2004年11月25日 【安全保障委員会】

武正委員
民主党の武正公一でございます。きょうは、国の安全保障に関する件、中国原子力潜水艦に関する領海侵犯事案について質疑をさせていただきます。
 
まず冒頭、防衛庁長官は日米防衛首脳会談をやってこられた、そして帰国後の初の委員会でございますので、それについて、若干、最初に聞かせていただきたいと思います。
 
まず、ミサイル防衛は、開発、生産段階に入れば問題が出てくるので、日米安保体制の効果的運用として武器輸出三原則の見直しを検討している、これはラムズフェルド国防長官との首脳会談で言われたというふうに報じられておりますが、この事実確認をしたいと思います。

大野国務大臣 
まさに、いろいろな意味で、安全保障体制を同盟国と共有していく、こういう考え方は大事だと私は思っております。
 
その中で、武器輸出三原則、もちろん日本の平和のメッセージとして昭和四十二年から武器輸出三原則という考え方をとってきております。しかし、ミサイル防衛という時代になってきまして、ミサイル防衛の開発、生産ということになってまいりますと、今、技術ということだけではアメリカとシェア、共有しているわけでありますが、やはり開発とか生産になってきますと、まさに武器輸出三原則に抵触するようなことになってまいります。
 
そういうことを念頭に置きながら、今先生がおっしゃったように、ラムズフェルド国防長官との話の間で、今、日米で技術共同研究をやっているミサイル防衛については、やはり開発段階、生産段階になったことを考えた上で、念頭に置いて、今先生御指摘の、三原則の緩和を検討している、こういうことを申し上げたわけでございます。

武正委員 
これも今のそうした記事の中でも指摘をされるところでありますが、例えば日米共同技術研究、これは覚書を交わして、MDの研究をされている。今年度予算措置をしたミサイル防衛とは違う、次の、ある面、次世代型のMDであるというお話でありますが、これは、聞くところでは、やはりアメリカ本土に直接飛来をするような、さらに高いところでとらえるような防衛技術であるというような報道もあるわけですが、これから開発、生産、そしてまた、その開発された迎撃ミサイルが米国から第三国に、いろいろとケースが考えられていくわけなんですけれども、この武器輸出三原則の見直しということの御発言が、ある面、無原則に広がっていく危惧を覚えるところなんですが、その点はいかがでしょうか。

大野国務大臣 
例えば、アメリカに武器輸出をすると、そのアメリカからまた場合によっては紛争地域にまでそれが輸出されていくような場合を御想定なさっての御質問だと思います。
 
私はやはり、平和国家日本として、平和のメッセージを世界に出し続けてきたわけでありますから、そういうことが起こらないように、そういうことについてはきちっと、第三国には移転しないとか、そういうことについても皆さんに御議論をいただいて決めていただきたいな。その前に、もちろん武器輸出三原則についてこれを緩和するかどうか、これはやはり議論していただかなきゃいけない問題でありますけれども、私は、新しい時代の流れの中で、少なくとも同盟国とはそういう問題をやっていかなきゃいけない。
 
その場合の問題として、今武正先生がおっしゃったようなポイントについてはやはりきちっと歯どめがかけられなければいけないな、こういうふうに思っていますが、この点はやはり十分議論をしていかなきゃいけないなと思っております。

武正委員 
この議論の中では、防衛費のコストアップ解決のためには共同研究やむなしというような議論も出てくるんですね。ただ、これは国内防衛産業の納入先が防衛庁に限られているということもあるんですが、やはり入札とか選定とか、これはいろいろと会計検査院の指摘を防衛庁は受けているというところも含めて、まだまだ改善の余地があろうというふうにも考えますし、また、日本の防衛技術を育成しなきゃいけない、こういった議論もあるんですが、十一月二十二日の東京新聞には、次期主力戦闘機を選定へ、米FA22などをF4後継というような一面の記事が出ておりますが、「防衛庁、国産眼中になし」という小見出しも出ているわけですから、これはまた、ここのことが本当だとすれば、これの理由とすれば矛盾も出てこようというふうにも考えるところでございます。
 
