2009/04/10
【衆院外務委 議事録】 米軍再編に係る政府の説明責任について

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 総理には、この後、外務大臣ともどもASEANプラス3への出発という話も承っておりますし、北朝鮮への決議、これを何としてもやはり国連で決議を通していくという働きかけもぜひASEANプラス3で進めていただけるよう、お願いを申し上げたいと思います。

 そこで、今の質問の続きですが、それでは、総理はこのグアム移転協定、協定化ということを、総理になられていつ知るようになられましたでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 武正先生、何日かまではちょっと正確に記憶しているわけではありませんが、各役所の所掌の話の説明を受けている中の一環にこの話があったんじゃなかったかなと記憶します。ちょっと正確なところではありませんが。

武正委員 いつかはちょっとはっきりしないということですが、総理になられてからということだと思うんですけれども、そのときにどのように思われたでしょうか。

 我々は、やはり今回のこの協定が非常に唐突に結ばれた、国会に提出されたという印象を非常に強く持っているんです。総理は、先ほど近藤委員が触れたように、毎年度の予算でしっかりと、国会も予算審査を通じて、あるいは政府も予算の提出を通じて進めていけばいいということを外務大臣当時述べておられますが、この協定化ということを聞かれて、どのように思われたでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 これは、財政の義務をある程度、複数年度にわたって求められることになるから、ことしは通ったけれども来年度は通らなかったというとまた話は込み入るかなというようなことは、正直、その説明を受けたときにそう思いました。

 それで、私はそれ以上深く追った記憶はちょっとありませんので、今この段階でそのときにどういう質問を逆にしたかと言われても、ちょっと正確な記憶があるわけではございません。

武正委員 ただ、あの当時、外務大臣それから防衛庁長官でしょうか、それから国務長官、国防総省長官ということで、2プラス2でサインをし、約束をしたわけですよね。総理とすれば、当時外務大臣として、そうした国際約束、これはやはり守るんだということで、毎年の予算化でそれは担保できるという認識だったと思うので、やはりこの協定ということが出てきたときに唐突感を持たれたのではないのかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 武正先生、これは最初から国会審議、国会承認を排除しているわけではありませんので、その意味では、このことに関しまして、極端にこれは前説を翻すことになるという意識はございません。

武正委員 この間、当時外務大臣に、二〇〇五年の十月、十一月におなりになられたんでしょうか。我々は、二〇〇五年の秋から外務委員会で外務大臣、現総理と質疑も行いまして、二〇〇六年、ちょうど三年前でしょうか、2プラス2でのロードマップにかけて、この外務委員会で何度となくその審議の内容をお聞きしてきたんですが、外務大臣あるいは当時防衛庁副長官、この外務委員会に出席をいただきましたが、いや、まだ協議中です、また、米国の了解をとらないとしゃべれません、こういったことがずっと続く一方、新聞には盛んに報道が続きまして、一体この国会の審議というのは何なんだろうと。やはり私は、政府の説明責任というものが、この米軍再編、2プラス2合意に至るまでも果たされていなかったということをつくづく今も印象深く思っているんです。

 では、その後どうなんだろう。あの当時、外務大臣として、例えば、今のこの辺野古の問題なども、これはもう少し詰めた上でいわゆる額についても明らかにできますというようなことを外務大臣当時も総理は述べておられるんですけれども、今もって辺野古の問題も、もちろん知事からの沖合移転の要請があったにせよ、そうした額については今もって政府から説明がないわけなんですね。

 ですから、一体その総額がどの程度になるのかというものも、今回の二十八億ドル、あるいは六十八億ドルという、日本の負担以外の部分というのがやはり見えないというのが現状でもありますが、この米軍再編に係る政府の説明責任というものが、総理とすれば、外務大臣当時、そして総理になられてこの協定の審議に当たっておられる今、辺野古の問題も含めてきちっと果たされている、そのように御認識をされていますでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 これは、武正先生、基本的には、幾らという話に関係しては、たしか真水で、当時と今では円が変わりましたけれども、まあとにかく二千八百億ぐらい、今二十八億ドル、当時はもう少しあったと思いますけれども、そういったような話だったと記憶をいたします。

