2007年5月8日
【総務委員会 議事録】 地方公営企業等金融機構法案について質疑 |
○武正委員 民主党の武正公一です。新機構法案の質疑を行わせていただきます。
総務大臣もヨーロッパに行かれたようで、フランスでしたか、何か地方自治体に民間金融機関最大の融資を行っている代表者と会っておられた映像が出ておりましたけれども、この法案を踏まえてそうした予定も組まれたのかなというふうに拝察をしたところであります。その成果についても別途お聞きをしたいというふうに思いますし、また御披瀝もいただければと思います。
さて、まず本法案でございますが、融資対象が縮小していくという法案の設計。しかし、債券借換損失引当金として積み上げてきた三兆四千億円の自己資本が新機構に丸々引き継がれる際、総務相と財務相が交わした覚書はどういう内容なのかお答えをいただきたいのが一点目。それから、新機構が基金や引当金を継承する妥当性はどこにあるのか。しかも、その配分が、三分の二の資金が新勘定に移管される、この二対一の割合、その理由。
以上三点、まとめてお答えをいただけますでしょうか。
○菅国務大臣 公庫の債券借換損失引当金の承継につきましては、私と財務大臣の間で覚書を交わしました。平成二十年十月の新組織移行時に見込まれる債券借換損失引当金、おおむね三・四兆円程度の全額を新組織に承継することとし、そのために必要な法的措置を講ずるとの申し合わせを行ったところであります。
また、将来にわたる経営の持続可能性を確保するために、一定の金利変動シナリオによるリスク分析を行って、一般勘定及び管理勘定に必要な資産を精査した結果、組織移行時におけるおおむね三・四兆円の債券借換損失引当金を承継することとなったところであります。このリスク分析のもとに、一般勘定においては、おおむね二・二兆円程度の金利変動準備金があれば長期間にわたり経営の持続可能性は確保できるものと判断をいたしました。
また、公営企業健全化基金は、公営競技収益の均てん化を図る観点から、収益の一部を公営企業金融公庫に積み立てて、その運用益をもって公庫貸し付けの利下げ財源とするためのものであります。
こうした制度の必要性等について、今回の政策金融改革によって変わるものでないことから、基金は公庫の解散時において、公庫から機構に現在と全く同じ形で全額承継をすることとしたものであります。
○武正委員 民主党はかねてより、省庁間の覚書というものは、立法府が審議をするに当たっては、やはり法律に書き込むべきであろう、こういった主張をしてまいりました。
そこで、今、覚書の内容は御披瀝をいただいたんですが、ぜひ覚書を委員会に提出いただきたいというのが一点と、やはり法律に書き込むということで立法府への説明責任、国民への説明責任を御対応いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤委員長 理事会で協議をさせていただいて、お願いしたいと思います。
○武正委員 三分の二が新勘定ということで、これからのそうした金利変動に対応ということの理由にされましたが、こういう意見があるわけですね、地方公共団体が高い金利でも必死になってそれを手当てしてきた、だからやはりこれは当然機構が全額承継をすべきであると。そういった論拠にもし立てば、どちらかというとやはり旧勘定の方に多く手厚くすべきだったのではないのかな、なぜ三分の二が新勘定なのかなというところはどのように御説明されますでしょうか。
○菅国務大臣 これについては、出資をした、国の出資者との問題もありますので、そういう承継の中で三分の二という形にさせていただきました。
○武正委員 地方公共団体は、おれたちが出したんだというふうに言われるんですが、よくよく考えれば、それは地方の市民、県民が納税をしているんですよね。だから、ここはやはり間違えちゃいけないというふうに思います。この後、またその辺についても指摘をさせていただきたいというふうに思います。
そこで、今回の提案理由説明で、いわゆる行革法に基づいて機構を廃止する、地方公共団体の資本市場からの資金調達を補完するため、新機構を設立すると。これは理由説明で述べられておりますが、いわゆるこの政府系金融機関の今回の見直し、百兆円近くのそうした政府系金融機関の融資を削減するんだ、その中に二十五兆円の旧公庫も含まれている。ただ、新しい地方共同法人に衣がえなので、結局は看板のかけかえじゃないのか。これは同僚委員からも指摘があったわけでございます。
そこで、民業補完が原則の地方共同法人、いわゆる民営化の五類型の一つと政府が仕分けをしておりますが、その納税義務は現公庫と比べて変化はあるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