また、これはアメリカでも指摘をされておりますが、いわゆる次世代型は、先ほど言ったように米国本土対象のMDということで、新システムは一兆円の倍以上という指摘があったり、また、MD関係予算は〇五会計年度で百億ドルでありまして、今後五年間はほぼ同規模の支出ですが、システムを稼働させた後の維持管理コストは含まれないということで、開発や維持のコストは増加し続ける。そういった意味では、このMD開発コストを日本に負担してほしいという米国事情が実はこの背景にあるのではないかな、こういうふうに私は考えるところでございます。
 
これは後ほどの、今回の中期防の見直しあるいは防衛大綱の見直し、ここでやはり、MDありきのために陸自、海自、空自が縮減をしなければならない、先ほど来同僚委員が指摘をされているところの、本当にこのMD導入ありきという昨年の閣議決定、本当にいいんだろうか、こういったことを今回の武器輸出三原則見直しの防衛庁長官の発言からも考えるところでございます。
 
そういった意味で、また、こうした発言もされているんですが、ミサイル迎撃については「「防衛出動」閣議経ずに」「来年、法改正」、これはやはりシビリアンコントロールの点からも問題ありというふうに考えるんですが、この点はやはり、こういった発言をたしかワシントンで記者会見か何かでされているようですが、その事実確認と、内容についての真意をお聞かせいただきたいと思います。

大野国務大臣 
ミサイル防衛の導入ということになれば、そのまま放置しておくわけにはいきません。ミサイル防衛をどうやって運用していくか、このこともきちっと考えていかなければいけない問題であります。
 
御存じのとおり、ミサイルというのは発射されて十分程度で日本に攻撃してくる可能性が、可能性というのは、十分以内で来るわけでありますから、その間、防衛出動の場合の安保会議、閣議を経てということになるとこれは可能性が全くなくなる、そういうふうに、もう相手のミサイルの攻撃を受けた後になってしまう可能性が大でございます。したがいまして、そういうことはきちっと今の段階からいろいろな意味で考えておかなきゃいけない。
 
その場合の問題点として、やはり判断するという問題、それからそれをシビリアンコントロールという要素でどういうふうに考えていくか。それは決断と責任の問題になりますけれども、そういうシビリアンコントロール、責任論ということも考えながら、きちっと運用体制を検討しておかなきゃいけない、できればやはりそういう体制をつくって法制化していくことが安心のもとになるのではないか、そういう意味でワシントンでは話をいたしました。

武正委員 
まさに決断と責任というお話でございまして、これは後ほどの潜水艦事案でも出てくるところでございます。
 
海上警備行動が、要は閣議を経ずに、安保会議も経ずに、官房長官から首相の承認を得れば発令ができる、こういうような体制が整備されていたにもかかわらず、三時間も経過した。まさに、今回のミサイル迎撃、防衛出動、閣議を経ずに法改正をということもやはり同じようなことが言えるのではないか。その前提として今回の潜水艦事案は大変参考になってくるというふうに思います。
 
ただ、このミサイル迎撃については、まず七分から十分というお話でしたけれども、やはり、この間もございましたように、ミサイルへのエネルギー充てん、それを事前に察知する等、あるいはミサイルの移動等、事前からそれなりの、いろいろとこれは米軍の偵察衛星等からの情報もあるといったこともいろいろ考えていくと、まだまだいろんな形で、シビリアンコントロール、念には念を入れているということの、それこそ今長官がおっしゃったように、あるいは同僚委員も言っておりますように、私は、本委員会なりあるいは国会での議論、この点をもっともっと深めていく必要があろうかと思いますので、ぜひ防衛庁、政府からの説明責任を果たしていただきたいというふうに考えるわけであります。
 
ラムズフェルド国防長官は、まず配備、後で改良するといった持論の持ち主というふうに聞いているんですけれども、やはりこれは米側での指摘で、二〇〇二年末以来、いわゆるミサイル迎撃の迎撃実験をしていない、もう二年間していないということで、それこそ、MITのルイス教授の記事も出ておりましたが、運がよければ迎撃できるかもしれない、こういった指摘がある中でのMD導入。私は、やはりもっともっと日本の防衛、安全保障としてしっかりと考えていくべきではないかなと。昨年の閣議決定の見直しも、改正も視野にというふうに私は考えるところであります。
 
そこで、今回の防衛庁長官のワシントンでの会談でこういったことも言っておられます。いわゆる米軍再編について、特に沖縄の負担軽減に十分配慮してほしい、国内外への移転が考えられると言っておられますが、そもそもSACO合意というのがもう八年前である、それこそこれはSACO合意で、沖縄の負担軽減ということであのときにやるべきであって、ここで米軍再編に乗ってやろうというのは、やはり日本政府の怠慢、そのそしりをやはり免れ得ないというふうに私は考えるんですね。この点について、どうでしょうか、どのようにお考えですか。

