2004年5月11日 【財務金融委員会】

武正委員 
民主党の武正公一でございます。
 きょうは二法についての質疑をさせていただきますが、前回の財務金融委員会の質疑で、お手元の方にきょうは委員長、理事等のお許しをいただいて資料を今配付させていただいておりますが、貯蓄率が近年下がっている、これについての御認識を竹中大臣、そして山本副大臣からいただきました。
 
きょうは財務大臣もお見えでございます。先般は副大臣からこのような御答弁がございました。「銀行のいわゆる投下資本あるいは融資資金となるような財源にも枯渇が見られるということになりますと、どうしても国債の金利を上げたり、あるいは国債の消化というものにまさに支障を来す事態があり得ないとも限らない。」これは貯蓄率の低下についての御答弁でございましたが、貯蓄率が近年下がってきている、六・二という数字を一ページ目に掲げておりますが、五・九という数字もございます。
 
貯蓄率は言うまでもなく家計貯蓄割る家計可処分所得、家計貯蓄は可処分所得から消費支出を差し引いた残差ということでございますので、要は可処分所得における消費支出の割合がふえている。その理由は高齢化等ですよというようなことでございましたが、こうした先ほどの副大臣の発言も含めて、国債の消化に支障を来すようなことに至らないだろうか、こういう懸念があるんですが、財務大臣、この点、お答えいただけますでしょうか。

山本副大臣 
前回の私の答弁の引用をしていただいたわけでございますが、それは、その御引用された前に「常に危機に備えるということからして、また、仮定を置いて、」と、こういうような、直ちに今どうこうというわけではないということをちょっとお断りしておきたいと思います。
 
そして、先生のきょうの御指摘の国債消化の懸念、それがあり得るのではないかという御質問に対しましては、先生の言うように、近年、家計の貯蓄率は低下傾向にございます。ストックとしての貯蓄について見ますと、個人の金融資産は依然として高水準でございます。したがいまして、国債の消化に直ちに支障を来すという状況ではございません。
 
また、さらに、国債の発行に当たりましては、財政構造改革の推進によりまして、国債に対する信認を確保しつつ中長期的な調達コストを抑制しまして、確実かつ円滑な消化を図るという基本的な考え方に基づき、市場のニーズ、動向等を十分に踏まえた国債発行を行うなど、適切な国債管理政策の運営に努めなければならないと存じております。
 
今後とも、引き続きまして、国債の商品性の多様化を通じた国債保有者の層の拡大などの施策を進めまして、国債の安定的な消化を図ってまいりたいと存ずるところでございます。
 したがいまして、消化の懸念ということは直ちにないものの、先生の言われる消化の懸念があった場合、そのときには万全の体制というものを今からつくっていかなきゃならぬ、こういうように考えております。

武正委員
 
財務大臣にぜひ御感想なり御意見もあわせてお伺いをしたいということで、先ほどお願いをしたわけでございます。
 
竹中大臣からは、あわせて、前回、貯蓄が減るということは投資する力が減る、投資する力が減ると成長力が減るということになりますので、長期的には経済の活力の根底に影響を与えると。最初の御答弁では中期的にはということだったのが、最後は長期的にはになりましたが。
 
財務大臣、この国債の消化と経済の活力に対する影響ということで、貯蓄率が今下がっている、要は可処分所得から消費支出を引いた残余が減っている。私は、高齢化、あるいはフリーターの増加、あるいは貯蓄を取り崩してそれを消費に充てているような実態も踏まえて、この貯蓄率の低下について懸念というものを持っているんですが、財務大臣、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 
貯蓄率が下がってきている、これが一体どういうことに由来するかということはいろいろ竹中大臣のもとでも御研究をいただいて、またいろいろな資料も出ております。
 
そして、今も御議論がありましたように、長期的、まあ、長期といいますか中期といいますか、これはよく注意して見なきゃいけませんが、山本副大臣から御答弁申し上げましたようにストックはやはり相当な厚みがまだありますので、私の責任でございます国債消化という観点から見ますと、ストックはまだ十分な厚みがある。
 