 我々は、少なくとも、この沖縄、中でもいわゆる宜野湾というか普天間からの移転というものを一日も早く達成するということが沖縄県民の負担の低減につながるという、これが非常に大きな、優先順位の高かった当時の条件の一つ。もう一つは、やはり海兵隊員、軍属含めて約二万人弱のアメリカ兵関連者、軍属関係者が沖縄から離れるという、この二つは非常に大きい我々としての優先順位を置いておりました。

 これを達成すると嘉手納以南の土地も返還されるというのは後から出てきた話ではありますけれども、我々もこれは前から要求していたところでもありましたので、この話も、向こうが乗ってきたというときには、我々としては、これはそれなりの進歩、前よりは大分よくなってきたんだというように理解をいたしております。

 いずれにいたしましても、これを実行せしめるに当たって、今現実問題として移転先のところからいろいろな問題を抱えておりますのは御存じのとおりでして、我々としては、こういったものを一つ一つ詰めていくに当たって、かなりの時間を要しております。時間を要すれば要するだけ、いわゆる普天間におけます事故が起きる確率は上がることになりかねませんから、そういった意味では、先ほど同僚議員の御質問がありましたけれども、ああいうようなお気持ちというのも我々も十分に理解した上で、これをどうやってやるかというのに今非常に腐心をいたしておるのが現状です。

 いずれにしても、こういったものは金で解決できるという種類の話だけではないと思っております。感情論やら何やらいろいろございますので、我々としては、こういったようなものをきちんと丁寧に地元の御意見というものに耳を傾けながら対応していくというのが大切なところであろうと思っております。

武正委員 ただしかし、先ほど御紹介あった普天間移設協議会、一昨日ですか、開かれてはおりますが、これもたしか昨年の七月以来でありますし、普天間基地の危険性除去、これも前回地元から提起があって、ようやくプロジェクトチームが動き出したということでもありますので、やはりそうした政府の取り組みについてはもっと積極的にというのが地元の偽らざる声だとも思います。

 また、今指摘をしたのは、そういった意味での政府の情報開示、国会に対しては、総額一体幾らかかるんですかという話とともに、ではこのグアム協定について特に絞ってみますと、今資料がお手元にございますが、一ページ目をごらんいただきますと、これがいわゆる2プラス2の合意での日本側の負担、総額六十・九億ドル。外務大臣当時、もう見なれた表だと思うんですね。これに至る間も、外務大臣当時言っておられるように、四十だ、五十だ、いろいろあって、結局六十・九に落ちついたんですねと、そんなことも言われています。

 今回、この二十八億ドル、真水部分のことがこの協定に盛り込まれていると言われておりますが、実は、前文には、総額百二・七億ドルということ、あるいは、日本側の負担、拠出で六十・九億ドルということも盛り込まれているのと同時に、例えば家族住宅、出資、融資、効率化、二十五・五億ドル、これと真水部分の隊舎が実は極めて密接な関係にございます。すなわち、家族住宅に住まない独身の下士官などがこの隊舎に住むのであろうということなんです。

 二ページ目をごらんいただきたいと思うんですが、この一番上、独身下士官用隊舎、BEQといいますが、この戸数については、ここに書いてありますように、米側が見積もった独身下士官用隊舎の棟数は、「1米側から非公表を前提に入手した情報であり、公表すれば今後の米側の調達との関係で問題が生じるおそれがあるなどの理由から米国国内法上、保護されるべきものとされているため。」ということで、審議ではこの数が伏せられているんですね。

 そうすると、前から、外務大臣当時からお話はあったと思うんですが、一体この二十八億ドルの積算根拠は何ですかと言っても、外務大臣当時からお答えがない。具体的にこの二十八億ドルはこうこうこういう形で積み上がったんですよというお話がないまま、今回もその財政負担を協定で求められ、そして新年度の予算に三百数十億円が防衛省の予算として盛り込まれている。これだと、国会としてやはり審議が深まらないんですね。