大野国務大臣 
日本政府は、あらゆる機会をとらえて負担の軽減ということを訴え続けております。しかしながら同時に、この表裏一体をなしているのは、日本の防衛についてアメリカの存在という抑止力が落ちちゃいけない、こういう問題があるわけでございます。当時は当時として、精いっぱい沖縄の負担の軽減ということをやった、それがSACO合意であると私は信じております。
 
ただ、新しい時代、特に安全保障環境が世界的に変わったということと、もう一つは、軍事科学技術力が大幅にふえたという、この面をもってすれば、機動力が大変高まっているということも見逃せない事実でございます。機動力の高まりによって、もしこの負担の軽減ということができれば、それは当然やっていかなきゃいけないし、これは、全体のアメリカ軍の再配備でございますから、再配備全体の中で何とか沖縄を中心とする負担の軽減をなし遂げていきたい、こういう思いでそういう話をしているわけであります。

武正委員 
きょうは民主党の外務・防衛の部門会議で軍事アナリストの小川和久先生に来ていただきましたが、そのときも、SACO合意のときに、今回、普天間のヘリ墜落もございました。あのときにヘリが普天間で飛べないようになぜできなかったのか、まずそれを先にすべきではなかったのか、これはやはり政府も怠慢であり、この国会としてもやはりそのそしりを免れ得ないというような御指摘もあったわけであります。これは、やはり私は重く受けとめるべき指摘だというふうに思っておりまして、私は、この沖縄の負担軽減、米軍再編と絡めていこうという政府の姿勢、理解しますが、本来はやはり八年前にやられなければいけなかったというふうに考えるわけでございます。
 
それで、ちょっと外務副大臣にお聞きしたかったんですが、時間の関係で次の質問、飛ばしまして、沖縄のことが続きますので、防衛庁長官にお聞きしたいんです。
 
資料の十六、十七、十八ページに、ようやくいただきました米軍の沖縄ヘリ墜落事故の和訳、法務部長の今回の調査報告書に対しての承認というか、最後の一番大事なコメントですよね。これは、米海兵隊第一海兵航空団のカーソン中佐が調査報告書五八三〇を出した、分厚いものを出して、それに対して十月一日付の法務部長のコメントでございます。これは、三ページ、最後につけました。
 
それで、この十八ページ、一番最後のページですが、十四番、「地上にいる民間人への危険を最小限とするため、自らをより大きな危険にさらすことを知りつつ行った彼らの決定及び行動につき、本事故に関係する搭乗員は称賛される。」ということですね。
 
これは、当初から新聞記事等で報じられておりました。要は、運転がうまかったとか、うまく避けてうまいところに落ちたとか、そういったことがあって、みんな、けしからぬ、何だあの発言はということで、再三再四指摘をしてきたわけです。長官、一番最後の十四番の上から二行目なんですね。「本事故に関係する搭乗員は称賛される。」と。
 
これが調査報告書の評価として法務部長名で添付されて、防衛施設庁さんが責任をやっておられる日米合同委員会事故分科委員会の合同検証もやりませんので、これが唯一の、唯一と言っていいほど大事な今回の同型機ヘリの飛行再開の根拠とされた資料です。
 
この運転が称賛される、飛行が称賛される、こういったことが書かれていることを、私はやはり日本政府として、これはいいんだろうかと。日米刑事犯罪、その管轄権の問題でも主権侵害ということで、一体ここは独立国なのかということをあのときみんなが疑問に思った。そして、こういった発言がたびたび出て、みんなが怒った。そして、今回、調査報告書にまたこうしたことを書いて出してくる。
 
防衛庁長官、このことをどうお考えになりますか。

大野国務大臣 
まず、この書簡でございますけれども、これは、ティーセンというのは上司ですか、上司が書いたものであります。ティーセン、アメリカ軍の上司ですね。アメリカ軍の上司が書いたものであります。上官ですね。
 
そういう意味で、これは上司が書いたものとして受けとっていかなきゃいけない、これは私そう思います。それから、県民感情への適切な必要があるという意味ではどうかなという御議論もあろうと思いますけれども、この点は、上司、上官が書いたものである、こういう受けとめ方を私はしております。
 
