国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2006年12月12日
【総務委員会】「NHK命令放送に関する質疑」議事録

武正委員 
民主党の武正公一です。

 きょうは、NHK橋本会長、御出席をいただきまして、ありがとうございます。また、民放連の渡辺小委員会委員長にも御出席をお願いし、御出席をいただいておりますことに感謝を申し上げる次第です。

 さて、既に委員会で御議論をいただいておりますが、命令放送についての御見解、それぞれ、NHK会長から、また民放連の渡辺小委員会委員長からもお聞かせをいただきたいと思っております。

 この命令放送が出される前からも、さまざまな議論が当委員会でもございました。その一番は、やはり放送法三条、番組自由編集に抵触するおそれありとの懸念でございます。ただ、残念ながら、電監審への諮問、そして即日答申、翌日命令書が橋本会長に菅総務大臣から渡されるということになってしまいまして、国会で再三慎重な対応を求め、あるいは電監審での意見聴取あるいは議事の公開などを求めてきた国会の一員として、甚だ遺憾であると言わざるを得ないわけでございます。

 しかし、それに対するNHK会長の見解というものがはっきりと強く、番組編集の自由に抵触する懸念ということでそれが示されたというふうに私はまだ理解をしておりませんし、また、きょうは民放連からお見えでございますが、それぞれのテレビ局の社長さん方は懸念を表明しておりますが、民放連としてはっきりとしたコメントを出されているということもまだ承知をしておりませんので、大変御無理を言ったわけでございますが、本委員会にお出ましをいただいて、それぞれ見解をお述べいただきたいというふうに思います。

○橋本参考人 
お答え申し上げます。

 命令放送にかかわる御懸念ということで御指摘いただきました。

 私ども、当然のことながら、放送番組の編集の自由ということを基本に放送してまいっております。この点、命令放送が両立しないのではないかという御懸念、あるいは、この中で具体的にこれに対して懸念を示していないというふうな御指摘がございますけれども、我々は基本的に、いかなる場合でも、報道機関としての姿勢を四六時中規範として持っている中でその放送を行っていく姿勢というものを貫くことがこの懸念をなくすことでございますけれども、こういうふうな命令放送と放送番組編集の自由というものが両立するかという懸念につきまして、いろいろな御意見がございます。御議論が出てこようと思います。現状のままでよいかという視点で、我々、こういう議論の場につきましては、しっかりと編集の自主、自律、自由というものを守ることが基本であるということを主張してまいりたいというふうに考えております。

○渡辺参考人 
御質問にお答えさせていただきます。

 このような機会を与えてくださいまして、まず感謝申し上げたいと思います。

 武正先生御案内のように、今回の放送命令の問題につきましては、既に東京の民放キー各社のトップがそれぞれ記者会見等で慎重にあるべしという見解を表明しているところでございますが、民放連としては、統一した見解は現段階では発表しておりません。

 そもそも放送法というのは、第一条に規定されておりますように、放送の自律を保障することによって、放送による言論、表現の自由を確保するというふうに規定されております。その上で、三条では、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」というふうに書かれております。

 その意味では、放送法三十三条の国際放送等の実施命令というものは、放送法に基づくものではありますけれども、言論、表現の自由や報道の使命、責任の観点からはやはり問題が残るものというふうに思料しております。国が個別の内容を具体的に指定して放送を命じるということは、やはり放送局の編成権を侵害するおそれというものを否定できないというふうに考えるからでございます。

 もちろん、我々といたしましては、拉致問題の一刻も早い解決、それからこれに対する国際的な理解を深めるなど、国際放送の果たす役割が極めて重要であるということは十分認識しておりますが、これまでのNHKの自主自律的な取り組みを最大限尊重すべきものであると考えております。

 他方、改めて、我が国におきます国際放送に関する論議、それからその制度が成立する経緯というものを振り返ってみますと、戦中戦後の歴史的なプロセスがあったということを感じておる次第でございます。

 放送法三十三条のスキームというのは昭和二十五年に規定されまして、国際放送は昭和二十七年に再開されたと認識しておりますが、こうした実施命令が規定された時代と現在の社会では、時代環境それから社会環境も激変しておりまして、メディアを取り巻く環境、それから放送の活用の方法なども全くと言っていいほど変わっているということではないかと考えております。

