2004年3月31日 【外務委員会】

武正委員
民主党の武正公一でございます。三条約についての質疑を行わせていただきます。特に、日米刑事共助条約の質疑を中心で行わせていただきますが、ちょっと順番を変えさせていただきまして、まず、尖閣諸島の点について外務大臣にお話を伺いたいと思います。
 
今まで理事会を、三十分以上開会がおくれる形で進んでまいりましたのは、民主党から、本委員会で今回の尖閣諸島不法上陸に関しての案件の決議をすべきである、こういったことを与党側に求めてきた経緯でございます。
 
特に、先週金曜日夜八時以降に七名の活動家を強制送還させた。容疑を否認し器物損壊の疑いもある活動家を入管から帰してしまった。我が国の主権を侵されながら、それを容認するということで、断じて許すことはできない。しかしながら、午前中、川口外務大臣から、沖縄県警の決定ですよ、こういった答弁が繰り返される。
本外務委員会として、やはりこの事態を見過ごすわけにはいかないということでの決議をすべきということで、理事会で求めてまいりましたが、残念ながら与党側が応じず、本委員会の審議が今始まったところでございます。
 
そこで、まず、外務大臣には、今般なぜ入管が強制送還したのか、私はその過程が大変疑問でございます。
沖縄県警が決めたことだという御答弁でありますが、外務省も当然相談にあずかっていたはずでありますし、外務省としての意見も、沖縄県警あるいは入管あるいは検察あるいは首相官邸、さまざまな調整があったはずでございますが、外務省としてどのように今回の強制送還にはかかわったのか、あるいは意思を表明したのか、あるいはサジェスチョンを与えたのか、これについて御答弁をいただけますでしょうか。

川口国務大臣 これは、尖閣諸島が我が国にとって、歴史的にも、そして国際法上も我が国固有の領土であるという立場があるわけでございまして、そして、この領土において違法行為が行われれば、それは法治国家でございますから、関係法令に従って対応が行われるというのは当然のことであるというふうに思っております。そして、この件につきましては、関係の御当局におかれまして適切なる御判断をなさった、適切に対処をなさったというふうに承知をいたしております。
 
外務省として、そういったことについて、私が今申し上げたこと、これはいろいろな折にその態度の表明はしてきておりますけれども、それを超えて関係の御当局の判断に対しまして何か影響力を行使するというようなことは全くしていないわけでございまして、先ほど委員がおっしゃった沖縄県警云々という答弁は、けさのは私のではございませんで、関係の御当局の警察庁等の御答弁であったかと思います。

武正委員 
外務副大臣もお見えでございますので、私は、「サンデープロジェクト」を拝見しておりました折に、たしか副大臣、これは沖縄県警が決めたことですというようにテレビで言っておられましたが、その点、突然でございますが、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 
だれがこの処理について責任を持つ判断をしたのかということについては、累次政府側から答弁したとおりでありますし、また、外務省の立場については、先ほど川口大臣から答弁があったとおりであります。
 
委員御指摘の先般のテレビ出演の件でございますが、同様の質問がアンカーマン、キャスターからございました。たまたまテレビに出ておりまして、私からも、これは最終的に沖縄県警察本部、沖縄県警の判断であるというふうに申し上げました。
 
ただ、その判断に至る過程にあっては、警察庁を通じて、必要な法律の解釈の判断、やりとり、そういうことについてはやりとりがあった、そしてそういうものを踏まえて最終的には沖縄県警が適切に判断をし、入管に引き渡すという決定を行った、そのように申し上げたところであります。

武正委員 
そうすると、警察庁から照会があったということでございますが、その中で、入管から強制送還をしますということでの報告というか、どうですかという照会はあったんでしょうか。

逢沢副大臣 
外務省の立場として、警察庁が自主的にどのようなやりとりをしたかについてお答えを申し上げる立場にはないというふうに思いますが、警察庁からの報告によれば、そのような処理が内部でなされたというふうに承知をいたしております。

武正委員 
外務大臣、こうした照会が外務省に警察庁からもあったということなんですけれども、そういったやりとりがある中で、既にこの委員会では三月十六日付で決議をしております。
 
