2004年4月21日 【財務金融委員会】

武正委員
民主党の武正公一でございます。
 政府案への質疑ということでさせていただきたいと思います。
 お手元の方に……(発言する者あり)

■田野瀬委員長 
どうぞ、やってください。どうぞ、武正君、質問してください。

武正小委員 
お手元の方に資料を配らせていただいておりますので、まず二ページ目をあけていただきたいと思います。
 
この二ページ目。これは帝国データバンクの、この四年間の大手行、地銀、第二地銀へのいわゆる大蔵、日銀等からの天下り、再就職の数字を出しているものでございます。
 
ちょっとこれは段落が一段ずれているところがございまして、九八―九九年の「他の公的機関」の一番右の「内代表権」「天下りなし」は、「第二地銀」のところに上げていただきたいと思います。
 
これを見ますと、都銀、いわゆる大手行は、大蔵、日銀からの再就職はほとんどなくなってはきていると見えますが、地銀、第二地銀は相変わらずの数字と言えるわけでございます。大蔵省、日銀から、それぞれ金融検査あるいは日銀考査をする対象の銀行に再就職をするということは、こういった検査、考査が甘くなるというふうに考えられますが、それぞれこの御認識をお答えいただきたいと思います。
■山本副大臣 
武正委員御指摘のように、財務省、日銀から地銀、第二地銀へ天下ることによりまして金融検査等が甘くなって問題ではないか、こういう御指摘でございますが、そういうことがあってはならないという立場でございます。
 
そして、公務員の再就職につきましては、いわゆる天下り問題として先生御指摘のような議論があることを真摯に受けとめまして、権限を背景とした押しつけ的な再就職のあっせんは行うべきではないと考えておるところでございます。また、国家公務員法の規定等の枠内でこれまで適正に対応してきたところでございまして、今後とも行政に対する信頼を損なうことのないように適正に対処してまいりたいと考えております。

■竹中国務大臣 
検査をする立場から甘くなることはないかというお問いかけでございますけれども、これは金融庁としては従来からルールにのっとって厳正に金融の検査をしているところであります。これは、検査監督に私情、バイアスがかかると、我々の金融行政の信頼そのものが損なわれるということでありますから、我々は、その意味では常に襟を正してやっているつもりであります。
 
国家公務員であった者が民間の金融機関に再就職することによって、いやしくも結果として検査がゆがめられるというようなことがあってはならないというのは、これは当然のことでありますし、その意味では、我々は特に注意してそういうことはきちっとやっているというふうにぜひ御理解をいただきたいと思います。
 
ただ、今副大臣の話にもございましたように、そもそも職員の再就職についてはいわゆる天下り問題として議論がある。このことは我々も真摯に受けとめなければいけないと思っております。その意味では、今後とも、職員の再就職に当たっては、国家公務員法の枠内で適正に対処していくという決意でおります。

■三谷参考人 
今のお尋ねの日本銀行の考査と再就職との関係でありますけれども、そもそも、日本銀行の考査自身、決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保を通じて信用秩序の維持に資するという中央銀行の重要な使命を果たすための手段でありまして、その際、何よりも大事なのは、やはり金融機関の経営内容の実態を正確に把握するということであると考えてきております。
 
そうした意味で、日本銀行に過去在籍していた者が考査先にいるからといいまして、当該金融機関に対する考査に何らかの甘さが出るとか、そういうことはないよう厳正にやってきているところでございます。
 
また、再就職そのものにつきましても、日本銀行の場合、個人の識見とか能力を期待して外部から人材を求められた場合に限って、世間からの批判を招くことのないよう留意しつつ、慎重に対応してきたところでございます。例えば役員の場合でありますと、日本銀行と当座預金取引をする民間金融機関への再就職は、退任後一定期間自粛するなどの再就職自粛ルールを設定しているところでございます。
 
私どもとしましては、こうしたルールを厳格に運用することで、引き続き職務の公正性の確保に万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。

武正小委員 
「営利企業への就職の承認に関する年次報告」ということで、人事院の方の報告もございます。
 一時、公務員改革の議論で天下りの承認を各担当大臣にというような御議論もありまして、それは今何か内閣府の方へ一括しようというような御議論もあるようでありますが、私は、人事院のチェック機関としての役割は重いものがあるので、やはり天下り承認についても人事院の役割は強化するべきであって、それをいたずらに和らげるべきではないというふうに思っております。
 