 そうした状況の中で、我々は現在、民間ないしは民間放送の参加をも念頭に置いた映像国際放送について議論を重ねておりますけれども、その議論の中で、放送命令というものが行われたことによりまして同様の仕組みが映像国際放送にも適用されることが懸念されております。そのため、放送の自律、編成権の問題、言論、表現の自由などの観点から、どうしても参加には積極的にはなかなかなれないという状況にございます。放送事業者としましては、視聴者・国民から誤解されることがないよう十分に留意していくことが必要だと思います。

 いずれにしましても、今回のNHKに対する放送の実施命令の問題というものは、国際放送のあり方に関しましても国民が幅広く議論する契機になったのではないか、そのように思料しております。

 以上でございます。

武正委員 
民放連としての御見解を示していただいたことに敬意を表したいと思います。

 会長にお伺いしたいんですが、命令放送をする放送法、それの中には、国の予算が海外向けの短波放送に投じられる、こういう条文がございまして、今、二十二億円でしょうか、全体が八十億円ぐらいでしょうか、国の予算が投じられている。これがやはり、放送法の、今言われた、当時できた法律のスキームとしてまた認められている。これがやはり、今回の個別的な事項、この命令の根拠にも、予算ということがある、こういうふうに言われているわけです。

 実際、海外向けのNHK短波放送への補助金というものが政府から支払われる、これは二十二億円でありますが、これがなくても、NHKとすれば、今NHK改革を進めていく中でしっかりと担保ができるのではないのかな、こういうふうにも考えるんですが、法律で書かれているからというような御答弁かもしれませんが、こういう考え方についてどのように御所見をお持ちか、お答えいただけますか。

○橋本参考人 
非常に具体的な御指摘をいただいたわけでありますが、実際にラジオの短波放送が育ってきた経過の中では、法律的に制度としてこういうものが行われて、それをNHKとしては運用してまいったものでございます。

 やはり交付金と命令放送という、まあ、法律的な解釈につきましては総務省さんの所掌ではございますけれども、我々、これは表裏一体のものと考えております。この中で、交付金そのものについては、これを賄っていくということで運用せざるを得ないという状況でございます。制度的にこれを準用してまいりたいというふうに考えております。

武正委員 
やっていかざるを得ないというようなお答えでありましたが、法律で政府からの予算というものを出してということが、最初会長が述べられた、NHKの番組自由編集、これは守りたい、守っていかなければならないということを阻害するのであれば、やはり法律も含めて見直しが必要なのではないのかな、このように考えるわけでございます。

 そこで、電波監理審議会が即日答申をしたわけでありますが、電監審の議事録が一カ月たってようやく公開をされました。その電監審の議事録を見ておりましても、例えば電監審の公開について、議事録のどこにも、それを委員の間で審議したというような過程が見られないわけでございます。

 お手元に、きょうは理事会のお許しを得て資料を配付しておりますが、平成十一年四月二十七日の閣議決定、「審議会等の運営については、次の指針によるものとする。」ということで、その「三、議事(四)公開2」をごらんいただきますと、「会議又は議事録を速やかに公開することを原則とし、議事内容の透明性を確保する。」こういったことが閣議決定をされております。「ただし、行政処分、不服審査、試験等に関する事務を行う審議会等で、」云々かんぬん「全部又は一部を非公開とすることができる。」、全部または一部というようなことも閣議決定をされております。

 総務大臣からは、累次の電監審の公開についての質問に対しては、いや、電監審は非公開だ、これはもう決めているんだ、こういうようなお答えが相次ぐわけでありますが、一つまずこの電監審の審議の公開について、閣議決定でもこのように決めていることもあり、また、これだけ国会でも議論を呼んだ個別的な事項変更、命令放送についての諮問を答申するその会議の持ち方。外部の聴取も行わない、あるいは、五件要請が出ておりました中にも、パブコメなどのそうしたことも行わない、こういったことが、果たして電波監理あるいは放送局の許認可、はたまた電波の有効活用あるいは電波利用料を決めていくなどなどの重要なことを審議する審議会としていかがなものか、このように考えるわけですが、改めて、なぜ電監審は非公開なのか、この点でお答えをいただけますでしょうか。

○菅国務大臣 
いわゆるこの電波監理審議会は、行政処分や不服審査等の審議を行うことから、審議会等の整理合理化に関する基本計画の趣旨を踏まえて、審議会の申し合わせによって、審議そのものは非公開になっております。