これをちょっと読み上げますと、例の外務省設置法等の決議でありますが、「外務省においては、国民の生命財産を守り、領土領海を守り、国益を守るために、日本外交の適切かつ効果的な力強い展開を図り、不祥事の再発を防止し、信頼を回復するために、より一層の情報公開と外交機能強化のための組織・制度の改革に全力で取組むこと。」これを含めた六項目の決議をいたしまして、外務大臣としては、「法律案と同時に可決されました附帯決議については、これを厳粛に受けとめます。」このように御答弁をされているわけなんです。
 
今回、不法に上陸をした七名の活動家、これをやはり国内法をもって適切に処理すべし、こういったことを先ほど言われ、そういったことも指示をした、問い合わせについては答えたということでありますが、先ほどの決議も「厳粛に受けとめます。」というふうに言われる中で、容疑を否認したまま帰してしまう、器物損壊の疑いもあるのに。こういったことについては、外務大臣として適切な対応だったというふうに思うわけでございますか。こういった決議を踏まえてのことでございます。

川口国務大臣 
先ほど申しましたように、これは我が国の領土内において行われたことでございまして、それに対しては我が国の国内の法令をもって適切に対処をするということが正しいわけでございます。そういったことを関係の御当局において考えられ、適切なる判断をなさったというふうに私どもは承知をしているわけでございます。
 
それから、警察庁から外務省に対して問い合わせがあったとか何かがあったとか、それは、外務省の考え方というのはそういうことでございますから、私はずっとそういう考え方で行動するということを指示いたしてきておりますけれども、そういった警察庁とのやりとりについては私は承知をいたしておりません。

武正委員 
そうしましたら、では、どこの省庁と問い合わせ、やりとりがあったんですか。沖縄県警が単に入管あるいは検察とやりとりをして強制送還をされた、一切各省庁から外務省に対して照会はなかったということでございますか。

川口国務大臣 
そういった事実関係については私は承知をしておりませんので、もしあれでしたら政府参考人をお呼びいただければというふうに存じます。

武正委員 
政府参考人じゃなくて外務省のトップである外務大臣に聞いているんですよ。外務省にそうした照会はないんですか、関係各省庁から一切なかったんですかとお聞きしているんです。

逢沢副大臣 
先ほど御答弁申し上げました、沖縄県警が警察庁を通じて政府内関係省庁に問い合わせをし、最終的には沖縄県警察の責任において判断を下した、そのように申し上げたわけであります。
 
警察庁がどの省庁にどういったことで照会、問い合わせをしたかにつきましては、これは警察庁の方から正式に答弁をするものというふうに思われますが、私どもとしては、出入国管理難民認定法の解釈、扱いについて判断をするための照会ということであれば、恐らく法務省当局と御相談をされたのではなかろうか、そのように推測をいたします。

武正委員 
そういった推測のもと、関係省庁との協議が、外務省、行われたわけですよね。今の法務省、そういったことは事実ありますか、法務省とのやりとりは。

逢沢副大臣 
先ほど大臣からも答弁をされましたように、警察庁あるいは法務省から、外務省としてこの事案についてどのような意見があるか、あるいはどういったことであるか判断を求めるといったようなことが我が省に対してなされたというふうには承知をいたしておりません。

武正委員 
それでは内閣官房はどうですか。

逢沢副大臣 
警察庁が、政府内のどの部署に対してあるいはどの省庁に対して、どのような照会あるいは問い合わせ、打ち合わせをされたかの全貌について私どもは承知をする立場にはございません。

武正委員 
私が言ったのは、内閣官房から外務省に、協議、問い合わせ、やりとり、そういったものはあったんですかと聞いたんです。

逢沢副大臣 
内閣官房から外務省に対して何か意見を求めるといったようなやりとりがあったということも承知をいたしていないと申し上げたいと思います。

武正委員 
そうすると、では、この事案に対して外務省はノータッチということなんでしょうか。

逢沢副大臣 
外務省は、対外的に日本を代表する役所であり窓口でございます。この事案が起きて間もなく、駐日大使、武大偉大使を我が省に呼び、厳重に抗議をするとともに、遺憾の意を表明いたしました。その後、武大偉大使の方から申し出があり、二度にわたり外務省を訪ねられた、そういう経緯もございますが、その都度、面接をいたしました竹内次官から、尖閣諸島は我が国固有の領土である、これは国際法的にも歴史上も全く疑いの余地がないところである、したがって国内の法令に従って粛々とこの案件については処理がされるということについて御説明を申し上げた。
 
そういったやりとりについては外務省が責任を持って行ったところでございますけれども、警察庁からあるいは内閣官房から、外務省としてこの事案をどのように処理したらよいか判断を求められたといったような経緯はなかったというふうに承知をいたしております。

