2004年5月12日 【外務委員会】
■武正委員
民主党の武正公一です。二条約についての質疑を行わせていただきます。
今、松原委員とのやりとりの中で、また拉致問題の定義について外務大臣から御発言があったんですが、再度確認をしたいんですが、私もこの委員会で大臣と何度か拉致問題の定義というか、やりとりがあったと思うんですが、拉致問題には、当然八名の方の帰国、そして十名の生存の確認、そしてそのほか三百名とも言われる特定失踪者、こういった方々のやはり生存の確認等ということで、ここまで含まれるんだというやりとりがあったと思うんですが、再度その点を確認したいと思います。
■川口国務大臣
これは、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、まず既に帰国された五名の方、五名の被害者の方の北朝鮮にいる御家族の帰国、これを実現すること、そして安否が不明の拉致の被害者の方々、これについての事実、真相の確認ということが非常に重要であると考えております。それで、先ほど御質問がありましたけれども、その安否あるいはその真相の確認の結果、生存をしていらっしゃる方々については、もちろんこれは御帰国をいただくということであるということは当然であります。
それから、特定失踪者のことでございますけれども、これについてはいろいろな情報交換等をやっておりますが、十五名の方々に限定をすることなく、広くいろいろな情報を集めております。そして、今後、新たなその中から拉致の認定というのがある場合、これについては、その方々も取り上げていきます、真相究明及び生存が確認をされた方々について帰ってきていただくということも含めましてですけれども、ということはもう既に北朝鮮側に言ってある、そういうことでございます。
■武正委員
ということは、今御答弁いただいたことを含めて拉致問題というふうにとらえているということでよろしいでしょうか。
■川口国務大臣
ということで結構でございます。ですから、特定失踪者については、その中で拉致ということが認定をされた場合にはその中に含まれる、そういうことでございます。
■武正委員
含まれないと拉致問題には含まれないんですか。認定されないと拉致問題に含まれないということですか。
■川口国務大臣
これは、警察庁におかれて拉致の認定をやっていらっしゃるということであるわけでございまして、拉致という認定がなされれば当然にその中に含めて考えていくということでございますし、それ以前の問題として、情報の交換等々を今やっているわけでございます。これは関係の国ともやっておりますし、それから脱北者の方々から情報をとるということもやっているわけでして、そういった努力ということは、もちろん拉致の認定につながる重要なことでございますから、それはやっているということでございます。
■武正委員
私は、認定をされる前の、今御答弁いただいた最初の御答弁を含めて拉致問題というふうに考えるべきだということを、やりとりをこの外務委員会でさせていただいていたと思います。そして、そういった旨の答弁が外務大臣からあったというふうに私は認識していたので、ちょっと前言とまた違う御答弁なのかなというふうに今受けとめたところでございます。
私は、認定をされなくても、当然、その認定のためのいろいろな作業中、あるいは、この間も特定失踪者の家族の方のお話も伺いました。田口八重子さんが川口でという、その近辺に居住された方々が多数やはり失踪されている、こういったことも御家族の方から聞いたわけでございまして、特定失踪者、認定されなくても拉致問題に含まれている、含まれていくべきであるというふうに思います。再度この点はいかがでしょうか。
■川口国務大臣
今、これは外務省の方でお答えをすることが適切かどうかわかりませんけれども、外務省としては、いろいろな、脱北者の方ですとか関係の方に働きかけて情報の収集をやっているわけでございまして、そういったことについて警察とも連携を密にとっております。
そういった中で拉致ということの認定があるということであれば、それは、今まで十五名の方について行っているのと同様に、拉致の被害者の方であるということで対応をしていくということを申し上げているわけでございまして、拉致の定義いかんということになるのかもしれませんが、そういったことにつながる情報の交換なり、情報を求めるなり、収集なり、それを警察庁とシェアをするということであり、それはそれぞれ非常に重要な仕事であるというふうに思っているということでございます。