ただ、もちろん国債管理政策というのは、これは十分注意してやっていかなきゃいけないと思いまして、山本副大臣からお答えいたしましたので重複は避けますけれども、これは十分工夫して、意を用いていかなければならないと思っております。

武正委員 
お手元の一ページ目には、既に見なれている、いわゆる千四百兆円の個人金融資産の円グラフがございます。二〇〇〇年十二月末の速報ということで、多分これはもっと新しい数字があるんじゃないかなと思うんですが、ちょっと私用意ができませんでした。これは後ほど。
 
いわゆる間接金融から直接金融へと、ここのグラフでいえば有価証券のこの部分をふやしていきたい、これが政府のお考えだというふうに思うんですが、貯蓄率がこうやって減少していくということは、今、分厚い千四百兆のストックがあるという御答弁でしたが、実はこれがどんどん毀損をしている、目減りをしている、減っているんではないか、あるいは減っていくんではないかということも私は懸念をするわけなんですが、こうした私の認識について、竹中大臣、よろしいですか。

竹中国務大臣
 
貯蓄率の動向を幅広く検討するというのは、経済の問題を考える上で私も大変重要だと思っております。ただ、この問題を議論するときに、私自身も常に注意しなければいけないなと思いますのは、いわゆるフローの概念とストックの概念がともすれば混同してしまう。
 
千四百兆円というストックがございます。貯蓄率は減ってきたけれども今プラスでありますから、非常に単純に考えれば、この貯蓄されたものはストックに積み上がっていくはずであります。よく貯蓄を取り崩してというふうに言うわけですけれども、これはマクロ的に見ると、貯蓄率がマイナスになったら貯蓄を取り崩すということはあり得ますけれども、貯蓄率がプラスの間は、ストックは伸び方が減るんですけれども、一応そこは積み上がっていくというのがストックとフローの基本的な考え方であろうかと思います。
 
ただ、フローはフローで極めて重要でございまして、国民経済計算の定義式からいいますと、民間の貯蓄超過は財政赤字と経常収支黒字の合計値に必ず事後的には一致いたしますから、投資率が一定であれば、貯蓄率が下がるということは、これは財政赤字を減らしていくかないしは経常収支の黒字を減らしていくか、そういう調整がどこかで起こってくる、起こらざるを得なくなるということを意味している。そういう観点から議論を進めることは大変重要であると思います。

武正委員
 
この点、財務大臣にもお聞きしたかったんですが、時間的におしりが決まっているものですから、次にさせていただきます。
 
お手元のこの円グラフでございますが、間接金融から直接金融にということで、今回の法案も、個人の株式購入、銀行に証券仲介業を認めることによって個人株主に取得を促していこう、そういった趣旨というふうに理解をしておりますが、これは素朴な御質問になろうかと思いますが、個人の株式購入をある面ふやせふやせというようなことが本当にいいんだろうか。要は、株につきまして、当然上がり下がりがあるといったところを、何とかふやしたい。諸外国との比較も挙げられますけれども、この比率が、日本の場合は預貯金が多いからというようなことで言われ、そしてまたそういった法律を出されているんですけれども、どうなんでしょうか、それは本当によいことなんでしょうか。ちょっと素朴な疑問なんですが、お答えをいただけますでしょうか。これはまず金融担当大臣、よろしいですか。

竹中国務大臣
 
個人の資産運用、ポートフォリオというのは、まさに個人がいろいろな制約条件の中でこれが一番適切だというふうに考えて行っているわけですから、その家計の意思決定に政府が手を突っ込んで、もっとふやせふやせと、そういうことをするつもりは毛頭ございません。
 
ただ、先ほどからも少し申し上げましたけれども、これだけ金融資産が積み上がってきて、所得水準が高くなって、そうすると、諸外国の例から見ても、日本のポートフォリオはもう少しミドルリスク・ミドルリターンのところに偏っていってもいいはずではないか、それがそうなっていないのは、やはり何かそれを阻止するようなボトルネックがあるのではなかろうか、であるならば、そのボトルネックと考えられるものを少しでも除去してやろうではないか、そうすることが家計のためにもなるし、日本経済全体のためにもなる。そのために、アクセスをふやしたり、より信頼性の高いものにする。そういうボトルネックがあるかもしれないということで、それを取り除いてやろうというのが政府の姿勢でございますので、無理やりふやせと、そういう趣旨では全くないと思っております。