武正委員 
私は、強制送還の件ということを、先ほど、この件、ノータッチなんですかというふうに触れたんですね。
 
今のように明確に、法務省あるいは内閣官房から強制送還について外務省の意見を正式に求められたということはないと承知をしているという答弁でありますが、そこまでかっちりと聞いているわけではありませんで、外務省として、法務省、入管、強制送還、あるいは沖縄県警とのやりとり、これについて、一切やりとりが外務省とはないまま決められたと。それぞれの関係省庁だけではなくて、内閣として、内閣に所属する各省庁含めた、あるいは首相官邸含めて、強制送還に至る決定で外務省とのやりとりはなかったんですかというふうにお聞きしたんですが、いかがでしょうか。相談です。

川口国務大臣 
これは、国内の制度の仕組みといたしまして、つかさつかさが判断をしていくということでございまして、外務省の立場は、そういったことは国内の法令に従ってそれをつかさどるところで御判断をなさるべきことであって、外務省としてそういうことは、私どもは対外関係のところについては責任があるわけでございまして、これはきちんと外務省としてやったつもりでおります。
 意見を求められ、こうしてほしいというようなことは一切なかったと申し上げたいと思います。

武正委員 
私は、意見を求められ、こうしてほしいということを言ったことはないということを聞いたわけじゃなくて、相談があったんじゃないですかというふうに聞いているんですね。
 
つかさつかさと申しますが、お相手は中国政府もかかわる中国人活動家でございます。外務省がノータッチであろうはずがないというふうに考えますが、相談もなかったというふうにおっしゃるんでしょうか。

川口国務大臣 
この七人に対して政府としてどのような対応をするかということについては、御相談はあずかっていません。

武正委員 
どうなんですか、同僚委員におかれて、本件で外務省が相談にあずかっていない、今こういう答弁が外務大臣からあって、では本当に我が国の危機管理なりが働くのかどうか。
 
私は、ぜひこの委員会での決議が必要である。このような政府の対応、そして、外務省がこうした案件について相談にあずかっていないと外務大臣が言い切ってしまうこと。午前中も前原委員がこのことを再三再四外務大臣に求めましたが、同じような答えでありました。
 
私は、委員長にぜひ、やはりこの沖縄県警の捜査の過程、そしてまた、なぜ入管から強制送還をしたのか、送検をする、その決定をする二時間前の決定でございますが、こうしたさまざまな問題点が不明なままこの案件を容認することは到底できないわけでございまして、これはぜひ、例えば秘密会にしてこの委員会を開催して、関係各省庁、担当を呼びまして、その正しいところをただす、これが必要だと思いますが、この点をぜひ理事会にお諮りいただきたいと思います。

米澤委員長 
了解しました。

武正委員 
それでは、次に移らせていただきます。
 川口外務大臣は、中国の外交部長というんでしょうか、外務大臣に電話会談をされた。電話会談をされた内容をお答えいただけますか。

川口国務大臣 
これは、二十六日に中国から、電話会談をしたいという申し入れがあったわけでございます。それで、時間の調整をしまして、結果的には夕方になっていたと思います、六時近かったかもしれませんが。
 
それで、そのときにまず李部長の方から、中国人の活動家の尖閣諸島上陸について問題提起があった、中国の立場の開陳があったわけでございます。それで、これに対しまして私の方からは、尖閣諸島に関しての我が国の立場、これは繰り返しませんが、我が国の固有の領土であるということですけれども、それを述べました上で、この時点で強制送還が決まっておりましたので、それについて、我が国の法令に基づいてこれについての対応、処理が行われたということを先方に伝えたということであります。
 
それで、その時点で既に現地において発表が行われたということを説明、現地というのは沖縄ですけれども、発表が行われたということを説明いたしまして、この種の類似の事件の再発を防止するべきであるということについて、これを強く求めたということでございます。
 
それからさらに、北京の大使館の前で日章旗が焼かれたという事件がございました。それに対して、中国の官憲といいますか、その人たちが制止をしなかったということがあったわけでございまして、これについても私の方から抗議をして、再発防止を求めたということでございます。
 
それで、これについて、その後でさらに李部長から、台湾の問題についての先方からの意見の開陳があったということでございます。私の方からは、我が国の立場というのが日中共同声明に従ったものであるということを表明した。
 