 電波監理審議会の審議の公開をしないかわりに、従来より、審議後、会長が記者会見を行い審議状況を公表していますし、議事要旨、審議に用いた資料等についても総務省のホームページ等で公開をいたしております。

 議事録については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の請求に基づき公開しているほか、電波監理審議会事務局においても閲覧で公開をいたしているところであります。

武正委員 
お手元の資料で今大臣が言われたただし書きがあるわけですが、行政処分、不服審査、試験等に関する事務などということでありますが、この電監審への、NHKへの命令放送、個別的事項の変更がこれに当たるんでしょうか。全部または一部を非公開ということですから、当たるところは非公開でも、命令放送のところは公開してもいいのではないのか、このように考えるわけでありますが、これについて意見を伺いたいと思います。

 きょうは、それぞれ、NHKまた民放連お見えでございますので、こうした、総務大臣の個別的な命令事項が、中立な、公平、公正な審議会に付されても、どうも中立、公平、公正な審議が行われにくい仕組みになっているのではないのかという電監審の、その権能をもうちょっとやはり高めていく必要があるだろう。民主党は既に、国家行政組織法第三条の独立行政委員会に準じたような、そうした委員会の提案をしております。

 この電監審のあり方、今回の答申のあり方なども含めて、そうした民主党の提案もどのようにお考えなのか。電波監理、あるいは放送局の許認可、あるいは電波利用料を決めていく、あるいは電波の有効な活用、これからの、今の日本にとっても大変大事な役割を果たすこうした審議会のあり方について、それぞれ、NHKそして民放連からの御所見を伺いたいと思います。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

○橋本参考人 
お答え申し上げます。

 幾つかございますが、この審議会等でこのような、いわゆる電波行政といいますか通信あるいは放送にかかわる分野、こういうものについていかに公正中立に行っていくか、透明性を保つかということでいえば、大変、基本的に重要なアクションだと考えております。その意味で、この審議会等の整理合理化に関する基本的計画というものはもっともなものというふうに考えております。

 その中で、特にNHK、言論、報道にかかわる立場で申し上げますと、昨今の電波行政で申し上げれば、いわゆるメディアの拡大、あるいはデジタル技術、こういう進歩が大変速い、そういうふうなものにいかに的確に迅速に対応するかというふうなことも当然必要なことでございますので、こういう点で、できるだけ、まあ、行政の仕組みとしてどのような仕組みが一番いいのかということについては、なかなか申し上げにくいことでございますけれども、基本的に、国民の納得を得られるような、表現の自由の確保、あるいは報道の使命の確保、こういうところを明らかにしていくということは、NHKの基本的な、あるいはこれはもうNHKだけでなく放送事業者としての基本的使命でございますので、ぜひそういうものを、理念が堅持され、主張できる仕組みというものが必要かというふうに考えております。

○渡辺参考人 
お答え申し上げます。

 先生の御質問、一つは国家行政組織法三条に絡むところがあったと思います。現在、通信それから放送というものは、国民生活に欠くことのできない重要な社会的な基盤となっているという認識でございます。

 民主党が構想されていらっしゃいます通信・放送委員会というのは、そうした国民全体の情報インフラについて、公平性や透明性を高めて審議する場として提案なされたのではないかなと推測しております。

 この過程につきましてはさまざまな議論がありまして、現段階で民放連としてまとまった考えはございませんけれども、放送分野に関して言えば、言論、表現の自由、放送の自主自律が保障されるという民主主義社会の根幹をなす大原則が、これからのIT時代にもしっかりと維持発展されることが最も肝要であるというふうに考えております。

 通信・放送委員会の構想については、幅広く国民の意見を酌み上げた議論が必要と考えておりますので、ぜひ、まさにこの国会の場で先生方によって十分に議論を深めていただきまして、国民が納得するような施策を講じていただきたいと思っている次第でございます。

 以上です。

武正委員 
先ほど電監審の公開について取り上げましたけれども、総務省の情報通信審議会については会議は原則公開となっておりますので、この閣議決定に基づいて原則公開、そして先ほどのようなただし書きがあった場合には非公開とするということが、やはりあるべき姿というふうに考える次第でございます。