■武正委員
ともすると、拉致問題の解決が日朝国交正常化交渉の前提である、こういった御答弁があったと思いますが、そうすると、この拉致問題が、要は拉致の認定がふえていくことによって日朝国交正常化交渉に入れない、ハードルが高くなってしまう、こういったことが特定失踪者問題の解決をおくらす懸念というものがやはりあるというふうに思うんですが、私は、そういったことはあってはならない。
広く拉致問題ということであれば、これだけ特定失踪者がいて、しかも北朝鮮との間に国交がない中に拉致の認定をしていくという大変困難な作業を警察庁と外務省が協力しながら進めていくといっても、お相手の国が国交がない国であります。そういった国との間での拉致されたという認定、これが大変極めて困難な状況にあるといった中で、私は、拉致問題については特定失踪者まで含めて考えるべきであるというふうに思うところでございます。
さて、条約の方に移らせていただきますが、まず、KEDOの現状、これについて御答弁をいただけますでしょうか。
■川口国務大臣
KEDOの現状でございますけれども、これは、KEDOの軽水炉事業が、北朝鮮がとってきた一連の言動によりまして、当時の状況下において継続をするということが適当ではないというふうな判断がございました。したがいまして、KEDOの理事会の決定によりまして、昨年の十二月の一日から、これについては一年間の停止の措置がとられております。
政府として、この事業の将来につきましては、今後とも引き続き他の理事会のメンバー、これは韓国であったり、韓国、日本、EU、そしてアメリカということでございますが、緊密に連携をいたしまして協議をしていく、そのような考えでおります。
■武正委員
KEDOについては、一年間停止というんですか、再開について停止をしようということになっていますよね。この見通しというのは、報道では、米国が当然応じないということが言われているわけですけれども、これは、そうすると、KEDO、軽水炉の工事再開というのは不可能というふうに、現状、見てよろしいんでしょうか。
■川口国務大臣
今後のことにつきまして、これは一年の期間が終了する前に他の理事国のメンバーの方々と御相談をして決めるということになっているわけでございまして、その結果がどのようなことになるかということについては、今必ずしもわかっていないということでございます。
政府としての考え方ということで申し上げれば、これは、そのときに他の国々と十分に意見の交換をした上で決定をしていくということであると思います。
■武正委員
次に、ITUの条約でありますけれども、これは総務省に聞くのがいいのかもしれませんけれども、今、政府は電子政府化ということを進めておられます。
たしか、このITUの事務局長ですか、内海さんも日本から出ておられると。これは、国際的な電波の、それこそ電波帯あるいはそういった調整なども行われる大変大事な機関というふうに認識しておりますが、このITUの条約に関連をしてということになりましょうが、政府は電子政府化を進めておられます。ただ、それが、国連あるいはアクセンチュア等の評価では、国連で十五位、アクセンチュアでは十七位といった評価がされているわけでございます。私は、やはり日本の今の電子政府化が、どうしてもサプライサイド、供給側の論理に立っている懸念というものを感じておりまして、ユーザーサイド、国民サイドの視点というものがやはり必要である。これが、順位が、評価が低い理由ではないかというふうに思っております。
このITUの条約に関連をして、この点、日本の電子政府化、国民サイド、ユーザーサイドの視点というものが必要と考えますが、この点、外務大臣、いかがでしょうか。
■川口国務大臣
私が、必ずしもこの分野の担当ではございませんので、お答えするのが適切かどうかよくわかりませんけれども、これは、政府としては、今、日本が電子政府化に非常に力を入れているという現状があるわけでございまして、かなりそれなりに進んでいる、一定の成果を上げているというふうに思っております。
例えば、外務省として進めていることで申し上げますと、在留届については、これはインターネットで届けられるということでございまして、これは、既に昨年の四月から全部の在外公館で始めております。また、国内での旅券発給申請、これのオンライン化をするということで、システムの開発や実証実験等に現在着手をしているという状況であります。また、在留邦人の方にいろいろなメールを、安全情報も含めてお届けをするということは必要ですので、そういった配信サービスということも、現在、六十公館以上で既に実施をしているということでございます。