それから、あとは、北朝鮮に御訪問の直後でございましたので、それについての若干の意見交換をした、そういうことでございました。

武正委員 
再発防止を求めた、そして日章旗が焼かれたことを官憲が阻止しなかったことを抗議した。外務大臣の領土、領海を守るということに対しての認識は、この程度の認識なのかというふうに私はやはり疑わざるを得ないわけであります。
 
再発防止を求めた、日章旗の件を抗議した。我が国の領土が不法に上陸をされた、この件に対しての徹底抗議、これはされたんですか。

川口国務大臣 
一番最初にそれについては申し上げたと思いますけれども、当然のことながら、我が国固有の領土であるという立場を述べたというふうに申し上げました。

武正委員 
領土であると述べたのと、抗議をして、とんでもない、遺憾である、許すことができない、なぜこうしたことが起きたのかと、中国政府として徹底した、こうしたことが起きないように再発防止を求めたと言いましたが、こうした点をただすということはされたんですか。

川口国務大臣 
先ほど立場を述べましたというふうに申し上げたのは、当然に遺憾であるということを我が国は言ってきているわけでして、それも当然含めて、全部を含めて、細かくは申しませんけれども、述べたというふうに言ったわけで、全部それに入っております。

武正委員 
全部入っていますというのは、よくわからないんですね。全部含めて言いましたというのと、しっかりと言ったのかどうか。再発防止を求めたの前にしっかりと抗議をした、このことを確認したいと思います。

川口国務大臣 
それではもう一回全部を丁寧に申し上げますと、まず、先方からの意見の開陳があったわけでございます。それは、これは中国の領土であるということであったわけですけれども、それに対して、これは歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるということを言ったわけでございます。
そして、今回、七人の人たち、中国人がこれに対して、尖閣諸島に上陸をするということがあったわけでして、これは我が国の立場からして受け入れることができないことである、遺憾であって抗議をするということを言った。
 
それに加えて、その後、さっき申しましたように、国旗の話、それを警官が制止しなかったこと、そういったことを言った。それで、先ほど言いましたように、それぞれについて再発防止を求めたということでございます。
それに加えて、台湾の話があり、北朝鮮の話があったということで全部でございます。

武正委員 
先ほどは、そうした抗議をして、再発防止を求めて、日章旗の件も抗議して、それで国内の関係法令に従って処置をいたしました、すなわち強制送還をいたしました。それはありますよね。(川口国務大臣「あります」と呼ぶ)
 
では、あるというふうに今お答えをいただきましたが、全然やはり説得力がないんですね。抗議しておいて、強制送還、お帰しいたします、これじゃ全然抗議になっていないんですよ。
 
私は、やはりこの強制送還をなぜこのように早く、容疑の否認のまま、器物損壊の疑いもあるのに帰したか、やはり問題であったと。外務省は一切相談にあずかっていないからわかりませんと。そんな相談にあずかっていない外務省が、中国の外務大臣に抗議をして、私は相談にあずかっていませんけれども七人はお返しいたします、全然これじゃ抗議になっていないじゃないですか。
 
なぜ今回の電話会談、十八時間後に新華社電が報じたことによって発表されたんですか。お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣
 
これは、電話会談の後に、この件については発表をしないという中国側からのお話があったわけでございまして、当方はそれを守って発表しなかったということでございます。

それで、他方で新華社電について、そのことが報道され、そして、これは必ずしも我が国の立場について、こちらが述べたことについては触れられていなかった発表であったわけでして、したがいまして、我が方としてはこれは日本の立場で正確に発言をしていくべきであるということで発表をしたということでございます。
 
ちなみに、電話会談をしたときに、我々の立場としてできるだけ公表していくということで考えておりますけれども、これはいろいろな話がございますので、常に一〇〇%公表をするということではないということでございます。

武正委員 
中国側から公表しないでくれというふうに言われたんですか。

川口国務大臣 
そういうことでございます。

武正委員 
我が国の領土に不法に上陸をして、それについて外務大臣が電話で抗議をした。これは初めてですよね、この案件が起こってから。外務大臣が、中国外交部長とのやりとりは。
 
抗議をしたことを中国側から発表しないでくれと言われて、はい、そうですかということは到底納得できないんですね。我が国がちゃんと申し入れをして、抗議をしたわけですよね。それを言わないでくれと言われて、はあ、そうですかと。それで、新華社電が抜いて、それが全部の真意を伝えていないから慌てて発表する。これはどういうことなんですか。
 