御指摘の箇所の直前の段落においては、起こるべき事故ではなかったということも書いてあろうと思いますし、適切な指導監督により防げたものであるということも述べられているようでございます。そういう意味では、事故の深刻さについての認識が示されておる。御指摘の記述があったからといって、これは上官の意思であって、これは上官の意思として存在しておりますから、これを否定するわけにはいきませんけれども、事故の原因それ自体については、別途、別の角度から考えていかなきゃいけない、当然のことであります。
 
事故の重大性が、これがあったからといって否定されたり過小評価されたりするような問題ではない。我々は、この書簡はあくまでも上官の書いたものとして認識していかなきゃいけない、このことは申し上げたいと思います。

武正委員 
今のこの資料を、十六ページを見ていただきたいんですが、これは法務部長名で、カーソン中佐の調査報告書についての第一承認と。要は、調査報告書が正しいかどうかをこの人が評価しているんですよ。いろいろ勧告は、これは不適切だと、例えば十七ページの、勧告三は不承認。これは、整備をした人が協力してくれたから称賛に値するものであり、品性を示すものだけれども、免除しちゃまずいと。三名のうちの一名ですね。当たり前ですよね。不適切であると。
 
こういったことをこの人が評価して調査報告が、米海兵航空団におけるいわゆる内部監査ですよ、それの評価でこれが出て、確からしさということで出てきている。その確からしさを与えている、評価を与えている法務部長が、このような称賛すべきであるということを書いていることを、日本政府として、先ほど、問題ないということでよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 
よく読ませていただきますと、「自らをより大きな危険にさらすことを知りつつ行った彼らの決定及び行動につき、本事故に関係する搭乗員は称賛される。」と。
 
これは、事故原因と切り離して、搭乗員の姿勢を述べたものだと私は理解しております。事故原因は事故原因としてきちっと把握していく、当然のことであります。その点については私は毅然とした態度で調査を進めてもらいたいと思いますけれども、ただ、搭乗員は搭乗員として、この事故が起こった際にきちっと対処したな、これが上官の評価である、こういうふうに理解しておる次第でございます。

武正委員 
これが日本側の今回の事故原因、再発防止の最大の証拠というか資料になっているんですね。それで、事故分科委員会で、今これをもとに日米合同委員会の勧告をつくっておられるわけですよ。そして、事故分科委員会では、省庁の専門家は現場あるいは機体検証に行かせておりますが、昭和五十二年F4ファントム横浜墜落のときのように、民間の専門家を交えた日米合同検証もやらずに済ませているわけなんですね。
 
これは、原因究明は、整備不良だということになっての資料ですね。だから、運転がうまいと書いてもいいじゃないかと防衛庁長官は言われますが、本当にそうなんでしょうか。我々からすれば、原因究明を、本当に整備不良かどうかというのを確かめるための資料ですね。
本当にそうなのか、整備不良なのかとこっちがある面疑ってかかるというか検証しようというのが日本政府の立場なのに、いや、もう原因究明、原因は整備不良だから、こうやって運転がうまいと書いたっていいじゃないかと、それを日本政府の防衛庁長官、事故分科委員会の担当責任者、最高責任者が言っていいんでしょうか。私は甚だ疑問に思います。これはもう答弁は結構でございます。
 
さて、極東条項見直し発言撤回についてもお伺いしたかったんですが、ちょっと時間がないので、外務副大臣。
 
外務省が見解を出したと。極東条項は、「日本と極東の安全に資する実態があれば問題ない」、外務省の見解というものが新聞にこう報じられているんですけれども、これは外務省の見解として事実なのか、あるいはそうした見解をもうまとめられておられるのか、あるとすれば、それをお答えいただきたいと思います。

逢沢副大臣 
私も、十一月十二日の朝日新聞を見まして、大変びっくりをしたわけであります。確かに十二日の朝日の朝刊に大きな記事が出ておりました。私も、その記事が出たということはその段階で承知をしたわけでありますが、ただ、米軍再編をめぐる外務省の見解がこうこうこういうふうな形でまとめられたといったような事実は、新聞には報道されておりますけれども、そういった事実は省内では全くない、当省として関知するところではないということを明確に申し上げておきます。

