国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2005年7月1日 【外務委員会】

武正委員 
民主党の武正公一でございます。二条約について質疑を行わせていただきます。
先ほども大谷委員が指摘をいたしましたが、まずは、このアスベストについての被害をお伺いしたいということで、きょうは厚生労働政務官もお見えでございます。
 
早速でございますが、この尼崎の被害の実態、これについて御説明をいただくと同時に、特に悪性中皮腫対策について、具体的に治療の現状と政府としての取り組みはどうなのか、これを続けてお答えいただきたいと思っております。
 
この悪性中皮腫については、その原因の八割が石綿粉じんであると言われていること、悪性中皮腫対策は石綿関連疾病対策の中核に位置づけられるものであり、また悪性中皮腫は死亡率も高く、発症二年後の生存率三割、五年後でわずか三・七%という調査結果もあるということでございます。
 
今回、テレビでも、二十年、三十年たって発症するとか、あるいはこれは時限爆弾を抱えているようなものだとかいう、こうした証言というかコメントを尼崎の工場周辺の方も述べておられます。
 
先ほど来、なぜこのILOの会議から二十年たって国会に本条約が提出をされているのかということでるるやりとりがございますが、まず、厚生労働省としての今回のアスベストの被害状況の実態の把握、そして今の悪性中皮腫対策について、政務官から御答弁をお願いいたします。

藤井大臣政務官 
お答え申し上げます。
先ほど大谷委員からも、この質問に関係してやりとりがございました。
 
まず、条約の締結から時間がかかった件については、これは、外務大臣からも御答弁ありましたし、我が省の政府委員からも説明させていただきましたが、私どもとしましては、このアスベストの毒性というもの、そもそも条約の採択に至る前に毒性がどうかという話が最初に出ておりまして、その指摘がありましたのは、国際機関におきましては、例えばILOにおいてなされたのは昭和四十六年、がん原性物質である、アスベストは毒性がある、こういう指摘を受けたわけです。
 
それを受けまして、私どもとしては、四十七年に、先ほどの大谷委員のときに私ども政府委員から説明したとおり、国内におきましては、条約批准に先立ちまして、必要な毒性対策、労働衛生対策というものを始めていったわけでございます。それが四十七年、そしてその後、五十年というふうに、漸次労働衛生の問題は対応してまいりました。
 
ですから、条約批准そのものが時間がかかったことにつきましては、外務大臣から御答弁なさったように、やはり完全に、提案されている条約に国内法制がフィットするまで、その準備にある程度時間がかかったものだろうと思っておりますが、厚生労働省として、労働安全の問題に対しての対応というのは、この条約の批准を待たずして具体的には行われたのが実態でございます。
 
先生から御指摘ありましたように、このアスベストというのは、いわゆる非常にリスクの高いといいましょうか致死性が高い病気でございまして、しかも潜伏期間が長い。そして、治療法が、はっきり言いまして非常に少ないといいましょうか、ないに等しい状況でございまして、これからも医療対策を講じなければいけないと私ども考えておりまして、それについては全力を挙げたいと思っております。
 
そして、工場におきます状況につきましては、労務災害の問題、労災認定につきましては、現在、指摘がありましたクボタから示されているものにつきましては、労災認定を行ってその対応をとっておりますし、現在申請中の案件もございまして、これにもできるだけ早くその判断をさせていただきたいと考えておりまして、必要な対策をとりたいと思っております。
 
いずれにしましても、この問題、潜伏期間が長うございますし、また、世界的にこの問題のリスクというものについては、特に中皮腫に対するものとしては非常に因果関係が明らかになってきておりまして、この疾病対策というものについて全力を挙げたいと考えております。
以上でございます。

武正委員 
治療対策はないというお話でございまして、ただ、厚労省は昭和四十六年からわかっていた。ただ、条約の批准に結びつかなかったのは、国内法制が未整備だった。先ほど来の御答弁では、代替製品が補完されない、こういうような理由がございました。
 
