2004年4月21日 【外務委員会】

武正委員
 おはようございます。民主党・無所属クラブ、武正公一です。
 日米刑事共助条約に関し、民主党・無所属クラブを代表して、賛成の立場から討論を行います。
 本条約の趣旨が犯罪の国際化の増加に対応しようとするものであり、日米両国が捜査、訴追等の刑事手続について共助を条約上の義務として実施しようとすることの意義を認めたいと考えます。そのための枠組みとして、従来の外交ルートから、日米双方の司法当局による中央当局が相互の連絡をとるという枠組みに対しても、積極的な意義を有しているものと考えます。
 
ただし、この条約の締結を受けて整備される予定の国内法において、今後しっかりとした議論がなされることを期待いたします。
 
その理由として、国境を越えた犯罪が頻発し、各国政府が協調体制を組み犯罪の捜査等に協力していくことに異論はないものの、日米間の力関係によって、日本政府が事実上の圧力を受けていると感じる場面が多々あるからであります。ヨーロッパ諸国も含め、多くの国々がいわゆる世界標準という名のアメリカンスタンダードの押しつけと見られるような事態を心配しているのも事実です。
 
特に、本条約は、捜査共助の実施に当たって、日米両国のうち一方で犯罪とされていればよく、双方において犯罪とされる必要がありません。つまり、双罰性を要件としていません。これは、日本にとってメリットとなる面に着目すれば、けん銃の単純所持は日本では犯罪であってアメリカではそうでない場合に、アメリカ側に対して捜査協力を依頼できるような事例だと思います。
 
そのため、さきの遺伝子研究をめぐる日米スパイ事件において被疑者の引き渡しで問題となったように、日米間で、双罰性のあり方について、法的争いのある分野に不用意に拡大されるおそれはないのかの疑問もあります。今回は日本の裁判所の判断で被疑者の引き渡しはなされませんでしたが、同様の事例でアメリカが圧力を強めてくる可能性も否定できません。
 
この条約において、そのような懸念は杞憂のものと期待いたしますが、今後、国内法制の整備の過程においても、しっかりと日本としての主体性を持って、真の意味で刑事司法の共助を進めていただきたいのであります。
 政府におかれましては、今後、アメリカだけにとどまらず、国際的な討議の場を通じ、特にアジア各国との条約締結交渉にも御努力いただくものと理解し、私の賛成討論を終わります。

■米澤委員長 
これにて本件に対する討論は終局いたしました。

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