2004年2月5日 【憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会】

武正小委員
民主党・無所属クラブの武正公一でございます。
 まず、中谷委員にお伺いをしたいんですが、よく首相が国際協調と日米同盟の両立というふうに言われるんですけれども、民主党あるいは私も、やはり日米同盟が先行している、国際協調というものがどうも後になっているという認識を持っております。
 
そもそも、憲法の前文というのも首相はよく持ち出されますが、憲法の前文は国際協調でありまして、その後、日米安全保障条約というものを締結していった経緯でございますので、国際協調のもとに、日米同盟や、あるいはまた日本の外交三原則である国連中心外交、あるいはまた地域的な経済協力関係などが横並びであるんではないかなというような私は認識を持っておりまして、国際協調と日米同盟の両立ということでもし譲ったとしても、今回のイラクへの自衛隊派遣のやはり理由というのは日米同盟堅持というのがあるというふうに考えるわけでございます。
 
今、懸念をされるのが、日本は唯一の被爆国でございますが、これまでも核拡散防止への取り組みをしてまいりましたが、例えば小型核の研究開発、その予算をアメリカが予算化したこと。あるいはまた、武器輸出三原則、これは佐藤首相が平和外交として一九六七年に提案をしたわけでありますが、随時見直しがされてきたこと。そして、過日の防衛庁長官の発言では、共同開発を第三国までいいんではないかというような発言まで出てくることでありまして、この国際協調と日米同盟の両立ということでいくと、やはり日米同盟ありきで日本が今さまざまな形で進めている取り組みといったことが言えるのではないかと思うんです。
 
委員は、最後のところで、国連中心主義、これも九条の中心にすべきというふうに言っておられますが、この点、まず一点、日米同盟ありきではないか、突出しているんではないかということについてお答えをいただきたいと思います。
 
そしてまた、松本委員の方に伺いますけれども、内閣法制局が見解を述べるという形で来ているわけでございますが、内閣法制局は行政の一機関である、それが憲法についての見解を述べるということの問題点、これがよく指摘をされるわけでありますが、ドイツにおける憲法裁判所といったものがあるということでございますが、こうした憲法についての解釈あるいは見解を述べる機関としての憲法裁判所の必要性についてどのように考えるか。
 
それから、シビリアンコントロールということであれば、テロ特そしてイラク特、いずれも国会の承認が、事後承認ということになったがために、どうしても説明責任が政府に欠けているのではないかという指摘がありますので、こうした国会の事前承認、あるいは防衛庁の防衛機密を守らなければならないけれども説明責任を果たさなければならない、こういった意味でのシビリアンコントロールのあり方。
 
そして三点目は、国連改革、国連への取り組み、これについてどのように考えるか。
そして、先ほど憲法解釈変更ということが大村委員から出ました。集団的自衛権を認めるべきではないか、この憲法解釈の変更といったことについて。
以上、四点お伺いしたいと思います。

■中谷小委員 
国際協調と日米安保の両立につきましては、これは占領時代も憲法制定期から懸案となった、つまり米軍の占領下で国連中心主義の憲法をつくったというところから問題になっているところでありますが、占領時代は、マッカーサーも国連中心主義を第一に考えておりましたけれども、冷戦が始まったということで、本国から対ソ体制を日本にとるということで、マッカーサー自身も不本意なことがあったと聞いております。
 
そこで、日米安保条約を締結いたしたわけでありますが、基本的にそこに書かれていることは、本来は国連中心であるべきであるが国連が機能しない現状において日米安保条約を締結する、その後の国防の基本方針の中でも、国連が機能するまでは日米安保条約を基軸と考えるというふうに書かれておりまして、早く国連が機能できれば安保条約から解き放たれることもあろうかと思いますが、現実の世界の中でアメリカ自身がそんなに国連を中心に考えてきてなかった。
 
