国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2005年10月21日 【外務委員会】

武正委員 
おはようございます。民主党の武正公一でございます。
本日は、万国郵便連合憲章にかかわる条約、そして約定の締結ということで二件一括での審議ということでございます。民主党は、両条約、約定については、技術的なものということで、賛成の方向で今この審議を行っておりますことをまず申させていただきます。
 
そこで、私からは、この条約、約定、広くそれにかかわるというところで、前国会からこの委員会で提起をさせていただいている交換公文からまず入らせていただきたいと思っております。
 
前国会でも、条約にかかわる交換公文を条約締結後国会に提出すべきであろうということでやりとりをさせていただいておりまして、きょう理事会のお許しを得て資料を提出させていただいたのは、過日、外務委員会理事会に外務省から、このお手元の、当時の大平外務大臣の大平三原則に基づくアンダーライン部分、そしてまた丹波説明員による同じく平成二年のコメント、こうしたものを踏まえて、二ページ目、外務委員会に過去この「重要な」という交換公文はどのぐらい提出されているんですかということで資料を出していただきました。
 
そうしますと、二ページ目に見ていただきますように、平成五年十二月二十四日分までは提出をしておりますが、要は、平成六年から十二年間にそろそろなりますが、外務省の認識としては、重要な交換公文はないという御認識のもと、外務委員会には提出がゼロである。
年間七百本外交公文があるとすれば、八千本あるいは九千本という交換公文の中で国会に提出をする重要な交換公文がないという御認識なのかということで、甚だ目を疑うところでありますが、そのような御認識で国会に臨まれていたのか、外務大臣の御答弁をお願いいたします。

町村国務大臣 
今委員が言われた「重要なもの」に該当し、外務委員会に資料を提出すべきか否かということにつきましては、政府としては、国会としてその締結につき承認をした条約のその後の実施、運用を把握する上での必要性という観点から、個別具体的な事案ごとの重要性の判断をしているところであります。
 
今委員御指摘のとおり、平成六年以降こうした行政取り決めは外務委員会に提出をされておりませんけれども、これは政府として、国会が締結につき承認した条約の実施、運用の把握という見地から個別具体的な事案ごとに判断をした結果こうなっているということでございまして、もう出さないということを決めたわけではもとよりないわけでございます。
行政取り決めの国会御報告につきましては、引き続き、大平外務大臣答弁の趣旨を踏まえまして適切に対応していきたいと考えております。
 
なお、国会承認条約を締結するに際して補足的に合意されたこの条約の実施、運用あるいは細目に関する行政取り決めにつきましては、当たり前でありますけれども、平成六年以降も国会に参考として随時提出をさせていただいているところでございます。

武正委員 
これから出さないということはないということでお答えがあったわけですが、私がお聞きしたのは、この十二年間に交換公文を一切委員会に提出されなかったわけでございますので、その認識は、八千本を超えるこの十二年間の交換公文の中に国会に提出をするに値する重要なる交換公文はなかったという政府の認識ですかというふうにお聞きをしたんですが、それでよろしいでしょうか。

町村国務大臣 
個別の事案ごとにその重要性を判断しているわけでありますので、そういう意味で、出していなかったというのはそういう判断をしたというふうに御理解をいただいて結構でございます。

武正委員 
昨年十二月十四日のミサイル防衛構想にかかわる、日米間、その費用は折半だよ、それからMDに関する取り決め、協議については包括的に行おう、これも同じく委員会には提出をされていないわけであります。
 
私は、やはり、この八千本の交換公文にはさまざまな、国会で議論をしてきた条約にかかわる、その後やはり議論に値をする、あるいはしっかりと行政の外交については行政が処理をしますよ、あるいは条約を締結しますよ、こうした、行政として国会に報告すべきものがかなりあるはずであるというふうに思うわけであります。
 
それがなかったという今の外務大臣の答弁は、やはり行政が国会に対しての報告義務を怠っていると言わざるを得ないというふうに考えてございまして、これからもまた、具体的に事例を交えて指摘をしてまいりたいと思っておりますが、これからは提出をするのはやぶさかでないという外務大臣の御答弁をいただきましたので、ぜひ、これから積極的に御提出をいただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 
それで、同じく、またこれは交換公文が三ページ目につけられておりますので、こちらをごらんいただきたいんですが、これは昭和四十年十二月十八日の官報告示でございます。締結が同年の六月二十二日ですから、官報に告示されるのは、このときもやはり半年ぐらいタイムラグがあったんですね。ですから、もうこれは戦後ずっとこういうような慣習だったのかなということで、これは外務大臣からも一カ月というようなルール、この間、イラク特でも官房長官からそのようなお話もありました。
 
