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■国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録 |
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2005年8月3日 【外務委員会】 |
■武正委員
民主党の武正公一でございます。今通常国会での質疑ということで、この間もいろいろと当委員会でやりとりをさせていただきました。その中でやはりまだやり残したところというのでしょうか、引き続きがございますので、これをまたきょう質問させていただきたいと思います。
まず、前回の委員会で、ライス・小泉首相会談、この七月十二日のやりとりを取り上げさせていただき、ライス長官、そしてまた小泉首相、抑止力の維持・強化と発言したのではないかと。同席した町村外務大臣は、いや、記憶にない、速記録を精査してみよう、事務方は事務的なミスである、こう言っているのでありますからそういうことなんだろうと思いますがということで、御答弁は、「もう一度、」「速記が多分残っていると思いますから、どういう表現であったかということを確認して、理事会の方にきちんと御報告を申し上げます。」ということで、既に理事会に外務省から御報告いただいたようでありますが、改めて、当委員会で外務大臣から御報告をいただきたいと思います。
〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕
■町村国務大臣
先般の委員会で委員の御指摘をいただきました、七月十二日に行われましたライス米国務長官と小泉総理の表敬の際の記録、私ももう一度読み返してみました。国会のこうした完璧な速記録であるかどうかはちょっとあれでございますが、大体通訳の者あるいは事務方がメモをとっておりますのでかなり詳しく出ているわけでございますけれども、ライス国務長官は、沖縄を初めとする地元の負担の軽減と抑止力の維持の二つの点が重要であることはよく認識している、このように述べておられました。これに対して小泉総理は、沖縄を初めとする地元負担軽減と抑止力の維持・確保は引き続き日本にとって非常に重要であるというふうに述べておりました。
したがいまして、ライス長官、小泉総理が、抑止力の維持・強化という、強化という言葉を使った事実はございませんで、そういう意味で、七月十四日、民主党の部会で配付されました資料は事務的なミスであるということでございます。このことを昨日二日の本委員会理事懇談会の場において御説明を申し上げたと理解をいたしております。
■武正委員
それで、昨日、防衛庁が閣議で了承された二〇〇五年版防衛白書について正誤表を配付し、在日米軍再編に関連する表現の中で、「抑止力を維持・強化する」との記述を「抑止力を維持する」に訂正、強化を削除した、こういう報道が流れまして、また大野防衛庁長官も記者会見でこう述べております。
私自身はどうしてそうなったのか分かりませんが、そういう報告を受けました。我々が何度も何度も繰り返し使っている一番大切な「抑止力の維持、負担の軽減」という言葉について誤りがあったということで、もう少し緊張感を持ってやってくれということは内部に対して厳重に言ってあります。そういう大事なポイントで、そういうようなミスが出てしまったことにお詫びを申し上げます。直ちに正誤表を配った由でございます。
ということで、くしくも、防衛白書でも抑止力の維持・強化と記載をされ、そしてそれは正誤表が配られているわけなんで、事務方の単なるミスという外務大臣の御答弁でありますが、余りにもこれはミスが、外務省も防衛庁もこうも重なり、しかも防衛白書に記載もされている。
これは、やはり先ほどの外務大臣の御答弁では納得できずに、やはり日米間で、抑止力の維持・強化、こういったことがこれまでも使われ、そして過日の首脳・長官会談でも使われているのではないか、こういうふうに考えるわけですが、改めて、防衛白書にもこうした記載があったことについて、そして私の指摘について、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
■町村国務大臣
防衛白書は昨日の閣議で防衛庁長官から報告があったわけでございます。大変恐縮でございますが、そうした文言の訂正があったということは、私、今回委員の御指摘で初めて気がついたところであります。また、閣議でそのことが特に話題になった、あるいは長官から閣議の場で発言があったというわけではございませんので、ちょっとそこの経緯のところは、私は正直言ってよくわかりません。
いずれにいたしましても、民主党の皆様方への御説明の資料にミスがあったことは、単純なミスとはいえ大変申しわけないことでございまして、この点についてはおわびを申し上げたいと存じます。
■武正委員