その人事院の承認の件で、平成十三、十四、十五年を見ますと、これは財務省の分でありますが、人事院承認十件中四件が信用金庫、そして、財務省承認分九十九件中十一件が信用金庫、平成十四年は人事院十件中二件、財務省四十六件中八件、平成十五年は人事院十三件中三件、財務省五十一件中五件ということで、先ほど帝国データバンクの資料は地銀、第二地銀ということを挙げたんですが、実は、信金への再就職が人事院の年次報告でもかなりの高い率で出てきているということでございます。
 
これについて、お手元の方に、先ほどの資料、一枚目に書かせていただいております。これは金融庁さんからの御返事でございます。
 
実は、三月三十一日、民主党の部門会議において、このたびの法案は特に地域金融機関への公的資金の注入、あるいは合併促進、合併を進めていこう、こういったことも含めた法案でありますので、あだや公的資金を注入したところにその後例えば再就職をする、あるいは旧大蔵、日銀から再就職しているところに特に目をかけるとか、あるいはそうした既に再就職しているところゆえにさまざま何かの配慮があってはいけない、これは先ほど大臣からも御答弁があったことと共通すると思うんですが、そういった点から、六百九十九でしょうか、全金融機関に旧大蔵省から再就職している方の実績を出していただきたいというお願いをいたしました。
 
その前には、この後段に書いてあるように公的資本増強を受けたところの資料は有価証券報告書の記載内容から出していただいたので、有価証券報告書の記載内容からでも出してくださいよ、こんなお願いをさせていただきました。
 
また、特に旧大蔵省OBが、限定された六百九十九の銀行に、金融機関に就職しているかどうか、今実際に働いておられるかどうか、そのぐらいのことは当然把握をされているだろうということでそれをお願いしたのでございますが、この返事、紙をいただく前日に、今答弁を書くのに忙しくて調べられません、衆議院の調査局に聞いてくださいというようなお答えを口頭で金融庁からいただいたものですから、じゃ、文書で出してくださいというふうに言ったら、この文書が出てきたわけでございます。
 
私は衆議院の調査局の方にもお願いしましたが、逆に衆議院調査局は金融庁の方にお願いしたいというような形で、結局私は日本金融名鑑から信金について役員を全部チェックさせていただいたわけでございますが、本法案の質疑にとって大変大事な点だというふうに思っております。
 
つまり、これから二兆円の公的資金を投入しようという、特に地域金融機関、しかも、先ほどの地銀、第二地銀に加えて信金あるいは信組ということで、健全行に対しても注入をし、あるいは合併も視野にといったことでありますので、あだや信頼性を疑われるようなことがあってはならない、こういう認識からこういった資料を出していただきたいというお願いをしたんですが、金融庁がこういう返事をペーパーで出されたんですが、当然、担当大臣はこのことはお知りだと思うんですが、こういったことを金融庁としてお答えになることについて、大臣としてどのようにお考えの上、こうしたことがなされているのか、お答えをいただけますでしょうか。

■竹中国務大臣 
今武正委員から天下りに対する基本的な、厳しい姿勢を持つべきだということ、それと今回の法案との関連、これはやはり懸念はされるし、しっかりと見ていかなければいけないんだ、そういう観点から、信頼性云々ということからも天下りの実績について把握する必要がある、かつ、しかし、こちらからの伝え方等々についてもこういうやり方でよかったのかと、さまざまな御指摘を賜ったというふうに思っております。
 
まず、天下りにおいて厳しい枠組みをやはりつくっていかなければいけないというのは、これは私の所掌ではございませんけれども、そのとおりでありまして、内閣全体としては、そういうことを考えているということだと思います。
 
法案そのものは、これはるる申し上げませんですけれども、責任ある経営体制を求めるということで、安易な天下り等々が資金注入と結びつくようなことは、これは絶対ないような仕組みにしっかりとつくっているところでございます。
 
そこで、実績云々でございますけれども、これも今委員御指摘くださいましたように、三月の十日の民主党の財務金融部門会議で、公的資本増強を受けた金融機関に対する旧大蔵省の再就職の実績ということで要請があったことを踏まえまして、これは本法案との関係にかんがみまして、増強を受けた金融機関について有価証券報告書の記載の中から大蔵省入省または財務局入局が確認できた者をこれは表として提出をさせていただいた。さらに、これは武正委員からの要請を受けて、財務省、旧大蔵省、金融庁における過去十年間の本省課長相当職以上の職員の離職状況についても提出をさせていただいた。
 
