国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2006年11月14日
【総務委員会】「地方分権改革推進法案に関する質疑」議事録

武正委員 民主党の武正公一です。

 地方分権改革推進法案の質疑を行わせていただきます。

 ただ、法案の審議に入る前に、NHKの命令放送について聞かなければなりません。

 再三、当委員会で慎重な対応を総務大臣には求めてまいりました。残念ながら、八日、答申が電監審から出され、そして即座に九日に命令を出されました。審議会ですので、特に電監審にあってはその答申内容に拘束されるということが大方の識者の分析でありますが、かといっても、やはり即出すというのはいかがなものかな、慎重な対応があってほしかったというふうに思わざるを得ないんですが、なぜ翌日出されたのか。また、再三、国会あるいはそれこそさまざまな関係者からも慎重な対応を求めてきたのに、どうして翌日すぐ出されたのか。御所見を伺いたいと思います。

○菅国務大臣 委員御承知のとおり、放送法の規定に従って、去る八日、電波監理審議会が開かれ、そこに諮問をし、同諮問について適当との答申を受けたところであります。今回は、そうした答申を受けまして、人道的問題、そして私は、現在進行中の問題である、そういう観点から、そういう重要性にかんがみまして、速やかに措置をすべきだ、実はそういう判断をいたしました。

武正委員 お手元に資料を、理事会の御了承を得て配らせていただいております。これは大臣が電監審に諮問されたときの、その文書の写しでございます。

 それで、放送事項、(1)、(2)ということで分けて、「上記事項の放送に当たっては、北朝鮮による日本人拉致問題に特に留意すること。」こういうような形で諮問をされたということでございます。私は、これまでのやりとりで、この4に例えば北朝鮮による日本人拉致問題ということで事項の変更をされるのかなというふうに思っていたんですが、(2)ということで、(1)の三項目の放送に当たってはという、全部にかかるような形で記載をされております。

 こういうような形でNHKに対しての命令事項の変更をされたというふうに理解をしておりますが、なぜ4という形で並びでされなかったのか、お答えをいただけますでしょうか。

○菅国務大臣 確かに、委員からお配りをしていただきましたこのような内容で諮問をしました。私自身も4にするのがいいのかも含めて検討しました。しかし、この拉致問題というのは、やはり1、2、3、この三つすべてに関係をしてくることだろう、そういう判断をしまして、今回のように「上記事項の放送に当たっては、」そういう形で諮問をすることといたしました。

武正委員 過去の命令事項、これを見てみますと、過去もこの1、2、3と大体同じようなものがありまして、昭和三十三年四月一日は、そこに4ということで「その他放送効果を高めるため適当と認められる事項」、昭和三十五年四月一日は、同じく4「その他国際親善、外国との経済交流及び海外同胞に対する慰安に資する事項」、こういった形で4ということで並列になっておりまして、昭和四十一年から三項目に絞られ、そのときは「時事」「国策」「国際問題に関する政府の見解」、そして昭和五十九年に、この2の「国策」が「国の重要な政策」、こういうふうに変更になってきて、以来、このお手元の資料のような1から3が、四月一日に命令放送がされてきた事項だったんですね。

 ですから、私はやはり4というふうに理解をしていたのでありまして、この(2)ということになりますと、大臣おっしゃるように、時事、国の重要な政策、国際問題に関する政府の見解、すべてにわたってこの拉致問題に留意という、個別的な事項をさらに強くNHKに対して命令していくということで、果たして、命令事項の変更、個別的な事項を書くということも戦後初めてのことだけに、さらに、こうした(2)ということでやっていくその命令のやり方もいかがなものかなというふうに言わざるを得ないのでございます。

 そして、三番目に移らせていただきますが、電監審のその審議についてです。

 我々民主党あるいは野党の委員からは、公開あるいは意見聴取なども行うべきである、こういったことも求めてきたんですが、結局公開もされず、それから議事録については、大臣は議事録をつくっているんだよというふうにおっしゃられますが、聞くと、できるのは一カ月後と。これは、総務省の通信基盤局の方四名が事務局を兼任されているわけですね。

 こうしたおよそ開かれた審議会と言えない実態について、大臣はどのように所管大臣としてお考えになられますでしょうか。

○菅国務大臣 電波監理審議会は、審議そのものについては公開しないものとされております。そのかわりに、審議後に電波監理審議会会長が記者会見を行って審議状況を発表し、また議事録も事務局で閲覧できるようにいたしております。

