国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2006年5月17日 【外務委員会】

武正委員 
 民主党、武正公一です。日加社会保障協定について質疑を行わせていただきます。

 もう既に同僚委員から同様の質問が出ておりますが、まず一問目は、社会保障協定締結の迅速化、これは私も求めておきたいというふうに思っております。特に、既に結びましたベルギーからの申し入れから署名に至るまで十九年ということで、もう既にひな形もできておりますので、迅速な締結を、これは要望として、もう既に各委員取り上げて、質疑で外務省もお答えをいただいておりますので、要望とさせていただきたいと思います。

 そこで、外務副大臣にお答えをいただきたいんですが、我が国が本来締約国になっていない多数国間条約、国会の承認を必要とすると思われるもの、これがどのぐらいあるのか、未署名あるいは未批准の条約数、そのうち特に人権関係、ILO関連、それぞれ幾つなのか、お答えをいただけますでしょうか。

塩崎副大臣 
我が国が締結をしていないというジャンルに入る条約の数、全体を幾つか、こういうお尋ねであるとするならば、全世界に存在している多数国間条約というので我が国が未締結のものということになると、全体をすべて網羅的に把握をすることはなかなか難しいのかなという感じがいたします。

 人権、それからILOの御質問でありますけれども、人権関係の条約については、これまた網羅的に全部ということになるとなかなか難しいんですけれども、国連の事務総長が寄託者になっているものに仮に限定をしてみると、全体で二十二本ある中で、日本がまだ締結をしていないものは十二本ございます。ですから、二十二分の十二ということになります。

 それから、ILOにつきましては、これまで採択された条約数全体が百八十六ありまして、その中で既に日本は四十七批准をしておりますので、マイナスすると百三十九なんですけれども、既に八十五本についてはILOとしてももう批准を促進しないということになっている、古くなった、オブソリートになったものがある。それを除くと、我が国が批准をする可能性がある条約として五十四本あるということになろうかと思います。

武正委員 
ILOが五十四本で人権が十二ということでございます。既に、国会図書館が、先ほど私、質疑でちょっと限定させていただいたんですが、二〇〇三年七月現在、我が国が締約国となっていない多数国間条約のうちで国会の承認を必要とすると思われるものという限定で、二百三十五件未批准のものがある。そのうち、人権関係が十七件、ILO関係が八十五件ということでございます。

 条約締結は内閣の専権事項でありますが、その条約締結が国内法にやはり影響を与える。これは、ちょうど今、国会で審議中のいわゆる共謀罪がまさにそれでございます。テロ防止ということでの条約締結に伴って国内法を規定するということでありますが、本来であれば、私は、条約の承認、国会の時点において、国会も、特にマルチの、多数国間条約であれば、その本条約に影響を与えない範囲で国会としての意思を表明できる、例えば留保などが我が国の国会でもっともっと検討されてしかるべきと、今回の共謀罪の今の国会の状況を見るにつけて思うわけでございます。

 あわせて、人権、ILO関連ということがまだまだ十二本あるいは五十四本未批准という状況について、私はやはり批准を促進すべきであろうというふうに考えるわけです。

 麻生外務大臣、この間、日米外相会談で、たしかサミットで拉致の問題を取り上げるというようなやりとりをライス国務長官と合意をしたような、そんな記事も見たわけなんですけれども、過日は、日本が人権理事会の理事に当選をいたしました。民主党の国会議員も、このゴールデンウイーク中にはニューヨークなどに行く機会があればそういった働きかけをしようということで進めてきたわけで、私は大変喜ばしいことだというふうに思っております。

 人権理事会の理事国に当選をし、そしてまたサミットで拉致問題、拉致事件の解決も主張していく、こういった話もあるわけですので、そういった我が国が、人権あるいはILOに関連する条約がまだ未批准のものが十二本あるいは五十四本あるというのは、私はやはり積極的な対応、批准促進があってしかるべきと思うんですが、今のやりとりをお聞きになって、外務大臣としての御所見はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 
武正先生、組合の話を含めて、これはもう長い長い昔からの話で、官公労の話やら何やら含めまして、たしかいっぱい複雑な話が絡み合った話なんであって、日本が非常に人権無視なような雰囲気というものでやれていないというような感じを私自身も思っておりませんし、世界からもそういうぐあいに思われているというわけではない。

