2004年2月27日 【外務委員会】

武正委員
民民主党の武正公一でございます。
ちょうど今、六者協議が開会されているわけでございますが、まず、先ほど来外務大臣が、拉致問題の解決というようなことを再三言われておりますが、拉致問題の解決として考えておられる項目、これを述べていただけますでしょうか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

川口国務大臣 
拉致問題について、これは前から申し上げていることですけれども、まず、御家族の帰国、無条件の帰国、これはその最優先課題で取り組むべきことだと思っております。
同様に重要なのが、安否不明であるとされている方々、これについての真相究明、これも同様に重要であるというふうに考えております。

武正委員
 
拉致問題の解決は、以上二点でございますか。

川口国務大臣
 
細かく申せばいろいろほかにありますけれども、例えば、今警察の方で、その他行方不明で拉致の可能性があるとされている方々についての調査といいますか、捜査をやっていただいております。我々外務省としては、これはこの前の二国間の会合のときに既に北朝鮮には言ってありますけれども、そういった新たなる拉致の被害者ということが認定をされた場合に、当然この解決をすべき対象としてこの人たちも含めていくということは、もう既に北朝鮮に伝えてあるところでございます。

武正委員 
外務大臣の今の細かいことというのは、やはり到底容認できない御答弁なわけですね。

小委員会では、この二十四日に、横田さん御夫妻、そして蓮池さんということで、参考人質疑を行いました。その中でも、拉致被害者の家族の八人の無条件の帰国、そしてまた、北朝鮮が死亡または入国なしとしている拉致被害者十人に関する徹底した真相究明、そしてまた、特定失踪者とされる方々の真相究明、こうしたことが何よりも大事である、条件である、こういったことを言ってきているわけでございます。

今のように、細かいことというような形で御答弁があるというのは到底理解できないというふうに考えます。

川口国務大臣 
細かいことと申し上げたのは、別にそれが小さいことであるという意味で申し上げたわけではなくて、ずうっと今まで二本の柱のお話をしていましたので、最初その二本の柱のお話をしたということでございますけれども、誤解を受けるといけませんので、それは取り消させていただきます。

武正委員 
拉致問題の今回の六カ国協議についての薮中局長の発言でございますが、冒頭、あいさつというところ、世界に報道されている部分と基調発言、基調の部分ですね、これは秘密の会議で行われた、という二つに分けますと、冒頭のあいさつで拉致ということに触れられなかったと。

先ほど外務大臣は、この拉致問題の解決が最優先課題だというふうにおっしゃられましたけれども、なぜ、冒頭、この拉致について触れられなかったのか、この点、お伺いしたいと思います。

川口国務大臣 
これは、冒頭のあいさつは非常に短時間、その後、基調の演説とプレゼンテーションというのがあったわけでして、我が方としては、この二つは一組、セットということで考えて言っているわけでございます。

武正委員 
一組、セットというのは、ちょっと具体的にもう一度お答えいただけますか。

川口国務大臣 
最初にプレスが入って、短い時間でラウンドをしたというふうに理解をしていますけれども、そのときの発言と、その後プレスが出た後で各国がラウンドをした発言、それが組み合わせられるものである。要するに、それが二つで一体である、そういう意味です。

武正委員 
最初のあいさつは世界に放映されるオープンな場で行われた、クローズドな場で発言、それが二つがセットというのは、ちょっと理解できないわけですね。

オープンな場でなぜ拉致のことを触れないのか、そして、クローズドな場で拉致のことを言及するというのはいかがなものか。最優先課題と言いながら、拉致という言葉を冒頭使えなかった何らかの理由があるのかなというふうに思うんですが、なぜ拉致を冒頭から強く主張しなかったんでしょうか。

川口国務大臣 
我々として、それは一組であるということで構成を考えてやっていたということでございまして、それ以外の意味ということは特にないというふうに御理解をいただきたいと思います。

武正委員 
我々も政治家として国会でのこうした発言等、やはり多くのメディアの方がそれを取材する、そして、広く国民あるいは全世界にそのことを伝えるこの場というのは、大変大事なそうした場になるわけですね。その場で発言をしないで、そしてクローズドな場で発言をする、それがセットであるというのは理解できないんですけれども、なぜ冒頭のあいさつで拉致を言わなかったのか、お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 
申し上げているところの繰り返しになってしまうんですけれども、これについて、我が方として、ここでの発言とその後の発言、一つの組み合わせ、それで一体であるということで考えて発言をしている、そういうことであります。