武正委員
私は、この二年間、あるいは昨年のブッシュ声明、グローバルな軍事体制の見直し、そして日米当局の担当者が米軍再編の協議を進めながら、国会でいわゆる説明責任を回避してきたということは、甚だ問題が多いというふうに思っています。かえって日米安保体制の不信を招いているのではないかというふうに考えるわけですね。
 
これは、防衛庁長官、これまでも前任の防衛庁長官を初め外務大臣にたびたび国会で、米軍再編はどうなんですか、どうなんですか、協議はどうなんですかと言っても、なかなかその内容を明かしていただけません。こうした対応でずっと来ていること、いかがでしょうか。
 
私は、もっとオープンに、国会に対して説明責任を果たしていくと。先ほどの、当初の武器輸出三原則の問題、あるいはミサイル防衛に関しての防衛庁長官の「「防衛出動」閣議経ずに」というようなことも含めて、とにかく議論を国会でオープンにしていくためには政府の説明責任は欠かせないと思うんですが、この二年間、米軍再編についての説明責任が欠けていたという御認識、あるいはそのことはやはり問題だというふうにお考えになるのかどうか、お答えいただけますか。

大野国務大臣
お答えのポイントは、説明責任は絶対必要であるし、これは果たしてまいるつもりでございます。
 
ただ、トランスフォーメーションの問題について申し上げますと、まず、いきなり個別具体的な話が出てきて、それについてどうかということになりますと、これはいろいろな意味で問題であります。したがいまして、まず安全保障に対する戦略対話が必要である、あるいは日米両方の役割、任務についてきちっと議論しようじゃないか、こういうことで、個別具体論と同時にそういう問題について今議論している最中でございます。
 
最後の、個別具体的な問題でありますけれども、何といっても、安全保障問題、日本の防衛、安全保障というのは、地元の皆様の御理解、御協力がなければできるわけありません。したがいまして、個別具体論のところにつきましても、あるいは安全保障対話につきましても役割分担の問題につきましても、すべてでそうでありますけれども、私は説明責任を果たしてまいりたい、このように思っております。
 
ただ、問題は、個別具体の問題につきましては、一つの地域の皆さんときちっと話し合いをしていかなきゃいけない。まだその点についても具体的な案ができているわけではありません。具体的な案ができる前にそういう議論を始めますと、もう本当に収拾がつかなくなる。
したがって、そういう問題については、今説明を控えさせていただいているわけでございます。そういう意味で、私は、ラムズフェルドに会いました際も、地元の皆様の御理解、御協力が必要なので、そういう御理解をいただくためには、やはり個別的、具体的な問題につきましては時間がかかりますよ、このことは申し上げてまいりました。
 
そういうことで、今申し上げましたように、もちろん安保対話、それから役割分担、個別具体的な問題、すべて私は説明責任を果たしてまいるつもりでございます。

武正委員 
それでは、ようやく潜水艦の事案に入らせていただきますが、台湾の陳水扁総統から日米両国政府に通知をした、台湾が今回の潜水艦事案をいち早く察知をして通知をしたんだという報告がありますが、これは事実かどうか、防衛庁、外務省。――外務省から。

逢沢副大臣 
台湾の陳総統が、先般の潜水艦の事案について、実は台湾側が事前に情報を得ていた、そのことは日本側に通報した、そういうことを発言されたということは報道で知ったわけであります。しかし、政府として、そのような事実はないということを申し上げておきたいと思います。

■今津副長官 
防衛庁としては、そのような事実は全く承知いたしておりません。

武正委員 
承知しておりませんというのは、なかったということですか。(今津副長官「はい」と呼ぶ)
 
続いて、先ほど、MD閣議決定、潜水艦事件とのそごはないかというのは、これは同僚委員も指摘をしておりますので、ちょっと質問を飛ばさせていただきます。
 
ただ、やはり、例えば海上自衛隊については、MD導入によって規模の縮小を図る云々かんぬんがありますので、先ほどちょっと私申し上げましたが、防衛庁長官、昨年のその閣議決定見直し、改正、こういったことが私は必要ではないかと。陸自の四万人削減ということで、きょうは陸自一万人にというような報道も出ていましたけれども、どうなんでしょうか、MD導入ありきということが、いろいろと本当によいんでしょうか。この点、防衛庁長官、どうですか。

大野国務大臣 
御質問は、MDを導入したために予算上他に影響しているではないかというふうにとらえてよろしゅうございますか。(武正委員「はい」と呼ぶ)
 