また、今、労災でしっかり認定するのだというお話がありましたが、周辺住民も労災で認定できるんですか。

藤井大臣政務官 
この件につきましては、法案を所掌しております環境省とも十分連携をとりたいと思っております。

武正委員 
いや、周辺住民は労災の対象にならないでしょう。

藤井大臣政務官 
周辺住民そのものにつきましては、直接的な労災の対象になりません。ですから、先ほど御答弁申し上げましたように、環境省とも綿密な連携をとって対応をとりたい、かように考えております。

武正委員 
周辺住民は労災対象にならないということでありますので、治療対策もない、まして周辺住民に対しては環境省と協議の上ということで、厚生労働省としては今の時点で明言ができない、こういったことでございます。
 
さて、そもそも一九八六年の第七十二回ILO総会で採択されたんですけれども、今回、二十年近い歳月が条約提出までかかっている。先ほどからいろいろと御答弁がありますが、例えばこれは、採択されたときに何らかの報告、例えば国会での報告、あるいは、そもそも私はやはり閣議報告などがあってしかるべきというふうな案件だと思うんですが、こういったことはあったんでしょうか。

町村国務大臣
ILOに関して言いますと、これは憲章で、憲章第十九条の五によりまして、ILO総会で採択された条約については、総会の会期終了後原則として一年以内に、各加盟国の権限ある機関に提出をすることということが義務づけられております。
 
日本においてこの権限ある機関というのは国会ということになっておりまして、この条約につきましては、六十一年六月四日から二十五日まで開催された国際労働機関第七十二回総会において採択され、その一年以内ということで、昭和六十二年、翌年の五月二十二日に閣議決定した上で、同日、国会に提出をしているところでございます。

武正委員 
国会に提出というのは、具体的にどういうやり方でしょうか。閣議決定はわかるんですが、国会に提出したというのは具体的にどういうやり方でしょうか。

町村国務大臣 
国会報告の内容でございますけれども、これは報告書において「この条約の内容は、労働安全衛生法その他の関係法令によりおおむね実施されているところであるが、なお若干の問題点もあり、更に検討を加えることといたしたい。」という政府のコメントを付して、その条約そのものを国会にお出ししたということでございます。

武正委員 
条約を国会にお出ししたというのは、ちょっとわからないので説明をしていただきたいんですが、条約は今回、この国会に承認を求める、批准を求めるということで、二十年たって初めて提出をされているというふうに理解しているんですが、今、もう十九年前に条約は国会に出したという御答弁でしょうか。

町村国務大臣 
提出の具体の手続は、報告書を関係省、外務省及び当該報告書に関係のある省が協議をして作成し、その共管で閣議決定を求めた上、内閣総理大臣から両院議長あて提出をするという形をとっております。

武正委員 
両院議長あてに条約は提出されたということでよろしいんでしょうか。

町村国務大臣 
報告書が総理大臣から議長あてに提出をされたということでございます。

武正委員 
その報告書、どんな報告書なのか、もう一度重ねて御答弁いただけますか。どういう報告書が議長あてに提出されたのか。
 
また、それは議長あてに提出された後に、例えばそれぞれの委員会に配付をされるとか、国会議員に配付をされるとか、そういうことがあったのかどうか、これもあわせてお答えをいただきたいんですが、まずは、どういう報告書が議長あてに提出されたのか。

町村国務大臣 
今私の手元にその現物があるわけでございますが、これは昭和六十二年五月の日付で、一九八六年、国際労働機関第七十二回総会において採択された条約及び勧告の訳文が約三十五ページにわたったものでございます。それに頭書きがついておりまして、この報告書を提出するということで、先ほど私が申し上げました、さらに検討を要する点が若干ありますということが頭について、後は、その条約及び勧告文そのものの訳文が総理大臣から議長に提出をされた。
 
提出した後、議長がどういうふうに、今度は各国会議員にどうなさっているかというのは、これは国会の話でございますから、必ずしも私は知り得るところではございませんし、私自身も二十二年国会におりますけれども、こういうたぐいのものが配付されていたかいないか、不勉強でございまして、もしかしたら配付されているのかもしれませんが、ちょっと、余り不正確なことをこの場で申し上げるのは、恐縮ですが、差し控えさせていただきます。