ただ、さらに全金融機関について御指摘のようなそういうリストというのは、これは我々持っていないわけでございます。したがって、これを提出させていただくことは大変困難であるということはぜひ御理解を賜りたいと思います。もう一つは、金融庁というのは旧大蔵省職員の再就職の状況を把握するという立場にはないものでありますから、再就職云々という情報も持っていないということでございます。
 
さらに、資料のやりとり等々の御指摘もございましたですけれども、もしも不手際がありましたら、これは私の方からもおわびをさせていただきますが、基本的には、先生にいろいろ連絡をとろうと、それで御説明させていただこうというふうにして、その結果、結果的に期日が遅くなってしまった、また、資料等々についても名称の記載がない等々不備があったというふうに聞いておりますし、その点につきましても、御指摘に沿いまして訂正をさせていただいたというふうに承知をしております。(発言する者あり)

■田野瀬委員長 
今あちこちで委員会をやっているから。今呼んでいるから。続けながら。
 武正君。

武正小委員 
今大臣の答弁の中で、責任ある経営体制をつくった法案であるということを言われておりますが、これは後で触れますが、いわゆる経営責任を明確にしていない、特に合併についてですね、これは今のお言葉からはやはり問題があるというふうに考えるわけでございます。
 
また、ここ十年の資料をというのは、予算委員会に提出した資料そのままということでございまして、こちらの方は課長職以上ですから、私がこれから指摘をするような地方の財務局の関連、信金への再就職、こういった問題では対象外といったことでございます。
 
私がこの件を強調したいのは、これから地域の金融機関に公的資金を投入しようという金融庁にあって、当然検査を厳正に行う省庁でありながら、その金融庁が旧大蔵省であった、つまり、いわゆるOBがたくさん再就職をしている。しかも、特に信金にあっての役職、こういったものについて、実はその検査のいわゆるカウンターパート、いわゆる対外的な部署があるところに再就職をしている。これが、やはり検査がゆがめられる可能性が大であるということからこういった資料の提出を求めたわけでございます。
 
私は、先ほど触れましたように、日本金融名鑑で信金について全部調べましたところ、こういった数字、ちょっと手元資料では間に合わなかったので口頭でお伝えをさせていただきますが、旧大蔵省から信用金庫に、全部で三百四十九あるんでしょうか、再就職されている方、これは二〇〇三年の日本金融名鑑の役員の一覧からピックアップしたものですが、二百七名、うち代表権を持っている方が七十一名、その他、代表権はないけれども理事等が六十八名、監事が六十八名。信用金庫三百四十九金庫中、旧大蔵省から二百七名が再就職をされています。天下りなしは百五十四。ですから、二百近く、半分以上再就職をされております。しかも、監事にも、監事というのは申すまでもなくある面で銀行内での内部牽制、内部のチェック役、そういったところにも多数再就職をされております。日銀からは三十二名、うち代表権が十六名、その他、代表権はないけれども理事の方等十二名、監事四名ということでございます。
 
これは私が調べたところの数字でありますが、この数字は当然大臣もお知りだったと思うんですが、この数字を聞いてどのように思われますか。

■竹中国務大臣 
名鑑をある意味でひっくり返してといいますか、それを精査されてそのような数字を集計された、大変敬意を表させていただきたいと思います。
 そ
の数字そのものは、私は、申しわけありませんが把握をしておりません。基本的に、この数字についての印象いかんということでございますが、先ほど委員から、検査で、検査官みずからのカウンターパートでそういう人が出てきたらやはり違ってくるのではないか、そのような御指摘、御懸念があったということかと思います。
 
しかし、繰り返し申し上げていますように、我々の検査というのは、これは、そういうことをしていくと私たちの業務そのものを否定していくということになりますので、間違ってもそういうことがないように、かつ、コンプライアンスを重視しながらしっかりと検査監督をしているつもりでございます。
 
この数字そのものについては、多いのか少ないのか、いろんな受け取り方があろうかと思いますけれども、繰り返しになりますけれども、検査そのものは決してそういうことで影響を受けないように我々としてはやっていくつもりでございます。
 
また、天下りそのものについては、これはやはり内閣全体でしっかりとしたルールをさらに考えていく。現時点におきましても、一定の空白期間を置いてしか関係分野には再就職できないということにもなっておるわけでございますので、そうした法的な枠組みをしっかり我々としては守りながら、かつ、信頼にこたえられるように、コンプライアンスを重視して検査監督をしていきたいというふうに思います。