さて、これは、御案内のように日韓国交正常化にかかわる両国の交換公文でありまして、四十年前ですので大変古いコピーで、ちょっと見づらいところはお許しをいただきたいんですが、上から三段目、最初の三行は飛ばしましてちょっと読みますと、「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかつた場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図るものとする。」
 
ここで、こうした交換公文、調停によって問題があった場合解決をするんだ、外交上の経路を通じてできなかった場合は、「両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図る」、ここにいわゆる竹島問題が含まれているのかどうかということでございます。
 
これは竹島問題は含まれていますかどうかということで外務大臣にお聞きをしたいんですが、ただ、ことしの年初から韓国政府は日韓国交正常化交渉の補償などに関連した記録を一月に五件公開をし、そしてこの八月の時点で国交正常化交渉に関する外交文書がすべて公開されたのでございます。
 
かねてより私は、三十年ルールに基づいて日本政府がなぜこの日韓国交正常化交渉の文書を公開しないんですかということを申し上げているところでありますが、そのときのさまざまな新聞記事の中で、当時のそうした交渉経過を知る呉在熙元駐日大使とのインタビューなども記事になっております。そこでちょっとこういうやりとりがございます。
 
「公開文書には、佐藤首相は李外相との会談で、公文の解釈について韓国側が「紛争には竹島を含まない」と主張しても異議を唱えないと口約束したとの李外相の報告があります。」これは、今回公開された韓国政府の文書に、紛争には竹島を含まない、そう韓国側が主張しても異議を唱えないと口約束したと、それは佐藤当時の首相ですね、との李外相の報告が載っているんだけれどもこれは事実ですかということでありますが、これについて、呉在熙元駐日大使は、「私は会談の現場にはいなかったので、日本が文案から「竹島」の削除に同意したということ以外、口約束の件は分からない。」と答えています。
 
そのほか、公開文書、これは竹島が明記されていない交換公文受け入れで署名ということになっているわけでありますが、このときのやはり公開された記録で、これは新聞の方で報道されているんですが、「六二年九月三日に東京で開かれた第六次会談の予備折衝記録によると、日本外務省アジア局長が「無価値な島で大きさも日比谷公園程度。
爆発でもしてなくしてしまえば問題がない」と発言していたこともわかった。」このような記事があるわけですね。これはいずれも韓国政府の公開文書で、竹島にかかわる記載がこのような形で公開文書に載っているわけであります。
 
これについて、やはり私は反論をしなければならないという当然日本側としての主張があろうかと思っておりますが、まず第一に、交換公文にこの竹島の問題、この紛争というところに竹島の問題は含まれるのかどうか、両国間の紛争に竹島の問題が含まれるのかどうか、これについて、まず外務大臣の御所見を伺います。

町村国務大臣 
委員からお配りをいただいた資料、官報でございますが、ここには交換公文と書いてありますけれども、実態はこれは条約でございまして、これは条約そのものとして国会審議をいただいたものであります。ただ、交換公文という形はとっておりますが、中身は条約だという点だけはちょっと申し上げさせていただきます。
 
今、委員お尋ねの竹島の領土権について、この紛争に含まれるかどうかということについてでございますけれども、これは現在もなお日韓間の争いがあるということはもう明白でありまして、本件、この交換公文にいう「両国間の紛争」という文言にこの竹島問題が含まれるということは極めて明白であると私どもは考えております。

武正委員 
先ほどちょっと触れました新聞記事からの引用でありますが、その韓国側が公開した文書、「第六次会談の予備折衝記録によると、日本外務省アジア局長が「無価値な島で大きさも日比谷公園程度。
爆発でもしてなくしてしまえば問題がない」と発言していたこともわかった。」ということをお聞きになっての御感想はいかがでございましょうか。こういったことが韓国側の公開している文書に載っているということについての御認識もお答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 
先方が公開した資料について私どもがあれこれ言う立場にはございません。
ことしの一月にこの請求権関連の文書五冊を公開した、さらにことしの八月末にそれ以外の百五十六冊の文書をすべて公開したということで、その中にそれが含まれているんだろうと思います。これは、韓国政府が、みずからの責任において、みずからの保有する公文書を公開したということでございます。
 