武正委員
 
何となく私が受け取っていたのは、預貯金から有価証券の方の割合をふやしていかなければならないんだ、こういうような姿勢が見受けられたから申したわけですが、それは懸念である、あくまでも個人それぞれの、あるいは家計、あるいは家庭の考えであるといったことを確認させていただいたわけでございます。
 
この質問、財務大臣の所管かどうかというところがあろうかと思いますが、同じく財務大臣に、ちょっと私もそういった懸念を持っているんですが、それは今言われた竹中大臣の答弁のとおりということで……。お答えをいただいてもよろしいですか、財務大臣。

谷垣国務大臣
 
今、竹中大臣がおっしゃったように、これだけある意味で成熟してきたわけですから、家計の多様な選択ができるような市場の整備といいますかインフラの整備を進めていくことは、私は大変必要なことだと思います。決してそれは家計にリスクマネーに手を出せ手を出せと言っているわけじゃなく、多様な選択が行われることによってまたリスクの分散も広く行われていくというのが健全な姿ではないかと私は思っております。

武正委員 
今、リスクというお話がございましたが、法律についての質疑の方に移らせていただきます。
 
既に竹中大臣からは金融システム全体でのリスクテークというような御答弁を前回の委員会でもいただいておりますが、先ほど来同僚委員が指摘をしておりますように、この証取法の改正、やはり懸念でありますのは、系列の証券会社への仲介業を認めない、あるいは同じ持ち株会社傘下の証券会社、これは同じことですが、引き受けた社債の販売の勧誘と自己勘定での保有をしてはならないという業務隔壁が必要ではないかというふうに考えるんですが、この点お答えいただけますでしょうか。

伊藤副大臣 
お答えをさせていただきたいと思います。
 
銀行が系列証券会社から委託を受けて証券仲介業を営む場合に、銀行と証券業の間での利益の相反や、あるいは公正な競争を確保する、こうした観点から問題が生じると考えられますが、既に現行法令におきまして、親子間の取引にかかわるいわゆるアームズ・レングス・ルール、親子間の非公開情報の共有の禁止、そして、親銀行等の融資と系列証券会社との証券取引との抱き合わせ行為の禁止、さらには、社債等の引き受けを行った系列証券会社が、引受人となった日から六カ月以内に当該社債等を親銀行等に売却することの原則禁止などの弊害防止措置が講じられているところでございます。
 
また、今般の証券仲介業の解禁に伴いまして、新たに法令において、金銭の貸し付けを条件として証券取引の受託等をする行為の禁止、証券仲介業務部門と融資部門との間の情報の共有の禁止、そして、貸出先が発行する有価証券についての手取り金が借入金返済に充当される場合に、当該事実を投資家へ開示せずに勧誘する行為の禁止などの措置を講じているところでございまして、これらの措置によりまして、委員御懸念されている弊害の防止が適切に図られるものと考えているところでございます。

武正委員
 
この点は多くの委員が指摘をするところですので、さらにその懸念がなきように努めていただきたいというふうに思います。
 
さて、同僚委員が証取法六十六条の二十二を銀行に準用すべきだ、こういった指摘もあるわけですが、これは私から再度この点をお願いというか指摘をして、必要なことを申し述べたいと思います。
 
先を急がせていただきます。
 金融システム全体でのリスクテークというお話ですが、証券取引等監視委員会の独立性といったことでございます。人事権は金融庁が握り、そしてまた、同僚委員からの指摘もあったように、告発件数も米国の十分の一。竹中大臣から独立性はあるんだということでございますが、私は、この証取等監視委員会の独立性を担保するためにも、いわゆる国家行政組織法三条委員会に格上げもすべきだと思っておりますが、この点、独立性があるということでありますが、やはり独立性に欠けているというふうに考えるんですが、大臣、再度これは御答弁いただけますか。