武正小委員 
先ほど、大臣は、この文書にあるように、金融庁ではそうした再就職の現状を把握していないということでございますが、そのことをもう一度御答弁いただけますでしょうか。

■竹中国務大臣 
全金融機関について御指摘のあったようなリストは、私たちとしては持っていないということになります。また、金融機関への旧大蔵省職員の就職状況については、これは公務を離れた個人に関する情報であるということもあって、役所としては把握すべき立場にはないというふうにも思っております。
 
いずれにしましても、我々としては、全金融機関について御指摘のようなリストは持っていないし、把握する立場にないということを御理解賜りたいと思います。

武正小委員 
私がやっても、こうやって日本金融名鑑で調べられるんですよ。今、把握する立場にないというのはどういうことなんですか。これだけ税金を投入して、国民の税金を投入したその投入先に、検査をすべき金融庁あるいは考査をすべき日銀から、特に、先ほど触れたように、全信金の半分以上に再就職をしている。しかも、内部でチェックをすべき立場の監事、これにも六十八名あるいは四名、大蔵、日銀から再就職をしている。こういった実態が、今私がお伝えをしても把握する立場にないというふうに申されるんでしょうか。

■竹中国務大臣 
公的資本増強を受けた金融機関についてはお出しをしているということでございますよね。
 
公的資金増強を受けた金融機関を超えて一般的な全金融機関への旧大蔵省職員の就職状況につきましては、今申し上げましたように、公務を離れた個人に関する情報でありまして、役所としては把握すべき立場にはない、そのような趣旨で申し上げたわけでございます。資料も持っておりませんし、役所としてそういった意味で個人の情報に関して把握する立場ではないので、そのような資料はお出しできないという状況だということを御理解いただきたいと思います。

武正小委員 
先ほど実績を把握していないと言ったんですよ。つまり、持っていないということなんですが、今お出しできないということでしたが、出せないということは、あるということですか。

■竹中国務大臣 
そういうことではございませんで、持っておりません。
 公的資本増強を受けた金融機関に限らず、有価証券報告書で公開されている情報に基づいて旧大蔵省職員の就職状況を調べるということは、できるとは思いますけれども、これは作業量がまさに膨大でありまして、そもそも金融庁は旧大蔵省職員の再就職の状況を把握する立場にはない、旧大蔵省職員の再就職の状況を把握する立場にはない、そのような趣旨で申し上げているわけでございます。

武正小委員 
私は部門会議の三月三十一日からこのことをお願いしているので、きょうの質疑のためにということでございましたが、作業量膨大といっても、私、一晩でこの金融名鑑をチェックいたしました。そのお立場の方々だったらすぐできる、人数もたくさんいる。その上、公務をもう離れたということでありますけれども、先ほどから何度も言っているように、検査をする立場、考査をする立場、しかも、これから税金をこれだけ投入しようという対象銀行に、検査、考査とのかかわりの深いそれぞれ出身の母体から再就職されているのに、なぜそれを把握する必要がない、把握する立場にないというふうに言うんでしょうか。
 
そうしたら、この法案について審議しなくていいですよ、もう勝手に通しますよと、我々にちゃんとした情報を提供しないで、審議に供する姿勢が見られないというふうに思うんですが、再度、この法案を提出しながらあくまでも把握する立場にないと、そのように言い切るんでしょうか。

■竹中国務大臣 
例えば検査をやらなきゃいけない立場にある、そして公的な資金も用意している立場にある、かつ、それが天下りと結びつかないようにしなければいけない、その問題意識は、委員御指摘のとおり、私たちも持っております。
 
その防ぐための手段として、しからばどういう方法があるかということに関しては、これは、公務員の天下りに関する一般的なルールはそのためにつくられているわけで、しっかりとした空白期間を置く等々の制度をつくって、それをしっかりと守っていくということ。一方で、この法案そのものに関しては、経営責任がしっかりと保たれるように、つまり、そういう情状、情実、極めて何かプライベートな心情等々で公的な資金が投入されるようなことが万が一にもないように、さまざまな枠組みをつくっているということ。かつ、私たちの審査、検査、それと監督そのものは、しっかりとしたコンプライアンスの精神に基づいてやるような仕組みを、庁内でも例えばコンプライアンス対応室等々もつくりながらしっかりと対応している。
 