武正委員 
今後検討を要するということで、首相から両院議長に付された、そして十九年たって、今回提出をされているわけでございます。
 
今、二十二年在籍をされている外務大臣も、寡聞にして聞いたことがない。私もちょうど丸五年でありますが、こうした条約が手元に、今回このように国会に承認を求めるときには配られますが、今までそうした国際会議などで署名をしてきた、あるいは国際会議で採択をされた条約が国会議員に配られたというのはないというふうに私も思います。
 
ですから、これは国会として、あるいはまたこの条約をつかさどる外務委員会、あるいは国際会議のさまざまな協定をつかさどるこの外務委員会の委員会としての取り組みとして、やはり何らかの工夫が必要であろうというふうに考えるわけでございます。

町村国務大臣 
不勉強で恐縮でございましたが、今、事務方に聞いてみますと、このILO関係については、国会に報告をすると条約に書いてあるものですから、議長に提出された後、議長は、衆参のそれぞれの事務局から各議員に対して事務的に配付される。
 
確かに、配付資料といって、私もたまに議員会館の机の上にどさっと資料が積んであることがあった記憶がございますが、それを一々見なかっただけのことでありまして、このILOの関係については国会に報告をするということになっておりますので、衆参の事務局から各議員の会館の方に事務的に配付をされているということのようでございます。

武正委員 
国会に報告をするというのが、これは後で資料でいただければ結構でございますが、多分全部国会に報告するというふうに、もしなかったとすれば、なおのこと、十九年前、二十年前のILO会議でのこの採択が重い課題を日本の国会に突きつけて、また今、全国会議員に十九年前配付をされているということであればなおさら、十九年もこのことを看過してきた国会としても、その責任も問われるというふうにも思われるわけであります。
 
厚生労働政務官、お時間、もしあれでしたら、どうぞお引き取りいただいて結構でございます。このアスベスト対策については、環境省とともに最大限の御努力をお願いしたいと思います。
それで、私、前々回の外務委員会で指摘をさせていただいて、理事会で御協議をお願いした件がございます。それがお手元に資料として配付をされました、理事会での配付資料でございます。
 
行政取り決めについてということで、六月三日の外務委員会での私の質疑関連ということで、外務省が外務委員会理事会に御提出をいただいております。
 
行政取り決めとはということで、昭和四十九年のいわゆる大平三原則、大平外務大臣答弁が載っておりまして、行政取り決め最近の例と最近の締結数、国会承認条約は毎年十本ぐらい、あるいは一けたのときもあります、五年間で六十七本。ただ、行政取り決めは毎年六百本から七百本、合計三千五百十本ということでありまして、行政取り決めの締結についての公表は、すべてにつき、その全文または概要を官報等にて公表している、こういう外務省の御説明がありまして、理事会では、これをもって武正にちゃんと伝えなさい、そういうような理事会での話だったわけであります。
 
私とすれば、これでは納得できないということで、またこの点を指摘させていただきたいというふうに思っております。
 
きょうは防衛庁、今津副長官もお見えでございますので、昨年十二月十四日のミサイル防衛システムに関しての包括的に協力する枠組みを定めた交換公文並びに十七日締結の了解覚書、MOU、大野防衛庁長官とラムズフェルド米国防長官との間、この二件について、それぞれ閣議決定あるいは了解しているのかどうか、これについて外務省、防衛庁、それぞれお答えいただけますでしょうか。
 まずは、十二月十四日の交換公文について、これは交換公文は外務省ですよね。

町村国務大臣 
日米間の相互防衛援助協定に基づく弾道ミサイル防衛協力に関してアメリカとの間で書簡を交換することにつきましては、昨年の十二月十四日、閣議決定がなされているところでございます。

今津副長官 
防衛副長官の今津寛です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
本MOUは、他のMOUと同様に、閣議決定や国会報告を行ってはおりません。
なお、今、町村外務大臣からお話がありましたけれども、昨年十二月に、日米弾道ミサイル防衛協力に関する交換公文を締結いたしましたけれども、その中の実施細目取り決めといたしまして日米防衛当局の間で作成をいたしました文書でありまして、交換公文締結の閣議決定に当たって、その参考資料として要綱を閣議に提出させていただいております。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