 特に、論点が編集の自由に関する配慮と明快であり、北朝鮮の拉致問題が現在進行中、そういうこともあって、審議会も即日答申をしていただいたのかなというふうに実は思っております。

 そういう中で、今委員から指摘がありましたけれども、審議会終了後に、今回も審議会の会長が記者会見をし、そして議事要旨も公開される、そういうふうに考えております。

武正委員 総務省に尋ねましたら、議事録ができるのは一カ月と言うんですけれども、これはちょっと余りにも時間がかかり過ぎだと思うんですが、速やかに議事録を公開されるお考えはございませんか。

○菅国務大臣 できるだけ早くというのは、ある意味では当然だと思います。

武正委員 そこで、この四月一日、当時の竹中大臣名で三項目の命令放送を伝えた。そのときは統括官がその文書を手渡したはずなんですけれども、当時、大臣は副大臣であったわけですので、これも戦後初めて、その文書を渡すときに口頭での要請が行われたわけなんですが、そもそもこれはやはり菅大臣の発案だったのかどうか。それから、ちょっと私、まだ聞いていなかったんですが、そのときは統括官が渡されていますけれども、今回のようにNHK会長が受け取ったのかどうか。それから、今回、大臣が直接渡して、NHK会長が受け取ったのはなぜなのか。会長が受け取るように伝えたのはいつだったのか。四項目にわたりますが、お答えいただけますか。

○菅国務大臣 まず、前回の命令の際の口頭要請でありますけれども、私は、副大臣に就任してから、やはりこの拉致問題、総務省としてできることはすべてやりたい、そういう思いで当たってきました。そして、朝鮮総連の施設に対しての減免措置の問題等もやはりきちっと対応すべきである、こういう通達も出すべきだ、これも実は私は考えておりました。そして放送について、特にNHKについてそういうことができないかなということを日ごろ言っていたものですから、そういう中で、拉致、大規模災害、テロ、大規模災害とテロについては以前にも要請という形で行った経緯がある、そういうことを伺っています。その中で、四月のことでありまして、私、記憶が定かではなかったんですけれども、説明を受けまして、もう一度調べ直しまして、事前説明があって、私が適当と判断をしたということも私は判断をいたしております。

 前回の命令書につきましては、当時の清水政策統括官からNHKの橋本会長に交付された、このように伺っております。そのときに三項目を口頭で伝えた、そういうことだというふうに思います。

 今回、これだけ大きな問題、またさまざまなマスコミ初め国民の皆さんからの関心事になっておりますので、これはやはり私から直接NHK会長に命令書を手渡すのが自然かなという判断を実はいたしました。

 そして、今回の命令書交付については、電波監理審議会、この答申が得られ次第できるだけ早く対応できるように、私から事務方に指示をいたしました。

武正委員 ちょっとよく聞き取れなかったのですが、四月のときは受け取ったのはどなただったんでしょうか。

○菅国務大臣 NHKの橋本会長です。

武正委員 今回は、やはり事の重要性ということを大臣も十分認識されて行ったということがわかったわけでございます。

 下村官房副長官、後で質問をということで、きょうは御出席をいただきまして、ありがとうございます。林副大臣にも後ほどお聞きをさせていただきます。

 特に、官房副長官もこの拉致問題には大変熱心に取り組んでおられることは私も承知をしておりますが、やはりこの間、この総務委員会では、拉致問題への支援、その解決のために、国会として、あるいは民主党ももちろんでありますが、全力を挙げる、これはもう論をまたない。

 そしてまた、もともとこの論議のきっかけは、先月の十日の予算委員会で、民主党の中川正春議員が総務大臣あるいは総理に、北朝鮮拉致問題の解決に政府として何ができるんだろうと。そのときに、北朝鮮に対する短波放送「しおかぜ」への支援ということで取り上げたのがきっかけだと、我々はそのやりとりの発端を理解しているんですね。そのときに総務大臣は、「しおかぜ」への支援、これをやりましょうということを言ったので、予算委員会の民主党の議員も、あっ、踏み込んだ発言をしたなと。そういう意味では、大臣のやる気みたいなものも十分伝わったわけですが。