その三つの枠組みの中で、委員が御懸念のようなことがないように私たちとしてはしっかりとやっていきたい、そのことを繰り返し申し上げている次第でございます。

武正小委員 
改めてこの場で御調査をして資料を提出していただきたいと思うんですが、これはできますか、大臣。

■竹中国務大臣 
繰り返し申し上げますけれども、公的な資本増強を受けた金融機関を超えて一般的な金融機関への旧大蔵省職員の就職状況については、公務を離れた個人の情報でもあり、役所としては把握する立場にはない、そのような資料を調査ないしお出しするということは、ちょっと私どもの立場では難しいのではないかというふうに思います。

武正小委員 
私は、非常に誠意のない御答弁というふうに言わざるを得ないわけでございます。
 これは時間の関係で、副大臣にも後で貯蓄率のことをお聞きしたいものですから、本当は独法のこともあわせて聞きたかったんですが、ちょっと先を急がせていただくことをお許しください。
 
先ほど来責任ある経営体制をつくるということを言っておられますが、もう既に同僚委員から指摘があるように、合併については経営強化計画が達成できなかったときの経営責任のとり方もあらかじめ公約する必要はないという本法案、なぜそうした経営責任をとる必要がないという法案を出しておられるのでしょうか。これではモラルハザードを起こすことになると思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

■竹中国務大臣 
今既に健全基準を満たしていないところに対しては入り口のところで責任を求める、合併ではないところに関してはいわゆる目標を示して結果責任を求める、そのことは既に御承知かと存じます。
 
その上で、合併等について、合併等の抜本的な組織再編をする場合に、その責任ということをどのように位置づけるのか、モラルハザードを起こすのではないか、そういう御趣旨で御質問があるわけでございますけれども、まず、抜本的な組織再編の場合には、合併等の効果が発現するまでにはやはり相当の時間を要するということ、これが第一点だと思います。そして、組織再編は、それ自体に非常に前向きな経営改革が織り込まれている、非常に大きな経営の決断であるというふうに思います。また、中でいわば当事者間の相互チェックが働くということも、結果的には目標に向かって結果を求めるような動き、力がこの内部で働いていくというふうに考えられます。また、経営資源の融合等が期待できる。それそのものがよい結果を生み出す原動力になるというふうに考えられます。こうしたことから、法的な結果責任の枠組みを求めないということにしているわけでございます。
 
ただし、これは合併のような抜本的な組織再編を行うかどうかにかかわらず、すべてについてでございますけれども、資本参加を受ける金融機関に対しては、この経営改革の確実な実行を期するという観点から、責任ある経営体制の確立を求めるんだ、かつ、資本参加後においても、金融機関が策定した経営強化計画の履行状況を適切にフォローアップする等の監督を行うということ、これはしっかりとやってまいります。
 
加えて、合併等の抜本的な組織再編を行う場合には、モニタリング及び情報開示による金融機関の自己規制を重視しながら、これは仮に、特段の理由なく計画期間中でも計画と実績との大幅な乖離が生じた、かつ、改善への努力が見られないような場合に関しては、これは必要に応じて経営強化計画の履行担保に向けた監督上の措置を発動する、さらに、必要があれば普通株式への転換権も行使する、こういうような監督はしっかりとやっていくということになります。
 
そうしたことを組み合わせて、十分に経営規律の確立が図られて、モラルハザードが生じないように、そのように制度をつくっているつもりでございますし、また、しっかりと運用する覚悟でおります。

武正小委員 
先ほど触れたように、信金の方のチェックをいたしますと、金融庁の金融検査官、地方の財務局の方が監事に再就職したり、あるいは代表になっていたりという例がたくさん見受けられるんですよ。ぱっとあけますと、きのくに信用金庫、砺波信用金庫、能登信用金庫、さぬき信用金庫、福岡信用金庫、直方信用金庫、西九州、熊本、奄美大島等々、これは、いわゆる金融検査官、あるいは金融検査官室長とか上級金融検査官とか、こういった金融検査の立場にある人が、今度公的資金を注入するかもしれない、あるいは合併を、枠組みをつくろうという、そういったところに監事だったり代表権のある立場で再就職しているんですね。
 
さっきから、把握する必要はない、立場にないということなんですけれども、検査をする立場の方が、今の公務員の再就職の枠組み、もう年数等超えていたとしても、検査を受ける立場の銀行のしかるべき役職にいる。しかも、これを見ていくと、驚いたことに、大体皆さん金融機関で検査部長とか検査室長になっているんですよ。つまり、先ほど来話しているように、カウンターパートだと思うんですね。
 