武正委員 
外務大臣、交換公文について閣議決定されたというふうにおっしゃったんですが、了解覚書は閣議決定していないということでございますが、官邸のホームページで十二月十四日周辺を見てみても、この交換公文について案件として載っていないんですけれども、これは私の見間違いでしょうか。官邸のホームページに記載がされていないんですけれども、ちゃんと記載されているということでよろしいでしょうか。

町村国務大臣 
官邸ホームページがどういうものを載せているのかいないのか、私もそれは全貌をわかる立場にはないので詳細はよくわかりませんけれども、閣議の時点で案件の内容が秘扱いというために一定期間不公表とするという、いわゆる件名外案件と私ども称しておりますけれども、そういうようなものがあるのは事実でございます。
 
したがって、この件名外案件については、このホームページの一覧表の中には掲載をされていないということはあるんだろう、こう思います。
 
御質問の交換公文につきましては、書簡の交換が行われる時点までは秘扱いということで、これは件名外案件ということでございます。
 
そういうことでありまして、では、いつオープンになったのかということについては、これが大分、ちょっと時間がたっていたようでございますが、本年六月三日付の官報において、昨年十二月十四日の書簡の交換公文が行われた旨、それから双方の書簡の全文が告示をされているところでございます。

武正委員 
つまり、このミサイル防衛システムに関して包括的に協力する枠組みを定めた交換公文は秘扱い、ただ、それは交換公文を締結するまでということでありますから、十二月十四日に交換公文を結んだわけですから、その時点で官邸のホームページに載せても何ら問題ないというふうに思うんですが、そのときに載せることもまずいということだったんでしょうか。
 
あくまでもその半年後にすべてを明らかにするようにという扱いということで、締結するまでマル秘扱いということではないということですか。

町村国務大臣 
十二月十四日の時点で、これはいわゆる資料の提供というような形で、外務省から、いわゆる記者クラブの張り出しの資料というようなことで、こういうことをやりました、中身はこれこれですという簡単な一枚紙が公表されております。
 
しかし、その官報告示がなぜ六カ月おくれたのかというのが委員の御指摘であろうと思います。
 これは、官報告示に当たりましては、この署名されたテキストの精査とか読み合わせ等、一定の日数を要するということのようでございます。
 
それにしても、なぜ六カ月かというのは、私も正直言って、一カ月、二カ月のタイムラグはある意味ではやむを得ないのかもしれませんが、六カ月というのはいかにも時間のかかり過ぎでありまして、さっき二十年はひどいと私は思いましたが、六カ月もちょっとまずいな、こう思いますので、今後、こういう遅滞が生じないように、できるだけ早くこうした官報告示等は行われるように努力をしていきたい、かように考えますし、官報告示ではなく、さまざまなこうした対外取り決め等について公にする努力というものは、引き続き、従来もやっているつもりでございますが、今まで以上にまた努力をしていきたいと考えております。

武正委員 
この交換公文については、いつの時点で外務省はオープンにされたんでしょうか。

町村国務大臣 
これは十二月十四日の署名でございますので、多分その日の夕方かあるいは夜、その日のうちに公表をしております。

武正委員 
それは交換公文全文ということでよろしいですね。

町村国務大臣 
全文がオープンになっておりますし、それに若干の短い解説というのは変でございますが、若干のコメントがついております。

武正委員 
ただ、この間の理事会での外務省の御提出の資料、今お手元に配っておりますが、国会に対する説明は、官報に掲示をされているから、それをもって済むんだという御指摘、御答弁、これが理事会であったわけなんです、すべてにつき、その全文または概要を官報等にて公表していると。
 
私は、今回この交換公文が半年たって官報に告示をされたという一点をもって、やはりこの交換公文を国会に提出するということがこの行政取り決めについてもあってもいい、あるべきだというふうに思うわけでございます。
 