 ただ、これまでの官公労の話のスト権の話やら何やらを含めて、これはILOの話とは、これまでの経緯がいろいろありますので、いろいろ話し合いがついたところ、折り合いがついたところ、時代が大分変わりましたので、そういったところも含めて、やれるものに関しましては今後ともきちんと対応すべきものだと考えております。

武正委員 
昨日の教育基本法の改正案の国会審議でも、我が党の鳩山幹事長が、これは国際人権規約でしょうか、高等教育無償化条項、世界で日本を含めて三カ国だけが留保をしている、これを取り上げてもおりますので、今組合のことを取り上げられましたが、そのほか人権を含めて、まだまだ日本が対応について積極的にあってしかるべきというところはたくさんあるというふうに考えております。

 加えて、今後の国会では、たしか簡略化条約、IMOですね、国際海事機関、これは国会も承認をしたわけで、今衆議院から参議院に送られているんでしょうか、この条約も、IMOを調べてみると、十四本の条約のうち、ようやくこの一本が、これは二〇〇三年七月時点ですが、批准したということで、残り十三本はまだ未批准といったこともありまして、これは日本海の呼称問題にもかかわるIMOでありますので、私はやはり条約の批准、先ほど来、日加社会保障協定でもっと促進できないのかということがありました。これは、国会の条約の承認の仕組みも含めてこの外務委員会でもいろいろ御提起もいただいていますが、やはり外務省としての条約締結のスピードアップをどういうふうに図っていくのか、これは私は課題であろうというふうに思います。

 そして、お手元の方にきょうは資料を提出させていただいておりますのでごらんいただきたいんですが、これはもう既に本委員会で何度か取り上げておりますが、交換公文についてでございます。

 昭和四十九年の大平外務大臣の大平三原則という中で、条約締結に当たっては国会の承認を得る、ただ、承認を得た条約に関連してその後結んだ行政取り決めについては、重要なものは国会に、外務委員会に資料を提出する、こういう大平三原則、答弁があります。それを受けて、平成二年六月八日の丹波説明員は、与野党の理事の先生方に内々御相談してそういう処理の仕方をしておりますということでございますが、次をごらんいただきますと、平成五年の十二月に繊維製品の議定書が締結されて以来もう既に十三年を経過しておりますが、一本も外務委員会には交換公文が提出されていないというのが実態でございます。

 ちょうど昨年、町村前外務大臣にこのことを聞きまして、やはり十三年間重要な交換公文が一本もないというのは余りにもおかしいんじゃないですか、こういうやりとりをいたしましたところ、行政取り決めの国会御報告につきましては、引き続き、大平外務大臣答弁の趣旨を踏まえまして適切に対応していきたいと考えております、こういう答弁をいただいたわけでございます。

 また、三ページ目、四ページ目、外務省に資料を提出していただきまして、この町村答弁以降、五月十日までに外務省が結んだ行政取り決め、これが百七十六件ある。ただ、この百七十六件の主なものを列挙していただいておりますが、先ほどの丹波さんの説明にあるような与野党の理事への相談、少なくとも私の方にはございませんので、重要な交換公文はないという御判断だったと思うんですが、まず、外務大臣には、町村前外務大臣同様、やはり重要な交換公文については、大平三原則、大平元外務大臣の答弁のように国会に御提出をいただくということを改めて確認させていただきたいと思います。

麻生国務大臣 
今の大平外務大臣、町村外務大臣等々のお話、これは私どもと同じ立場なんですが、今お話のありました百七十件の行政取り決めのうち、七件を除きますとすべて経済協力に関するものでありまして、これらはそもそも国会承認条約の実施に関するいわゆる行政取り決めではありませんので、そこのところは御存じのところと存じます。

 残り七件のうち四件というものは、行政取り決めにはなっておりますが、国会承認条約を締結するに際して補足的に合意された条約の実施、運用あるいは細目に関するものでありまして、既に国会に提出しておりまして、在日米軍駐留経費負担の特別協定とか、日本・マレーシア経済連携協定の実施取り決めとか、日英租税条約に関する交換公文とか、日・欧州原子力共同体原子力協定についての合意議事録等々であります。したがいまして、これは既に国会に提出をされております。

