2009/04/15
【衆院海賊・テロ特別委員会 議事録】 海賊対処法案ついて

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 海賊対処法案について質疑をさせていただきます。

 所管大臣が海洋担当大臣ということでありますので、通告はそれぞれ大臣にしておりますが、時々に法案の条文についての解釈等、所管大臣にも伺いたいというふうに思っておりますので、適時適切、お答えを求めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それで、最初からいきなり、ちょっと条文の解釈で恐縮なんですけれども、この二条七号でしょうか、いわゆる海賊行為、一から四、定義をしておりますが、その「海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為」と。「凶器を準備して船舶を航行させる行為」というと、外から見ているだけだと、なかなかこれは海賊だということで見つけにくいのではないかなというふうに思うんですが、これは、どのようにしてこのことがわかるということで、まずは防衛大臣でしょうか、お願いいたします。

○浜田国務大臣 いわゆる凶器準備航行については、本法案の第二条第七号において、同条第一号から第四号に規定された船舶強取、運航支配等の海賊行為を行う目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為であり、海賊行為の一類型と定義をされております。

 凶器準備航行に該当するか否かについては、船舶に積載された凶器の状況、船舶の外観、航行の態様、乗組員の挙動その他の周囲の事情等を勘案した上で判断することになろうと思います。

武正委員 多分、見ただけですとなかなかわからないということもあろうかと思いますので、二問目に触れておりますが、要は、周辺で同じように海賊対処行動をしている他国との連携とか情報共有とか、そういったものがやはり大きいのかなと。きょうも午前中から、先ほどシンガポール船籍あるいはマルタ船籍ですか、映像で見ていると、海賊船といいながら、洗濯物が干してありまして、あれが海賊船かなと。まあ、海賊船なんでしょう。後ろに何か曳航していましたけれども。

 ですから、見た目で海賊船ということで、特にこの七号というのは、凶器を準備して航行ということですから、そういった意味での情報共有というものがかぎになってくると思うんです。EUによるアタランタ作戦や、今お手元に資料を配付させていただきました、これは衆議院の調査局作成資料の中からの資料でありますが、コアリションバトルスペースということで、いわゆるCTF150、152、158のエリア、150はほとんどインド洋、それこそアデン湾、そして紅海、すべて含まれるという図であります。

 こういったCTF150と、あるいはまた、今度は海賊対策ということで、多国籍海軍部隊、これが、ここに書いてありますが、CMFですね。合同海上部隊司令部司令官のもとにできておりますが、こういったところとの連携、情報共有ということが行われているということでよろしいでしょうか。

○浜田国務大臣 我が国の関係船舶の護衛を効果的に実施するためには、今先生御指摘のように、関係国、関係機関との連携協力を行っていくことが重要であるというふうに考えております。新法のもとでの海賊対処活動においても、現地の海賊の状況、各国の活動状況等について情報交換する等、各種連携協力を行っていく考えでございます。

 具体的には、連絡官等を通じまして関係国、関係機関との間で各国の活動状況について情報交換を行うほか、護衛艦等各国の艦艇との間でも現場海域における海賊の状況、各艦艇の活動状況等について通信による情報交換を行っていきたいというふうに思っておるところであります。

武正委員 資料の二ページには、今回のアデン湾においての海賊対処行動、今は海上警備行動での実際の活動について、これは防衛省さんの資料でありますが、具体的には今海上自衛官がバーレーンの連合海上部隊、CMFの司令部に二名駐在をしているということでよろしいでしょうか。

○浜田国務大臣 そのとおりであります。

武正委員 CMFということで、連合海上部隊ということでありますが、このほか、CTF150あるいはCTF151という、先ほど触れました多国籍海軍部隊、この合同海上部隊司令部、CMF司令官の指揮下にあるこのCTF150、151との連携というか情報共有というものはいかがでしょうか。

○浜田国務大臣 今回、海上警備行動に基づいて派遣された護衛艦がCMFの指揮下で活動するということはなくて、また新法に基づいて派遣される部隊についてもCMFの指揮下に入って活動するとは考えておりません。