あるいは、そういった予算の執行という意味で、インターネットを使った電子入札ということも、これはことしの二月から開始をしているということでございます。
あと、外務省のタウンミーティングをやるときにも、海外と結んで内容を充実化させるというようなこともやっておりまして、外務省としても、さまざまな取り組みをやっているということでございます。
今、日本の電子政府化が、急速な勢いで変わっていて、変化をしているという状況でございますので、おっしゃった十五位あるいは十八位という評価がどの時点での現状に基づいての評価かということについて私はよく存じませんけれども、基本的な考え方としては、ユーザーあっての電子政府ですから、これは、できるだけユーザーの立場に立って、やりやすい、使いやすい、意味のあるものにしていかなければいけないということは当然であると思います。先ほど申しました外務省における電子政府化、これを進める中で、私どもとしては、そういったユーザーサイドの視点、これを非常に重要視いたしております。
■武正委員
既に同僚委員から、九月十一日テロのときに、日本の在米大使館に問い合わせても、例えば、名前を聞かなかった、あるいは電話番号を聞かなかった、こういった指摘も既にされております。電子政府化の前提が、今言ったユーザーサイド、すなわち国民サイドの視点ということが大事であるということは、ぜひ外務省としてのお取り組みを忘れないでいただきたいというふうに思います。
さて、先ほど理事会で実は米澤委員長から指摘があったことをここで御紹介させていただきたいと思うんですが、すなわち、全権委員会議からの条約名でございますが、この条約名、何でこんなに長いんだ、これは大変だよと、読むのも、あるいは我々も理解するのも。今回の二条約のうちのもう一つの条約は七行にわたっているわけでございまして、私は、欧米の議会等で、果たして、このようにそのまま条約名を訳して、それぞれの母国語に訳して、そしてそれを議会でも同じようにやっているのかどうか、これはぜひまたお聞きをしたいというふうに思っておりますが、ここで、先ほども松原委員の質疑の中でも出てきました、留保という言葉でございます。
外交は、政府、内閣の専権事項、七十三条二号。そして、七十三条三号、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」この国会と条約との関係ということで、私は、条約の審議というものが、それこそ明治期にあっては、不平等条約の解消ということで、政府を挙げて取り組んできた経緯がある。
ただ、私も外務委員会にこの通常国会から所属していますが、ともすると、条約の審議というものが非常におざなりになる懸念がある。というのは、条約というのは非常に多分野にまたがっていますし、非常に複雑な内容があるわけで、それをこの外務委員会で短時間で審議が、果たして本当にいいのかどうか。
というのは、条約を締結することによって国内法の整備をしなきゃいけない。そうすると、国内の立法に大変な影響がある条約の審議が、その審議時間いかに、あるいは審議の体制いかに、そしてなおかつ留保ということが、実は、この国会の中で、留保を削ったり、あるいは留保について問題があるんではないかということをたとえ言ったとしても、それは影響を与えないんだ、こういったことは既に外務省からお聞きをしているところでございます。
先ほど触れましたような、条約の審議に当たっての、条約の案件の長さも含めて、我が国国会における条約の審議のあり方、そしてまた外務省あるいは政府と国会との関係における条約というもの、今、大変大事な視点を先ほど理事会でも委員長から提起があったのかなというふうに私は思っておりまして、この点、外務大臣、名前のことも含めてお答えいただければ結構でございますが、私は、この留保ということに限って言えば、やはり国会で留保について影響を与えることができるべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
■川口国務大臣