先ほど外務大臣は、余りにも半年はかかり過ぎだ、何とかしたいというお話でございましたが、これについては、やはり、先ほども、今回の石綿関連の条約についての、十九年、国会議員全員に条約が配られていたにもかかわらず、国会としてもそれを放置していた、こういった責任が当時の国会にあった。
 
それは国会として、条約に対する行政の専権事項と憲法にうたわれていても、やはり諸外国で、アメリカ、イギリス等、さまざまな工夫をしております。アメリカあるいはイギリスでは、たくさんの行政取り決めがあるから、行政取り決めについては、例えば時間を別途外務委員会でとって、そのときには副大臣においでをいただいて質疑をするとか、いろいろな工夫をしております。
 
私は、この間委員長に求め、理事会で御協議をいただいて、こうして外務省のお答えがあったわけですけれども、今回の外交公文が半年たって官報に告示をされるといった一点をもっても、やはり国会として、外務委員会として、この条約の国会のかかわり方、交換公文の当委員会への提出等、もっともっと工夫があってしかるべきということを、再度理事会での御協議もお願いをしたいのでございますが、委員長、いかがでしょうか。

赤松委員長 
後日の理事会で相談をさせていただきます。

武正委員 
ありがとうございます。
それでは、続きまして質問をさせていただきます。
 
サマワについての、車列の爆弾破裂ということでございまして、これについて、おとといの当委員会でも、同僚委員からも、やはり、すぐの撤退あるいはこの十二月の十四日の期限切れ、これについてはどう考えているのかという質問があったわけでありますが、民主党も、岡田代表、川端幹事長、やはりサマワが非戦闘地域であるということはないんだということを民主党はずっと主張してきて、即時撤退を求めているわけです。
 
まさにそれが証明をされた今回の車列、路肩での爆発ということでありますので、やはり即時撤退、ましてや十二月十四日の期限切れということであれば、オランダ軍は半年前から撤退の準備をしていたということでありますと、その半年前の期限をもう既に過ぎている、こういったこともありますので、今ここで撤退の決断を政府としてしないということは、すなわち、また派遣を延長するというシグナルを出しているに等しいことになるわけでございます。
 
首相も、答弁の中で、これは記者会見ですか、自衛隊の活動地域は非戦闘地域だという状況が変わらない限り、できるだけの支援はしていきたいなどと、派遣延長をにおわせるこうした答弁になっている、あるいは記者会見になっているわけです。
 
外務大臣も、この総理の記者会見同様、サマワはこの車列路肩爆発があっても引き続き非戦闘地域であり、なおかつ、もう十二月十四日の半年前を過ぎていても、派遣延長しないということであれば今のタイミングでその決断をしなければならないんですが、そういった決断を今しなければならないというお考えがあるかどうか、二点お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 
委員御承知のとおり、イラクの復興、道半ばということでございまして、先般イラク国際会議がブリュッセルで開かれ、八十を超える国やら機関が集まりまして、私もその一員として参加をし、国際社会が一致して、イラクの政治プロセスの進展でありますとか、あるいは治安の回復でありますとか、さらに経済的な復興支援をみんなで支えていこうということで一致したわけでございます。
 
治安の関係でいいますれば、現在二十八の国々が部隊を派遣してイラク人の取り組みを支援するということで、日本もまた、安全に配慮しながら、自衛隊による人道復興支援活動をやっているという状況でございまして、今ここで日本が直ちに撤退をするという決断をする状況にないだろう、私はこう思っております。
 
なぜならば、国際社会が一致してやっているときに、ひとり日本だけが撤退を決めて発表するということは、私は、国際社会共通の努力に水を差すものだ、こう考えざるを得ないのでございます。
 
ただ、十二月十四日に基本計画が期限を迎えるというのもまた事実でございまして、これについてどうするかということについてでありますが、まだ現時点で方針を決めているわけではございませんけれども、これまでと同様に、日本が自主的な判断を行っていくということでございます。
 