武正委員 その話はこれから聞こうということだったので。

 ここに書いてあります、一ページ、資料をごらんいただきますと、CTF150ということで、これは多国籍海軍部隊ということですね。合同海上部隊、CMF司令部司令官の指揮下での不朽の自由作戦後、OEFの一環として海上治安活動、MSOを実施する多国籍海軍部隊、CTF150である。

 これについては、既にテロ特措法で、海上での補給活動についてはCTF150の指揮下にはないけれども、やはり情報共有をこのバーレーンの連合海上部隊、CMF司令部で、同じく海上自衛官二名駐在のもとやっているというお話だったと思うんですが、私が今聞いているのは、このCTF150との連携が今回の海上対処行動、海上警備行動であるのかないのか。

 また、今度、ことしの一月にCTF150から衣がえをしたと言われております海賊対処を目的としたCTF151、これと同じく連携あるいは情報共有というものがあるのかないのかを聞いております。

○浜田国務大臣 大変失礼しました。

 先生のおっしゃるとおり、今後も情報交換を行っていくということであります。

武正委員 情報交換でありますが、先ほど、もう既に防衛大臣が答えられたように、指揮下にはない。指揮下にあるということは当然やはり日本の憲法のもとでは許されない、あるいは集団的自衛権のおそれも当然出てくるということで指揮下にはないということでよろしいでしょうか。

○浜田国務大臣 そのとおりだと思います。

 それで、今回の法律自身もそういったことにも十二分に配慮しながら法案立ての仕方をしているというふうに思っているところであります。

武正委員 ただしかし、先ほどの二条七号のように、凶器を準備して航行している船、それを見分けるときに、司令部からの情報とか各国艦船との情報、これを共有しなければならないということがあるわけですので、やはりいわゆるその指揮下に入るか入らないかというようなところも極めて重要な、国会として関心を持たなければならないポイントだというふうに思っております。

 そこで、海上での補給活動について伺いたいんですが、ちょうどきょうも午前中、与党の委員からありました。これもやはり補給活動を、ここに書いてありますね、この二ページ目、三つ目の白丸のところの「任務を効率的に実施するため、必要に応じ、補給支援活動に従事する補給艦から、海賊対処の護衛艦へ給油を実施」ということで、今回それが実施をされたということであります。

 先ほど与党委員からは、いいじゃないかと、時間も短縮できるし、当然のこと、いいことだというお話がありましたが、やはり疑問に思うのは、テロ特措法で派遣をされた補給艦が、今度は海上警備行動で派遣をされた護衛艦に、幾らインド洋が同じエリアだといって補給をするというと、何か大丈夫かなと。特に今回の海上警備行動が国会の関与なしに、あるいは国会へのそうした事前の、何というんですか、承認とか報告、こういったものがなしに派遣をされているということを考えますと、本当に大丈夫かなというふうに思うんです。

 今回のこのテロ特措法に基づく補給船の補給活動、これについて、その根拠法、あるいはどういう理由で今回この補給支援活動ができたのか、これについてわかりやすく御説明いただけますでしょうか。

○浜田国務大臣 三月十三日の海上警備行動の発令におきまして、補給支援活動を行う部隊に対して、必要に応じて、補給支援活動に支障を生じない範囲で、海上警備行動による派遣護衛艦へ燃料等を提供するように命じたところであります。当該補給は、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動の一環として行われるものであります。

 海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給等の支援を行うことは、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことであり、海上警備行動により派遣される護衛艦が給油等を必要としている際に、近傍の海域で補給支援活動を行う補給艦が補給支援活動に支障を生じない範囲で当該護衛艦に給油等を行うことは何の問題もないと考えているところであります。

武正委員 資料三ページ目をごらんいただきたいんですが、自衛隊関連法における国会関与規定ということで、活動の国会承認、国会への報告について、PKO協力法以来、今回の海賊対処法案、これも国立国会図書館に作成をいただいたわけであります。やはり国会が、この自衛隊の海外への派遣については、シビリアンコントロールの観点からきちっと関与をしていくべきだ、このように私も、そしてまた民主党も考えるわけなんです。