閣議で外務大臣も出席されて了承された防衛白書が、その場でも大臣もわからない、その後防衛庁長官から正誤表が配られる、こういうことは果たしてあっていいのかどうかということなんですね。閣議の参加者として、そしてその閣議の意思決定に参加をされている外務大臣として、こういったことはこれまでもよくあるのかどうか、私は逆にお聞きをしたいんですね。閣議了解された文書が後で訂正をされる、正誤表が配られる。
閣議決定というのは大変重いものですよね。これまでの当委員会や、あるいは他の委員会でも、閣議決定についてのその重さというものは、過日の自衛隊法改正、ミサイル防衛についても議論があったわけでありますが、その閣議で了承され決定をした文書が後で訂正をされる、こういったことについて、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
■町村国務大臣
どういう事情があって防衛庁でそういう修正をされたか、私もよく理解ができません。
防衛白書はこんな厚いものでありますから、その閣議の場で一ページずつ全部精査をするわけでもございません。エッセンスが長官から報告され、みんなで了解を得、了承したということでございますから、その一言一句を精査しながらやる場というのはまた別途あるんだろう、こう思いますけれども、いずれにしても、閣議の場でそこまでの議論をしている時間的なゆとりもございません。
また、そこまでの議論を、一つ一つ、いろいろな白書がいろいろな省庁から出されるわけでございます。外務省も外交に関するペーパーを出すわけでございます。それらをすべて一言一句精査をしているというわけでは必ずしもないことは御理解を賜ればと思います。
■武正委員
ということは、過去も、閣議で了承された文書が後日訂正をされる、こういうことがある、そしてまたそういったことは閣議の性格上やむを得ない、このように大臣はお考えですか。
過去そういうことはあったんでしょうか、大臣の御経験で。文部大臣もやられておりますが、閣議で了承された文書、しかも、たしか閣議に諮る前に、前日かわかりませんが、事務次官ですか、それぞれ皆さんが周到に準備をされて閣議に文書をお出しになるわけですよね。
それが閣議で了承されたけれども後で訂正します、こういった仕組みが今の政府では行われている、これはやむを得ないというふうな御認識でしょうか。
過去そういうことがあったかどうか、そしてそれについての御認識をお伺いしたいと思います。
■町村国務大臣
私もずっと閣僚でずっと閣議に出ているわけでもございませんので、前例がどうかとお尋ねでございますが、そこまで私もちょっと確信を持って申し上げることはできないわけでありまして、もし調べろということであるならば、そういう前例があったかどうか、改めて調べてお答えしなければいけないのだろうと思います。
■武正委員
もう一度、その認識もお伺いをしたいんですね。閣議では精査はできないけれども、それに行く前にそれぞれ各省庁周到な準備をされて閣議に諮っている文書、これが閣議了承後、簡単にというのでしょうか、長官が正誤表を配って記者会見して終わり、こういったことがまかり通っていいのかどうか。
これは素朴な疑問として外務大臣にお聞きをしたいと思うんですが、そういったことはあってもしかるべきと、しようがないと。先ほど来の大臣の御答弁のように、事務方がミスと言っているのでこれはしようがないですねと、陳謝はされましたが、これは人間だからいたし方ないというような御認識でしょうか。
■町村国務大臣
それはその種の訂正等々がないにこしたことはない、できるだけ完璧なものを出すようにする。いい例えだとも決して思いませんが、法案という形で国会にお出ししたものも修正をせざるを得なかったというようなケースさえ、昨今は、何かこの間、いつだったか知りませんが、あったような記憶がございます。
決して望ましいことではないし、いいことではないと思いますが、人間のやることですから、それはたまにはどこかで間違いがあったりすることも排除し切れないのかなと思ったりもいたします。しかし、決して望ましいことではないと私も考えます。
■武正委員
このように指摘をさせていただくのは、外務省もミスをし、防衛庁もミスをしている。しかも、それがちょうど今、米軍再編成で大変大事な局面にあるこの抑止力の維持、そして地元負担の軽減、こうした大変微妙な表現。だからこそ、それをミスであると、外務省もミスをした、防衛庁もミスをしたということは、私は甚だおかしいなと。やはり、日米間でこの抑止力の維持・強化ということが公然のこととしてやりとりをされている、それがはしなくも外務省の文書に、そして防衛白書に出てきたのではないのかな、このように私は思うわけでございます。
これはもう、外務大臣の御答弁は、あくまでミスである、こういったことでございますが、引き続きこの点、これからの米軍再編の中でも、米側とどのような協議がされているのか、これがまたつぶさに明らかになってくる中で、また御質問あるいは指摘をさせていただきたいと思います。
そこで、きょうは、理事会、委員長のお許しを得て、また資料を配らせていただいておりまして、先般来やっております行政取り決め、交換公文の外務委員会への提出という案件でございます。