竹中国務大臣
 
証券取引等の監視が大変重要である、その点を踏まえて、いろいろ御指摘をいただいているところでございます。
 
ただ、これは前回申し上げさせていただいたと思いますけれども、この委員会は内閣府設置法の五十四条及び金融庁設置法の第六条、九条等に規定された委員会組織でございまして、これは職務の執行上、金融担当大臣や金融庁長官の指揮監督を受けずに独立して職権を行使する、これが法律上保障されているわけでございます。
 
現実問題として、私自身、今この担当大臣をしておりまして、まさに独立をして、独立した意思決定のもとに職務を遂行していただいているという非常に強い実感を持っております。
 
この体制等々につきましても、今一生懸命強化をしておりますけれども、委員今の御指摘の中に、告発件数が少ないという御指摘がございました。ただ、告発件数云々に関しましては、むしろ日米間の不公正取引に関する、背後にある市場規模の差とか、摘発を担当する人員数、機能、制度面の相違等々の要因によるというふうに私は理解をしておりまして、この機能を強化するということはぜひ我々もやりたいと思うんですが、それが即組織、特に八条か三条かという議論にならないのではないかというふうに私は思っております。
 
いずれにしましても、この委員会は大変重要であるという認識は持っておりますし、その機能を強化するということは、これは私としてもぜひ力を入れてやりたいというふうに思っているところでございます。

武正委員
 
金融担当大臣からの独立性というお話でございましたが、人事権は金融庁が握っていますよね。これはどうですか。

竹中国務大臣 
事務局長は長官でございますけれども、委員は総理、国会同意人事であるというふうに認識をしております。

武正委員 
私が言っているのは、証取等監視委員会の職員の皆さん、今二百三十七名、この人事権は金融担当大臣にあるんじゃないですか。

竹中国務大臣 
金融庁長官にございます。私は人事権を持っておりませんが、金融庁の長官にございます。ただし、仕事そのものは独立した委員長のもとに独立して行われている、この点が重要だというふうに思っております。

武正委員
 
委員長初め委員二名、つまり、三名ということと、任期は三年ということでございますが、そのとおりだと思います。三名の委員会、そしてまた任期が三年というのは、他のいわゆる八条委員会、三条委員会と比べて、非常に、人数といい、あるいは委員長、委員の任期といい、これは独立性が欠けるというふうに指摘せざるを得ないんですが、この点の御認識はいかがでしょうか。

竹中国務大臣 
申しわけありません、組織の詳細についてちょっと答弁の準備をしておりませんので。
 
ですけれども、基本的には、今三名が少ない、三年が短いのではないかという趣旨であったかというふうに思いますが、ここはやはり、もっと多い方が仕事ができるという面はあるのかもしれません。それは機能の問題であろうかと思います。
 
しかし、繰り返し言いますけれども、これは、私、担当大臣や長官の指揮監督を受けずに独立して職権を行使しているわけでございますので、その意味では、今の状況が非常に大きなボトルネックになって独立性が発揮できないということではないというふうに私は認識をしております。
 
繰り返しになりますけれども、我々としては、この機能の強化ということはぜひしっかりとやっていきたい。しかし、既に、今でもその意味では独立して非常にしっかりと仕事をしていただいているというふうに認識しております。

武正委員 
私は、そういう意味では、金融庁の検査官の増員をしなきゃいけないという答弁がよく政府側あるいは大臣からあるんですが、この証取等監視委員会の人数をもっとふやしていいと。そのときには、この委員会自体の格付というふうに申しましょうか、権威、これは当然――例えば委員長の歳費と言ってよろしいんでしょうか、こういったものも八条委員会よりも三条委員会の方が高い、等を含めて、やはり政府内での位置づけというものがございます。そういった意味では、やはりこの証取等監視委員会の独立性を担保する。そのための検査官の増員、そのためにはこの委員会の独立性が、政府内での格付として高い、そうした意味での三条委員会に変えるべきと。それは、先ほど私が懸念を示したように、決して個人に強いることはないんだ、しかしながら、間接金融から直接金融へと、そういった選択肢を広げるための金融システム全体のリスクテーク、そのときに果たすべき証取等監視委員会の役割が重いからでございます。この点を再度指摘させていただきたいと思います。
 
