うこととしております。

一方、地方向け補助金等の総額としては、医療、介護、福祉等の社会保障制度の補助金の大幅な増加等により、対前年度で若干増加することになります。

また、補助金改革の内容については、地方にできることは地方にとの原則のもと、数次にわたる閣僚間折衝や政府・与党間での協議など、関係者の十分な議論、検討を経た上で決定したものであります。

なお、補助金改革については、十八年度までにおおむね四兆円程度を目途に改革を行うこととしておりますが、こうした取り組みについては、全国知事会、市長会など地方公共団体から改革の第一歩として評価をいただいており、地方自治体の声を軽視しており見直すべきとの御指摘は当たらないと考えております。

税源移譲につきまして、基本方針二〇〇三において、廃止する補助金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要があるものについては、個別事業の見直し、精査を行い、所要額については基幹税の充実を基本として税源移譲することとしており、その規模については、補助金改革の状況に応じて検討してまいります。

郵政民営化につきましては、これは、民間にできることは民間にとの方針のもとに進めてきた公的部門の改革の本丸として、行財政の改革にとどまらず、金融、地方の改革につながる複雑で大変大きな改革であります。

具体論につきましては、現在、専門家の意見も伺いながら、多岐にわたる論点について経済財政諮問会議で予見なく議論しているところであり、財政改革や国債管理政策との整合性にも配慮しつつ検討を進めているところであります。

今後、既に確認している五つの基本原則に沿って、幅広く国民的議論を行い、本年春ごろに中間報告を作成し、秋ごろまでに国民にとってよりよいサービスが可能となる民営化案を取りまとめて、平成十九年には郵政民営化を実現する考えであります。

なお、郵便貯金に関し、御指摘のような内部留保を認める改正が行われた事実はなく、既に、公社化に伴い、郵便貯金の経営の健全性を確保するため必要な内部留保の額を超える額の二分の一について国庫納付する仕組みとなっているところであります。

BSEについてですが、国民の安心と安全の確保が何よりも重要であります。BSE発生国からの輸入を認めるに当たっては、我が国で国産牛肉について講じておるBSE全頭検査及び特定危険部位の除去と同等の安全、安心確保策が必要と考えております。

政府の危機管理体制については、さまざまな緊急事態の、特に初動段階に際しては、内閣官房を先頭に、政府全体が一体となって対応する仕組みを速やかに立ち上げることが重要であります。今後とも、関係機関との連携等、対処のあり方について不断の点検を行い、国民の安心、安全確保に万全を期してまいりたいと思います。

鉄道事故の調査でございますが、事故調査と犯罪捜査は、異なる目的のもとに、異なる法律上の手続、方法によって行われるものであります。このため、事故調査と犯罪捜査が競合する場合には、航空・鉄道事故調査委員会と捜査機関との間で協力及び調整を行うことにより、事故調査を支障なく的確に実施しているところであります。

電子政府につきましては、電子政府の構築は、行政分野へのITの活用とこれにあわせた業務や制度の見直しにより、国民の利便性、サービスの向上にあわせ、当然のことながら、行政運営の簡素化、効率化などにつながるものであり、行財政改革を進める上でも重要な問題と認識しております。このような方針のもと、今後とも電子政府を積極的に推進してまいります。

裁判員制度につきましては、一般の国民が裁判手続に参画することには大きな意義があると考えます。裁判官と裁判員の人数の問題を含めた具体的な制度のあり方については、国民の負担を含め、さまざまな観点からの検討を踏まえ、国民的な理解を得られるものとする必要があると考えます。

情報公開法についてですが、国民が行政文書の開示を請求できる権利を定めているものであることから、憲法の理念である「国民主権の理念にのっとり、」と規定されたものであり、いわゆる知る権利という概念につきましては、憲法学上さまざまな理解の仕方があることなどから、知る権利という言葉は用いられておりません。

議院内閣制についてでございますが、政権交代が必要とされるかということでありますが、現在の制度でも、選挙が、有権者の判断によって政権交代が行われるんです。これは国民が決めることであります。

私は、こういう選挙の際などにおける有権者の政権選択の意向を的確に反映できる制度はどういうものかということについては、現在でも可能でありますが、さらに、政治制度あるいは国民の政治意識の点について政治が努力するということについては必要ではないかなと、不断に国民に対する働きかけ、また、国民の参加を政治に求めていく努力は大事なことだと思っております。

現行の制度に何らかの見直しが必要かどうかというのは、今後、国会の場において、政党間において十分御議論していただきたいと思っております。

総合規制改革会議についてですが、この総合規制改革会議の終了後も、引き続き民間人主体の審議機関を設置することとし、民間主導の規制改革を強力に推進してまいります。

また、これと併存して、政府にも推進本部を設置いたします。ここには審議機関の民間人主要メンバーも出席し、必要に応じて関係閣僚とも折衝を行ってもらうなど、政治的リーダーシップのもとに、これまで以上に規制改革を後押ししていく考えであります。

京都議定書については、地球温暖化に対する国際的取り組み強化のための重要な第一歩であり、その早期発効が重要であります。京都議定書の発効にはロシアまたは米国の締結が不可欠であり、二国間協議や多国間協議等さまざまな機会を活用して、両国に対し、引き続き京都議定書の早期締結を働きかけてまいります。

また、今後とも、米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通ルールの構築に向け最大限努力してまいります。

ヒートアイランド対策につきましては、これは着実に推進するという観点から、政府は、規制改革推進三カ年計画において、ヒートアイランド対策に係る大綱を平成十五年度末までに策定することとしております。現在、本年度中に可能な限り数値目標を盛り込んだ総合的な大綱を取りまとめるべく、関係府省一体となって作業を進めているところでございます。(拍手)

■河野洋平議長 
武正公一君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。武正公一君。


武正公一
再質問をさせていただきます。
まず、雇用政策でありますが、首相の答弁は私はもうわかっていて、それで、それがあっても、新卒、高卒が過去二番目に悪く、そして大卒が過去最悪なんだから、だから首相のリーダーシップを求めたのでありまして、これまでの取り組みを聞いたのではありません。首相としてのリーダーシップを聞かせていただきたいのが一点目でございます。

二点目、年金でございますが、私は、保険料率一八・三五%、そして給付額五〇%、この五〇%を今後とも維持するのかどうか、維持できるということが言えるのかどうか、これを聞いたのでありまして、それに対する明確な答弁がありません。

そして三番目は、道路のことであります。基本的などこを尊重したのかという中で、債務を返済できるということを言いましたが、リース料を担保に借金をして、そして道路建設をしていく、これでは四十兆円の債務が拡大していくことは日の目を見るよりも明らかであります。基本的な部分を尊重していません。このことについてもう一度、再答弁をお願いいたします。
以上です。(拍手)


■小泉純一郎内閣総理大臣

今の再質問については、すべて答弁したつもりでありますが、あえて要求されましたので、再度答弁いたします。

雇用問題については、小泉内閣の最重要課題の一つであります。今後とも、リーダーシップを発揮してまいります。

五〇%、年金の維持でございますが、この維持をできるように、これからも努力を続けてまいります。

道路公団の債務につきましては、確実に返済してまいります。
以上でございます。(拍手)

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