したがって、彼らの持っている資料がすべて正しいかどうか、それについて、これは違っている、正しいということを一々コメントする立場にもございませんし、したがって、今言われたような、大使ですか、外務省の人間の発言がどうであったかということについて、私はあれこれをコメントするつもりもありません。ただ、竹島というのは大変重要な領土でありまして、もし爆破云々ということを、もしそれが事実だとすると、それはとんでもない認識だと私は考えております。
 
ただ、いずれにしても、それが事実であるということを、今私の立場でそれを確認するしないという問題ではない、こう思います。

武正委員 
私がこの問題を取り上げているのは、やはり日本の政府に外交文書の三十年を経過したものを公開するというルールがある、私は、こうした竹島問題は、やはりきちっとこうした韓国側の主張にこたえる責任が政府にあるというふうに思っておりますので、文書の公開を何ではばかるのか甚だ疑問がございます。
 
ちょうどこの文書を公開するときの記事の中で、盧武鉉大統領が、やはり専門家の中には、韓国側とすればこの竹島問題は日本に押されて決着をつけられなかった、そういう批判もある中で、公開に懸念をする専門家もいたが大統領が却下した。
韓国政府は公開の目的を、国民の知る権利にこたえ過去を透明にし未来につなげるためと話すということで、いわゆる未来志向という、今韓国政府の対応というか考え方の一つなのかもしれません。
 
私は、今、私ども国会にかかわる者、あるいはこうした外務委員会にかかわる者、そして当然国民の皆様にも、やはり四十年前の日韓国交正常化交渉の当時において、さまざまな交渉の過程を乗り越える努力を双方の交渉担当者、当事者がされた。
もちろん、そのときに日本の首相や外務大臣あるいは外交関係者がされているわけですので、それは、その当時の乗り越えなければならないさまざまな課題を外交交渉で乗り越えたその現実は、やはり重く受けとめるべきであろうというふうに思います。
 
それをやはり後世の者がしっかりと認識をして、それを踏まえて外交に臨む、あるいは外交を理解する、そういったところから、私は、やはりこの日韓国交正常化交渉の文書を初めとして、三十年ルールに基づいて政府は積極的に公開をしていくということが必要だというふうに思いますが、まずはこの国交正常化交渉にかかわる文書の公開について、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。

町村国務大臣 
外交記録の公開に関して申し上げれば、外務省のガイドラインがございまして、通常、作成から三十年たった文書について可能な限り公開をしていくという考え方が基本としてあるわけであります。
 
その上に立って、この日韓国交正常化にかかわる外交文書の公開についてのお尋ねでございますけれども、政府の判断としては、今この文書を公開することは今後あり得べき日朝国交正常化交渉に与える影響というものがあるだろう、こう考えておりますので、その辺を踏まえながら適切に対応していかなければいけない、こう思います。
 
国交正常化交渉、どういう分野のことが扱われるかというと、これは日韓交渉において日韓国交正常化交渉で議論をされたような財産及び請求権の問題、経済協力の問題、文化財の問題、あるいは在日朝鮮人の法的地位の問題、こうしたことなどを中心に日韓間で相当な議論があった結果、日韓国交正常化が行われたということでございます。
 
他方、日朝国交正常化交渉、まだめどが立っているわけではございませんけれども、これもいずれの日にか行われるであろうということを考えたときに、そうした日朝交渉へ影響の及ぶ可能性がある部分については、やはり私どもとしては今これを公開しない方が適切ではないだろうか、こう考えているわけでございます。

武正委員 
日朝国交正常化交渉に影響があるというのは、個人への補償、あるいは経済協力にかかわるところ、請求権についての放棄などのところだというふうに思いますが、これはかなり韓国側の文書で公開をされているという事実がございます。両国とも公開していないという事実、もう韓国が全部公開をしているといったところから状況は変化をしているというのがまず一点です。
 
そしてまた、今のことを百歩譲ったとして、それであれば竹島問題にかかわるやりとりについては文書を公開できるのではないだろうか、それが日朝国交正常化交渉にいかなる影響を与えるのかといったところになろうかと思います。
韓国側の文書で一方的にこのように、先ほどの外務省の局長のような発言を見るだけで、果たしてそれで日本側がどのように当時の正常化交渉を理解するのかといった意味からも、私は速やかに公開をすべきであろうということを申させていただきます。
 