 七件の残り三件のうちの二件につきましては、いずれも、そもそも国会承認条約の実施に関します行政取り決めではありませんものですから、これは大平外務大臣答弁に従って提出されるべきものという範疇には当たらないと存じます。

 残りの一件につきましては、これは、国会承認条約である日米相互防衛援助協定、いわゆるMDA協定のことだと思いますが、実施細目の取り決めとして締結されたもので、この協定の実施、運用を把握しておく上で必要という見地から検討を行った結果、国会に資料提出されるべきものに当たらないという結論に至ったというのが今の御質問に対するお答えです。

 いずれにいたしましても、大平外務大臣のこの資料、武正先生、前にも御質問をいただいたことがあるんだと記憶しますけれども、私どもとしては、町村前外務大臣が御答弁を申し上げましたとおり、基本的にはこういった御意思というものを踏まえて対応してまいりたいと思っております。

武正委員 
今一本についての判断をされましたが、金澤さん、もしお答えいただければお願いをしたいんですが、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づく情報の保証及びコンピュータ・ネットワークの防衛に係る協力に関する交換公文、ちょっとこの中身、お答えいただけるとありがたいんですが。今外務大臣は、協議したけれども国会に提出するに及ばずということでございました。

 そもそも、昨年もこの交換公文の話を取り上げたのは、一昨年十二月、日米のミサイル防衛に関してその費用を折半しようという交換公文が締結され、半年後に官報に告示をされたわけなんですけれども、そうした重要な交換公文を、やはり今の、この後触れる、米軍再編にかかわる大変な巨額の費用を日本政府は拠出しようとしていることもかんがみて、私は先ほどの外務大臣の発言で、国会に提出するに及ばずと言ったことはいかがなものかというふうに思うからでございます。いかがでしょうか。

金澤政府参考人 
突然のお尋ねでございます。

 この交換公文といいますかは所掌外でございまして、正確にお答えする知識を持ち合わせておりません。申しわけございません。

武正委員 
外務省、いかがでしょうか。

梅本政府参考人 
この交換公文でございますけれども、今御指摘ございましたように、御答弁ありましたように、MDA協定第一条に基づいて締結をされたものでございますが、その内容でございますけれども、情報の保証及びコンピューターの防衛に関する協力ということで、これは平成十五年以来、防衛庁及び米国防省の情報通信部局間の協議において話し合いが行われてきたものでございます。

 この協力は、情報、これはデータでございますが、その情報の保証、それからコンピューターネットワークの防衛に関しまして、防衛庁と米国防省との間の情報交換を促進するということを内容にしたものでございます。

武正委員 
米軍再編に伴う最終報告でも、Xバンドレーダーの情報共有なども取り決められたわけでございます。日米間の情報をどう共有し、そして、総理に私も先週本会議で質問いたしましたが、情報の主体性をどう確保するのかという観点からも私は大変大事な交換公文だと思うゆえに、やはり外務委員会に提出が必要であったというふうに考えるわけでございます。

 そこで、米軍再編にかかわって、審議官級協議に御出席のお二方、お見えをいただいておりますので、それぞれ、まず、米軍再編に三兆円かかるというローレス発言について、こういった内容、費用を日米審議官級協議で協議してきたのかどうか。総理は既に、費用は合意はしていないというような言い方をしております、三兆円とか。ただ、こういった内容、費用を協議してきたのかどうかというのがまず一点。

 それから、お手元に、やはり資料の一番最後ないし最後から二枚目をごらんいただきますと、今回のグアムへの移転経費の、幾らかかるかという合意がされているわけでございます。一番最後のページには、ごらんをいただきますと、これは三月の末の報道、日経新聞からでありますが、自衛隊隊舎三億ドル、こういう記載、総合計九十八・一億ドル超の中で自衛隊隊舎三億ドルという記載があります。額賀防衛庁長官は、隊舎を今後グアムに建設することはないという本会議答弁をされておりますが、グアムに自衛隊隊舎あるいは自衛隊員の住宅などの建設、これを行おうという協議をこの日米の審議官級協議で行ってきたのかどうか。内容、費用、こうしたものを協議してきたのかどうか。これをそれぞれ、二問ずつになりますが、梅本外務審議官、金澤防衛局次長、お答えをいただきたい。

