2004年3月4日
【憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会】
■近藤小委員長 これより、本日の参考人質疑を踏まえて、小委員間の自由討議を行います。
一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小委員長の指名に基づいて、自席から着席のまま、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。
発言時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。御発言を希望される方は、ネームプレートをお立てください。
■中谷小委員 本日のEUのお話を聞きまして、事安全保障に関しては、非常に長い歴史的な経験を酌んで、真剣に各国が協調して模索しているなと感じました。特に、NATOまたWEU、OSCE、また最近はEU軍ということで、もう二重、三重、四重に各国の安全保障機構というものをつくっております。 イラク問題では、イギリスやアメリカとフランス、ドイツが意見が分かれて、NATOとかEUとしては機能をしていませんけれども、それにもかかわらずEU軍を充実させていこうというお話でございまして、やはり、我が国周辺の安全保障機構を考えてみますと、アメリカを中心とした二国間の条約しか存在していない、実に寂しい今アジアの状況であるということを認識いたしました。 そこで、私が主張したいのは、安全保障を確立する上においては、もう集団的安全保障とか集団的自衛権に伴う各国の協力というものが世界の趨勢であって、今後、予防外交にしても平和維持活動にしても、各国がそれぞれ目に見える形でお互いにルールをつくってそれを遂行していこうということでございますので、このアジアにおいても、しかるべき安全保障機構の創設が必要ではないかと思っております。 そういう意味で、今北京で開かれている六者協議、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、日本、アメリカといった東アジアの主要国が集まって北朝鮮問題に対して協議をしているということは、かつてない出来事でありまして、ぜひ、こういうものを発展させて、この東アジアにおける安全保障機構というものを創設すべきである。現在も、APECやASEANにおいてそのような枠組みができつつありますけれども、ぜひ、日本が中心になって、東アジアの安全保障機構を進めていく提案をすべきではないか。 そのためには、集団的自衛権とか集団的安全保障に関する国の考え方をきちんと整理して、憲法によって、やはり集団的自衛権や集団的安全保障概念は、この地域の安定のために、独立国としてなすべきことをきちんとした上でないと、ただ単に言葉だけの組織になってしまうわけでありますので、ぜひ、憲法の中で、集団的安全保障や集団的自衛権のあり方の位置づけをしていただきたいと感じました。
以上です。
■伊藤(公)小委員 きょう、大使のいろいろお話を伺いまして、いわゆるNATOとは違って、EUにおきます緊急対応部隊というものが既にそれなりの役割を果たしているというのは、我々アジアにおける地域的な安全保障の枠組みを考える上で非常に参考になったなというふうに思います。 しかし、大使がいみじくも意見陳述の中で最後にまとめられたように、EUというものがほかの地域にそのまま当てはまるものではないというお話をされましたけれども、まさにそのとおりだと思います。 今、我々が足場にしているアジアは、ASEANあるいはASEAN地域フォーラム、それからASEANプラス3、日本とか中国、韓国を加えた地域、あるいはAPEC、それからきょうお話の中にもありましたが、ASEM、いろいろなグループがいろいろな協議をしてきた歴史があるわけですけれども、総じて言うと、経済を中心にしてやってきていると思います。 そういう中で、最近の国際的なテロの対応だとか、あるいは北東アジアにおける最近の地域の情勢を考えたときに、いわゆるEUが果たしている緊急対応部隊、そういうような安全保障に対する共通の基盤というものも大変大事な時期に来ているのではないかというふうに思います。 ただ、きょうはドイツの方でございましたけれども、戦争はしたけれども、ヨーロッパにおいて、ドイツはロシアとの関係を非常にうまくリードしてきたという場面があると私は思います。 