 例えば、今のお話ですと、新テロ特措法で、これは活動の国会承認、承認規定はないんですけれども、実施計画を報告ということなんです。この実施計画では、新テロ特措法の方から考えてみますと、今回の補給活動というものは、この新テロ特措法の実施計画には当初から盛り込まれていた、あるいは当然この実施計画で読み込めるということを先ほど大臣とすれば言われたということでよろしいでしょうか。

○浜田国務大臣 海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給の支援を行うことは、これは先ほどもお話ししましたように、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことであるということを私申し上げましたけれども、そういった意味では、今先生がおっしゃったように、我々とすれば、新たな命令で、海上警備行動の中の一環として、要するに、補給支援活動でも、今回警備活動で行っているものに対しても、海上警備行動で行っているものに対して給油を行うように命令を下したわけですから、そこで担保しているものと思っておるところであります。

武正委員 やはり、まずは海上警備行動が、国会への報告をこの八十二条で規定していないということは、我々考えますに、海上警備行動というものが日本の領海もしくは近海というのでしょうか、こういったところを想定していたので国会への報告などはあえて盛り込まなかった。まさか、それこそ一万二千キロかなたのアデン湾・ソマリア沖に海上警備行動で発令するということは想定されていなかったのではないのかというふうに考えるわけなんですね。

 ですから、今回の海上警備行動でのアデン湾・ソマリア沖への派遣、そしてまたテロ特措法で派遣をされている補給艦から補給を受けなければならないという、こういった、私からすれば、やはり国会に当初実施計画を報告されていた任務とは違う事態がここで突出をしてきた。そういったことを考えると、国会の関与というものを、あるいは国会への事前承認実施要領なり、これを新しい法案では盛り込む必要があるのではないかなというふうに考えるわけであります。

 そこで、せっかく補給活動ということに触れましたので、外務大臣にお聞きをしたいんですが、この新テロ特措法あるいは旧テロ特措法あわせまして、インド洋で補給活動をこれまでもあるいは今も行っている。以前も聞きましたけれども、この中で、ACSA、物品役務相互援助協定に基づいて、日本側から特に米側に対して、ACSAは米側ですね、米側に対して給油をされていると。その額についても以前聞いたことがあるんですが、改めて、今わかるところで結構ですが、合計、その量あるいは額、どの程度の援助あるいは役務の提供になったのか、お答えをいただけますでしょうか。

○中曽根国務大臣 今委員の御質問というのは、インド洋においてということでございますか。(武正委員「はい」と呼ぶ)日米物品役務相互提供協定、ACSA、この枠組みに基づいて補給支援を行ったということはございません。

武正委員 インド洋ではないということですかね。

 それでは、多分イラクではあったということでしょうか。ただ、イラクについて、ちょっとここでお答えをと言うとなかなかきついかもしれませんので、また次の機会にしたいと思いますが。

 多分あるんですよね。いかがですか。

○中曽根国務大臣 いわゆるテロ特措法におきまして、若干そのような補給が行われたと聞いております。

武正委員 テロ特措法に基づいて米側に対して給油をして、それについて、額、量というものを以前お聞きしたことがあったものですから、ちょっとそれを確認で改めてお聞きしたんですが。物品役務相互援助協定、ACSAに基づいて、これまでの実績、合計量あるいは合計額は幾らか、お答えをいただけますでしょうか、外務大臣。

○中曽根国務大臣 ちょっと先ほどの私の答弁を少し訂正させていただきたいんですが、ACSAの枠組みに従って行われるこの補給、自衛隊による米軍に対するいわゆる物品とか役務の提供は、ACSAの付表の2に定めます日本国の法律、これの規定であって現に有効なものに従って行われるということになっております。

 このACSAの付表には、確かに今申し上げました旧テロ対策特措法、イラク特措法、これが掲げられておりますけれども、いまだこれに基づいて補給したのはないということで、訂正させていただきたいと思います。