お手元の一ページは、よく引用される有名な大平三原則、昭和四十九年二月二十日、大平外務大臣の、国会承認を求める条約は、第一、第二、第三、このような三つの原則で国会にその審議を求めるんだ、こういったことが昭和四十九年、大平三原則で述べられておるんです。私が今回もまた取り上げさせていただく行政取り決めについては、一番最後段、最下段の後ろの方から書いてありますので、ちょっと読ませていただきますが、「ところで、」からであります。
行政取りきめであっても、国会承認条約を締結するに際して補足的に合意された当該条約の実施、運用あるいは細目に関する取りきめについては、政府は、国会の条約審議権尊重のたてまえから、当該条約の国会審議にあたっては、従来から、国会に参考としてこれを提出してきております。
ここからがポイントなんですが、
政府としては、今後は、この趣旨を一そう徹底させ、条約自体について国会の承認が得られた後に結ばれた同種の行政取りきめについても、当該条約を承認した国会として、その条約がどのように実施あるいは運用されているかを把握しておく上で必要と思われる重要なものは、締結後できる限りすみやかに外務委員会に資料を提出することといたしたいと存じます。
このように当時の大平外務大臣が述べられた、大平三原則に基づく答弁でございます。そうしたことから申しますと、果たしてこの外務委員会に外交公文、取り決めがどれだけ提出をされているのか、報告をされているのかということになろうかと思います。
まずお聞きをしておきたいのは、過去も何度もこの委員会で質疑をさせていただきましたが、昨年十二月十四日に結ばれましたアメリカとのミサイル防衛の交換公文、これがこの外務委員会に報告されなかった理由というのは、この大平答弁からするとおかしい。そうすると、ではこれは重要ではないというようなことなのかと思うんです。
まず、なぜこのミサイル防衛構想の交換公文、お手元の資料では七ページ目につけてあります。前もお話ししましたように、官報ではことしの六月三日、半年たってようやく告示をされておりますこのミサイル防衛に関する交換公文、内容はここに書いてありますが、なぜ当委員会に報告がなかったんでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
■町村国務大臣
今の御指摘のあったBMD協力に関する交換公文についてでございますけれども、これはあくまでもBMDに関する日本政府の現在の政策の範囲内で行われるものであります。また、武器輸出三原則等に言います武器を輸出するようなものでもない。こういう考え方に立って、御指摘のような運用等に関して重要である取り決めには該当しない、このように判断をしたわけでございます。
いずれにいたしましても、この大平三原則、答弁の趣旨を踏まえて、今後とも行政取り決めの国会への報告については適切に対処しなければいけない。特に、「すみやかに」と書いてありますので、この点については、確かに官報告示に六カ月かかったのはいかがなものかという先般委員の御指摘もあったこともよく覚えておりますので、これについては、迅速化に向け、今改善に取り組んでいるところでございます。
■武正委員
お手元に、これは国会図書館でおつくりをいただいた資料を二、三、四と用意させていただきましたが、平成六年以降に委員会に提出された交換公文等の事例をお手元につけさせていただきました。
これを見ると、航空協定が十六、租税条約が五、宇宙関係日米協定が一、地位協定が二、ACSAが二、漁業協定、社会保障協定、刑事共助条約ということで、一体、国会に提出をする重要な交換公文というのは、政府は、外務省はどのようにお考えなのかなと。これを見て、航空協定は確かに重要ですよね。しかし、一兆円もかかるミサイル防衛構想、しかも技術協力、そしてこれからの共同開発、こうしたものを視野に、武器輸出三原則も官房長官談話で見直しのような形もとって、そして防衛大綱の見直しという中でのこのミサイル防衛の交換公文を重要でないというような判断をされて、委員会には提出をしない、報告をしない。
ことしはまだ一つも報告がない。昨年についてはこの三つであるということは、国会の条約審議の尊重というこの昭和四十九年の大平元外務大臣の発言からすると、今の外務省、政府の姿勢というのは国会軽視も甚だしいんではないか、このように思うんですが、ほかの平成六年からの国会に対して報告されたこれを見て、外務大臣、このミサイル防衛についての交換公文は重要でない、このように、先ほどの答弁のとおりお認めになるんでしょうか。いかがでしょうか。
■町村国務大臣
ミサイルディフェンスが重要でないということを言っているつもりもございません。これは、大変日本の防衛政策上重要なことであり、この問題について、先般、自衛隊法の改正ということで、衆参それぞれ慎重な御議論を賜ったところでございます。
ただ、そのことと今回のこの交換公文につきましては、この交換公文そのものが運用上の重要な取り決めには該当しないということを申し上げただけであって、ミサイルディフェンスそのものについては、これは重要な政策である。まさにこの国会で相当な時間を、それぞれの委員会で、衆参それぞれで御議論をいただき、結果、お認めをいただいたということでありますから、ミサイルディフェンスが重要でないなどということを申し上げるつもりは毛頭ございません。