さて、お手元に、懲りないようで恐縮でございますが、前回に続いて資料を提出させていただきました。二ページ目、三ページ目、また二〇〇三日本金融名鑑からひもときまして、地銀、第二地銀、前回は信用金庫のみでございましたが、加えて、証券業協会、証券会社、投信協会、格付会社、投信会社、生保協会、生命保険会社、損保協会、損害保険会社における役員、日本金融名鑑に載っているものから旧大蔵省、日銀についての再就職の状況をお手元に用意させていただきました。
 
前回、竹中大臣からはこのような御答弁がございました。「一般的な金融機関への旧大蔵省職員の就職状況については、公務を離れた個人の情報でもあり、役所としては把握する立場にはない、そのような資料を調査ないしお出しするということは、ちょっと私どもの立場では難しいのではないかというふうに思います。」
 
私は、六百九十九しか金融機関がないわけですから、その金融機関に、旧大蔵省あるいは日銀からどのように今就職されているのか、これを再三求めたわけでございますが、出せないあるいは把握する立場にないの一点張りでございました。そこで、委員長にお願いをして、理事会での御協議ということをお願いし、先ほどの理事会でも引き続き民主党の理事からこの資料の提出を求めたというふうに聞いております。
 
そこで、財務大臣、前回御出席いただけなかったんですが、前回は、二兆円の公的資金を地域金融機関に投入をしよう、そういった法案の審議の中で、特に信用金庫を例に、全国の三百四十九のうち半数以上の信用金庫に、合計二百三十九名の旧大蔵、日銀のOBが現在役員として再就職をしている。それがまた、ほとんど、いわゆる金融検査官あるいは日銀で考査役をされていた方が不思議とその信用金庫の検査部長、検査室長のような役になって、そして、今、役員として働いている。これはやはり、検査をする側とカウンターパートの検査を受ける側の関係が、OBに対してどうしても検査、考査が甘くなるんじゃないですかと。そういった懸念から、そんなことがないように、特に金融検査官の再就職については金融担当大臣に日銀を例に自粛を求めましたが、そのことについてはやるという御回答はいただけなかったんですが。
 
財務大臣、この資料を見ていただいて、私は、金融担当大臣が、先ほど御紹介をしたように、役所として把握する立場にないという御答弁だったのは、金融庁としては、旧大蔵省のOBの再就職については、旧大蔵省から分離した金融庁ということで把握する立場にないといったことなのかなと。それだけではないというふうに多分お答えになると思うんですが、だとすれば、旧大蔵省から金融庁部分は離れたといっても、当然、旧大蔵省は財務省にといった流れの中で、財務大臣として、この旧大蔵省のOBの方が現在全国六百九十九の金融機関にどのように再就職をされているのか、その資料をこの委員会に出していただきたいと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣
 
これは、先ほど竹中大臣の前回の御答弁を伺っておりまして、私も全く同感でございまして、今、公務を離れられた方のそれぞれの職業、就職先というのを私どもは把握しておりません。
 
もちろん、人事院承認を得なければならないというようなルールがつくられております。これは、天下り批判というものがある中でそういうルールがつくられている。そういうものは、もちろん、人事院ルールにのっとってやらなければならないようなものは、我々も当然把握してそのようにやっておりますけれども、それ以外のものについては特にそういう資料というものを我々は持っておりません。

武正委員 
竹中大臣は、前回、役所として把握する立場にないということでお答えをいただいたんですが、財務省としても把握する立場にないということでございましょうか。

谷垣国務大臣
 
そういうことでございます。現にございませんし、OB、公務を離れられた、公務員の身分を退かれた方々の一々の動向まで私どもはつかんでおりませんし、また、そうすべきだとも思っておりません。