 ただ、翌々日の閣議後の記者会見で、NHKの命令放送を行うと。今の大臣のお話では、もう前々から温めていたし、四月一日の命令放送についての口頭での要請は、今の大臣、菅大臣の案である、アイデアである、そういうことも先ほど言われたと私は理解いたしましたが、やはり放送の独立性あるいは報道の自由、これは放送法三条で放送番組自由編集ということでうたわれておりますので、やはりここは守ってあげなければならないんじゃないのか。それこそNHKが、海外でもその放送の内容が確かなものである、これから国際的な評判を高めていく、ちょうど今その時期であるだけに、やはり個別具体的なテーマ、内容について踏み込んで、しかも所管大臣がそれを命令するということが大変危惧されるわけでございます。

 この間、菅大臣は記者会見で、答申を受けた後、内閣の最重要課題だ、こういうふうにも言っておられます。最重要課題は幾つかおありになる内閣だと思いますので、最重要課題の一つということだと思うんです。そういった中で、官房副長官として、このやりとりをお聞きになって、どのようにお考えになられますでしょうか。

○下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今お話がございましたように、安倍内閣になりまして、拉致問題対策本部、安倍総理が本部長のもとに組織をされました。それだけ日本政府としても拉致問題を何とかして解決したいという、そのあらわれが、この総理を本部長とする拉致問題対策本部にあらわれているというふうに思いますし、この中にはすべての閣僚が参加されておられます。

 その中で、今菅大臣からお話ございましたように、菅大臣、総務省としても全力でこれについて対応したいということでございまして、また今回の件におきましても、法律にのっとって対処されていることだというふうに承知をしております。

武正委員 菅大臣は、やれることは何でもやりたい、こういうふうに言っておられて、今回の命令放送を即日出された。まさに法律にのっとっての命令なんですが、ただ、放送法の三十三条にはのっとっているんですが、放送法の三条は、番組自由編集、これが認められているわけなんです。ですから、同じ法律でも、その法律にのっとってやることが、その法律の三条に抵触する可能性がある。こういうことで、今法律にのっとってと大臣もあるいは官房副長官もおっしゃられるんですが、その点がやはり危惧の念を抱かざるを得ないのでございます。

 この点については、私は、この地方分権改革推進法案の審議が終わった後は、ぜひ委員会としてじっくりと、拉致問題の解決も含めてしっかりと議論を、日本政府として、あるいはそれこそ総務省として何ができるのか、こういった議論をやはり委員会としてやっていくべきだと思いますので、これは委員長にぜひお取り計らいをお願いします。

○佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

武正委員 官房副長官にもお答えいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、地方分権改革推進法案の質疑に移らせていただきます。

 先ほど、午前中は参考人からのいろいろなお話や質疑がございました。その中でもやはり、この法案でなぜ道州制を外したのかと。古川参考人からは自治体の適正なサイズの議論が必要なんだということもありましたし、前回の地方分権推進委員会の最終報告でも、残された改革課題として、道州制論、あるいはまた補完性の原理を参考とした国と地方の役割分担などが挙げられていたわけですね。もちろん、いわゆる財政規律、地方への税財源の移譲、これも残された課題の一つでもありました。

 総務大臣には、まず、地方分権推進法、地方分権推進委員会、そして地方分権一括法、この評価と、それから、一括法が平成十一年に制定された後、四百七十五本の改正ですか、その後の事後検証をやってこられているのかどうか。そして、今回の改革推進法は、三年間を経てそしてまた一括法を制定していく、こういうプログラム法だと思いますが、事後検証をその後やっていくおつもりなのかどうか、やるべきだと考えておられるのかどうか、あわせてお答えをいただけますでしょうか。

○菅国務大臣 まず最初の質問でありますけれども、平成七年に制定をされた地方分権推進法、これに基づいて設置をされた地方分権推進委員会は、二百四十五回という膨大な回数の審議を行ったというふうに聞いています。そして、その委員会が出した勧告を踏まえて作成された地方分権推進計画に基づいて、平成十一年に四百七十五本の個別法を一括して改正する地方分権一括法が制定をされた。さらに、これによって、機関委任事務制度が廃止をされたり、あるいは各省の包括的な指揮監督権が廃止されるとともに、国の関与の廃止縮小が行われるなど、一定の成果を上げることができたというふうに私は考えております。

 さらに、機関委任事務制度の廃止などによって、従来、機関委任事務とされていたものは、地方公共団体の事務、国の直接執行事務、または事務自体が廃止され、整理もされました。地方公共団体の事務とされたものについては、国の包括的な指揮監督権が廃止されるとともに、法令に違反しない限り条例を制定することが可能になった、地方議会や監査委員の権限が原則として及ぶことになったというふうに思っております。