○菅国務大臣 機構は、相対的に財政力の弱い市町村を中心として、自己調達に限界がある長期さらに低利の安定的な資金を供給するために、地方公共団体が共同して設立するものであります。このため、現公庫や地方公共団体と同等の公共性を有しているものだろう。そういう中で、課税上の取り扱いについては現公庫と同じく公共法人等に位置づけられ、現公庫に講じられているものと同様、法人税等の非課税措置を講じることとしたところであります。
○武正委員 官から民へといいながら、また民営化の五類型の一つといいながら、納税義務は現公庫を引き継ぐといったところ、これもやはり何のための政府系金融機関の見直しなのかと指摘をせざるを得ないわけでございます。
そこで、ちょっと観点をかえて、既に報道されております件を取り上げたいと思うんです。
政府が二〇〇三年度以降、いわゆる独法五十四を四十九に移行する過程で、総額十二兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めしていたことがわかった。新法人に移行する際、過去の損失を民間企業の資本金に当たる政府出資金で相殺、減資をした。こういったことが報じられております。
例えば、雇用・能力開発機構は、〇四年二月末、九千九百七十九億円の繰越欠損金があった。利用者が少なく無駄遣いとされた勤労者福祉施設の売却損などが大きな原因。〇四年三月に独法に移行すると、繰越欠損金の穴埋めのほか、資産を時価評価した際の目減り分を相殺し、政府出資金は約二兆一千六百億円から約八千億円に減少した。こう報じられております。
独法を所管する総務省、担当大臣として、特殊法人からこの独立行政法人化、そして簿価から時価への評価がえ、あわせて繰越欠損金を政府出資金で減殺をする、こういったことによって十二兆円が減資をしているわけでございますが、これはやはり税金投入と言ってもいいわけでありまして、いわゆる大手銀行に資本注入した同額に匹敵するわけなんですね、十二兆円。
こういったことを行っていることについて、担当大臣としての御認識。私はやはり、十二兆円をなぜ、どのように減資をしたのか、相殺をしたのかの理由とその説明、これをしっかり果たすべきというふうに考えますが、以上二点、御認識を伺いたいと思います。
○菅国務大臣 特殊法人が独立行政法人に移行する過程の中で、総額十二兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めをしている、そうした報道がなされたことについては私も承知しております。
その詳細な内容については承知をしておりませんけれども、一般論で申し上げれば、特殊法人等の独立行政法人化に伴う政府出資金の取り扱いについては、各独立行政法人の個別法に置かれた資産、債務の承継規定に基づいて適切に処理をされているものと承知をいたしております。
各法人に対する出資金の減少の大宗は、財務諸表上、研究開発費の使用分を欠損金として取り扱っていたものを整理したことや、施設の経年劣化による減価償却によって生じるものであるというふうに思っております。
いずれにせよ、今後それぞれの独立行政法人においては、効率的な業務運営に努めるとともに、財務諸表の適切な開示によって透明性を確保していくことが極めて大事であるというふうに考えています。
○武正委員 簿価から時価への評価がえ、これもあわせて減資をしているわけなんですね。そうした繰越欠損金も政府出資金で減資をするという、その説明をきちっと行うことが、やはり十二兆円もの巨額な税金が減資をされたことに対する説明責任になろうかというふうに思いますし、今言われた根拠法、設置法、資産から負債を差し引いた額を政府出資とすると設置法が規定をしている、やはりここは見直しが必要ではないかなというふうに考えるわけでございます。
あわせて、今回の公営企業金融公庫から新機構への見直しの際に同じ手続がとられる可能性があるという指摘がございます。これは、政投銀あるいは一つにまとめた新しい金融公庫、それもあわせて、政府系金融機関の見直しの際に、この独法と同じことが行われるんではないかという指摘があるんですが、まずは、当新機構発足に当たって、政府出資金を減資して累積損失を相殺することはないのか、確認をしたいと思います。
○菅国務大臣 まず、現在の公営企業金融公庫に、今委員から御指摘されたような累積損失は生じておりませんので、政府出資を減資する必要はないというふうに考えています。
なお、新機構発足に当たり、既往の政府出資は国庫へ返還をすることといたしております。