武正委員 
新聞には、やはり中国からの働きかけがあったんじゃないかというようなことが書かれておりまして、これは日経ですけれども、「結局、全世界に放送されるあいさつ部分では「諸問題」と間接的な表現にとどめ、秘密会合の基調演説で「拉致問題を含む日朝間の諸問題」と言及。」「同じことを言うにも言い方がある。言うべきことは言うが、さわやかな言い方で言う」これは外務省幹部のコメント。「判断の背景には「基調演説が順調に進めば、午後にも日朝協議ができる」とした中国のささやきがあった。」こういった報道もあるわけなんですね。

これについては、きょう逢沢外務副大臣もお見えですけれども、王毅次官から、余り拉致の問題を六者協議で取り上げるな、そんなことが、月曜日ですか、二十三日、会われたときに言われたような報道がテレビで流れました。こういったことも、その事実、そうしたことがあったのかどうか、やはりこの場で確認をしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 
先般、機会を得まして北京に参りました。二十三日月曜日の午前、現時時間でございますが、午前九時から中国外交部におきまして、約四十五分間、王毅外交部副部長と懇談の機会を得ました。ちょうど二十五日からの六者協議の二日前ということでございますので、当然、六者会談のこと、また日中二国間関係のことについても議論をいたしたわけであります。

二十五日からの六者協議に際して、我が方が基本的にどんな姿勢で臨むかということについては、明確に私から、議長役でございます中国、王毅さんに申し上げたわけであります。薮中さんの冒頭の発言の中できちんと拉致の問題については言及をする、日本国政府の首尾一貫とした姿勢は、核、ミサイル、拉致、これを包括的に解決する、その姿勢を改めて内外に示すということを申し上げたわけであります。

武正委員 
いや、私がお伺いしたのは、王毅次官の方から、拉致問題を余り取り上げないようにという、そうしたサジェスチョンというか申し入れがあったのかどうかということでございます。

逢沢副大臣 
私は、率直にそのように申し上げたわけであります。中国は、中国の立場で全体を取りまとめていく、そういった立場で幾つかのことについて発言をされました。そのことについては率直な意見交換をいたしたわけでありますが、特に日本に対して、拉致の問題について、取り上げることは好ましくないとか、あるいは、取り上げるんならこのように取り上げろとか、そういうふうに言われたことはございません。

武正委員 
そういうような印象を与えるような報道、実際にそういう私が触れたような形でテレビに流れたわけでございまして、私はやはりそうしたことが流れる背景が、多分、次官と副大臣が会われる前からいろんな形で中国側から、主宰者側から、議長役の中国側から日本政府にあったんじゃないかなというふうに思うわけなんですね。それが、先ほど触れましたような報道として上がっているわけでございます。

それで、先ほど来外務大臣は、拉致問題の解決なくして国交正常化交渉はない、国交正常化がなければ経済協力はない、そういった三段論法を展開されましたけれども、この拉致問題の解決、先ほど、冒頭いみじくも触れた点ですね、細かい問題という言い方は撤回をされましたけれども、そうした拉致問題の解決なくしてということと国交正常化交渉、これは同時並行ということでよろしいんですか。拉致問題の解決を図ることと交渉は。

川口国務大臣 
今委員が三段論法とおっしゃったそのこと、それは、日朝平壌宣言そのものが言っていることであります。日朝平壌宣言にはそのように書いてあって、我が国として、日朝平壌宣言を基本としてやっていくということであります。

それで、拉致問題で、日朝の間で、五人の御家族の方の八人の方がお帰りになるということはもう最優先課題であるということを申しました。我々としては、これを正常化交渉の始まる前に達成しなければいけないというふうに思っております。

そして、その上で、先ほど来申し上げているような、安否不明の方、そういう方の安否の確認、真相究明、そして、今後警察庁によって認定をされる可能性のあるほかの人たちの安否、こういったことも含めて真相究明をやっていく。そして、その上で正常化交渉を、正常化を行って、そして経済協力をしてということであります。