 そういう意味で、これは一例ですが、隊舎の数などをなぜ隠さなければならないのか、もう不思議でしようがないんですね。こういった点、どうですか、総理、もう外務大臣のころから、この二十八億ドル、積算根拠、我々も再三再四言ってきたと思うんですが、協定の審議に付するためにやはり情報開示をしていくべきだと思うんですが、特にこの隊舎の点を一つ例に、御所見を伺いたいと思います。これは総理にお願いをしたいと思います、外務大臣としても当時から積算根拠を聞いてきたと思うのでね。米軍再編、協定でも相変わらず表に出てこないものですから。総理、いかがでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 隊舎の数を私に聞かれても、ちょっと、何ともお答えをできるような範疇の話とは思わないんですけれどもね。副大臣なりなんなりに聞いていただいた方が詳しくおわかりになれると思います。それがまず第一です。

 二つ目。二十八億ドルは上限ですから。どうやって積み上げてきたって、これ以上は払わないという上限をたしかあのとき決めた。最初は三十三ぐらいからスタートしたと記憶しますが、これが最終的に二十八になったんだと記憶をいたしますので、これは上限というように御理解いただいて、下から積み上げてきたというよりは、上限をこれ以上払わないというふうにしたのがたしかあのときの交渉の内容だったと記憶をいたしておる。

 隊舎の数については、副大臣等にお聞きください。

○北村副大臣 お答えいたします。

 在沖海兵隊のグアム移転に伴う施設及びインフラの整備費は百二・七億ドルとされていた。このうち、我が国は、二十八億ドルを上限に、真水による負担を行うとして、日米間で合意をいたしたものであります。

 二十八億ドルの内訳は、ロードマップ合意の時点で、在沖米海兵隊の移転に必要となる、司令部庁舎、教場、隊舎及び学校等生活関連施設の施設整備所要に着目し、アメリカ側が見積もったものであります。これを受けて、今般、本協定においては、ロードマップ合意の重要性及び我が国負担の上限の担保との観点から、ロードマップ合意の考え方に従って、二十八億ドルを限度とする旨を明記したというものであります。

 その上で、実際の予算計上に当たりましては、我が国の負担の対象はあくまで、先ほども申しましたけれども、司令部庁舎、教場、隊舎及び学校等生活関連施設を前提とするとの考え方のもとで、在沖米海兵隊の移転事業を最も効率的な形で、かつ速やかに実施するとの観点から、所要の経費を計上することとしておるものであります。

 この際、防衛省として、個々の事業内容やその積算について主体的に精査することとしておりまして、予算に計上した経費は各年度ごとに国会での御審議を受けることと当然なるものであります。

 このように、真水二十八億ドルの上限の考え方については、現在もロードマップの合意及びその際の考え方を変えてはおりません。その上で、実際の予算化に際しましては、最も効率的な形で各年度ごとに精査をなし、国会の御承認を受けていくという考え方でございます。

 以上です。

武正委員 全然答えていないじゃないですか。隊舎の数をなぜ隠しているのか聞いていたんですね。それについて、さっき述べたペーパーでは納得できないから聞いたのに。もうきょうは、総理に直接お答えいただきたいということで、ちょっと先を急ぎたいと思います。

 次に、お手元の資料で六ページをおあけいただきたいと思います。

 米国議会の承認が必要だということで、五ページには、過去、米国議会で承認を得た日米租税条約、日米刑事共助条約が載っております。私は、やはりもっと承認をアメリカ議会で得ていくべきだと。まして、総理が先ほど言ったように、協定が必要な理由は、予算がこれから複数年にわたって担保できるということを言われたわけですから、やはりアメリカ議会も承認をすべきだということを私は申し上げておきます。