武正委員 
私が前回指摘をしたのは、金融ビッグバンだ、そしてまた、先ほど来の指摘のように、ある面、間接金融から直接金融へ促すんだ、そういうような政府の姿勢、これは当然国民の皆様にさまざまな形で影響があるわけです。決して強いるわけではないと。そしてまた、さきの法案の審査では、二兆円の公的資金を、税金ですよね、これをまた金融機関に投じよう、地域金融機関の合併促進ではないと言いますが、それも促そうと。そういった中で、旧大蔵省あるいは日銀、こうした方々の再就職によって、一番大事な、この金融システム全体でのリスクテーク、その中でのいわゆる金融検査、考査が、あだやさじかげんがきいたり手かげんがあってはいけないし、ましてそのような疑い、疑念を持たれるようなことがあってはならない。だから、旧大蔵省、日銀、特に旧大蔵省からの再就職状況を把握する立場にないというふうに言い張ることは、今こうした法案の審査、審議、そしてまた政府としての姿勢、今の現下における姿勢としてはやはり問題がある。そういった姿勢をどうしてあくまでも貫くのか、私には到底理解できないわけでございます。
 
そこで、お手元の方に、今回は証取法の改正ということで、三ページ目をお開きいただきたいんですが、旧大蔵省、日本銀行からの再就職が、いわゆる協会、投信協会、生保協会、損保協会、これは何というんでしょうか、自主規制組織というのか、あるいは業界団体、まあ、業界組織というんでしょうか、こういったところにはやはり旧大蔵省、日銀から再就職の率が高い。証券業協会、証券取引所は二十九人中九人、投信協会、格付会社は十九人中五人、生保協会五人中二人、損保協会八人中一人ということでございますが、証券会社、投信会社、生保、そして損保の役員を調べてみると、その二ページ目のいわゆる金融機関との非常に際立った特徴は、旧大蔵省、日銀からの再就職が少ないといった点でございます。
 
これは、うがった見方というのはいろいろできるわけでありますが、要は、旧大蔵省、日銀から多くの方々が再就職をされている銀行を中心に日本の金融システムの再編成あるいは強化をやろうという背景には、やはりこの再就職状況というのが密接に絡んでいるのではないかというふうに見受けられるわけでございますが、この点いかがでしょうか、この認識。全然違うよ、再就職していないから損保、生保の窓販を銀行に認めたり、あるいはまた銀行での証券仲介業を認めるといったことで、あくまでも銀行主体の日本の金融ビッグバンなんだよというような誤解を与えかねないと思うんですが、担当大臣、いかがでしょうか。

伊藤副大臣
 
今御指摘がございましたように、天下りの問題について議論があるわけでございますから、そうしたことについて真摯に受けとめなければいけないというふうに考えております。特に、権限というものを背景にして押しつけ的に再就職をあっせんする、こういうことはあってはならないわけであります。
 
しかし、今回のこの法律につきましては、顧客の利便性の向上でありますとか、あるいは投資家のすそ野を広げていきたい、証券会社の店舗が少ない地域におけるアクセスの改善といった政策的な意義にかんがみて御審議をお願いしているところでございますので、ぜひこうした点について、銀行救済ではないということについて御理解を賜りたいというふうに思います。

武正委員
 
誤解だとすれば、そういった誤解を生じかねない銀行と証券、投信、生保、損保に対する再就職の余りにも際立った状況の違い、こういったところは、また、疑念を持たれないようにそうした再就職は自粛をすべきである。
 
そしてまた、速やかに今の状況について、私もこうやって日本金融名鑑から引っ張ればできるわけですので、委員会への資料の提出を、委員長、再度お願いをしたいと思います。

田野瀬委員長
 
理事会で協議させていただきます。
○武正委員 ここで、先ほどちょっと触れた、いわゆる監督機関というか業界機関というんでしょうか、ここには旧大蔵省、日銀の方が結構再就職されているんですね。先ほどジャスダックのお話も同僚委員からございましたが、「ジャスダック 社長、不透明な株売買か 金融庁と日証協調査」ということなんですね。ですから、いわゆる業界団体というかこういう協会の役割というのは、やはりそれぞれの傘下の会社に対して大変重いものがあるというふうに思うわけなんですね。私は、そのときに、このような再就職状況、果たしてこれがいいんだろうかと。
 