これがあっても把握する必要はないというふうに言い切られると思うんですけれども、委員長にお願いをしたいんですが、ぜひ、本法案の審議に大変大事な資料、それは我々委員が努力しながら調べることはできますが、金融庁におかれましては、六百九十九しか金融機関はないわけですから、その金融機関に旧大蔵省あるいは日銀からどのように今就職をされているのか、現状、それぞれの方の役職も含めて、数字を、あるいは資料をお出しいただきたい。これを委員長にお願いしたいと思います。

■田野瀬委員長 
もう一度答弁、もういいですか。同じことですか。(武正委員「はい」と呼ぶ)
 それでは、理事会で協議させてもらいます。

武正小委員 
先ほどから触れておりますが、金融検査をしてきた人が、信金の内部のチェックをする監事あるいは理事あるいは理事長、そして、その方々は、不思議と就職したときに検査部長とか検査室長になっている。こういったことが続いているわけなんですが、このことについて、大臣、どのように考えられますか、認識されますか。

■竹中国務大臣 
個別のケースを多々論じる立場にはないと思いますので、一般論ということになりますが、ここは恐らく、察するに、検査等々で培われたそういう目、そういう能力、そういうものを再就職先は再就職先でやはり期待しているということなんだと思います。これは基本的には、その能力を発揮していただくということは重要でございましょうから、多分、検査をやっていた人がいきなり営業に行くよりは、そういう監査的な仕事をされる方が、その方にとっても能力の発揮になるし、また、金融機関にとってもプラスになるということなのだと思います。
 
ただ、これは先ほどから武正議員が繰り返し御心配しておられることなんだと思いますが、カウンターパートだからそのやりとりがルースになるのではないか。我々としては、繰り返しになりますが、相手がOBであろうがなかろうがしっかりとした検査をするんだ、その検査をしっかりさせるということと、資本の注入に当たってはしっかりとした責任ある経営体制を確立していくこと、それに尽きるんだと思っております。
 
印象いかんということでありますので、余り適切なお答えではないかもしれませんが、そこは個別にいろんな御事情があるのだろうなというふうに思います。
    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

武正小委員 
しっかりとした経営、責任ある経営体制と言いますが、先ほど触れたように、合併については経営責任を問わないという閣法でございます。その理由は――要は、こうやって監事とか検査室長とか検査部長に財務局からたくさん再就職されている。これは、合併の責任を問われるのはこういった方々ですよね、経営がうまくいかない、検査がしっかりできていないじゃないかと。監事、非常勤の監事も多いですよ、名前だけ借りたいんでしょうか。
 
今のこの枠組みで公的資金を投入する、しかも、経営責任を問わない、民主党はしっかりと経営責任を問う、これが閣法との違いでありますが、問わないんじゃなくて、問えないんじゃないですか。OBがこれだけ信金に再就職をしていて、しかも、信金の中で検査をするべき立場にある、そして、そういった仕事をしている。合併をしてその責任を、合併が必要ということで責任を問えないんじゃないですか。どうですか、大臣。

■竹中国務大臣 
そういう意識は全くございません。先ほど申し上げましたように、責任ある経営体制を確立する、それにはケースケースでやはり幾つかの多様性があるんだというふうに思います。先ほども申し上げましたように、既に健全性の基準値を下回っているところについては、注入の時点で、つまり入り口で経営責任を果たしていただく。そうではないところについては、抜本的な合併等々以外のところについては、出口のところでしっかりと見させていただく。
 
しかし、抜本的な再編、合併等々というのは、先ほど言いましたように、それ自体が非常に前向きな経営改革としての意味を既に持っているということでございます。さらに、当事者間のチェック、それと経営資源の融合等々、そうしたことを勘案して、バランスをつけて合理的な制度設計をつくったつもりでありまして、万が一にも、武正委員がおっしゃったように、情状酌量して、OBのことを考えて、それで経営責任が問えないんだ、そういうことを求められないんだ、そういうことは断じてございません。

武正小委員 
日銀にも伺います。
 日銀の考査役がたくさん信金にも就職をしている。例を挙げますと、平塚、さがみ、三条、静清、磐田、遠州、岐阜、蒲郡、南大阪、摂津、兵庫、愛媛等々でございます。これはほんの一部でございます。日銀の考査役という方が、その考査をすべき対象の金融機関に再就職をしている。これについて、このことによって考査がゆがめられることはないんでしょうか。
 