これから我々は、憲法を含めて、日本がどういう国際的な役割、どういう選択をしていくかということが大変大事だと思います。EUにおけるイギリス、つまり、アメリカとしっかりと提携しながら、一方ではEUに発言権を持っていくという、そういう選択もあると思いますし、ドイツやあるいはフランスのような役割というものもあると思いますが、これから、中国というものが、これは安全保障の点でも、あるいは経済的にも非常に大きなウエートを持ってくる。アジアにおけるいわゆる緊急対応部隊にしても、中国を無視できない、そういう時代を私たちは迎えているというふうに思うわけでありまして、この点も、EUが今日まで歴史を積み重ねてきたところと、またアジアは違った意味で難しさを持っているなというふうに私も実感をしているわけであります。 それだけに、中国に対していろいろな議論があります。しかし、我々が三時間とか三時間半足らずで、中国の十二億、十三億という世界最大のマーケットというのは、経済的にも、またこれからの安全保障という点でも緊密な関係を持っていく必要があるんじゃないかというふうに私は思います。 EUの経済、GDPが約一千二百兆円、アメリカが一千四百兆円、日本、韓国を含めたASEAN、あるいはアジア全体でいえば八百兆円ぐらいになるんでしょうか、経済の規模は、この三つの経済圏というのはそういう関係ですけれども、圧倒的に違うのは人口だと思います。 アメリカにしても、NAFTAとしても、メキシコ、カナダを加えても四億ちょっと、それからEUは三億弱、このアジアは三十五億というわけですから、圧倒的に市場でもアジアというものの役割はこれからますます大きくなると思いますので、そういう意味では、経済をベースにしながらも、安全保障、緊急対応部隊みたいなものも、アジアでこれから積極的に我々は模索をしていく必要があるんじゃないかというのが私の基本的な考え方であります。
■武正小委員 民主党の武正公一でございます。
きょう大使から、EUとNATOとの政策の整合性をいかに確保するか、こういった御苦労も、あるいは前向きな取り組みも御説明をいただいたわけなんですけれども、これは、ドイツ出身ということもあるわけなんですが、過去、ドイツの連邦軍のNATO域外への派兵について、ドイツでは、連邦憲法裁判所に提訴がされ、それについて判決が出された。 その中で、派兵に際しては、事前に連邦議会の個別の同意が必要であるという判示がされているわけでございまして、これはやはり大変参考になるところでありまして、いわゆる我が国においての国会の事前承認か事後承認かといったことにおいても、EU各国、これは、EUとNATOは参加国は必ずしも一致はしておりませんが、こうした議会の承認という意味での丁寧な関与といったものは大変参考になるなということを感じたわけでございます。
以上です。
■楠田小委員 民主党の楠田大蔵でございます。
本日、ツェプター大使からお話を聞かせていただきまして、やはり率直に感じましたのは、先ほど委員からのお話もありましたけれども、私は、アジアの安全保障というもの、確かに重要であることは間違いないけれども、ドイツ出身のツェプター大使の話を聞くにつけ、やはり、長い歴史の中であれだけ対立の歴史がありながらも、寛容と連帯でその枠を超えてきた。 共通の理想、先ほどは、二度と戦争を起こさないという理想をおっしゃっていましたけれども、何かアジアの中でも共通の理想というものを構築することがまず先決ではないか。その先に、ボトムアップという話がありましたけれども、FTAを初めとする経済的な連携、また環境政策におけるそうした連携といった、実際の今の生活における、特に経済、また環境といった、そうした面での提携というのがまず先に来るべきではないか。そうした信頼関係の中で、初めてそうした安全保障の問題も同時に出てくる問題ではないか。この順番を間違えると、まとまるものもまとまらないのではないか、そのような実感がいたしたところでございます。
■山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。