 新たに設置をされる地方分権改革推進委員会における審議の内容については、基本的にはそれぞれの委員の判断によるもの、こうされておりますけれども、国と地方の役割分担を見直す中では、やはり平成十一年の地方分権一括法の制定によってなされた措置については、私は当然検証することになるのではないかなというふうに実は思います。

武正委員 私が特にお聞きしたかったのは、前回の一括法、平成十一年からこの七年間、四百七十五本の法律が制定された後の検証、これをやっておりますかどうかということでございます。

○菅国務大臣 今回の改革推進委員会では、そうしたことの検証の上に今回の勧告につながる、私はこういうふうに思います。

武正委員 私がお聞きしているのは、もう一度聞きますと、分権一括法は、平成十一年に法律が制定されて、四百七十五本の改正を行ったわけですね。改正した後の検証というんですか、改正して、それがよかったのか悪かったのか。

 ですから、これからの分権改革推進法あるいはまた分権改革推進委員会でやるというのが今のお話だとすれば、この間はやってこなかったということでよろしいでしょうか。

○菅国務大臣 その後には、三位一体改革、こういうことに取り組んできました。私としては、地方の自主性、自律性を高め、真の分権型社会を構築するために引き続きこの地方分権というのを進めていく、そういう主張をずっと唱えてきたわけですけれども、三位一体改革というのはそうした前の一括法を踏まえての一つであったというふうに私は思っています。

武正委員 やってこなかったということで私は承りました。

 であるならば、今度の分権改革推進法、そして一括法、バージョンツーをやったとすれば、そのバージョンツーができたらすぐにその後事後検証を始めるべきだというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○菅国務大臣 参考にさせていただきます。

武正委員 ぜひそういう形で、プラン・ドゥー・シーと多くの委員が言われますので、やはりドゥーの後のシーを速やかにやるプログラムを今からつくっていただきたい、このようにお願いをしたいと思います。

 私は、分権一括法のときにちょうど埼玉の県議会議員をしておりまして、そのとき地方事務官ということで県庁にそれこそ雇用政策あるいは社会保障ということで来られていた国家公務員の方々が、分権一括法制定後、みんな国に戻る。それこそ地方事務官、厚生省は厚生事務官に、労働省の職業安定関係事務官は労働事務官に、そして、それぞれ四十七都道府県に労働局がつくられて、今回いろいろと不適正な支出が会計検査院で挙げられておりますが、こうしたことになったのが、あれっ、地方分権といいながら、何で県の職員が、職員だと思っていたんですが、実は国から来られていたんですが、戻っちゃうんだろう、地方分権に逆行するんじゃないのかな、こういうふうに思ったわけなんです。

 私は、こうした分権の流れと逆に集権してしまったようなことは、前回できなかったことの一つとして、あるいは二つとして、やはり今回は検証していくべきだと思いますが、特に今二つ挙げたことについて、総務大臣としてどのようにお考えになっておられますか。

○菅国務大臣 地方分権一括法におきましては、国と地方の役割分担の原則から見て国の役割に属し、かつ、その事務の性格や事務処理の現状から見て国が直接執行すべき事務については、国の直接執行事務、そういう形にいたしました。

 従前、地方事務官が従事していた職業安定関係事務については、国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務といたしています。

 その際、雇用対策法が改正をされ、国と地方公共団体の連携の規定が創設をされて、国と地方公共団体の連携協力により、地域の事情に応じた雇用対策を円滑に展開することといたしております。

 一方、国民年金の事務につきましては、国が保険者として経営責任を負い、不断の経営努力を行うことが不可欠であること、さらに、効率的な事業運営を確保するためには一体的な事務処理による運営が要請されていること等から、原則として国の直接執行事務にした、こういうふうに当時は整理をされたということであります。

 私も、今の現状を見るにつけては、委員の指摘することも一理あるのかなというふうに今思っています。

武正委員 御案内のように、国民年金、それまで市町村の職員が徴収をしていたのが、いわゆるこれから大きな議論になる社会保険庁の職員がということも、変わったちょうどそのぐらいのタイミングで未納率がどんどん高くなっていった。十一年が二五・五、十二年が二七、そして十三年が二九・二、十四年に至っては三七・二%まで未納率がはね上がっていった。やはり身近な職員の方が社会保険庁の職員よりも徴収がしやすい、こういったことが指摘をされたわけでございます。