武正委員 
今もやはり二段階でお話をされているんですけれども、八名の方の無条件の帰国と十名の方の生存の存否の真相究明、そして、その後に、日本が、警察等が拉致されたというふうに認定をされている方々、あるいは特定失踪者の真相究明、これは切り離して今考えているということなんでしょうか。

川口国務大臣 
今、安否が不明である十人の方、この方と、今後認定をされる可能性のある方々、これを分けて考えているつもりは全くありません。

ただ、時間的に言いますと、今、十名の方は既に認定をそういう意味ではされているという現実があるわけですし、警察庁による拉致の認定というのは今後引き続いて行われていく作業であるという意味で、時間的には違いがあるということで考えて、これはそういうことだろうと思います。

武正委員
 
先ほど来、日朝平壌宣言のお話をされますけれども、私は、日朝平壌宣言というのは、拉致という言葉もやはりこの時点からは記載をされていないんですね。「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」という記載でありましたので、当然、この日朝平壌宣言の締結時点から問題だというふうに言っております。

また、しかも、その問題の「懸案問題」については、いわゆる三という段落にございまして、「国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。」という、これが前段の二にあるわけなんですね。ですから、私は、この日朝平壌宣言というのは経済協力が前提に立った日朝平壌宣言、経済協力ありきの国交正常化交渉というふうに、このときにこの宣言を読んで思いました。

ですから、先週ですか、小委員会に参考人として出席されたときの薮中局長の答弁からも、拉致問題の解決と日朝国交正常化交渉は同時並行、同時に動いているんだという、そうした外務省としての答弁を感じたわけなんですが、今のお話では、あくまでも拉致問題の解決が前提、しかも、八名の方の無条件帰国、十名の方の存否プラス特定失踪者の真相究明というものはセットで、これが拉致問題解決、これがまずあって、それが前提で解決されて、日朝国交正常化交渉に入るということでよろしいんでしょうか。

川口国務大臣
 
先ほど申しましたのは、拉致問題で、五人の方の御家族、この方たちが日本に無条件で帰ってくるということは最優先の、最重要の課題である、これは日朝の国交正常化交渉が行われる前でなければならないというふうに考えております。

その上で、安否が不明の人、これは今後そうであると認定をされる人も含めてですけれども、その真相究明、これについてはきちんとこれをやっていく、そして正常化を行い、経済協力を行う、そういうことを申し上げているわけでございます。

武正委員
 
八名の方の無条件帰国、その上で十名の方の存否、そしてまた、これから拉致として認定をされるそうした被害者の真相究明、あるいは特定失踪者の真相究明と。その上でということになりますと、そしてその後、今、日朝国交正常化交渉を言いましたが、八名の方の無条件帰国が国交正常化交渉の条件ということに聞こえるんですけれども、そういったことなんでしょうか。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 
八人の家族の方の帰国、これは正常化交渉が始まる前になされなければいけないというふうに考えています。そして、ですから、逆の言い方をすれば、八人の家族の方の帰国が実現をすれば、これは国交正常化交渉を再開する用意があって、そこで十名の方の真相の究明をしていくということであります。

それで、それが、全部の懸案、拉致も核も、それからミサイルその他の日朝間のいろいろな懸案、それについて議論が終わって、合意があって、そうしなければ正常化はしないということを言っているわけです。正常化をしなければ経済協力はしない、これは平壌宣言に書いてあるとおりということです。

武正委員 
今のお話で、そうすると、八名の方の無条件帰国後、日朝国交正常化交渉に入るということでよろしいんでしょうか。八名の帰国後、日朝国交正常化交渉に入るという御答弁ということで。

川口国務大臣 
まあ、そういうことですというのがお答えなんですけれども、繰り返しますと、八名の方、五人の方の御家族、この方々が無条件で日本に帰ってくる、それは国交正常化交渉が始まる前にしなければいけないということを言っているわけでして、そして、ですから、帰らなければ国交正常化交渉というのは始まらないということを言っております。