日本の防衛というのは、やはり多岐多様な脅威に対して対処していかなきゃいけない、このことはもう武正先生十分御認識いただいていると思います。ミサイルという脅威に対してどう対処するか、それはミサイル防衛ということしかありません。それからまた、島嶼部あるいはテロに対してどう対処するか、あるいは潜水艦に対してどうやっていくか。この新しい安全保障環境の中で、いろいろな多様な脅威が出てきているために、これはもう多様な対応をしていかなきゃいけない。これはまさに多機能弾力的な、しかし実効的に対処していかなきゃいけない、こういう問題で、もう日本の防衛、安全保障問題、極めて新しい歴史の曲がり角に来ていると言っても言い過ぎでないぐらい新しい発想法でやっていかなきゃいけない。
 
その中で、ミサイルということを日本の防衛問題、安全保障問題としてどういうふうにとらえていくか。やはり私は、ミサイル防衛、これはもう本当に一瞬にして日本国が攻撃されるわけでありますから、きちっと対処していかなきゃいけない。そのためにいろいろな工夫をしてやっていくべきである。これがもう一言で、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、多機能弾力的な防衛構想ということで申し上げているわけでございます。
 
私は、ミサイル防衛を決定した、これは日本として正しい方向である、このように思っております。

武正委員 
ちょっと潜水艦の方にまた移らせていただきますけれども、先ほど来、防衛庁長官、六時半に秘書官から連絡を受けた、八時四十五分までなぜ二時間十五分も海上警備行動発動を要したのか、総合的に反省、総合的に検証というようなお話でございましたが、ちょっとそこら辺、ずうっと質問を飛ばさせていただきます。先ほどもう同僚委員から指摘がございますので、重複を避けます。
 
そこで、官房副長官、お控えをいただいておりまして、ありがとうございます。十一月十二日、外務委員会で、私のやはり今回の案件の質疑に関して、やはりお手元に資料で内閣官房のフローチャート、十五ページそれから十四ページ、十四ページの方がわかりやすいですね。
これを指し示しまして、内閣総理大臣、官房長官、官房副長官への速報、報告、指示、こういったものが非常に時間がかかった、そういった指摘をしたときに、そこに報告があって指示がある、ある場合もあるというふうに書いてあるということは、ない可能性もあるというふうに読めるわけでありますが、きょうは、お手元にこれまでの閣議決定と、それから細目について用意をしておりますので、どこに、危機管理監から政治家であるお三方、総理大臣、官房長官あるいは官房副長官、まあ事務方もいらっしゃるのかもしれませんが、報告、指示、やらなくてもいいときもあるんだよというのが書いておられるんでしょうか、御指摘をいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 
お答え申し上げます。
 
先日は、ちょっと時間がなくて、詳しく御説明申し上げられなくて、先生お示しのチャートに基づいて御説明申し上げたわけでございます。
 
お示しの資料、このチャートの中の速報という部分につきましては、お配りいただいた緊急事態に対する政府の初動体制について及びその後ろに細目が配られておりますが、そこに明確な規定があるわけではございませんけれども、関係省庁等から緊急事態に関する情報を入手した場合には、内閣情報調査室が速報を第一義的に行うということになっております。
 
その初動体制については、閣議決定の「記」の1の(3)でございますが、「内閣危機管理監は、緊急事態に関する情報を掌握し内閣総理大臣及び内閣官房長官へ報告するとともに、必要な指示を受ける。」こういうふうに相なっております。

武正委員 
だから、必要な指示を受けるというのは、受けなくていい場合があるということでしょうかということを聞いたんですが。

■杉浦内閣官房副長官 
総理大臣及び官房長官は、必要な場合には指示を行うということでございます。

武正委員
必要でない場合は指示を行わないということですか。

杉浦内閣官房副長官 
今までの例では、過不足なく指示が行われていると承知しております。

武正委員 
ただ、今回、第一報が八時半に首相のところに行っていますね。先ほどすぐ連絡をするんだということでしたけれども、三時間後に首相のところに行っているんですよ。ちょっと先を急ぎます。そこで、お手元の初動対処マニュアルなんですけれども、それぞれちょっと比較をしていただきたいんですね、細目と。
 
三ページの1の(3)、「官邸連絡室を設置」ということで、今行われているものですね。「内閣危機管理監は、情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整を集中的に行う必要がある場合、官邸連絡室を設置する。」そして、三行飛んで、「事態の推移に応じ、」「対策室に改組し、」とあるんですね。
 