 また、当時、地方事務官、あるいは労働局を設置したときの地方分権一括法では、雇用政策に関する国と地方公共団体との連携強化、こういった項目もうたわれているんですね。確かに今、ハローワークから地方自治体は求人情報は情報をもらっています。どんな企業がどんな人を求めていますかという情報は、ハローワーク、厚生労働省から地方自治体はもらっていますが、相変わらず、求職情報、その地域のだれがどういう仕事を求めているかという情報は、ハローワーク、厚労省は自治体にくれないんですよ。地方自治体が雇用政策をやろうとしたら、地域のそれぞれの市町村、もうちょっと大きくていいでしょう、都道府県で、その県民の皆さんがどういう仕事につきたいかという情報が少なくとも県でわかっていないと、やはり的確な雇用政策は打てないと思うんですね。ですから、この分野もまだ依然、中央集権、地方に分権されていない一例ということです。

 私は、十一年のとりわけ象徴的なこの二つ、社会保障、雇用政策、これはやはり象徴的に今回分権をすべきというふうに考えております。

 そこで、先ほど官房副長官も、総理を本部長に、そしてまた全大臣が参加、そうした強い体制で拉致問題の解決に当たる、こういうふうに言っておられます。前回の地方分権推進委員会は、秩父セメントの諸井さんが委員長で七名の体制ということでありまして、御案内のように、分権の改革、勧告が出ても、それを法案にする際に中央省庁の大変な抵抗に遭った。そしてまた、当然、その中央省庁の応援をするというんでしょうか、いわゆる族議員の抵抗で、その分権の改革、勧告が次々にねじ曲げられていった。これが過去の分権推進委員会の反省、より強い推進体制が望まれる。まさに拉致問題の解決と同じように、総理が本部長、全大臣が参加、そして全省庁を挙げてこの分権をやるんだ、そういう体制が望まれるんだというのが十一年前の反省だったわけなんですが、残念ながら、今回、前回と同じような、いや、後で触れるように後退をしているのではないかと言わざるを得ないのでございます。

 そこで、まず、特に中央省庁等改革法四十六条、公共事業などの見直し規定というのが、前回も勧告そして法案化を進めようとしたんですが、要は公共事業をできるだけ地域にゆだねようということをやったんですが、大変な抵抗があってそれができなかった、こういったことが反省として当時の関係者から述べられているんですけれども、今回これがしっかりとできるんでしょうか。その公共事業の見直し規定、前回まだできなかったこと、同じ推進委員会の七名の体制でできるんでしょうか。これは総務大臣、お答えいただけますか。

○菅国務大臣 今回の地方分権改革の具体的内容は、地方分権改革推進委員会の調査審議、勧告の内容を踏まえて、政府として地方分権改革推進計画を作成していく、そういう中で内容というのは明らかになってくるというふうに思いますが、この地方分権改革推進委員会において、行政の各分野の国と地方の役割分担を見直していく中で、当然、この公共事業の見直しなどについても、地方分権改革を推進する上で、所要の具体的な取り扱いについても検討して勧告してくれる、そういうふうに思っています。

武正委員 神野さんという大学の先生を委員長として、これは地方六団体の考え方をまとめる前の地方分権構想検討委員会でしょうか、このときの組織としてイメージしていたのは、それこそ官房長官が本部長、そして全大臣が参加、それにさまざまな方々が入って強力な体制でやるべし、こういうような案でもありました。

 また、地方六団体は、そうした求めの中でも同様の考え方を持って求めてまいったわけでございますが、今回は前回と同じ体制になっております。とりわけまた、地方六団体は、地方の声をといったことを法律に書き込むように求めましたが、これができていない。先ほど全国知事会会長も、文書とそれから答弁で、質疑の中で触れておられます。

 民主党は、この四月、行政改革推進法案、民主党案で行政刷新会議をうたいまして、本部長が総理、そして各大臣がメンバーということで、地方分権も含めた行政改革のそうした会議を強い体制でやらなければ、先ほど触れたように、中央省庁あるいは国会のさまざまな議員の思惑でなかなか分権がうまくいかないんだ、これをやはり強力な体制で行うべきということを四月の法案では提案したわけでございます。