○武正委員 この間も、簿価か時価かということでの財務諸表の作成についても、時価を基本とするという総務大臣の御答弁もいただいたわけでありまして、新機構への衣がえに当たって、やはり時価ということでの評価がえをきちっとやっていただく。
あわせて、これは民主党が今回の公務員制度の法案への対案の一つとして、独法の統合、あるいは、こうした政府系金融機関の統合に当たってもそうですが、やはり資産を再評価だけではなくて再鑑定させる。不動産鑑定が、過去の鑑定に基づいて、単に評価だけ、再評価だけに終わっておりますので、私は、やはり再鑑定ということで、国民の税金を投じて蓄えられた、つくられた資産が、時価でどういう評価なのか、鑑定をきちっとやるべしというふうに考えるわけでございます。
そこで、質問を移らせていただきますが、郵政公社化、民営化の議論の際に、自治体への郵貯・簡保資金融資の可能性というものも議論の中で上がったというふうに記憶をしておりますが、今回、二〇一〇年でしょうか、ゆうちょ銀行の貯金残高百六十四兆円、かんぽ生命総資産残高九十一兆円、こういうような計画が郵政公社から総務大臣に提出されたと報じられておりますが、こうしたゆうちょ銀行あるいはかんぽ生命から自治体が融資を受けるということが考えられるのかどうか、あるいは新機構が融資を受ける可能性、あるいは新機構が発行する財投機関債をゆうちょ銀行やかんぽ生命が引き受ける可能性があるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
○菅国務大臣 日本郵政公社は、本年の十月一日に民営化した時点で、一般的な民間の金融機関としての地位が付与されるわけであります。地方公共団体に対する融資についても、民間金融機関と同様に可能になります。
その上で、個別の地方公共団体に対して個別の融資をするかどうかというのは、ゆうちょ銀行とか、あるいは郵便保険会社それぞれが経営判断をするものと考えております。
また、新機構の資金調達は、基本的には債券発行を基本とするものでありますから、郵便貯金銀行や郵便保険会社にかかわらず、金融機関からの融資による資金調達は想定しておりませんけれども、新機構が発行する債券については、それぞれの経営判断によって適切な判断がされるものと考えております。
○武正委員 新しい銀行あるいはかんぽ生命が考えることだ、ただ可能性はあるという御示唆がありましたし、また、そうであれば、郵政民営化あるいは財投改革、いわゆる出口論がまだ見えない中で、郵貯・簡保資金が自治体、あるいは今回の公営企業金融公庫が生まれ変わった新機構に債券の引き受けのような形で流れていくとすると、一体何のための郵政民営化だったのか、そして、財投改革の出口というのは結局前と変わっていないんじゃないのか、こういうふうに指摘がされると思うんですが、この指摘についてはどのように考えますか。
○菅国務大臣 今後は、それぞれの会社が経営判断として行うものであって、私は従来とは全く違うような体系になってくるだろうと思っています。
○武正委員 ただ、今の制度設計では、政府保証などもあわせて、あるいは、もちろん株式も政府が保有をして、全額民間に株を放出するのはいつなんでしょうかということもあって、かなり政府の関与が強い中での民営化がスタートするわけですから、そうした、あくまでも自主的に民間企業の判断というふうな形で突き放すことがいかがなものかと思うんですが、いかがでしょうか。
○菅国務大臣 三、四年以内に完全上場をするという方向で今詰めておりますので、ですから、そういう過程の中で、私は、当然経営者による判断が行われるだろうと考えています。
○武正委員 預かり限度額一千万円の撤廃とか、今の四年を前倒しで三年とか、非常に威勢がいいんですが、非常に民業圧迫の危惧も強まってまいりました中で、いや、上場すればいいのかというと、上場したって株式は政府が保有しているわけですから、やはり政府の関与というのは相変わらずあるわけなんです。
そのときに、資金がまた新機構の債券を引き受ける、あるいはそうした可能性があるとすれば、結局、郵政民営化、財投改革は見せかけだったんじゃないのか、こういうふうに指摘をされると思うんですが、この点はいかがでしょうか。
○菅国務大臣 そのような方向にならないようにこれは当然努力することでありますし、十年間で完全売却する方向になっていますから、それは確かに経緯というのはあるかと思いますけれども、基本的にはまさに民営化、経営者の判断、そこが極めて大きくなってくるだろうと考えています。