まず、条約の名前の長さでございますけれども、長いだけではなくて括弧がたくさんついておりまして、委員長もお読みになるのが大変でいらっしゃると思いますし、私も、提案理由説明、趣旨説明等をさせていただきますときに、どうしてこう長いんだろうか、括弧はどこまでかかるんだろうかとしょっちゅう考えながら読んでいるということがございまして、なかなかわかりにくいということは全くおっしゃるとおりだろうと思います。
それで、ただ、そういった形であらわしている条約の名前というのは、これは正式の名前、国際的にも正式の名前であるということでございまして、それは残念ながら変わらないということですが、ほかの国が例えば条約を呼ぶときの名前を簡略化して国会等にお諮りをしているかどうか、それについてはちょっと調べておりませんのでわかりませんが、今後調べてみたいと思います、一つの工夫ができる余地があるのかもしれませんし。ただ、正式な名前は正式な名前としてどこかにきちんと書いておく必要はあるだろうというふうに思っております。
それから、条約審議のあり方についてお話ございまして、これも、むしろ政府の立場として申し上げるということよりは、条約の審議をどのようになさるかという国会の中のお考えということがまず第一であろうかというふうに思います。
条約の締結というのは内閣がやるということでございまして、国会においては、その内閣の締結した条約について御承認をいただくということであるわけでございまして、そういった、どのような形で承認の作業を行うかということをどう考えるかということにまさにかかってくるということで、いろいろな御意見はおありになろうかというふうに思います。
■武正委員
先ほど取り上げたように、七十三条三号は、「条約を締結すること。」は内閣に与えられていると。「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」と、「事前に、」というところが先に書かれておりますので、私は、条約の留保について国会がやはり影響を与えることができるということが、この憲法からいっても正しいのではないかというふうに思っておりますが、この点はいかがでしょうか。
■川口国務大臣
先ほど申しましたように、条約の締結というのは行政府が行う、行政府の権限であるということで、その承認が事前あるいは事後ということであるわけですけれども、どういう条約を結ぶかということについて、留保があるかどうかということも含めて、これは行政府が決めるということであると思います。それで、国会は、その条約の締結について承認をするか、あるいはしないかということを判断するということが国会の役割であるというふうに思います。
それで、その留保についてでございますけれども、留保をつける場合に二つの考え方をしております。手続として二つのケースがありまして、一つは、条約の規定に基づかないで留保を付する場合というのと、それからもう一つ、条約の規定に基づいて留保を行うという二つの場合があります。この二つについて、異なる扱いをしているということでございます。
まず、条約の留保に関する規定に基づかないで留保を行う場合につきまして、これは政府は従来から留保を付してその条約を締結することについて国会から御承認をいただくということにいたしております。これはなぜかといいますと、留保を付する結果、条約の特定の適用関係が影響を受けるということになる、適用関係が変更される、あるいは排除をされるということになるわけでございまして、そのような留保を付して条約全体を締結することについて、国会の御承認をいただくということが適切であるというふうに考えるということが理由でございます。
それから、もう一つのケース、ある条約について、その条約の規定によって留保を行うということでございますけれども、その場合には、その理由、内容についてできる限り審議の際に国会に説明をさせていただくということにいたしておりますけれども、そのことについて国会から御承認をいただくということは、そういう手続はとっていないわけです。
これはなぜかということですけれども、国会に対しまして、その条約について、留保に関する規定があるということを前提に御承認をいただくということであって、その上で留保を付すということであるわけですから、国会の御承認をいただいた条約の全体の枠組みの範囲内で政府が留保を付すということは、言ってみますと条約の実施の態様であって、これは行政府の権限に属する事項であるということでございますので、行政府限りで行うことができるということです。