 先ほどもう総務大臣からお答えいただいたので、官房副長官、どうでしょうか。拉致についてはそういう体制で臨むんだけれども、後で触れるように、この間、特に前内閣のときに、地域再生なりあるいは構造改革特区本部なり、いろいろと本部をたくさんつくっていて、結局、何か横並びの地方分権推進委員会なのかな、地方分権改革推進委員会なのかなというふうに思ってしまうんですね。それこそ、なぜ、今回のこの法案提出に当たって、そうした強い体制で分権をやるんだ、安倍内閣の最重要課題の一つだ、こういう形で臨めなかったのか。ちょっと質問通告にはないんですが、お答えいただければ幸いです。

○下村内閣官房副長官 今回の地方分権改革推進委員会は、委員御承知のように、地方分権の推進についてすぐれた識見を有する方の中から、内閣総理大臣が両議院の同意を得た上で任命する委員を構成員としまして、そして、地方分権改革の推進に関する基本的事項について調査審議をし、その結果に基づく地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針の内閣総理大臣への勧告等を行うということでございまして、よくほかの審議会がございますが、これは諮問ということでございますが、勧告というのは大変強制力を持った言葉であるというふうに思います。

 そして、今御指摘がございましたように、拉致問題対策本部もそうでございますが、総理のもとに各閣僚が参加して組織をする、同じようなことができないのかということでございますが、特に地方分権につきましては、両院で承認をしていただいたすぐれた方に、これから我が国にとってどういう形での国と地方の役割分担、地方分権がふさわしいかということについては、まず専門家の方々にきちっとした議論を積み重ねていただき、その結果を踏まえて政府がそれに対して一体として取り組むということでございまして、政府がこの地方分権について積極的に取り組むという、ある意味ではシステムの違いはありますが、しかし、それによって姿勢が少し引いているということではないというふうに承知しております。

武正委員 拉致問題は安倍内閣の最重要課題、あるいは最重要課題の一つということをおっしゃられましたが、この地方分権は安倍内閣の最重要課題の一つということでよろしいんでしょうか。

○下村内閣官房副長官 今臨時国会におきましても、この地方分権改革推進法、これは安倍内閣になりましてから、急遽この推進法を重要法案としてこの臨時国会で提出させていただいているという姿勢からも、大変重要な課題であることは間違いございません。

武正委員 最重要課題の一つということで理解をいたしました。

 そこで、次の質問に移らせていただきたいんですが、地方分権推進法での税財源の充実強化が今回の改革推進法ではなぜ検討になってしまったのかということが一点。それから、これから三年間議論していく間に、今も進めている地方への税財源の移譲が議論している間はとまってしまっては元も子もないわけですから、この流れは引き続き続いていく、当然これがあってしかるべきと思うんですが、以上二点、お答えをいただけますでしょうか。

○菅国務大臣 今回の法案では、委員御承知のとおり、まず最初に事務事業をできる限り地方にゆだねる方向で見直しを行って、これに応じて、国、地方の税源配分の見直しなど財政上の措置を盛り込むこと、実はこういう組み立てになっておりますので、地方税財源を充実する方向で検討が進められていくこと、これは当然のことであるというふうに思います。

 前回の法律で地方税財源の充実確保が規定をされたのは、当時まだまだこの地方分権を取り巻く環境というものが高まっていなかったというふうに思っておりますので、地方税財源の充実の方向が明らかでなかった、そういう当時と今日の状況の変化というのも実はあるというふうに思っています。

 そして、第八条において、検討の結果としての財政上の措置の内容を地方分権改革推進計画に盛り込むこと、こういうこともしっかりとうたっておりますので、まさにこの税財源というのは極めて大事である、こういう観点からこの法律ができていることも御理解いただきたいと思います。

武正委員 この三年間とまることがないようにということはちょっとお答えがなかったんですが、ぜひ。

○菅国務大臣 それは当然のことであるというふうに思います。

武正委員 ただ、先ほどの答えですけれども、今回の新法では、いわゆる三位一体改革に伴う国と地方の税財源配分など財政上の措置のあり方について検討、こういう書きぶり、旧法は、国と地方の役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るということで、やはり明らかに税財源の地方への移譲ということでは今回は後退をしている、こう言わざるを得ないんですね。

 ですから、私は、やはりここは国会としても強い意思を地方に対して、先ほども知事会長も来られておりますし、あしたまた公聴会もありますが、強いメッセージを出すべきである、このように申させていただきます。