そしてまた、こういったことは、特に日銀の考査役をやられた方が、金融機関への再就職等についてしかるべき内規でそれを規制するようなことはしていないんでしょうか。お答えください。

■三谷参考人 
私どもも金融庁と全く同じでございまして、OBが行っているから行っていないからということによって考査の中身に手かげんがあるとか、そういうことは全くございません。そこはきちんと厳正にやっております。
 
それから、今のお尋ねの考査役ということでありますけれども、民間からのいろいろな、そういう人材を求められた場合、やはり銀行実務に詳しい人ということになりますと、比較的、考査役経験者というのが出てくる可能性は大きいと思います。ただ、私どもも、一応、考査役の経験者がそういった再就職をするに当たりまして自粛ルールをつくっております。私どものルールといたしましては、考査役経験者が考査役として実地考査を行った先、そこに対する再就職ということは当該考査実施後五年間は自粛するということで、その考査の中にそういったかげんが入らないような形で自粛をやっておるところでございます。
武正小委員 
足銀には、昨年の二〇〇三年金融名鑑では、すべて足銀からのプロパーの方と、それから栃木県庁から再就職されている方がいますが、旧大蔵、日銀、お一人もいないということなんですね。
 
さて、大臣、もう一つ、今考査役のことを聞きましたが、金融検査をやっていた方があらぬ疑いをかけられないように金融機関への再就職を自粛する、これをやったらどうかと思うんですが、こういう法案も出している担当大臣としてこの提案についてどのようにお答えいただけますか。

■竹中国務大臣 
その自粛の意味でございますけれども、ある意味で、今の国家公務員の天下りに関する規制、枠組みというのは、そういうことを規制しようということを一つ形にしたものであるというふうに思います。一方で、これは働いている人からとりますと、どこかで食べていかなきゃいけないわけでありますし、職業選択の自由というのもまたしっかりと保障していかなければいけない。そこの枠組み、状況をどこで線引きするかという問題であろうかと思います。
 
我々としては、やはり今の公務員の天下りの枠組みの中でしっかりとそれを守っていきたい、公務員の天下りそのもののルールについては、これはこれで、しかしさまざまな御批判があるということも、これは真摯に受けとめて、しっかりと内閣としては議論をしていきたい、そのように思っております。

武正小委員 
先ほどから触れているように、これだけ公的資金を金融機関につぎ込んでいるわけですから、今、公務員の再就職の枠組みでクリアされているからいいんだということでは許されないというふうに思っております。ですから、日銀の考査役が自粛をしているように、金融庁のあるいは旧大蔵省の金融検査官の方の再就職もやはり自粛をすべきであるということを再度申し上げたいと思います。
 
ちょっと時間の関係で、一番最後の質問に、また副大臣もお待たせいたしました、資料の三ページ目をお開きいただきたいと思うんですが、公定歩合と貯蓄率ということで資料をつくってみました。公定歩合が〇・一ということで一番下にはいつくばっておりますが、貯蓄率が年々下がってくる。今、二〇〇二年の直近の数字が六・二とか、あるいは五・九とかいう数字が出ておりますが、低金利だから、銀行に貯蓄をする、金融機関に貯蓄をする率が下がっていくのは当然予想されるところでありますが、それ以外に理由があって、今、日本の貯蓄率がどんどんと、このままいくと個人の貯蓄率が下がっていく一方ではないか、このことに私は大変危惧を覚えております。法人の貯蓄は輸出企業を中心に増加をしておりますが、日本のこれまでの高度成長をなしてきた理由として、個人の高い貯蓄性向ということが今崩れつつある。
 
この背景に、一つ理由とするのは、高齢者の所得について、もちろん金利の収入減など家計所得減少が大きいんですが、例えば二十代の五人に一人がいわゆるフリーターである、今、親の家計にいわゆる依存をしている、今は金融資産を持っておられる親の世代だからまだ依存ができるけれども、これがこれからどうだろうかということも指摘をされるんですが、高齢者世帯の増加もまた貯蓄率が減っている要因というふうにも考えるんですが、このことが行く行くは、国の財政構造の進展が残念ながら見込めない場合には、貯蓄減が中長期的には国債価格の下落、長期金利の上昇の誘因となるというふうに考えるんですが、貯蓄率がどんどん減っていることについて、まずは副大臣、よろしいでしょうか。財務省からまず御認識を。
    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