したがって、考え方として整理をしますと、そもそも条約に留保を付することができるという事項がついていて、それに基づいて留保を付する場合と、そういうことがなくて、条約の規定に基づかないで留保を行う場合と、ケースが違うということでして、留保の条項がなくて留保を行う場合には、全部を国会の承認の対象といたしますし、留保ということが条約自体に入っている場合、それは、留保をする内容についてはもちろん御説明をできるだけいただきますけれども、それは御承認の対象ではない、行政府の権限である、そういうことで考えております。
■武正委員
この間、サイバー条約のとき、条約の中に留保、留保がいっぱいあったんですよ。私が、条約局長ですか、これはそれぞれ一つずつ国会で、日本が留保するか、認めるかどうか、できないんですかと。今外務大臣の御答弁のように、いや、これは留保すべきだ、あるいはこれは留保すべきでないとか、そういったことは国会で幾ら言われても、それは我々の仕事でありますからといったことがあったものですから、今回このことを取り上げたわけでございます。
四月二十二日に憲法調査会で齊藤参考人という方が最高法規に関する小委員会に来られて、このときに条約と国内法あるいは条約と憲法、どっちが優越なのか、こういった議論をいたしました。
私は、条約の審議で、過日のサイバー条約のときの賛成討論の中でも指摘したように、サイバー条約の国会での承認によって、同時並行ですが、関係の法案がたくさん出ている。条約を署名、批准して、そして国会の承認と同時にいろいろな法律を変えなければならない。ですから、条約の影響というのは、非常に国内法、ある面、ですから条約は国内法に優越なのかもしれないけれども、そのときには条件があると。
すなわち、政府が国内法を整備したいものは条約を署名、批准する。あるいは、国内法、まだ整備は早いな、あるいはしたくないな、特に、これはILO関係八十三本あるいは人権関係三十本といったものが実は未署名であるといったことも含めて、政府の恣意的な形で条約の署名、批准がなされて、それによって国内法が影響を受ける。ということは、私はやはり立法権の制約をかなり条約の署名、批准というものは課してくるということがあるというふうに思います。
そういった意味で、齊藤参考人からこういった指摘に対してこのような答弁があります。ちょっと長いですが、読みます。
ただいまの、条約の承認の際に留保を国会で新たにつける、あるいは政府の原案にある留保を削るといったようなことが可能かということでございますけれども、従来は確かに御指摘のように、政府見解としては、国会が留保を付したり、留保を外したり、あるいは修正をつけ加えることはできないという立場をとっておりましたが、これは、国会の立法府としての権限を考えますと、必ずしも正しくないというふうに考えられます。
かつての二国間条約のように、政府が相手国と交渉してきまして条文を詰めてきて、それで国会に承認を諮っているという場合は、国会で留保を新たにふやしましたり修正をいたしましたりしますと、相手国とまた一から交渉をし直すということになってしまいますので、こういった場合に留保や修正ができないということは一つ理由があり得ますけれども、例えば、既に国際会議等で文書がつくられている多国間条約の場合、これは、日本国が留保をつけるとかなんとかということによって条約の本文自体が変更されるということではありませんので、実際にその留保を付すことによって、まさに国内で法律に優位する効力を持って適用される規範の範囲、あるいは適用される規範の内容といったものが変化を来たすわけで、実質的には立法にかかわる問題かと考えられます。
こういったことについて、つまり、御指摘のような、留保をふやす、あるいは、政府が留保しようと提案しているところについて、留保せずに国内法の整備を図るべきではないかというふうに提案するというようなことは、国会の権限の範囲内として考えられるというふうに思います。
こういった参考人の答弁も憲法調査会の小委員会であったんです。
この齊藤参考人の意見、私はやはり、バイの条約と多国間の条約は全くケースが違う、この参考人の指摘、先ほどのサイバー条約がまさにそれに当たるわけなんですが、そういった意味では、この留保について国会が影響を与えられないといった政府の見解は、私は、少なくとも多国間条約、しかもその中に留保がいっぱい込められた条約を政府が国会に提出する場合には、どの留保を認めるべきであり、あるいはどの留保を認めるべきではない、こういったことが国会が影響を与えられてしかるべきというふうに考えますが、この齊藤参考人の答弁を経て、外務大臣はどのようにお考えになりますか、御所見を伺います。