発表しないでくれと言われたって、過去いろいろ発表している。発表しているのが常なんですから。しかも、抗議をしたわけでしょう。それを何で、発表しないでくれと言われて、はい、そうですかとしてしまうんですか。お答えください。

川口国務大臣 
これは、向こう側から電話をしたいという申し入れがあって我が方が応じた。その先方が、これについては発表を控えたいというお話があったわけでございまして、我が方としてはそれを尊重したということでございます。
 
この時点で強制送還が決定をしていて、私もそれを伝えたということでありますけれども、我が方の抗議、これについてはもう十分に、数回にわたっていろいろなレベルでやっているということであります。

武正委員 
外務大臣が直接電話をして抗議をして、しかし、抗議をしながら七名をお帰ししますよと。そして、抗議したことも発表しない。余りにも、外務省は一体何の仕事をやっているんだろうと。相談にもあずかっていない。そんな外務省は、日本の外交を任せることはできないのであります。
 
さて、きょうは条約の審査ですので、ちょっと時間が押してまいりますが、もう一点、どうしても聞いておきたいのが北方領土の問題でございます。
 
二月に、二十五名の有識者の方、佐瀬昌盛さんや上坂冬子さん、袴田茂樹さん、あるいはまた中曽根康弘元首相などが、首相にアピール文を渡している。すなわち、日ロ行動計画以来、ロシアに誤ったメッセージが伝わっている。
すなわち、北方領土を返還するという日本政府としての至上命題、最優先課題をわきに置いて、シベリアの開発を初めとする経済協力、経済優先、こういった形に日本政府は転換をしたという誤ったメッセージが日ロ行動計画以来届いていることは問題である、こういったことが首相官邸に届けられたんですが、それをもってしても外務大臣の国会での答弁は余り以前と変わらない。
 
このアピールは当然外務大臣にも届いている、あるいはそのことを承知されていると思うんですが、この点についてどのように理解をされ、そうしたことをどのように受けとめられ、それを受けとめられてどのように今対応を変えられたのか、あるいは国会答弁のように以前と変わりませんということなのか、お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 
このアピールですけれども、ことしの二月七日、これは北方領土の日でございましたが、この日に当たって、民間の有識者が北方領土問題についての見識を対外的に明らかにされたということだと存じております。
 
そして、そのアピールですけれども、これは、国民世論を啓発する、このことは領土問題に関して非常に重要なことであると考えますが、啓発をし、そして、北方領土返還運動、これの一層の活性化に資するというふうに考えております。
 
それで、日ロ行動計画というのを、昨年の一月に総理が訪ロなさったときにプーチン大統領との間で署名をしていただいたわけでございます。これは幾つかの柱から成り立っておりますけれども、その中で、平和条約の締結の問題、これは一つの大きな柱、大変に重要な柱であるわけでございます。
そういった位置づけをこの行動計画はしているわけですし、そして、日ロ行動計画の採択に関する共同声明というのが出ておりますけれども、そこで、日ロ両国の首脳は、平和条約を可能な限り早期に締結をするということについての相互の強い決意、これを確認しているわけでございます。
 
そういったことで、それがロシアが間違ったメッセージを受けとることになるということではないと私は考えておりますけれども、この有識者の声、こういったことに、政府としてもこれに耳を傾け、そして、これを踏まえ、北方領土問題の早期の解決、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという考え方、これを前に進めていきたいというふうに思っております。

これも今まで申し上げていますように、ことし前半にも私は訪ロして、ロシアの新しい外務大臣との間で、この平和条約の締結の交渉、これを前に進める努力をしたいと考えております。

武正委員 
そうした誤ったメッセージは送られていないんだ、あくまでも領土問題解決なんだというふうにおっしゃいますが、この春発足する日ロ賢人会議、このメンバーを見ても、経済協力ありき、経済協力優先というメンバーですよね。領土問題についての専門家がほとんど入っていない。こういったところも、さらに重ねて誤ったメッセージを送っているんではないですか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 
これは、こちら側の座長といいますか、トップも、そしてロシア側のトップも、それぞれの首脳に直結をしている人たち、先方であればルシコフ・モスクワ市長、そして、こちらであれば森元総理ということでございますけれども、そういった方々をそれぞれの共同議長に選んで、そこでの議論が首脳に直接反映されるようにという意図を秘めた非常に力のあるグループでございます。
 