■武正委員
平成二年六月八日、外務委員会の答弁で丹波審議官は、重要なというのがどういうものであるか、どういうものが重要であるか客観的なものが示されていない、だから与野党の理事の先生方に内々御相談あるいは御意見を求めて御指示をいただきそういう処理の仕方をしているということなんですが、私も昨年、理事を務めましたが、こういった交換公文を委員会に報告していいでしょうかとか、どうでしょうかとか、そういったことは記憶する限り理事会で一回もなかったというふうに思うわけであります。
平成十六年にこの三つが出されておりますが、これはそれぞれの条約の参考資料として出されているわけでありまして、このときの丹波審議官のこともありましたので、私は、やはりこの際、外務省として、この交換公文について、「重要な」というのをどのように考えておられるのか。そして、このときの審議官の答弁もありますので、では理事懇なり理事にどのような形でこれまで諮ってきたのか、また諮ろうとしているのか。これをやはり理事会にしっかりとお示しをいただきたいというふうに思うんですが、委員長、お取り計らいをお願いいたします。
■大谷委員長代理
後刻理事会にてこの点について協議させていただきます。
■武正委員
時間もございませんので、最後にちょっと日本海呼称問題の調査結果の概要についてお伺いをいたします。
これは昨年の三月十六日、当委員会、在外公館の法律改正の附帯決議の中の五項目め、決議をいたしております。「日本海呼称問題に関する誤った対応を二度と繰り返さないために、在外公館における訓令に対する履行、履行状況の本省への報告等の確実な実行を確保すると共に、在外公館における日本海呼称履行への取組を徹底すること。」こういったことを決議いたしました結果が、この日本海呼称問題の調査を行うということにつながっているんだというふうに思うんですが、調査結果の概要と、そしてまた昨年の決議後、この調査以外にどんな対応をしてきたのか。そしてまた、今回のこの調査を踏まえて、これからどういう対応をするのかをお聞きしたいと思います。
申すまでもなく、昨年の決議の「誤った対応」というのは、在ソウル大使館のホームページで、日本海について東海という記載を日本政府みずから行ったこと、在バンコク大使館で、タイ航空など航空会社に対して、機内誌やあるいは表示の中でそうした日本海の呼称を設けていないところの調査あるいは申し入れ、これをタイ大使館、在バンコク大使館が半年間放置をしてきたこと、こうしたことを取り上げてのものでありますが、以上、お伺いをしたいと思います。
■町村国務大臣
昨年三月の御決議を受けまして、昨年五月二十八日に全在外公館に対して訓令を出しまして、各国のマスコミ、地図出版社、航空会社、国際機関等々の文書、地図で日本海以外の呼称をしているものがあった場合には、日本海という呼称の正当性を説明するとともに、日本海と表記するように申し入れを行ってきております。今まで三十八件申し入れを行いまして、日本海という単一の表記に修正されたものが二十五件、修正を受け入れない、あるいはもう少し考えさせてくれというのが十三件というのが実情でございます。
主要国の図書館の古い地図の調査も別途進めまして、例えば、アメリカ議会の図書館が所蔵いたします十四世紀から十九世紀の間に発行された地図の調査をしたところ、千二百八十五枚中、八二・四%に当たる千五十九枚で日本海と表記されていることが明らかになりまして、日本海という呼称が十九世紀初頭にもう国際的に定着をしているということが裏づけられていると思います。
また、フランスの国立図書館の所蔵の地図を見たとき、十九世紀前半発行の百十枚中九十九枚、全体の九割が日本海という表示。十九世紀後半発行の百五枚中百五枚、これはすべて日本海という表記でございます。大英図書館の地図につきましては、三十七枚中三十二枚、全体の八六%が日本海という表記。ケンブリッジ大学所蔵の地図の二十一枚中十八枚、全体の八六%が日本海という表記。
こういったことから、国際的にも日本海という表記がまさに確立していたものということでございまして、私ども、改めて、国会からいただいた決議に基づいて、さらにしっかりと取り組んでいかなければいけないと考えております。
■武正委員
残念ながら、日本政府の関係機関の資料に、日本海と東海を併記しているような資料を日本政府の関係機関みずから発行していたという事実もあるんですね。やはり、私は、これは外務省が中心となって、そうしたことがないように、改めて政府関係機関に対して日本海のみの記載を徹底していただくと同時に、その調査もしていただいて、ましてそんなことがない、今はもうないと思うんですが、改めて調査もしていただき、また御報告もいただきたいと思うんですが、その点いかがでしょうか。
■町村国務大臣
委員の御指摘どおり、しっかり努めたいと思います。
■武正委員
以上で終わります。ありがとうございました。 |
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