■川口国務大臣
大変に難しい御質問でございまして、失礼をいたしました。
申し上げることは実は同じことでございますけれども、政府として、行政府として国会にお願いをするということは、こういった種類の条約を結びたいということをお願いするという、その承認をお願いするということであるわけです。
それで、もちろん、どの条項を留保する留保しないということによって、これはマルチの条約を考えましたときに、それの及ぶ影響あるいはその適用されることというのは変わってくるということはそのとおりであるわけですけれども、それについては、それは国内法で、例えば、その条約の結果として、国内法での議論が、変更が必要になるということであれば、それはまた国会で国内法の議論をしていただくわけですから、そこで国会の御議論というのはあるわけでございますね。そこで、そういうことについてできるかできないかという御議論が当然にあるわけで、それが担保ができなければ当然にその承認はできないということにつながっていくことになるであろうというふうに思います。
どのような、そもそも、留保をするということが考えられている、要するに留保条項が条約の中についている、そういう条約であれば、それはどの部分について留保をするかしないかということは、これはその政府が判断をするということでございますが、その結果として国内法に何らかの影響が及ぶということであれば、それは国内法の世界で国会が議論をなさっていただく、そういうことであるかと思います。
■武正委員
私が言ったのは、条約に留保がついて、この国会が条約の審議に影響を与えられないと国内法はそれでそのままもう法律が整備されていってしまうんですよ。ですから、条約がやはり国会、国内法に優越的な地位があるんですね。ですから、私は、国内法の審議の中でやってくださいという今大臣の御答弁でしたが、条約の審議の中で、特にこの間のサイバー条約のように、あれだけたくさんの留保条項が条約にちりばめられている。それを、では国内、この国会で、この条約は、ああ、この留保は認めよう、認めない、それが全体のサイバー条約には影響を与えないわけです。
サイバー条約には既にもう全部留保がつけられていて、それをやるかやらないかは各国にその判断がゆだねられているわけです。それが国内法に対して影響を与えるわけですから、私は、この条約の審議の中で、その留保について、ではこれは日本としてやるべきだ、やらないべきだ、まず条約の審議でしっかりと国会が影響を与えられる、これがやはり国会の、先ほどの齊藤参考人のように、立法府としてのやはり権限であるということを指摘をさせていただきたいと思います。
これは先ほども指摘をした、この条約名の国会での審議のあり方、これは各国の状況も大臣から調べてみたいと。これは、ぜひ委員会に御報告をお願いしたい、これは委員長にお願いしたいと思います。
■米澤委員長
後刻協議して、それなりに処置します。
■武正委員
ありがとうございます。
それでは、もう時間も限られておりますので次に移らせていただきますが、この四月二十二日、内閣記者会とのインタビューで首相が、イラク復興支援について、より国連の関与を強め、国際社会が協力できる形に米国が努力するよう働きかけていくと強調した。いわゆるブッシュ発言から、米国主導色を薄めるというブッシュさんの姿勢を受けてこのような発言が出てきたというふうに思うわけではございますが、やはりこれまで米国中心あるいは日米同盟、国際協調といったことでは日米同盟重視といった首相の姿勢がここで変わったのかなというふうに思うわけでございます。
川口外務大臣からも同様の発言が出ていたように記憶をしておりますが、この点、私は、路線の変更なのかなと。たしかこの場でも、川口大臣の外交姿勢を聞かれたときに、日米同盟そして国際協調、そういった順番で答えられたというふうに記憶もしておりますが、この小泉首相の発言はそういったことであるのかどうか、川口外務大臣の御所見を伺います。
■川口国務大臣
これは決して路線の変更という形でとらえられる話ではないと私は思います。国連の役割が重要であるということについては、これは我が国は、武力行使が昨年行われる前から、一昨年の時点からそういうことは既に行ってきております。いろいろな働きかけを一昨年の十一月、秋ぐらいもやったわけでございます。