 そしてまた、もう一つ指摘をさせていただきますが、今回の法案では、首相の分権改革推進委員会からの勧告の遵守義務それから国会への勧告報告義務が、前回はあったんですが、今回は抜けているんですね。なぜ抜けたのか、お答えをいただけますか。

○菅国務大臣 地方分権改革推進計画の作成など、最終的な政策決定については政府の責任において行われる、そういう兼ね合いから、勧告の尊重に係る規定を置かないことにしたということであります。これは、中央省庁再編時において、同様の趣旨により、勧告等の尊重義務に係る規定について、各府省共通の取り扱いとして一律に廃止をされた経緯を踏まえたということであります。

 また、政府は、三年という限られた期間で、地方分権改革推進委員会の勧告を受けて速やかに地方分権改革推進計画の策定及びこれに基づく措置の実施まで行う必要があることから、国会への報告というのは、政府の責任で作成をした地方分権改革推進計画、これで足りるだろうというふうに判断をいたしました。本案では、国会の報告義務の規定はそういう中で置かない、こういう形になったところであります。

 なお、委員会の勧告等については、インターネット等を活用して公表したい、こう思います。

武正委員 中央省庁等改革法の五十一条二号の地方分権では「委員会の勧告を尊重して着実にこれを実施し、」ということで、やはり勧告尊重ということが政府のそれこそ義務として中央省庁等改革法でも盛り込まれているんですね。

 ですから、こうした法律は生きているんですね。政府は、いや、そういう尊重義務は、政府として、内閣として、もうどの法律にも入れていませんよ、こういうふうに言いますが、現にそういう法律が生きているわけですから、私は、やはり法律にちゃんと明示する、明文化する、これが説明責任として政府に求められるということで、この尊重義務を、あるいは報告義務も当然入れていくべきだ、このように考えております。

 お待たせをいたしました。

 構造改革特区本部、地域再生本部それから地方分権改革推進委員会、それぞれ地方分権あるいは地方の活性化あるいは地域再生、そしてまた、この後、林副大臣には、来年にも政府は特区法の新法を提出する、こういったことも既に公表されておりますが、本部がいっぱいできていて、一体どこが、それこそ地方分権あるいは地方自治体の活性化、結局横並びなのか、だれがリーダーシップをとるのか、そしてまた、それぞれ相互の関係は。

 まずは、特区本部と地域再生本部と分権改革推進委員会、この関係について、官房副長官、整理してお答えをいただけますでしょうか。

○下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 まず、構造改革特区推進本部は、構造改革特別区域基本方針の作成等、構造改革特別区域において特定事業を実施し、またはその実施を促進することによる経済社会の構造改革の推進及び地方の活性化に必要な施策を集中的かつ一体的に実施するため、内閣に設置されているものでございます。

 同様に、地域再生本部は、地域再生基本方針の作成等、地域再生に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に設置されているものでございます。

 また、先ほど申し上げましたが、地方分権改革推進委員会は、地方分権の推進についてすぐれた識見を有する方の中から、内閣総理大臣が両院の同意を得た上で任命する委員をその構成員といたしまして、地方分権改革の推進に関する基本的事項について調査審議し、その結果に基づく、地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針の内閣総理大臣への勧告等を行うものでございます。

 いずれにしても、地方分権の推進は内閣の重要課題でございまして、地方分権を進めていくに当たっては構造改革特区そして地域再生の経験を生かしていくとともに、構造改革特区、地域再生の推進に当たっても地方分権の推進という視点を十分に踏まえつつ取り組んでまいります。

武正委員 細かいですが大事なことなので、内閣の重要課題と今おっしゃられましたが、先ほど最重要課題の一つと、うんとうなずかれたんですが、最重要課題の一つということでよろしいでしょうか。

○下村内閣官房副長官 先ほど申し上げたのは、今臨時国会におきまして地方分権改革推進法を提案させていただいたのは、内閣重要法案の一つ、最重要課題の一つでございますが、当然、地方分権も最重要課題の一つでございます。

武正委員 臨時国会と通常国会と分けて対応されては、やはり継続性ということで問題があると思いますので、地方分権は安倍内閣の最重要課題の一つということでお取り組みをいただきたいと思います。

 今、構造改革特区は集中的、一体的、地域再生本部は総合的、効果的と、こう説明されてもよくわからないんですね。そして、ここに地方分権改革推進委員会が絡んでくるということなんですね。やはり、リーダーシップ、これが問われてくるというふうに思うんですね。