○武正委員 郵政民営化は、あくまで財投改革のために行ったはずなんですね。でも、財投改革の出口が見えないまま、郵政民営化だけが自己目的化しているんじゃないのか。しかも、十年以内に完全売却だといいますけれども、それだけ、市場からお金を調達することが目的になってしまって、そして民業圧迫を引き起こしていくということであれば、では財投改革は一体どこに行ってしまったのかということだというふうに言わざるを得ないのでございます。
そこで、質問を次に移らせていただきます。
これは日本経済新聞が五月二日に、独自に算出をして、地方公営企業のうち少なくとも七十二事業が二〇〇五年度末で実質債務超過に陥っていたことがわかったと報じられております。政府の分析では債務超過十七なんですけれども、地方公営企業年鑑で調べますと、設備の建設のための借入金は、地方公営企業では借入資本金と呼んで資本の部に含める独特の会計処理をしておりますが、借金には変わりないということで、それを資本合計から除いて独自に算出しますと七十二事業が債務超過に当たっている、こういうことが報じられたわけなんですね。
今回の新しい機構は、当然、貸出先を絞って、公営企業の新機構からの融資を縮減していく、こういう制度設計と胸を張られますが、現公庫がこの五年間、二〇〇七年度までに二九%貸出融資を削減したことと比較しますと、年間三%ですから、五年間でいうと一五%、一四%、つまり今の公庫の削減ペースよりも半分になってしまう、こういうことも今回の法案の問題点として指摘されているわけなんですね。
一方、地方公営企業自体の問題点、これについては、政府として方向性をしっかり出しているのかどうか。出しているとすれば、それを明示していただきたいと思いますし、実質債務超過が、政府が言っている十七ではなくて七十二である、この指摘についての御見解を伺いたいと思います。
○菅国務大臣 地方公営企業の経営については、平成十七年に地方公共団体に通知をした新地方行革指針において、民間への事業譲渡についての検討、民間的経営手法の導入、中期経営計画の策定、経営評価あるいは情報開示、給与、定員の適正化など留意しながら経営の総点検を行い、さらなる経営の健全化に積極的に取り組むことである、こういうことを実は要請いたしております。さらに、本年においても、平成十九年度の財政運営通知等によって、地方公営企業の経営改革に積極的に取り組むよう求められております。
今後とも、地方公営企業においてより一層の経営改革と経営基盤の強化に取り組んで、経営の健全化に努めていきたいというふうに考えております。
○武正委員 十七が七十二である、この報道について、御認識はいかがでしょうか。
○菅国務大臣 今の委員の指摘の方法で行うならば、七十事業というのはそのとおりだということを認めさせていただきます。
○武正委員 企業会計原則を初めこの公営企業自体の会計処理が独特の方式にあるというのも、やはりこれも合わせなきゃいけないというふうに思うんですね。まして地方公営企業改革をやるという政府であれば、これが当然必要だと思いますので、お願いをしたいというふうに思います。
また、この地方公営企業改革、また第三セクターの改革を含めて、このときに、先ほど、独法で使った十二兆円の欠損穴埋め金、政府出資金で減殺、こういうことをまたやってしまうと、結局また地方でも同じようなモラルハザードというか、責任の所在も明らかにならないまま行われてしまうと思うんですが、公営企業改革において、やはり、そうした累損などをしっかりと明らかにして、責任の所在をきちっと明らかにしていくということが必要だと思います。
先ほどの公営企業金融公庫全体の会計原則の見直し等を含めて、大臣の御認識をお答えいただきたいと思います。
○菅国務大臣 基本的には私は、委員の指摘のように、やはりできるだけオープンに、わかりやすい、そのことがまず大事だというふうに思っております。やはり国民の皆さんにそうした点をしっかり示す中で、私どもは、そうした負債を負うことがないようにこれは全力で取り組んでいきたいというふうに考えています。
○武正委員 以前、行政訴訟法ですか、市長、知事、首長の訴訟を二段階でということで、民主党はそれに対して、やはり責任の所在が不明確になるということで反対をいたしまして、国会をまたいで成立をした経緯もございます。やはり、公営企業あるいは第三セクター、そして独法、すべからく企業会計原則できちっと説明責任を国民に対して果たしていくということをお願いして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
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