金融庁も調査します、日証協も調査します、でも、日証協にはこのように多くの旧大蔵、日銀から再就職をしている。こういったことでは、何だ同じところがやっているんじゃないか、第三者あるいはそういったさまざまな観点からのチェックが甘くなるのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。

伊藤副大臣
 
御指摘がありました業界、協会というのは、ある意味では自主規制機能というものも担っているわけでありますので、国家公務員がそうした協会あるいは民間金融機関に再就職することによって自主規制機能がゆがめられてはならない、これは当然のことであります。そして、協会等の自主規制機関において、これまでもそのようなことはなく、適切に自主規制機能というものが果たされてこられたというふうに考えているところでございます。
 
今、日本証券業協会のことについても御指摘ありましたが、これまで数度の証券取引法の改正によって自主規制機能の強化に努めてきたところでありますが、私どもといたしましては、同協会の活動が証券市場の発展に資するものとなるよう、引き続き適切な監督を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

武正委員
 
監督じゃなくて、要は、そうした独立性なり自主規制機能の強化のためには、旧大蔵省、日銀から、このように二十九名中九名の役員の再就職状況というのは、今言われた副大臣の答弁が疑わしいものというふうな疑念を持たれますので、やはりこの再就職については自粛すべきであるというふうなことを指摘させていただきます。
 
本来であれば、国債保有の多様化を目指す観点から、海外投資家が購入しやすい規制緩和の実態もお聞きしたかったんですが、時間の関係で先を急がせていただきます。お許しください。
 
さて、国債事務取扱諸費に必要な経費が平成十六年度四千九百二十八億円、これは特別会計の予算書に載っておりますが、このうち、シンジケート団に、前に手数料を年間千二百億円払っているというような話がありましたが、今、実際のところ、このうちシンジケート団への手数料は幾らになるのか、これをお答えいただけますか。

山本副大臣 
平成十六年度の国債整理基金特別会計予算におきまして、国債事務取扱諸費に必要な経費としまして四千九百二十八億円計上しているというところは、御指摘のとおりでございます。その内訳といたしまして、国債の発行、償還等に係る手数料を約二千七百億円計上しているところでございまして、さらに、その手数料のうち、国債募集引受団、いわゆるシ団への引受手数料の支払いといたしまして九百三十億円を見込んでいるところでございます。
 
なお、シ団への引受手数料につきましては、平成十六年五月発行分の十年利付国債から額面百円当たり三十九銭から二十三銭に引き下げることとしたため、この見直しに伴いましてシ団への引受手数料の支払いも減少することが見込まれているところでございます。

武正委員 
一時、シ団はもうゼロに、廃止にということだったんですが、今回二〇%から一五%に引き下げるというようなお話ですけれども、本来のシ団廃止に比べるとペースが遅いという指摘があるんですが、この点はいかがでしょうか。

山本副大臣 
御指摘のように、シ団を廃止する、二〇〇三年度中に国債募集引受団、シ団を廃止したらというような考え方もあったわけでございますが、我が国では十年国債につきましてシ団制度のもとで国債の引き受け、発行が行われておりまして、シ団制度は国債の安定消化という意味におきましては従来より重要な役割を果たしてきているものと考えております。
 
他方で、平成十六年十月から、国債の安定的な消化の促進及び国債市場の流動性の維持、向上を目的とした国債市場特別参加者、仮称でありますが、いわゆるプライマリーディーラー制度でございますけれども、これを導入することとしておりまして、同制度は十年債に対象を限定しない国債全体の安定消化の新たな枠組みとして有効に機能することが期待されております。
 
したがいまして、国債市場特別参加者制度の導入後、同制度の国債の安定消化機能を評価いたしまして、特段の問題がないと判断するということになりますればシ団制度は廃止することになるというように、手順を踏んで、ある程度評価をいただかなければならない、こう考えておりますので、やや時間が先に延びておるというように御理解賜ればと思います。