 とりわけ一問目については、ローレス国防副次官が先々週の日曜日、テレビのインタビューで、この三兆円という金額は日本側のパートナーから得た数字だと言っておられるわけで、日本側のパートナーというのはすなわち梅本さん、金澤さんというふうに当然審議官級協議ですから理解するわけなんですが、このことも含めてお答えをいただきたいというふうに思います。

梅本政府参考人 
日米間では、昨年十月の2プラス2以降、同会合で出されました共同文書で示された兵力態勢の再編に関する案について、実施のための具体的な計画を最終的に取りまとめるべく、外務、防衛当局間の審議官級の会合などの場で調整を行ってきたところでございます。

 この中で再編案実施のための費用面についても協議をしてきたということはまさに事実でございますが、協議の詳細については、米側との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきたいと思うんですが、日本の国内で幾らかかるのかということについてローレスがああいう発言をしているようでございますけれども、御指摘のローレス副次官の発言の根拠となるような、そういう点については話し合われておりません。

 というのは、日本国内において日本がやることというのは、施設を建設して提供する、これはSACOのときにもそうでございますし、これまでやってきているわけでございまして、いわば日本が条約に基づいてやるということでございますので、そこについてアメリカと交渉するということではございませんので、日本の国内でどのぐらいかかるのかということについて議論をしたということはございません。

 また、これは先般の報告でも明らかになっておりますけれども、例えば嘉手納以南の施設・区域の整理統合ということについても、まさに来年の三月までに具体案をまとめるべくこれから協議をしていくということでございますので、そもそも積算のしようがないというところもあるわけでございます。

 また、グアムにつきましては、その費用を、それぞれどういうふうに寄与し得るかというようなことについて話し合いが行われてきたわけでございますが、まさにこれはグアムの話であって、日本国内で幾らかかるかという話ではないということでございます。

金澤政府参考人 
まず、ローレス氏の三兆円の発言でございますけれども、在日米軍の再編に伴う措置につきましては、費用面も含めこれまで日米間のさまざまなレベルで協議をしてきたところでございますけれども、三兆円といったような金額を我が国が負担することを話し合ったといったようなことはございません。

 それから、グアムにおける自衛隊の隊舎の建設費についてのお尋ねでございます。

 今先生が御指摘されたような報道があったことは承知しておるわけでございますけれども、先般の日米の合意内容に自衛隊隊舎に係る経費は含まれておりません。また、合意に至るまでの具体的なやりとりや合意内容に含まれていないものにつきまして言及することは適当ではないと思いますので、差し控えたいと思います。

 なお、自衛隊の隊舎をグアムに建設する今後の予定というのもございません。

武正委員 
先ほどの梅本さんの、日本国内のことは日本だから、これは日本のことなんだ、グアムのことは日本のことじゃないからというのは、答えになっていないなというふうに思います。

 時間も限られておりますので、金澤さん、隊舎じゃなくて自衛隊の隊員の住宅については協議したんですか。

金澤政府参考人 
自衛隊のグアムにおける住宅についても、協議したということはございません。

武正委員 
今後、日程として、審議官級協議の日程を決めているのかどうか、これを最後に一点お伺いしたいと思います。

梅本政府参考人 
先般の合意を受けまして、これからいよいよ実施に入っていくということでございますので、しかるべき時期に審議官級協議を開いて今後の実施について話し合いを行っていくべきというふうに双方とも考えておりますけれども、まだ具体的な日時等は決まっておりません。

武正委員 
具体的な日時も決まっていない、しかも、協議で合意した以外のことはしゃべれない、こういった政府の説明というのは大変遺憾であります。総理も丁寧な説明を国会に対して行うと言いながら、今の外務省、防衛庁の交渉当局者、ここで最終報告が決まったわけで、しかも、これから日米審議官級協議をやるとか、日程も決めていない。

 要は、やはりこれまでの協議の過程をつぶさに明らかにしていただかないと、国民に対して巨額の負担を求めるようなことをイエスと言うような説明を国会としてとてもできないわけでありますので、民主党とすれば、改めて、予算委員会や連合審査、あるいは本委員会、あるいは担当委員会での審議をより求めていくのはもちろんですが、やはり政府としての姿勢、合意事項以外答えられないということがあってはならないということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。
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