これは平成十年につくった初動対処マニュアルなんですが、十二ページですけれども、5番の(2)、同じようなところなんですが、「内閣危機管理監は、緊急事態等に関する情報を収集整理し、官邸内の報告・連絡に当たる必要がある場合、」官邸連絡室を設置する。さっきの「情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整を集中的に行う必要」、今はそうなってしまうんですが、非常にハードルが高くなった書きぶりですね。
 
同じく十二ページ5の(5)、これはどうやったら対策室に変えられるか。今回、一時間二十分、連絡室から対策室への昇格がおくれたんですね。これを読みますと、「内閣危機管理監の判断により、官邸連絡室を官邸対策室に改組する。」ところが、今のものは、さっき読みましたが、三ページ1の(3)、「事態の推移に応じ、」と。つまり、「内閣危機管理監の判断」から「事態の推移に応じ、」ということで、そこで責任の所在もあいまいになっているんですね。
 
一方、官邸対策室を見ますと、十一ページ5の(1)ですね、「緊急事態等に対する初動対処を行う必要がある場合、」今回緊急事態なんですね、いわゆる領海侵犯は。このことは資料にも出ておりますけれども、それがやはり、四ページの「官邸対策室」、3ですね、「内閣危機管理監は、緊急事態に関し、情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整、政府としての初動措置の総合調整を集中的に行う必要がある場合、官邸対策室を設置する。」と。さっきの「緊急事態等に対する初動対処を行う必要がある場合、」ということから、やたら書きぶりがふえてしまっている。
 
私は、やはり危機管理体制というのはシンプルなのがいいというふうに思うんですね。初動は大変混乱していますので。それがこのように複雑になっているだけでなくて、危機管理監も実は判断が下せない、責任の所在をあいまいにしているということで、私は、ここに実は今回の海上警備行動がおくれた原因があるのではないかというふうに考えるんですが、防衛庁長官、どうでしょうか。

大野国務大臣 
問題を制度としてとらえるか、それとも運用面でとらえるか、こういう問題の御指摘かと思います。
 
今、危機管理監の組織、これは制度の問題ですが、もしそういう面で反省するところがあれば、やはり反省していかなきゃいけない。あるいは海上警備行動というのも、先ほど議論が出ましたけれども、危機管理という面でとらえていくのかどうか、こういう問題も出てこようかと思います。
 
いずれにしても、もう少し勉強させていただいて判断していきたい、このように思っております。

武正委員 
官房副長官、どうですか。

右杉浦内閣官房副長官 
今の点は、新官邸ができまして、下に危機管理センターができた、そこへ情報が集中することになった事態を受けて改正したものでございますが、必ず連絡室を設けて対策室に格上げするんだというふうになっているわけでもございません。いきなり対策室を立ち上げた場合もございますし、危機の内容によって、まず情報を集める連絡室からという場合もございましたし、地震のようにはっきりしている場合には対策室ということでやった場合もあるわけでございまして、御指摘の点、制度がこうなっているから対応がおくれたのではないか。私どもは、対応は必ずしもおくれたとは思っておりませんけれども、こういうふうになっているからどうこう、おくれたというふうには考えておりません。

武正委員 
先ほど長官は、とにかく反省もしなきゃいけない、検証もしなきゃいけないということでございますが、やはり私は、初動の段階で危機管理監も責任から外れている、要は、責任の所在がよりわからなくなっている、ブラックボックス、官邸がですね。
 
私はやはり、官房長官、官房副長官、首相、これが最初に速報が行って、指示がない場合もあるじゃなくて、ちゃんと指示する、先のその初動の段階で判断をかむ。まして危機管理監も判断にかまなくなっている、ここが問題だと思うんですね。私は、政治家がやはり判断にかむというふうに思うんですが、最後、長官、いかがでしょうか。

■大野国務大臣 
繰り返したお答えになりますけれども、やはりシステムがどうこうという問題と運用がどうこうという問題、二つあると思うんですね。運用の改善という面から即応性ということを考えることもできるはずであります。
 
それから、システムがどうかというと、私、やはりシステムについては勉強しないと、いきなりシステムがどうのこうのという話はしかねます。少し勉強させていただきたい、このように思います。

武正委員 
以上で終わります。ありがとうございました。

top