私は、きょうの大使のお話で、やはり世界の見方や国際秩序のとらえ方にかかわる問題が非常に多く含まれていたというふうに感じました。特に、単独行動主義に対して国連中心の多国間システムを提唱して、ルールが必要だということを強調された点は、私もそうだと思います。 ヨーロッパの場合は、やはり二つの世界大戦とファシズム、それから東西分断という経験がありますから、そこから、二度とヨーロッパを戦場にしない、それから人権を大事にする、そういう意味での歴史的な基調といいますか、そういうものが非常につくられてきた経過があるんだなということを感じました。 そういうものを背景にして、国際人権規約に先立って、ヨーロッパが独自に人権規約、人権条約とも言われますけれども、こういうものをつくった、そういう土台あっての今日の統合というステージに上がっているということを感じました。 それに比べて、アジアを見ますと、アジアの場合は、例えば二十世紀前半の日本軍国主義の侵略戦争にかかわる戦争責任の問題、そして今日では、北朝鮮の拉致問題を初めとした国際的な数々の無法行為の清算の問題、こういうものが求められているわけで、やはりヨーロッパの大きな探求の今の到達段階からアジアの現状を吟味するということも、一つ見方として大事な視点だなというふうに感じたんです。 最後になりますが、先ほど中谷委員から発言がありましたけれども、私はまず、当然のことですが、集団的安全保障と集団的自衛権というのは全く違う考え方であるということ、それから、集団的自衛権について言いますと、これは私は、ここに世界の流れがあるということはとても言えないと思うんです。 以前の憲法調査会でも発言いたしましたが、国連百九十一の加盟国のうち三分の二の国々が軍事同盟に属さない、そういう意味では、集団的自衛権については、そういう攻撃権を持たない国になっているわけですから、そこの世界の流れをやはり重視すべきだというふうに思います。 そして、北東アジアでの安全保障対話の問題でいいますと、私どもも六カ国協議の今日の達成というものを評価しておりますが、日本の場合は、やはり憲法の原則がありますから、地域的な安全保障対話を考えていく場合も、そこに根差して考えていくことが基本であるということを申し述べたいと思います。
■仙谷会長代理 改めて、大使の話を聞きまして、さらに憲法草案等々を拝見しまして、ある意味では、江戸時代の末期といいましょうか、人々とお金がどうしても藩の境を越えたい、ほっておいてもあふれざるを得ないという状況がある意味でヨーロッパにあったのかなと。つまり、この憲法草案がもし確定されるとしますと、国境がもう全くといっていいほどなくなることは間違いがないわけでありまして、現代の関所であります入管もほとんどないわけであります。 この憲法草案の「連合市民権」というところで、ここの中でもやはり一番に、「構成国の領土内において自由に移動し居住する権利」というのが出てまいります。つまり、ある意味で、国境を挟んで、ここにいわゆる境界があるんだということで、各民族やあるいはネーションステートの国民と言われた人民が対峙をしない。つまり、軍備を構えて国境線を挟んで対峙するということがヨーロッパの二十五カ国の中ではなくなる、なくなったという現実があるということであります。 しかし、にもかかわらず、先ほどから問題になっている山口議員のお話も、それはそれでその限りにおいては正しいわけでありますが、ただ、平和をつくって維持し、あるいは法の支配というものを貫徹させようとすれば、どうしてもヨーロッパも共通の安全保障・防衛政策というものが必要なんだと。共通の安全保障・防衛政策を行うためには、構成国が各国の憲法の要件に従って当該決定を採択するということが必要であります。 あるいは、こういうくだりもあります。「構成国は、閣僚理事会が定める目的に貢献するために、共通安全保障防衛政策の実施のために非軍事的および軍事的能力を連合が利用できるようにするものとする。多国籍軍を共同で編成する構成諸国については、当該多国籍軍も共通安全保障防衛政策において利用できるようにするものとする。 構成国は、自国の軍事能力を漸進的に向上させることを確約するものとする。」云々というくだりがございます。 そうしますと、先ほど山口先生がおっしゃった、日本国憲法があるから日本はこういうことはできないんだということを出発点にしては、この種の地域的な安全保障というのは成り立たないということになるわけでありまして、ヨーロッパ各国は、そのために、EU憲法を構想するに当たって、各国憲法をむしろみずからが変えていった、こういうことがあるわけであります。 日本のように、ある種の猜疑心、これは重要なことでありますけれども、共通の安全保障あるいは共通の価値観をつくりながら進めていく、平和とか軍縮とか、あるいは現代においてはテロ対策というふうなことも入ってくるのかもわかりませんが、そういうことなくして、何かみずからの価値だけを固定させて一歩も前へ出ようとしないということでは、これからの安全保障あるいは平和というものも構築できないんじゃないか、むしろそういうふうに考えるところであります。