イラクの対応においても、戦争が終わった占領統治をしなければならない現在においても、国連を中心とするのではなくてアメリカ中心の考え方を持っているということについては、私もこれはどうかなと、本当にアメリカがいつまで責任を持ってイラク統治をできるのかどうか、軍事的にも財政的にも疑問に思うわけでありまして、この点においては、日本はまさに力の見せどころで、国連を中心とした体制にどう持っていくかに傾注をしなければなりませんが、現実の対応としましては、アメリカの意向に従ってその支援を続けていくということは、現実の姿ではないかと思います。
 
したがいまして、国連を第一に考えるというのは、憲法制定時の理念でもあり、今後とも日本が自立できる国家としてその中心軸に定めるものでありますので、今後ともそれを目指して取り組んでいかなければならないと思っております。

■松本(剛)小委員
 
まず、武正委員御紹介の一点目、憲法裁判所についてでありますが、先ほどからも解釈の問題が出てきておりますように、今の憲法をどう解釈するかということはもちろん問題でありますが、今後、憲法がどのような形になろうとも、また必ず解釈の問題というのは出てくるわけでありまして、今のような、内閣法制局が一手にいわば解釈権を持っているかのように見える形よりは、憲法裁判所という形も望ましいというふうには考えられると思います。ただ、当然、これそのものが憲法に載せられるべき事項ということになろうかというふうに思いますので、まさにこの憲法調査会で御議論をいただくべきところではないかというふうに思います。
 
シビリアンコントロールにつきましては、いろんな誤解も率直に申し上げてあるようでありますが、最大のポイントは、やはり国民の代表である国会がそのフォース、軍事力をコントロールするということにあるんだろうというふうに思います。したがいまして、軍事的な力が動く場合は事前承認をするであるとか、そういった形というのは大変大きなポイントになるべきであると私も考えております。

国連についてでありますが、これは今既にお話があったことと若干重複をするのかもしれませんが、政治は、やはり今の現実を見詰めつつも理想を追い求めていくことが大変重要だろうというふうに思います。
 
その意味で、国連が機能するような形の理想を追っていくことが必要でありまして、今我が国は、先ほどもお話がありましたように、大変大きな財政的な支援、また国際公務員という意味での人、これはまだまだの部分もあるわけでありますけれども、徐々に出てきているという状況の中で、こういった国際社会、また国連における発言力といったものをしっかり確保して、しかも、それを我が国だけのために使っているのではなく、本当に国際社会のために使っているというふうな努力を重ねることが国連改革への道につながると思いますし、そのことがひいてはまた我が国の平和と安全を確保することにもなるのではないかというふうに思っております。
 
常任理事国入りということについては、私たちも先般の選挙のマニフェストで目指していきたいということを申し上げてきたわけでありますが、恐らく日本が常任理事国入りを果たすとすれば、安保理の機能であったり常任理事国の責務といったものも変わってくる中でのことも考えられます。今、国際社会の中で、国連改革の機運が出てきている中で、しっかりと発言権を確保しながら議論することが重要ではないかというふうに思っております。
 
また、近い将来での有事に対して憲法改正の時間を待てるかというお話でありました。これは、先ほど申し上げた法治の概念から申し上げて、改正の手続が待てないからやっていいという判断をしていいとは一概に言えないというふうには思っております。ただ、私たちは、日本国民の安全をしっかりと確保するという責務を担っていることも考えて、さまざまな選択肢を考える必要がある、ぎりぎりの選択をしなければいけないときがあるという意味で、先ほど幾つかの考え方を提示させていただいたというふうに御理解をいただけたらと思います。
 
一点、集団的自衛権について先ほど申し上げた中で、若干言葉が足らなかったと思います。今の憲法の中でも、集団的自衛権をどのように読むかということの解釈の可能性を申し上げたわけでありますが、当然自衛のための範囲であるということを一点申し添えさせていただきたいというふうに思っております。
以上です。

武正小委員 
ありがとうございました。

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