武正委員
 
私が言っているのは、拉致問題の解決が、先ほど、冒頭、あるいは先ほどの各委員の質疑に答えておられるように、拉致問題の解決があって、日朝国交正常化交渉があって、そして経済協力という三段階で言われたわけですから、拉致問題の解決がなければ日朝国交正常化交渉に入らないということだと思うんですね。それが、今お話しになったように、八名の方が帰れば日朝国交正常化交渉に入るというのでは、先ほど来言っている三段論法が崩れてくるんじゃないですか。

しかも、拉致問題の解決は何ですかと聞いたら、冒頭は八名の方の無条件帰国と十名の存否ということでしたが、その後、細かい問題ということを訂正されて、特定失踪者の究明ということもセットですよというふうに言われたんですが、そうした冒頭の発言とこれまでの積み重ねと、変わってきてしまうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣
 
先ほど、私自身、紙を見ないで申し上げていたので、あるいは言い間違い、後でちょっと議事録を見てみますけれども。先ほど、注意をして申し上げていたつもりでございますが、国交正常化と交渉と分けて申し上げていたつもりなんです。

申し上げているのは、拉致の問題も含めていろいろな問題が解決をしなければ国交正常化はしないと言っているわけですね。それで、国交正常化交渉自体、これは、八人の人たちの帰国、これが国交正常化交渉の再開、今一時とまっている状態にあるわけですから、再開の前に八人の方々が帰国を無条件でしなければいけないということを言っているわけです。先ほど来同じことを申し上げているつもりなんですけれども。

武正委員 
そうすると、八名の方が無条件に帰国したら国交正常化交渉を始めるということなんですね。

川口国務大臣 
再開の用意があるということを申し上げているわけです。
ですから、八人の人たちが帰ってくるということは、国交正常化交渉の前に帰ってこなければいけない、国交正常化交渉、交渉です、国交正常化交渉の再開前に戻ってこなければいけないということを言っているわけですね。

それで、全部の問題が、その事実関係の解明、それも含め、ミサイルの問題とかいろいろありますけれども、そういった問題が解決をして、それは国交正常化交渉の中でそういう問題の解明はしていくわけですから、それが全部終わったときに国交正常化をする。ですから、そういう問題が片づく前には国交正常化はしない、国交正常化をしなければ経済協力はしないということを申し上げているつもりです。

正常化交渉と正常化と使い分けたつもりでおります。ちょっと間違って言ったところがあるかどうかは、議事録を後で精査いたしますけれども、そういうことでございます。

武正委員 
拉致問題の解決が、冒頭言われたような形、セットというふうに言われながら、八名の方の無条件帰国で国交正常化交渉再開の用意があるということは、八名の方が帰国したら再開するということと同じではないですか。

川口国務大臣 
交渉をしていきませんと、要するに、話し合っていきませんと、十人の方、あるいはそれに加える何人の方々、この安否については話し合っていけないわけですね。いろいろな形を、話し合わないと物事は前に進んでいかないということであるわけです。

それで、その国交正常化交渉の再開をする用意があるというふうに考えているわけでして、用意があるということでございますので、これは向こうもありますから、こちらは用意があるということを申し上げている。そういう話し合いをしなければ諸懸案は片づかないわけです。そういった諸懸案を片づけて、そして正常化をする。逆に申し上げれば、正常化は諸懸案が片づかなければしない、拉致の問題が片づかなければ正常化はしないということを申し上げているわけです。

武正委員
 
拉致問題の八名の方の無条件帰国で国交正常化交渉を始めて、そして国交正常化交渉の中で十名の方の存否、特定失踪者の方の真相究明、そして核の問題など、包括的に国交正常化交渉の中で協議をしていくんだということでしょうか。

川口国務大臣
 
もちろん、その真相の究明が早くできればそれにこしたことはないわけでして、我々は、国交正常化交渉の再開の前にも、今も情報の要求はしているわけでございます。この間、薮中局長が行ったときもその話はしているわけです。

ですから、再開しないとそれを話さないということでは全くありませんけれども、そういったことをきちんと話をしていくということのためには、やはり再開をして、その中で話をしていくということが問題の解決をしていくということのために必要であろうということを、大事であろうということを考えているということです。

武正委員
 
では、拉致問題の解決がしなくて、日朝国交正常化交渉をするということですね。
冒頭、大臣は、拉致問題の解決は何ですかと言ったら、八名、十名、そしてその後細かいことは撤回したけれども、徹底究明、真相究明というふうに言われ、これが拉致問題の解決ですというふうに言われたのですが、その中で、八名の方の無条件帰国だけで、拉致問題の解決はしなくても、日朝国交正常化交渉の協議の中で、その残りのいろいろな懸案事項はやっていくということですね。