きょうは、今津防衛庁副長官もお見えでございますので、それでは、SACO協議の中で、今の普天間の辺野古沖への移設の進捗状況とあわせて、今、日米間で進んでおります、これはまた民主党は、米軍再編とこの普天間は別である、あくまでSACOなんだということは前原代表と首相との党首討論でも指摘をしておりますが、今政府は、米軍再編も絡めてでしょうか、この辺野古移設を進めておられるようですので、二点について副長官からお答えをいただき、続いて外務大臣からも、今の日米間のこの辺野古への移設についての協議状況をお答えいただきたいと思います。

今津副長官 
防衛庁副長官でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
昨年、沖縄の国際大学に米軍のヘリが墜落をいたしまして、大惨事にならなくてよかったなとほっと胸をなでおろすとともに、普天間の移転については一日も早く実現をしなければならない、そういう覚悟で今日まで臨んでまいりました。
 
SACOの最終合意は辺野古沖でございますし、それを実現するべく私たちも頑張ってまいりまして、環境影響評価などの手続をとりながら、例えばボーリングの調査、そして地元の知事を初め行政あるいは関係団体との打ち合わせなどを進めてまいってきたところであります。ボーリング調査につきましては、先生御承知のとおり、台風十四号の接近によりまして、今全部外しまして、海上には何も浮いていないという状況でございます。
 
それから、大臣にお会いをして、そして私のところにも、ジュゴンのことでありますとかサンゴのことでありますとか、辺野古沖について非常に慎重に進めていただくように、そういう陳情の方々も何回も私のところに来られました。また、沖縄県の方々の、やはり地元の同意を得て、そして初めて実現ができるんだということで、丁寧に話し合いを進めさせていただきましたが、実は、結果としてそのことにより建設がおくれているところでございます。
 
また、基本計画の策定にも時間を要しましたし、また環境影響評価やボーリングなどについても時間を要しましたので、十年近くの年月がたってしまったわけでございます。
 
今どういう状態になっているかということは、後で外務大臣の方からもお話があるかと思いますけれども、日米の担当者が調整を進めておりまして、そして辺野古沖というものを踏まえながらも、しかし、いろいろなアイデアが出ておりますので、そのアイデアを絞り込んで今調整をしているという段階であります。

町村国務大臣 
SACOというのは大分前に決定をされ、さまざまな沖縄の基地のあり方について重要な決定をしているわけでございます。その中で、しっかりと進んでいるもの、なかなか進んでいないものがあるわけでございますが、これは全体として進めていくという姿勢には何ら変わりはございません。
 
ただ、これは当初から米軍再編成の関係で国会でも申し上げてきたところでございますが、このSACOの話と再編成の話がどこかで接点があるかもしれないということもあわせて申し上げてまいりました。そのことが今まさに普天間飛行場の辺野古移設問題ということで一つの大きな接点になってきているのは事実でございます。
 
今、日米間でどういう状況にあるかということにつきましては、詳細は今協議中ということで申し上げることを差し控えることをお許しいただきたいと思いますが、そう遠くないうちに中間的な取りまとめができるように、最終的な協議を精力的に進めているという段階でございまして、一定程度の方向が見えた段階で、地元の皆さん方、特に沖縄の皆さん方には大変な御負担をおかけしているわけでございますので、しっかりとした説明責任を果たしながら、できる限りの御理解を得つつ、これを進めてまいりたいと考えております。

武正委員 
もう時間が来たので、最後に今の関連で一問だけ。
十五年の返還という知事、市長からの要請、これを遵守するという閣議決定、それは協議の中で求めていくんだという閣議決定でありますが、当然、日米間のこの協議の中で、十五年返還についての付言をされて協議されているということでよろしいでしょうか。確認です。

町村国務大臣 
この十五年問題、もとより認識をしているところでございます。
ただ、今度移転をするものがどういう内容になるのかということによりまして、当時、稲嶺知事を含めて御要請のあった、全く同じ形になるのかどうか、その辺を含めて今幅広く議論しているところでございます。

武正委員 
以上で終わります。ありがとうございました。
プライバシーポリシーお問い合わせ
当サイトのすべての記事、画像、映像等の無断借用及び転載を禁止いたします。