その際、イラクの復興状況でありますとか、現地の情勢、政治プロセスの進展等々、いろいろな状況を総合的に勘案して検討していくということでございますが、今政府の方で直ちに方針を決めるという状況ではないだろう、かように考えているところでございます。
 
サマワの状況がどうなのかということでございます。
先般の事故といいましょうか、路肩で爆発物が爆発したという事件の詳細については、概要は大野長官から当委員会にもたしか御報告があったのかな、あれは参議院だったかな、失礼しました。一定の概要については発表いたしましたが、今、現地警察と我が方自衛隊の現場におられる皆さん方が情報交換をしながら、より詳細な概要についての把握に努めているというところでございまして、あの一事をもって直ちに非戦闘地域という前提が崩れたというふうに私どもは考えておりません。

武正委員 
アメリカから派遣延長の要請というのはあったんでしょうか。また、イギリスでも、あれはG8の外相会談がありましたが、そのときに国務長官からそういったものはあったんでしょうか。

町村国務大臣 
それぞれの会議あるいは会談の一つ一つの詳細についてお話をするということは差し控えるべきであろう、こう思っておりますけれども、より具体な形でアメリカから話が、例えば日米外相会談であったかということだけについて申し上げれば、ライス長官からはそういうお話はございませんでした。
 
また、アメリカとは密接な意見交換、情報交換をやっておりますから、イラクのことにつきましてもいろいろ議論はやっております。しかし、いずれにしてもそれは、アメリカ側の希望が示されることはあったとしても、これは前回も前々回もそうでございますが、日本政府が独自の観点から判断をする、自主的に判断をするということは、従前どおり、変わっていないわけでございます。

武正委員 
ちょうど二十八、二十九日と、おとといまで2プラス2の会議も行われているわけですね、審議官級協議、ワシントン。このときにもこうした話というのは出なかった、あるいはアメリカからの要請はなかったということでよろしいでしょうか。

町村国務大臣 
これも、会議の一々のやりとりについて一つ一つ申し述べるのは差し控えたいと思いますけれども、この審議官級協議はイラクを議論する場ではないということだけは申し上げておきたいと思います。

武正委員 
イラクを協議する場ではないけれども、イラクに関しては大変な関心を日米双方ともに持っている。しかも、この日米審議官級協議は、いわゆる米軍再編についての協議、また沖縄の基地負担軽減についての協議でございます。
 
この米軍再編についての協議というのは、すべからくイラクも含めた全世界的な米軍基地の再編成でありますので、イラクというものは当然、米軍のトランスフォーメーションの中には重大な位置づけがされているわけでございますので、米軍再編、トランスフォーメーションだからイラクは関係ないよ、こういったお答えは、私としてはやはり納得できないわけでございます。要は、なかったという御答弁というふうに理解をいたしました。
 
さて、昨年十二月、一年間の延長を国会閉会後に政府は決めたわけでございます。一年、十二月十四日、これで撤退をする、今当然そういうシナリオで、昨年十二月十四日、一年の延長をしたわけですが、撤退をするについては、いつその決定をしなければならないのか、また、いつからその準備をしなければいけないのか、これについて外務大臣、お答えいただけますか。あるいは防衛庁副長官、事前の御通告はありませんが、何かお答えがあればと思います。

今津副長官 
十二月の十四日もしくは十五日に撤退が完了するという意味ですか。(武正委員「はい」と呼ぶ)そういう意味であれば、もしその作業を、そうですね、やはり数カ月かかるというふうに思います、数カ月前から用意をしなければいけないと思います。

武正委員 
数カ月にもう今入っているということでよろしいでしょうか。あるいは、まだ入っていないというか、その数カ月も、いろいろ、数カ月というのは幅があるものですから。オランダ軍は半年前に撤退を決定しておりますが、いかがでしょうか。

今津副長官 
今、撤退ということは考えておりませんから、また検討もいたしておりませんから、一概に言うことはできませんけれども、その撤退の時期や方法によって変わってくるというふうに思います。