川口国務大臣 
先方が、北朝鮮側が国交正常化交渉の再開に同意をするということであれば、八人の帰国が実現をした後、我が方としては再開をする用意があるということを言っているわけなので、先方が合意をすれば、それは再開をするということになると思います。

それは、この安否の事実関係の解明ということは、やはり非常に丁寧にやっていく必要があると思っています。それで、それをきちんとした二国間の話し合いにのせて真相究明をやっていくということは大事であると思います。

正常化は、これがなされない限りは、解明されない限りはしないということはもう北朝鮮に十分に伝えてあって、したがって、解決をしなければ経済協力もないということでありますということを我々は考えているということであります。

武正委員
 
つまり、拉致問題が解決しないうちに日朝国交正常化交渉を始めるということですね。

川口国務大臣 
拉致問題を解決するために日朝国交正常化を再開するということを……(武正委員「交渉」と呼ぶ)いえ、ごめんなさい、今交渉と言いませんでしたでしょうか。(武正委員「言い方が違う」と呼ぶ)失礼しました。拉致問題を解決するために日朝国交正常化交渉を行うということであります。

武正委員 
それがやはり、家族会を初め、違うんですね。拉致問題の解決がやはりその前提なんですね、すべての。これは、やはり違うんですね。

日朝平壌宣言は、これはもう経済協力ありきの宣言なんですね。ですから、日朝国交正常化交渉に入っちゃったら、もうそちらの方でどんどん進んでいっちゃう。真相究明なり特定失踪者なり、それが、それこそ交渉の中で交渉の、まあ言ってはなんですが、カードとして利用される可能性があるわけですよ。経済協力の、この国交正常化交渉の北朝鮮のカードとして、この十名あるいは特定失踪者のさまざまな真相究明、これをカードとして利用される可能性があるので、あくまでも、さっき言った拉致問題の解決というのがあって、国交正常化交渉に入るべきではないかというふうに思うのですが、拉致問題の解決は、八名の帰国で、そして、その後国交正常化交渉の中でということなのでしょうか。

私は、それはやはりやり方が違うと。だから、この六者協議の中で、北朝鮮との日朝二国間協議の中で、核問題がこの拉致問題に関係をしている、拉致問題の解決は核問題の進展とも関係しているという北朝鮮側からの投げかけに、核問題も含めた包括的な解決と。だから、核の解決を優先させなければ拉致の解決はないといった形に変わってしまう。

私は、核の解決は拉致の解決と切り離さなければいけない。
日本の立場というものはあくまでも拉致問題の解決であって、先ほどのエネルギー支援を含めて、これを拉致と関係してはいけない、結びつけてはいけない。こうした今六者協議の北朝鮮側からの、核と拉致は、核の解決、進展が拉致の解決に関係をしているということに乗ってはいけない。
その乗ってはいけないためにも、先ほどの八名の無条件帰国で日朝国交正常化交渉を再開するんだ、その協議の中で十名、そしてまた特定失踪者の究明をやるということは、やはりやり方が違う、それをやっちゃいけないというふうに思うのでございますが、どうでしょうか。

川口国務大臣 
拉致被害者の御本人、あるいは御家族の方々がいろいろ御心配をしていらっしゃる気持ちというのは私はよく理解をしております。それから、今武正先生がおっしゃったような考え方、そういった考え方も一つそれはあると思います。

我々が考えていますのは、経済協力というのは我々にとってのてこであるということであります。逆ではない。その経済協力というのは正常化をしない限りはないわけです。ですから、まとめない限りは経済協力はないわけですから、北朝鮮は、経済協力がてことしてなるということであれば、もちろん、その拉致について我々が必要としている情報を出してくる、ということのために我々はてことして経済協力を使うということで考えているわけです。おっしゃっている、経済協力を逆に使われるではないかということについては、真相究明というのはその正常化交渉の中で出てくる話であります。
経済協力は、交渉が終わって、正常化をして、その後でなければないということを言っているわけです。