こういったグループにおかれましても、当然のことながら、平和条約の問題というのは大きな、重要なテーマでございますし、また、このグループにおかれても、平和条約の問題については会合に備えて十分に、この条約の問題について、北方四島の問題について、いろいろ御意見をお聞きになっていらっしゃるというふうに承知をしております。

武正委員 
領土問題ということで、私は、やはり誤ったメッセージが今もって届いている。これは日朝平壌宣言でも触れましたが、経済協力ありき、経済も一つのカードにと。外務大臣はこの委員会で、てこにというような言い方をしましたが、私は、日本外交が、経済協力、確かにODAというのは大変大事な外交、あるいは経済協力というのは大変に大事な外交のカードでありますが、それのみを過信することによって過つという危険性が大変今の小泉内閣にはあるということを、北朝鮮、そしてまた今度ロシアについて言わざるを得ないのでございます。
 
そうした点も踏まえて、領土問題ということで、今回の尖閣諸島への不法上陸を、そのまま外務省が相談もなく強制送還される。しかも、強制送還したについての報告の前に抗議をした電話についても、公表しないでくださいねと中国から言われて、はい、そうですかと、こういったこと。
 
しかも、阿南大使をして、北京大使館の前で国旗を踏みつけられ、焼かれる。先ほども話が同僚委員からもありましたが、官憲が見過ごしている。
日本では刑法九十条、九十一条、九十二条で、こうした点、特に九十二条で外国国章損壊等ということで、これは刑罰の対象なんですね。中国の方は、どうやら自国の国旗を焼くについては刑罰の対象なんですが、他国についてはないようでありますが、こうしたことをされて、そしてまた抗議も、電話でしても、強制送還しましたよと。
 
こういった中で、この土曜日、訪中をする必要があるんでしょうか。私は、今のこういう状況で外務大臣がなぜ北京に行くのか、理解できません。いかがですか。訪中を取りやめる考えはありませんか。

川口国務大臣 
中国訪問につきまして、日程の詳細部分について今調整中でございますけれども、私は、日本と中国の関係というのは、日本にとっても、そして中国にとっても、最も重要な二国間関係の一つとして位置づけられているというふうに思っております。
 
重要な二国間関係であればこそ、これは、お互いに問題があると考えるときは言うべきことをきちんと言っていかなければいけない、抗議をするときにはしなければいけない。それと同時に、二国間の関係を、しかも、アジアの中において有力な二国、大きな二国でございます。
その二国が、どのようにしてさらに共通の利益を膨らませていくことができるか、未来志向の関係を築いていくことができるか、こういったことについて率直に話し合うということも同時に重要であるというふうに思います。
 
これは、日米関係、翻って御想起いただいても同じようなことだと思いますけれども、貿易摩擦等々で非常に日米間に大きな問題があった時期もございます。
それはそれで、対応をお互いに厳しく、激しくしながら、日米間のその共通の利益は何かということも常にあわせて考えていた。これはどの二国間の関係をとっても、日本と韓国の関係をとっても同じであるというふうに私は考えております。
 
問題は問題であって、それに対してきちんと対応をし、取り組んでいかなければいけない。
同時に、二国間の関係をどのようにしたらそういった関係が起こらないような、そういった問題が起こらないような、そういう関係にしていくかということについては、二国のリーダーは常に考えていかなければいけないというふうに思います。

武正委員 
言うべきことを言い、公表すべきことを公表すると言われましたが、言うべきことを言っていない、公表すべきことも公表していない、こう言わざるを得ないのが先般の電話会談での外務大臣と外交部長のやりとりでございます。
 
中国は最重要な二国間の一つという認識は、私も共有しております。アメリカについてもそうであります。アメリカについても、なぜ、日米地位協定、今般改善ということで、被疑者の取り調べの立ち会いを認めるということもされたようでありますが、やはり、沖縄県民は日米地位協定の改定を求めている、あるいは、2プラス2あるいは日米合同委員会に沖縄県の代表が参加する、オブザーバーでもいい、それが地元の声であります。言うべきことを言っていないと言わざるを得ない日米関係でもございます。
 
中国についても、イコールパートナー、重要な相手であるからこそ言うべきことを言わなければならない。それを言わずして、しかも、外務省は一切相談にあずからないまま強制送還をさせ、そうしたことを抗議もしに行く。相談もあずかっていない外務省が北京にのこのこ行って、抗議ができるんでしょうか。
 