武正委員 
ある面、この九百三十億円の手数料、これがシ団の金融機関に対する大変ありがたい手数料になっている、これをやめるにやめられないというような指摘があって当初の予定がおくれているのではないか、こういう指摘もあるわけなんですね。ですから、私は、やはりこのシ団廃止を、当初考えたわけですので、そのペースを落とすことなくこのシ団廃止を進めていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 
さて、ペイオフの方にちょっと話を移させていただきたいんですが、財務大臣、金融担当大臣それぞれ、もう既に委員会ではお話をいただいていると思うんですが、改めて、来年四月のペイオフ解禁は当初予定どおり実行するということで言明をいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 
何度か御答弁させていただきましたように、ペイオフというのは、預金者がみずから銀行を選別する、そういう健全な競争環境といいますか緊張感の中で銀行が経営を行う、もって非常に規律のあるガバナンスを発揮した経営を行って金融システム全体を強くしていく、そういう意味ではやはりぜひとも必要なプロセス、経なければいけないプロセスであろうかというふうに思っております。
 
そうした意味で、金融システム全体の効率化を図るためにも、十七年四月から予定どおりペイオフ解禁を実施することといたしております。これを前提として、我々としては、金融再生プログラムをしっかりと実行していく、リレーションシップバンキングのアクションプログラムをしっかりと実行していく、さらに、そのために必要な趣旨の周知徹底等々、さらには決済機能の安定確保のための制度的な手当てを今粛々と進めているところでございます。

谷垣国務大臣
 
私の方は預金保護でどれだけお金を出すかということが主たる問題でございますから、ペイオフを実施するかどうかという観点から申しますと、今の竹中大臣の御答弁に尽きているのではないかと思います。

武正委員 
既に日銀総裁にもお聞きしたんですが、ペイオフ解禁を延ばしてきた一つ背景として指摘されるのが、地方自治体が合計二十兆円のお金を特に指定金融機関を中心に預けている、これがペイオフ解禁を延ばし延ばしにしてきた一つ理由であるという指摘があるんですが、この点が改善をされているのか。あるいはペイオフ解禁の支障にならないように、例えば、地方自治体あるいは指定金融機関を含めてお取り組みをされているのか、この点、担当大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 
御指摘の公金についての議論というのを私もよく耳にするところでございます。そうした問題意識を踏まえまして、これは十四年四月に定期性預金について一部ペイオフが解禁されておりますけれども、それに先立ちまして、この公金については総務省において研究会が開催されて検討されております。十三年三月に公金預金に係るペイオフ解禁への対応方策が取りまとめられまして、自治体に周知されているというふうに承知をしております。これは、具体的な方策としましては、借入金等の債務と相殺する、指定金融機関からの担保を充実する、国債等の債券による運用、普通預金等の流動性預金の活用、こうした点がこの中では挙げられているところでございます。
 
ぜひ強調させていただきたいのは、平成十四年の預金保険法改正においてペイオフ解禁拡大が十七年四月というふうになったわけでございますけれども、日本の場合、非常に銀行預金に決済が大きく依存しているという実態も踏まえまして、無利息、要求払い、決済サービスを提供できること、この三つの条件を満たす預金を全額保護します決済用預金の制度が設けられている。これは、私はペイオフを考えるに当たっては大変重要な制度であるというふうに思っております。自治体の公金につきましても、この決済用預金として預け入れられれば全額保護が可能になるというシステムが既にあるということでございます。
 
いずれにしても、我々としましては、この決済用預金の制度も含めまして、預金保険制度に係る誤解やたまたま知らないということから無用の混乱を来さないように、適切な広報活動を今申し上げた点も含めてしっかりと行っていくつもりでおります。

武正委員 
時間が来ましたから終わりますが、実は地方自治体がペイオフ対策がおくれている。いわゆる指定金融機関は総務省マターであるというようなことで、あだや、金融庁あるいは財務大臣を含めて、政府としてこのペイオフを必ず実行するという、あるいはそういった御発言を実効あらしめるためにも、地方公共団体の二十兆円の指定金融機関との関係、これがペイオフを妨げないようにお取り組みをお願いしたいと思います。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました

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