■山本副大臣 
御指摘のように、家計におきますフロー面での貯蓄率がかなり低下しておりまして、武正委員のグラフでも、約半分、六・二という数字が出ておりますが、これは、所得が減少しましても過去の消費水準を維持しようとする消費者の動きが見られること、また、武正委員の御指摘のように、一般的な傾向としましては、高齢者人口がふえていけばいくほど構造的な要因としまして貯蓄率が下がる、こういうことは言えようかと存じます。

■竹中国務大臣 
委員御指摘の貯蓄率の低下というのは、マクロ経済バランスを考える上で中期的に日本の非常に大きな課題になるだろう、私自身は実は強くそう思っております。
 
なぜ減っているかということに関しては、今も委員も御指摘のように、一つは、やはり高齢化が進んでいる。高齢者の貯蓄率は低い、場合によってはマイナスでありますから、その人たちの人口ウエートが高くなると、マクロで見ると貯蓄率は下がっていく。かつて、貯蓄分析の専門家である大阪大学のホリオカ教授は、どこかの時点で日本の貯蓄率は実はマイナスになる、家計貯蓄率がマイナスになる可能性があるとショッキングな推計を出されていることもございます。
 
しかし、もう一つ考えなければいけないのは、今まさにデフレが続いておりますので、資産の実質価値が高まっている。例えば、一千万円の預金を持っていた、物価が一〇%下がりますと、今まで一千万円持っていなきゃ心配だなと思っていた人も、九百万円持っていれば大丈夫だと思うようになって、その分資産に余裕ができて、それを取り崩して消費をして貯蓄が下がっている、そういう局面もあろうかと思います。これは、今後、デフレの克服を目指していくわけでございますが。
 
いずれにしても、これは恒等式でありますが、民間の貯蓄超過は財政赤字と経常収支の黒字の合計に一致するわけでございますから、民間の貯蓄超過が下がってきて、かつ、御指摘のように財政赤字が減らないということになると、海外の経常黒字が大きく変化するという可能性はある。そのことは、日本の金利ないしは例えば資金の流れに大きな影響を及ぼす可能性がありますので、これは中期的な課題として大変注目して運営をしていかなければいけないと思っております。

武正小委員 
先ほど分析は聞いたんですが、副大臣、そうしたことで国債価格の下落、長期金利の上昇の誘因となるというふうに考えているんですが、この貯蓄率がどんどん減っていることについてどのような認識を持っているのか。いい、悪いですね。問題なのか、いや、大丈夫なんだと。そして、それについてどういった対応が可能なのか。私は、ゼロ金利ということがこのままずっと続くというのは、貯蓄率がどんどん減っていく大変大きな要因だというふうに考えますので、これを改めなきゃいけないというふうに思っているんですが、重ねて、ちょっと副大臣、大臣とお答えいただけますでしょうか。


■山本副大臣 
先生御指摘のように、この傾向というのは、今現時点で見ますれば、個人の金融資産が依然として高水準を保っておりまして、個人金融資産一千四百兆というようなことを見れば、直ちに国債の消化に支障を来すというようなことには至らないだろう、そう思っておるわけでございます。
 
しかし、常に危機に備えるということからして、また、仮定を置いて、貯蓄率がこの調子でどんどん減少していき、いわば銀行のいわゆる投下資本あるいは融資資金となるような財源にも枯渇が見られるということになりますと、どうしても国債の金利を上げたり、あるいは国債の消化というものにまさに支障を来す事態があり得ないとも限らない。こういうことになるならば大変なことになりますので、そういうことにならないように最善の努力を重ねていき、今現在、所得の低迷で貯蓄の減少につながっているということならば、地方景気も改善をして、雇用も改善して、そして民需主導の持続的な経済成長を実現するということに全力を挙げるということが肝要ではなかろうかと考えておるところでございます。

■竹中国務大臣 
今副大臣の答弁にありましたように、短期的に非常に大きな影響が出るというふうには思いません。
 ただ、やはり長期的にはしっかりと見ていかなければいけない。長期的にという趣旨は、貯蓄と投資というのは非常に長期をとると一致するというふうに考えられるわけです。そうすると、貯蓄が減るということは投資する力が減る、投資する力が減ると成長力が減るということになりますので、そういう意味では、経済の活力の根底に影響を与える、長期的にはその可能性はあるということであろうかと思います。
 
短期的には、したがって、むしろその変化が、私はそんなに急激ではないと思っておりますが、そういうことが生じないように、今副大臣のおっしゃったようなことをしっかりと見ていくということだと思っております。
武正小委員 
これにて質問を終わります。ありがとうございました。

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