■山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。 私は、日本国憲法が九条で平和主義をきちんと掲げていますから、北東アジア、もう少しアジアを広くとってもいいですけれども、そこの安全保障をめぐる対話についても日本はその立場で考えるべきだということを述べているのであって、そのことを出発にすると安全保障対話が成り立たないという議論は成り立たないと私は思います。
■中谷小委員 同じく、山口委員の先ほどの発言ですけれども、やはり現憲法を固守した考え方というのは今後どこまで通用できるかどうか、私は、心配な面もあろうかと思います。 というのは、NATOにおいては、集団的自衛権による体制でソ連とか社会主義からみんなが力を合わせて守ってきたということで、冷戦が終わったらもう要らないということではなくて、さらにEUという共同体をつくって、EU各国がみんなで守っていこうということで、これは、国家の固有の権利である集団的自衛権、これをもとにみんなが共存していこうという発想でありますので、そういう考え方を日本も持たないと、いつになったらアメリカの影響力から解き放たれるときがくるのかと。 日本は安全保障の面でアメリカの影響を受け過ぎているので、今回のイラクの問題にしても北朝鮮の問題にしても、非常に選択肢がないんですね。もうアメリカと話し合いをするしか選択がない。 国家としての独自性とか柔軟性とか戦略性、いわゆるオプションを広げるという観点を考えますと、やはり日米安保にかわる多国間の安全保障システムというのが必要でありまして、そのためには、日本においても、集団的自衛権や集団的安全保障をきちんと果たして、加盟国との約束とか責任とか役割、こういうことを果たすことによって、国家としてもっともっと柔軟に、また国の主体性を持った主張もできるんじゃないかということでございますので、そういう観点で、集団的安全保障については、この憲法調査会等でよく議論をしてみる必要があるんじゃないかと思います。
■仙谷会長代理 一言だけ中谷先生のお話に、反論というほどではありませんが、異論をちょっと差し挟んでおかなければいけないと思っておりますのは、結論部分はそれほど中谷議員のお話と私も変わるところがないわけでありますが。 今ヨーロッパで行われているような、ある意味では伝統的なパワーポリティックスを脱して、ある種の多国間による協調、ソフトパワーの構築とでもいいましょうか、そういうEUというものを通じて平和秩序を実現する、当然のことながら、安全保障・防衛政策が全く必要ないという立場ではないわけでありますが、そこは多国間のシステムをつくる、こういうことだと思うんですね。 ところが、今、日本で集団的自衛権の行使という方を強調される人は、どうも対話と圧力、圧力が軍事的な圧力をかけない限り平和は構築できないんだ、ここに傾斜をしている。とりわけ、アメリカとの集団的な自衛権の行使を世界じゅうに広げるという意図までお持ちなんではないか。そのことを自由にさせるために日本の憲法改正をしようとまでおっしゃっておるんではないかというふうに、私は最近聞いておりまして、これはまた雄大な、昔の満州国侵略にも似た大変勇猛果敢な構想でありますけれども、それは現代においては、国際環境としても、あるいは国民的な感覚からしても許されないだろう、こういうふうに思っております。
■土井小委員 先ほど来お話の中の基本にあるのは、やはりきょう大使御自身がはっきりおっしゃったとおり、国際法が国内法に優位するという立場を、EUという経済圏といいますかEUという機構の中での問題として、認識はきょうは出されたと私は思っていますが、これが当たり前のように日本でも条約優位だと考えたら違うと私は思っているんです。 今の日本で、条約優位か国内法優位かという問題のときに常に問題になるのは、日米安保条約と日本国憲法というのはいずれが優位であるかというふうなことが問題になっているんですけれども、歴代外務省は国内法、つまり憲法優位の立場なんですね、理屈は。しかし、国会での質問に対する答弁は常に、国内法優位という立場でございます、変わりませんという答弁をされながら、実態はそうじゃない。そこが大問題だと私、実は思っているんです。 条約優位か憲法優位かということについて、私は別途、それは優位であるか優位でないかという問題ではない、法源が違うんですから。