 私は、それこそ最重要課題の一つとして、総理を本部長に、そして全大臣を参加させ、地方分権改革推進本部なり、やはり政府としてのそういう組織があってしかるべきと思いますが、副長官、いかがでしょうか。

○下村内閣官房副長官 先ほど、構造改革特区本部、そして地域再生本部、また地方分権改革推進委員会、それぞれの役割分担について御説明いたしましたが、それぞれの役割のもとで、また委員の今の御発言についても一つの御意見として承りたいと存じます。

武正委員 ぜひそうした強いメッセージを内閣として出していただけるように求めたいと思います。

 そこで、副大臣、お待たせをいたしました。

 構造改革特区法案を準備中と承りましたが、特区制度の申請件数も若干先細りという中で、先ほど集中的、一体的と。集中的ということで言われましたが、さらに法案を出される、そういうお考えのようであります。出す以上は、地方分権との連携、整合性、これが必要と思われるんですが、例えば特区法案にその分権の視点をしっかりと取り入れていくお考えはあるのかどうか。あるいは、分権推進委員会との連携などが特区本部で、それこそ再生本部とは車の両輪というふうに言っておられますが、分権推進委員会とも車の両輪、あるいは政府がこれからつくる地方分権改革推進委員会、これとしっかり連携をしてやるんだ、こういったお考えであるというふうに承ってよろしいでしょうか。

○林副大臣 まず、先ほど、いろいろな本部があってということでございました。実は私どもも参りましたときにそういう印象を持っておりまして、構造改革特区、地域再生本部に加えて、中心市街地活性化、都市再生、四つのものが今までいろいろなところでやっておりましたのを、今、佐田大臣、私のところに集約させていただきました。

 まさに、委員が御指摘のように、今度、地方分権改革推進法、これを通していただけますと、改革委員会というのをつくるということになっておりますが、それも内閣府に置いていただくという方向のようでございますから、やはり一元的に実務がきちっといくようにしてまいりたい。

 その先駆けといたしまして、関係の局長級の会議を既に発足させておりまして、こちらではこうやって、こちらではああやってということがなるべくないように、今委員の御指摘のあった趣旨に合うようにやってまいる準備を既に始めておるところでございます。

 お尋ねの、特区制度に分権の視点を入れるべきではないかということでございましたが、まさにおっしゃるとおりでございまして、そもそも特区は、規制改革の議論をしたときに、一部地区だけでも先行的にやってみようということから始まったところでございまして、まさに地域でアイデアを出していただいて、そしてそれを、規制改革の導入を一部その地域だけでやってみることによって、地域活性化に貢献するものであるというものでございます。

 きょうはせっかくの武正先生のお尋ねでございましたので、実は、地方分権的な構造改革特区、例えば、地域における教育上の特別の事情がある等の一定の要件を満たす場合には、都道府県の教育委員会が有する教員職員免許状の授与権を市町村におろす、こういう特区があるのでございますが、北海道の清水町、これは第九の町として非常に有名になっておるんですが、この第九の合唱をやる活動を中心にまちづくりをやるということで、そういうことに携わっていらっしゃる指導者なんかが教壇に立てるようにする、こういう特区をやっておるところでございます。

 まさに、そういうことを通じまして、特区で既に一部先行型で分権をやっていただいているというのが幾つかあるわけでございますから、今御指摘のように、申し込みの件数が少し減っているというのもありますので、こういうことがさらにさらに推進されますように、特区法の改正に当たっては、委員御指摘のありました地方分権の視点というものを十分に生かしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

武正委員 分権改革推進委員会でもこの特区という考え方を加味していく、そういう相互の連携が現内閣でのさまざまな取り組みでは必要ではないかな。

 物の考え方をがらっと変えたとすれば、先ほどの雇用とかあるいは年金とか、もう地方に任せてしまえばすっきりするわけですよ。地域再生本部でも一生懸命雇用の開発というのはいろいろやっていますけれども、もう地域に任せちゃえばいいんですよね。ですから、ここのところがやはり中途半端な感であるということを、現内閣、何としても最重要課題の一つとしてお取り組みをいただきたいと思います。

 とりわけ今、教育基本法の議論では、教育委員会に対して、かえって中央政府のいわゆる締めつけを強くしようなどと伊吹文部科学大臣は言っておりますが、これは内閣の地方分権に逆行する行為であるということを言わざるを得ないということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。
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