我々にとって経済協力はてこである。そして、その拉致の真相の解明ということは非常に大事でありますし、これは丁寧に時間をかけてやっていく必要があるわけですから、あるいはいろいろな調査とかいろいろなやり方をしていくことが必要だろうと思いますけれども、そういったことをその交渉の中でやっていく。経済協力をてこに使うというのが、余りこういうところで、言ってみれば……(発言する者あり)ということをやりたくないんですけれども、御質問ですから、あえてそういうふうに申し上げさせていただきます。

武正委員 
経済協力がてこであると。要は、国交正常化交渉の中で日本の、具体的にお金を何にどのぐらい出すか、こういったことをカードとして拉致問題の解決を図るというのは大変危険なやり方だというふうに私は思っています。

国交正常化交渉に入ってしまうと、先ほど言ったように、逆に北朝鮮側に拉致問題の解決のカードを握られて、それをカードとして、金を幾ら出せ、これをやれ、あれをやれ、そういう交渉に拉致問題の、拉致事件の被害者、あるいはその十名の存否、あるいは特定失踪者、これを使ってくるという土俵に上がるべきでないというふうに思います。

そして、いや、国交正常化が成らないと経済協力は後なんだよと言われますけれども、交渉の中で約束をしたことが、それがもう一つずつ既成事実として積み重なって、交渉が積み上がっていくわけですね。実際にそれは国交正常化があってから援助がされる、支援がされるとしても、どんどんどんどん交渉の中で日本は支援の約束をしていくわけですよ。その約束を、日本はてこ、大臣が言われたように、カードとしながらこの拉致問題の解決を図るというのは、私はやってはならない手法だというふうに思います。

あくまでも、先ほど大臣が言われたように、拉致問題の解決というのは、八名の無条件帰国、十名の存否の真相究明、その徹底究明、そして特定失踪者の究明、これがもうセットなんだと。これをやらない限り日朝国交正常化交渉に入らない、こういった強い姿勢がないから、北朝鮮側から、核の問題の解決の進展が拉致問題の解決にリンケージしている、その論理に乗ってしまった。その前提というのは、理由というのは今のところがある。

私は、日朝国交正常化交渉を急ぐべきでない。読売新聞がアンケートをとって、五一%の人が今急ぐべきでないと言っております。家族会でもそういった意見を中心のメンバーの方も持っておられるやに私は聞いております。これ以上、ちょっと時間の関係もありますが、私は、やはり拉致問題の解決の途中で日朝国交正常化交渉に入るべきでない、これを言って、ちょっと次の質問に移らせていただきます。

時間が限りがありますので、幾つか予定をしていたものもございますが、ちょっとこれを三つほど飛ばしまして、日本海の呼称問題について触れさせていただきます。

日本海というこの呼称を、東海と、トンヘということを、韓国は変えるべきだということでさまざまな国際的な運動をしていることは周知のとおりであります。これについて、既に外務省としても、このような「シー・オブ・ジャパン」という冊子をつくって、日本海という呼称、これを徹底しようということでやっていることも承知をしておりますが、そのやさきに、韓国の日本大使館のホームページ、これで、事もあろうに日本の大使館が、自分の日本国大使館の韓国語のホームページに韓国側の主張のとおり東海、トンヘと表記していたことがこの二月十八日、西日本新聞の調べでわかった。
 ちょっとこの事実を確認したいと思います。

川口国務大臣
 
おっしゃったように、韓国語版のホームページにおきまして、日本海が東海と表記をされたり、あるいは日本海と東海が併記をされるという形で記載をされていた部分があるということは、これは大変に遺憾ながら事実であります。

武正委員 
こうした日本海の呼称を、トンヘ、東海と言うのはけしからぬということをやっている外務省が、事もあろうにソウルの大使館の、日本の大使館のホームページでみずから東海と書くということはあってはならないことなんですね。

これについて、今大臣、こういったことはもうあってはならない、二度とこんなことがあってはならないし、そしてまた、なぜこうしたことが起きたのか、その理由、原因、そして、それを再発防止するためにどういうことをやるのか、これをしっかりと提出していただきたい、発表していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣
 