したがって、国連決議についても、あればあった方がいい、あることが望ましい、あれば一番いいというような、いろいろなことも申し上げてきているわけでして、それは同じ考え方をしてきているということであって、小泉総理が言われたことも、そういった考え方をあらわされたということであります。
また、そういうことについて国連の関与が大きいことが大事であるということについても、小泉総理も、あるいは私も、あるいはほかの人間も、ありとあらゆる機会といいますかいろいろな機会をとらえて米国にも国際社会にも伝えてきているわけでございまして、基本的に同じ流れの話と御理解をいただきたいと思います。
■武正委員
そこで、最後になりますが、平成十六年度予算案、これは外務省の提出資料でございますが、国連の機能強化、ちょっと、項目はもうちょっと長い言葉だったと思いますが、の予算が、前年度比約三〇%減といった予算が出されております。
私は、この予算一つをとっても、国連軽視といったことを裏づけるものではないかなというふうに思っておりまして、やはりこれまでの日米同盟重視からこの四月の二十二日の内閣記者会をもって、急遽、国連重視といったことを、暫定、イラクへの政権移譲に関して国連中心でといったところに出てきているのかなというふうに思いますが。
この予算が削減されていること、そしてまたこれが、毎年同じような項目があればこれも比較のしようがあるんですが、毎年外務省さんが提出される資料は、予算のくくり方、グルーピングが変わってしまうので比較ができないといったこともあります。私は、国会に対する説明責任からいっても、経年でその変化が読めるようなそんな資料もぜひ出していただきたい、このことを、要望も含めて、外務大臣、今年度予算が三〇%弱減ったことも含めて、この二点、いかがでしょうか。
■川口国務大臣
国連の予算をもっとふやしていきたいというのは私どもの思いでございまして、可能な限りそうしたいというふうに思いますが、なかなか全体、財政状況の中で難しいということも一つありますが、二七%減ったというのは、そういった一般的な話と若干異なる話でございまして、この項目、これは国連等国際機関の機能強化と意思決定過程への積極的な関与という項目の中で二七%これが減っているということですが、これの大部分というのは国際機関職員派遣信託基金拠出金、すなわち若い日本人を国際機関に派遣するというそのための費用であります。これが十六年度において二九%減額をいたしました。
それがなぜかということですが、これは、円高がございまして、円高に起因をしたもの。それから、一部の若手の職員が正規の職員になったということでここから外れたということがありまして減額要求をしたということでありまして、そういう非常に特殊な、具体的な要因に基づくものでございます。
実際、この基金への拠出を重視しているということについては、これは全く変わりはございませんし、邦人の職員もふやしていきたいというふうに思っております。
それから、項目がわかりにくいじゃないかと。これも一つおっしゃることも理解できますけれども、同時に、我々がなぜそういうことをしているかということを申し上げたいんですが、やはり外交の予算というのは、どういう外交政策が中心にあって今我々は考えているんだということをまずお示しして、その外交目的、それを達成するためにこういった予算という形で予算を御理解いただきたいというふうに考えているわけでございます。
何が外交の重点的なことなのかというのは、時の流れによってそれは変わってくるわけで、したがって、予算を要求するときに、我々の認識としてこれが重要であって、これにこれぐらいという形でお出しをしているということで、そういう意味では外交政策と予算の関連は非常にわかりよくなっていると思いますけれども、その反面で、おっしゃるように継続性について難しいということもあるかと思います。
ということがございますので、その継続性の部分については、例えばODAですとか、それから外交実施体制というもう決まったものでございますね、そういうことについては、各年ごとに比較ができるような形で別途資料もおつくりをして、お出しをしているということでございます。
■武正委員
以上で終わります。ありがとうございました。
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