武正委員 
数カ月についてもまだまだ幅があるんだというお答えでありました。
 外務大臣、同じ質問なんですが、十二月に撤退が完了するためには、やはり政府としていつの時点でそれを決定しなければならないとお考えなのか。今、防衛庁副長官からは、やはり数カ月かかるということをお答えいただいておりますが、外務省、外務大臣としてどのようにお考えをいただいているか、お答えいただけますか。

町村国務大臣 
防衛庁のオペレーションで何カ月かかるかということについては、必ずしも私ども外務省の立場で知り得るところではございませんが、今津副長官が数カ月と言われたのは多分常識的な判断なんだろうかな、こう思って今承っておりました。

武正委員 
それでは、次にちょっと移らせていただきます。
 いわゆるACSAについて昨年改定がされたわけですけれども、最近、報道で、国際緊急援助隊派遣法を含まれていないがために、インドネシア・スマトラ沖地震津波被害のときに米軍に対して医療支援が行えないということに気づいた、しかるべきことも考えますと、ACSAを改定する、そしてこの国際緊急援助隊派遣法を付表2につけ加える、こういった報道があるんです。
 
まず防衛庁副長官、この間、副長官がホームページにも載っておられますが、二十八、二十九日、東京で、アジア太平洋二十二カ国の防衛協議が行われたわけでありまして、このときはインドネシア・スマトラ島沖地震津波被害についての会議であったというふうに聞いておりますが、そのときに、こうした米軍に対する医療支援が行えないからこれについて何とかしてくれとか、何とかしようとか、そういうような話というのはあったんでしょうか。

今津副長官 
いわゆる防衛庁主催の東京ディフェンスフォーラムの件だというふうに思いますが、私も出席をして開会のごあいさつをさせていただきましたから内容については承知をいたしておりますが、そのようなお話はあの会議の中には出てまいりませんでした。

武正委員 
先ほど、2プラス2はイラクはやらなかったよというお話でしたけれども、このときにこうした話、あるいは要請、あるいは日本からのACSAの付表2に国際緊急援助隊派遣法を含んで行きますよというような投げかけというのはあったんでしょうか。外務省、いかがでしょうか。

町村国務大臣 
まだ出張した者が帰ってきておりませんし、どういう議論が詳細に行われたか、私も承知をしておりませんが、いずれにしても、さっき一般的に申し上げましたように、その一々のやりとりについてすべてをお話しすることができないというのは、国際的なやりとりの中でございますので、御理解を賜りたいと存じます。

武正委員 
先ほど来、外務大臣は、一々のやりとりは明らかにできないと言われているんですけれども、たしか今月号の文芸春秋で、中国に対して外務大臣の文章が載っておられます。
 
二重かぎ括弧は公表されたやりとりなんだというふうに理解をしておりますが、かなり細かく中国側の、特にあのときには、後で触れますが、大使館への損害賠償あるいは補償、これについて承知していないというようなやりとり、えっというような顔をして後ろを振り向いたとか、かなり事細かく書いておられるわけであります。
 
私はこの間、安保委員会で、靖国参拝については、昨年、主席あるいは首相との小泉首相の会談の前に、飯島秘書官が講演で、そのことは中国側にもう言ってあったんだと言ったことについて、なぜこういったことを一秘書官が言うのか、これはやはり官邸の危機管理として問題であるということで、参考人として招致を安保委員会でお願いしましたが、そのときにも外務大臣は、ここに議事録がありまして、「いずれにしても、外交交渉にかかわるいろいろな内部的なやりとりについて、これまたお答えをするのは適当ではないだろうと思っております。」ということを言っているんです。
 
私は、文芸春秋はかなりそうした意味では内部にかかわるところを率直に外務大臣として書かれたなということで、先ほど来の答弁とそごを来すのではないかなというふうに思うんですが、これについて何か御意見があればお答えいただけますか。

町村国務大臣 
別に意見というほどの意見ではございませんが、本質的な、また日中がそれぞれの利益に関して、極めて、ここは対外的にはやはり公表するのは差し控えておこうとか、お互いにそれを了解したり、一々確認をする場合もございます。
 