 時間の関係もありますので、NHKの受信料をいわゆる強制徴収するための放送法の改正内容などについても総務大臣にも伺いたかったんですが、やはりこの命令放送ということもありますので、質問を次に移しまして、まず北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」に、具体的に今、総務省、政府として支援、検討がどういう状況なのか、お答えをいただきたいと思います。

○菅国務大臣 
「しおかぜ」の支援につきましては、現在、内閣官房拉致対策室と私どもの総務省の事務方が「しおかぜ」の運営団体であります特定失踪者問題調査会と三回会合を行いまして、同調査会の具体的な要望を確認しながら現在検討をいたしております。

 具体的に言えば、「しおかぜ」が国内から情報発信を行うには、かねてより申し上げていますけれども、NHKの八俣の送信所を利用するほかない。その利用の可能性について何回となく打ち合わせを今しているところであります。

 さらに、「しおかぜ」が国内から情報発信を行うためには、新たな周波数の確保が必要になる、このことを私は申し上げました。そして、そうした申し出があれば、私ども、全力を挙げてこの確保に取り組んでいきたい、そういうことも申し上げてまいりました。現在は、国際的なルールに基づいて確保のための準備を進めている、そういう状況であります。

 いずれにしろ、日本人が拉致をされています。北朝鮮の地で、自由を奪われて、助けを求めている日本人が数多くいます。そうした中で、日本から放送を発信できないということは、やはり政府として極めて遺憾なことであると私は思っていますので、こうしたことについては全面的に協力をするように指示をいたしております。

 いずれにしろ、安倍内閣総理大臣を本部長とする拉致対策本部ができました。そこと極めて綿密に連携を図りながら、このことが実現できるように最大限の努力をしていきます。

武正委員 
総務大臣の意図するところは私も十分承知をしております。先ほど、同僚委員からもその点は指摘がございました。私も同じでございます。ただ、やはり放送番組自由編集に抵触するおそれ、懸念あり、この思いは変わらないということを重ねて申し上げたいと思います。

 そこで、最後になりますが、お手元の二ページ目の資料をごらんいただきますと、近未來通信に関してでございますが、たしか総務大臣は、つい最近聞いたような、そういう記者会見をされておりましたが、内閣府の国民生活局の消費者調整課、PIO―NETという、各都道府県に置かれております消費生活センターと国民生活センターをオンラインで結ぶ、これは年間百万件ほど、いわゆる消費者から苦情が寄せられている仕組みでございますが、既に平成十年度から近未來通信に関して苦情が寄せられていた。特に十四年度からは、二けたのこうした苦情が寄せられていたわけでございます。

 総務省においては、つい最近聞いたんだ、こういうようなことでございますが、どうも政府の、関係省庁の連携、連絡が大変まずいのではないのかなということを今回のこの近未來通信に対して思いますし、そうはいっても、内閣府さん、経済産業省さん、先ほどおいでの金融庁さんなどに伺うと、実はやはり業法の縦割りの壁があって、総務省が、通信業界に関することはおれたちのテリトリーだ、こういうようなところがありやなしや、こういうこともやはり言われているわけでございます。

 やはり、あくまでも利用者あるいは投資家も含めた国民の視点に立って、ですから当然、電監審もやはり国民の視点に立てば原則公開でございますが、こうした点、もう十年度から政府にはこうした情報があったこと、このことを踏まえて、私は、総務大臣、立入検査強化などと言っておられますが、実はもう電気通信事業法には立入検査の権限はあるわけですので、そうじゃなくて、省庁間の垣根を越えて、その連携連絡が実はとれていないというのがこの事件の一つの問題点である、こういうふうに認識するわけですが、この指摘についての御見解、御所見を伺いたいと思います。

○菅国務大臣 
私、かねてから申し上げていますけれども、利用者からの苦情は私どもにはありません。しかし、これは、今委員が御指摘されました、投資に関する相談であったというように思います。

 しかし、私どもの電気通信事業法においては、利用者保護に立入検査が限定をされている。そういう観点から、今回のような事件が二度と起こらないように、未然に防ぐために、この法改正、こうした財務内容についても、このような新聞報道等もありましたから、そういう形の事業者についても立入検査できるような、そういう仕組みも今検討しているということで御理解をいただきたいと思います。

武正委員 
重ねて、関係省庁間の連携、連絡が必要なことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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