私は、今この時期に訪中は、日中間の本来の重要な相手、そして信頼すべき関係を構築するためにも、今この時期に、外務省が相談にあずかってもいない、真偽のほども定かでない、そうした中に行くべきではないということを重ねて申し上げたいと思います。
 
さて、条約の方に移らせていただきますが、遺伝子スパイ事件、岡本被告の事件、日米犯罪人引き渡し条約、ちょっと時間の関係で飛ばしますが、こちらの方をお伺いします。
 
東京高裁で引き渡さないという判断がされましたが、本条約、日米刑事共助条約が批准されますと、いわゆるこれまでの双罰性ということが外れますので、国内法が整備され、この種の事件、この種の事件というのは遺伝子スパイ事件のような事件がアメリカで提起された場合、今回は司法の判断で引き渡さないということができましたが、今後、本条約批准後、国内法整備後、どのようになってまいりますか。これはお答えをいただきたいと思います。

田中大臣政務官 
お答えをいたします。
日米刑事共助条約の締結後、米国が御指摘のような知的財産権に絡む犯罪に関する共助の請求を条約に基づき実際に行うのか、予想することは今の時点では困難でありますけれども、仮にそのような共助の要請が米国より行われた場合は、我が国の中央当局を務める法務大臣が個別のケースにつき十分精査した上で条約及び国内法の関連規定に従って対応するものと認識をいたしております。
以上でございます。

武正委員 
すなわち、双罰性が今回のように適用されずに、司法当局同士で了解ができれば引き渡すことができるということでございますか。お答えください。

田中大臣政務官 
双罰性の件につきましても答弁をさせていただきます。
時間の関係もありますので簡単に申し上げますけれども、本条約は、双罰性がない場合について、また、ある場合について、それぞれにわかりやすい規定になっておるわけでございますが、共助の義務についても、三条において共助を拒否できる場合を、双罰性がない場合は規定しております。
 
したがって、中央当局としての法務大臣においてこれらの拒否事由に該当すると認める場合は共助を拒否することができるわけでありますし、また、条約は相互的なものでありまして、この条約を締結することによりまして我が国も同様により充実した共助を米国より受ける、こういうことになりまして、相互関係が確立をすることになるわけでございます。この条約を活用して、より円滑に刑事手続を進めるということになります。
以上でございます。

武正委員 
今回、この岡本被告の件については、経済スパイ法という当時日本になかった法律でございます。アメリカが次々に今のさまざまな法律、特に知的財産権に絡んで立法されていく、こういった中では、私は、双罰性がなくなった場合に、司法当局同士でいくと次々にやはりアメリカからそうした要求が出てくるということで、それに応じる日本、国内法の未整備の状況、人権に関しては未整備の状況では、大変、今回のこの条約、ある面イコールな形ではなくて、日本が非常にいろいろと要求をされる、それについて対応するといったことで、問題がありというふうに考えるわけでございます。
 
時間も押しておりますので、もう一つ、この法律が、これまで書面のやりとりが中心だったんですね、国際捜査共助法。条約では、今回、書面以外も可と。書面以外の通信の方法というふうに四条1でありますが、関連情報のやりとりは秘密で行うわけですから、私は要請は文書で行うべきであるというふうに考えております。というのは、後で事後チェックが働くようにしておかないと、さまざまな中央当局のやりとりの中で、問題が露見をした、あるいはさまざまな形で、事後チェックということでかなうと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

田中大臣政務官 
御指摘のとおり、条約第四条は、共助の請求を書面によって行うことを基本としつつ、被請求国の中央当局が適当と認める場合には、双方で確認された上ででありますけれども、「書面以外の信頼し得る通信の方法により共助の請求を行うことができる。」旨定めておるわけでございます。
 
答弁を短くいたしますと、この秘密がしっかりと守られる、こういうことが前提に立つ制度でございまして、私どもも、十分、委員が御指摘された趣旨はこの条約でかなうもの、秘密は守られるもの、このように確信をしておるところでございます。

武正委員 
時間が参りましたので終わりにいたしますが、私が今言ったのは、秘密が守られるじゃなくて、今政府が進めておられる各種規制を解く規制緩和、それは事前規制から事後チェック型行政へということでありますので、そういった意味で事後チェックができるような形にするためにも、やはりそのやりとりが残るということが何よりも大事であるということを指摘させていただき、終わらせていただきます。
ありがとうございました。

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