これはもう本当にあってはならない、二度とあってはならない、全くどうしてこういうところで手抜かりがあったのか、私も非常に遺憾に思います。

それで、これについて直ちに全部のホームページを見ましたところ、全部で直したところが五カ所、五件六カ所ですか、ということであったということですけれども、これはなぜこういうことになったのかということも調べました。それで、これは、現地の委託業者、これに韓国語への翻訳を委託した、そのときにチェックをしたんだけれども、必ずしもチェック、チェック漏れがあったということであります。

こういうことを二度と起こしてはいけないというのはもう当然のことで、これに対して直ちに、二度と起こらないような再発防止策をとるようにという指示をいたしております。それで、このチェック体制、これをさらに強化するということで具体案を今具体的に考えてもらっています。
 本当に残念だと私は思います。

武正委員
 
実は、この日本海の呼称問題は、平成十四年十一月六日、各国にある日本大使館に各国メディア等への申し入れということで訓令を出しているんですよ。そのときは、例えばタイ航空などの機内誌に日本海と東海が併記されていると。これは、私のやはり地元の方も、機内誌をちぎって持ってきてくれました。併記をされていたり、あるいは空欄だったり。

それで、これについて、では調査しなさいという訓令がこの十一月六日に出たんですけれども、これについて、タイの大使館、すぐ対応をして、タイ航空に申し入れをしたんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣
 
東海の問題については、これは昨年の九月の時点で、飛行機会社に対して調べるようにということを、私から訓令を出しております。それで、その結果、いろいろなやり方をしているということがわかったわけでございまして、日本海単独表記をしていない航空会社、これに対しては、日本海単独表記をするようにという申し入れをやったわけでございます。

それで、タイ航空ですけれども、これは調査をしました時点で、日本海海域の表記、これを空白にしているということがわかりました。それで、これを受けまして、平成十五年五月の時点で、在タイの大使館の館員がタイ航空の担当者を直接訪問して、空白ではなくて日本海と書いてくれということを申し入れたということでございます。

それで、その後、ことしの二月になりまして、まだタイ航空が、その機内誌、空白のままであるという状況ですので、さらに申し入れを行ったということをやっております。

武正委員
 
ちょっともう時間がまいりましたので、最後、私が言っているのは、今言われたように、訓令は十一月六日、平成十四年。それで、今言ったように、申し入れをしたのは五月なんですよ。これは私が、どうなんですかという問い合わせをして、タイ航空、タイ大使館どうですかと言ったら、外務省の方、やっていませんでしたと。訓令を受けてやっていなかったわけですよ。それで慌てて五月になってやっているわけでしょう。さっき、再発防止だ、こんなことあってはならないということを言っていますけれども、訓令についてタイの大使館は半年間そのまま放置していた。こういうことがあるから、ソウルの日本の大使館だって東海なんて記載をするわけですよ。

外務省は、一体この日本の、この日本海という、これまでの伝統と歴史のある名前を本当に守ることができるんですか、こんな対応で。相次いでいるじゃないですか。

この点について、タイの大使館が半年間サボタージュしていたこと、それも、私が言うまでわからなかったこと、そしてまた、今回、二回目を起こしている。これは外務省として、やはり根本的な、外務省としての組織のいろいろなやり方、改革したと言っているけれども、できていないんじゃないですか。大臣、お答えください。

川口国務大臣
 
このタイの大使館のケースというのも、私にとっては非常に残念なケースでありますけれども、これは若干御説明をしますと、東海という単独表記ではなくて、あるいは併記ではなくて、何も書いていなかった、空白になっていた。空白になっていたので、そのままそれを見過ごしていたということがあったようですけれども、いずれにしても、大変に残念なことだと思っています。

武正委員 

空白のやつもちゃんとやるようにというふうに訓令を出したんじゃないですか。大臣。

川口国務大臣 
それも、そういうこともあわせて言ってあります。

武正委員 終わりますが、空白なこともちゃんと書いて、徹底して調べて申し入れるようにという訓令を、タイの大使館は半年間放置をして、こっちが指摘しなきゃやらない。
しかも、また今回、同じことを繰り返している。このことについて、外務省は再発防止をどういうふうにするのか、これを委員会に提出するよう、これは委員長にお願いをしたいと思います。

米澤委員長 
理事会で諮って決定します。

武正委員 
終わります。ありがとうございました。

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