 そこで、六ページをおあけいただきたいと思うんですが、まず最初に、オバマ大統領の施政方針演説が載っております。これは二月二十四日でありまして、下から三行目から読みますと、「私の予算では、陸軍と海兵隊の人員を増強する。」このように出ております。下の英文は、ホワイトハウスホームページより抜粋、一月二十一日発表の、いわゆるオバマ・バイデン・アジェンダでございます。ここには、英語で、オバマとバイデンはプランをサポートすると。陸軍にあっては六万五千人、そして海兵にあっては二万七千人増員をすることをプランとしてサポートする、こういうふうに言われているわけなので、そうしますと、海兵隊員の二万七千人、この増員ということが今のアメリカ政府ではうたわれている。

 そうしますと、この審議を何度となくやってきましたが、沖縄の総定員数は八千人減る。先ほど総理が言われたように、沖縄の負担軽減なんですということなんですが、新しいオバマ政権では、海兵隊員の総定員を二万七千人ふやすんだと。こういったことになりますと、せっかく沖縄の定員が八千人減っても、また、ふえた二万七千人から、ではこの一部を沖縄にということになりかねないわけなんです。これでは、結局、負担軽減が絵にかいたもちになりかねないというふうに危惧をするわけなんですけれども、これを見られて、総理としてどのようにお感じになられますでしょうか。

○麻生内閣総理大臣 ここを読みますと、「アーミー バイ シックスティーファイブサウザンドソルジャーズ アンド ザ マリン コープス バイトゥエンティーセブンサウザンド」と書いてあるので、これはどこも沖縄からと書いているわけではないんだと思うんですね。これは世界じゅうからやっている話に見えますので、沖縄から特にどうのこうのという話には全く感じておりません。

 したがいまして、本件グアムの移転の話がこの海兵隊の増員と直接関係づけられることはない、私はそのように理解をいたしております。

武正委員 おわかりいただいていると思うんですが、海兵隊員の総定員が二万七千人ふえるという中で、そのふえた定員の一部が沖縄に新たに来るという可能性というものは否定できないと思うんですが、この所見、いかがお考えかということを聞いているんです。八千人沖縄の定員が減った、負担軽減ですよというふうに政府は胸を張るんですが、新しいオバマ政権では海兵隊員を増員する、二万七千人ふやす、そうすると新たに定員がふえる可能性があるという指摘についてはどのようにお考えになるかということです。

○中曽根国務大臣 米国からは、ロードマップの協議を行う過程におきまして、委員御承知のとおり、今回の再編では、沖縄に駐留する海兵隊の定員は約一万八千人であって、本件グアム移転が実現した後の在沖縄海兵隊の定員は約一万人になる、そういうふうに説明を受けているわけで、これは毎日御議論いただいているところでございますが、このようなアメリカ側の説明というものは、日米両国で合意いたしましたロードマップ、そしてこの協定に基づいて、所要の措置をとることの前提の一つとなっているわけでございます。

 総理が二月にオバマ大統領と会談をされました際に、この協定の実施を含む在日米軍再編をロードマップに基づいて着実に実施していく、そういうことで合意をしているわけでございまして、今総理からお話ありましたように、増員については、いつ、どこからどこへ、何人持ってくるとか、そういうものが明らかになっているわけではありません。そういう意味からも、この移転事業というものはロードマップにのっとって粛々とやっていく、そういうことだと思います。

 御指摘の海兵隊員の増員と関係づけられることになるとは考えていないところでございます。

武正委員 昨年の九月初旬に協定化について発案ということで、総理はいつ聞いたか定かではないということでありましたが、その協定作成中に政権が交代をし、そして、一月にオバマ・バイデン・アジェンダで海兵隊員二万七千人の増員をうたっているということからして、やはり、ここで協定化を無理にし、署名し、総理がいみじくも言ったようなそうした、予算で担保できるし、ましてや外務大臣当時の2プラス2で国際約束をしっかり結んでいるんだ、それに乗っていくべきであって、ここで無理やりの協定化というものが非常に無理のあること、ましてや米国議会の承認を得ていないこと、これは大変問題があるということを指摘し、質問にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。