いずれにしても、あそこに書いてある、私も一言一句、今、文芸春秋を覚えているわけではございませんが、大使館、領事館等に対する破壊活動のやりとり、それに関する日中双方の外務大臣同士のやりとりというのは、かなり既に報道されているというか公表している中身がある意味ではあの文春の中に書かれているということでありまして、ちょっと、後ろを向いたというところまでは確かにそれは公表されていなかったかもしれませんが、それは本質とかかわる話でもないと思いますので、そこら辺は若干書き加えたところはございますけれども、日中双方で合意した公表の中身について、それを超える内容について私は文春の中で書いたつもりはございません。

武正委員 
ですから、私は、明らかにできるところは今のように明らかにしていいというふうに思うんですね。これはもう米軍再編をめぐる本委員会からの外務大臣に対する要請、これもしかりであります。今回の2プラス2の高官協議の内容についても、速やかに公開をお願いしたいというふうに思います。
 
先ほどのACSAの件でありますが、これは付表2に、協定を改正しないでも、先ほど来問題になっております交換公文により、修正ができるんですね。
なぜ今回の緊急援助隊派遣法をこれに含まなきゃいけないのか、私は、このACSAの付表2というのは非常に問題だと思っています、昨年の改正は。ここに閣議決定で法律をつけ加えていけば、それこそ世界じゅう、自衛隊は米軍の後方支援ができるという法律の改正になってしまったんですよ。今回、この国際緊急援助隊派遣法を含むという、これはもう閣議決定になります、交換公文で。私はやはり、これはやることについては、慎重であってしかるべきということだと思います。
 
米軍に医療支援ができないからという理由もよくわかりません。今回のこの援助隊法では、警察、消防など、そういったあらゆるところの援助隊法ですから、そうすると、今度、米軍に対して警察も消防もすべて応援ができる、そういった法律になっていってしまうわけですから、私は、これは慎重であってしかるべきということを指摘させていただきます。
 
先ほど日中のことが出ましたので、最後に外務大臣。
たしか、五月の連休明けはまた日中外相会談で大使館に対する謝罪そして損害賠償を求めたと思いますが、この五月、六月、二回の日中の高官対話、これで実際に事務方のトップとして謝罪、賠償請求は求めているのかどうか。そしてまた、五月の頭に求めて以来、外務大臣はこの大使館に対する攻撃についての謝罪、賠償請求を求め続けているのかどうか。その後の経過、そして、これからたしかサミットには中国も参加をすると思いますが、こうした場を通じてさらに日本政府としてこの大使館に対することを引き続き求め続けて謝罪なり賠償請求を求めていくのかどうかをお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 
先に、グレンイーグルズ・サミットで日中首脳会談があるかということでありますけれども、今、その予定はございません。ちょっと正確じゃございませんが、中国の首脳は朝来てすぐ午後に帰ってしまうというような日程であるやに聞いておりまして、今のところ、その日程を立てるということはやっておりません。
 
五月上旬に京都で日中外相会談をやりました。その折に、これはまさに公表してあるとおりでございますけれども、私から、陳謝、損害の賠償、加害者の処罰、再発防止ということについて責任ある対応を改めて求めたところでございます。
 
先方からは、国内法、国際法を尊重して責任ある対応をしていきたい、また、一部の過激な行動には反対である、本件について日本国民の重大な関心には十分理解をしているというような話があり、特に原状回復については、その後、その次の週に中国側から対応があったところでございまして、現在、この原状回復について中国側と詳細な調整を行っているという状況でございます。
 
私どもとしては、一応、原状回復というところまでは来たかもしれませんが、一番最初の陳謝、謝罪、この分については先方からまだ対応がございませんので、この点については引き続き、責任ある中国側の対応を求めていく考えでございます。

武正委員 
聞いたことがもう一つあったんですが、その五月、六月の高官協議、このときにちゃんとその謝罪は求めているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 
これも、一切その会談内容は外に話さないという了解のもとで非常にざっくばらんな率直な話し合いをしておりますので、その詳細について私から述べるのは差し控えますが、当面する懸案事項については、ことごとく話し合いが行われたということでございます。

武正委員 
終わります。ありがとうございました。
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