国際法は国際法であって、国内法は国内法であって、別の法源だ。 したがって、私たちが考えるべきは、まず日本という国の最高法規は日本国憲法であるということを忘れちゃいかぬという立場でございます。それも別に、国内法優位だからそういう立場だということを私は言っているわけではありません。 さっき中谷委員がおっしゃっていたNATOの問題について、釈迦に説法ですけれども、NATOの問題について集団的自衛権をおっしゃるなら、どういうわけで集団的自衛権ということを是認した上でそれを前提に組んだNATOという機構ができたかというのは、考えれば一目瞭然じゃないでしょうか。冷戦時代にワルシャワ体制、ワルシャワ条約を向こうに回して、ヨーロッパでは、NATO体制ということを強化することのために、まずは集団的自衛権ありきから始まった。これは明々白々なんですね。同じように日本とアメリカとのただいまの関係を考えるわけには私はいかないというふうに思っております。 ありがとうございました。
■近藤小委員長 予定の時間を過ぎましたので、御発言は、現在ネームプレートを立てておられる委員までといたしますが、よろしいでしょうか。
■山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。
短くお話しいたしますが、先ほど中谷委員から、日本とアメリカの関係の問題で、いわばアメリカの影響下にあって外交・安全保障政策上の制約になっているというお話がありました。
どういう意味での制約かというのは短い御発言でしたからはっきりいたしませんが、しかし、そういう認識をお持ちでしたら、私は、土井委員からも話がありましたけれども、日米安保条約のくびきから離れるという選択肢を今真剣に考えるべきだというふうに思うんです。やはりこれが、日本のもともと憲法の体系のもとで出された平和主義、そして安全にかかわる世界への働きかけの仕方、これを定めているわけですから、今そこに戻るということが非常に大事であるということだと思います。
■中山会長
私は、安全保障の問題の中で、一つの形である地域の安全保障をどう構築するかということが、これからの日本の将来の運命に影響を与えてくるだろうと思うんです。 一つは、この地域の国々が全部エネルギー源を持っていないというのが一つの大きな特徴だと思います。ヨーロッパは、あの冷戦中でもパイプラインでガスをシベリアからずっと送りましたし、日本は、やはり九割近い原油を中東地域に依存していると思うんです。 北朝鮮の問題で今国民の関心が高いですけれども、きのうもテレビのニュースでやっておりましたが、今の六者協議以外に、シベリアからガスを引っ張ってくる、そしてパイプラインで北朝鮮を通って韓国へつなぐという構想もあると。これは、かねて北東アジア経済フォーラムというフォーラムで議論をしてきたことが、現実問題として北朝鮮のエネルギー処理をやるときに考えなければならない一つのテーマに上がってきたと思うんですが、パイプラインを各国で引くということになってくると、パイプラインの安全保障が地域の安全保障に密着してくると私は思います。 現に、サハリンの原油とガスが間宮海峡を越えてシベリアへパイプでつながれてウラジオストクまで持ってくるという構想が進んでおります。こういう形で、もう既に韓国国内のガスパイプラインは全部完成しています。日本は、残念ながらパイプラインというものが、昔、新潟から太平洋岸の仙台までパイプラインがあるだけでして、ほかは全然パイプラインらしきものはないわけです。こういう一つのネットワークという形から見ると、日本は孤立している可能性がある。ここらのところを考えて、地域のエネルギーをどう安定させるか。 恐らく、このガスパイプラインのほかに問題になってくるのは、原子力発電の使用済み核燃料の処理を、アジア地域の原子力発電所の出してくる廃棄物の燃料をどう処理するかということも、地域全体で考えていかなければならない大きな問題だろうと思うんです。これと安全保障というものは表裏一体になっている。 こういうことを踏まえながら、各国で、この六者協議がうまく終わった後、アジア地域の、北東アジアの地域の安全保障体制をどうするかということを冷静に議論するべき時代が近づいている、私はこういうふうに認識をしていることを申し上げておきたいと思います。
■近藤小委員長
これにて自由討議を終了いたします。
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