武正委員 ちょっとまた私の方も、以前の議事録を精査したいと思います。

 そこで、防衛大臣、この補給については、自衛隊艦船であれば、海上警備行動に基づいて、今回派遣された護衛艦にテロ特措法で派遣された補給艦から補給しても問題ないんだというお話なんですけれども、例えば、これがインド洋で行っているように、他国の艦船に補給をしていますよね。同じようなことが、あの周辺には他国の艦船がいる、そして、先ほどのように情報共有もしている、おまけにバーレーンには二名の自衛官も派遣をしている、指揮下にはないけれどもというお話ですが、他国の艦船にも補給することはできるというふうに考えておられますでしょうか。

○浜田国務大臣 先生、これは、我々とすれば、補給支援法にのっとって任務をしているわけでありますので、他国の艦船に入れるということは想定しておりません。

武正委員 そういうことをやり出すと、本当に泥縄というか、こういうことになってしまうから、お聞きをしたわけであります。

 そこで、やはり私は国会の関与を、自衛隊の艦船を派遣する以上、今回の補給についても、自衛隊艦船同士で構わないんだということではなくて、派遣の目的、そして派遣による活動地域あるいは期間、こういったものがきちっと国会に報告をされる、そして承認を受ける、こういった枠組みが、この三ページの表でいえば、PKO法、周辺事態法といった形で、事前承認なり、武力攻撃事態法もそうでしょうか、こういったことが必要なのではないのかなというふうに思うんですが、こうした国会の承認の必要性について、防衛大臣、いかがでしょうか。

○浜田国務大臣 先生、いろいろ御議論のあることは私も承知をしておりますが、今回の海賊対処法案における国会の関与につきましては、海賊への対処は、海上における公共の安全と秩序の維持を図ることを目的とする警察活動であるということ、そしてまた、当然、これは国会への報告、承認というものが必要となるものではないということ。その一方で、本法案における海賊対処行動については、自衛隊が長期間にわたり海外で活動することが想定されておりますし、また、自衛隊をより的確な統制のもとで運用することが求められている観点から、国会での御議論を踏まえて国会の意思を実施面に反映することが適当であることといった点を考慮して、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したとき等は遅滞なく国会に報告しなければならないということを規定したものと承知をしているところでございます。

 しかしながら、先生のおっしゃっている中で、国会の場においていろいろな議論をされるというのは、これは必要なことだと思っておりますし、前々からのいろいろな経緯等々も勘案しながら、この委員会で議論していただければというふうに思う次第であります。

武正委員 改めてもう一度聞きますが、CTF150、151と情報共有はしているということでよろしいですか。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

○浜田国務大臣 そのとおりです。

武正委員 先ほども触れましたが、このCTF150は、資料は一ページにありますけれども、連合国艦隊、インド洋での活動であります。そして、先ほども申し述べましたが、米海軍の合同海上部隊、CMF司令部司令官の指揮下での不朽の自由作戦後、OEFの一環として海上治安活動、MSOを実施する多国籍海軍部隊であります。

 以前、テロ特措法で、給油をした艦船が、あるいは給油をした他国の艦船、特に、補給艦が補給をした艦船、これが、イラクあるいはまたアフガニスタンへの、特にアフガニスタンへの直接の空爆などに使われていたのではないのか、こういった疑義が出て、委員会でも、給油先あるいは給油艦船の公表を求めたわけであります。そのぐらい国会として厳しく、自衛隊の海外での活動、そして他国との関係、集団的自衛権という点において、我々はその点についてはすごく注目をしたわけであります。

 今回も同じように、バーレーンに事務官が置かれ、そして、先ほど言ったCTF150、151とも連携をしているということを考えますと、こちらは国会の関与は要らないんだ、そして海賊対処行動はあくまで警察活動なんだ、こういった形で言い張るというのはちょっと理解しづらいわけでありますが、所管大臣、海洋担当大臣、いかがでしょうか、このやりとりを聞いていて。

 やはり今回の補給活動が、テロ特措法で派遣された補給艦船が、いや、同じ自衛隊の艦船だから給油してもいいじゃないかというような先ほどの防衛大臣の話とか、それから、今回もテロ特措法同様バーレーンに事務官が置かれ、そしてCTF150、151という多国籍海軍部隊と密接な連携をしている。こういったことを考えると、これは警察活動です、だから国会の関与は必要ないんですときのうも総理は言われましたけれども、どうなのかなというふうに私は思うんです。

 この三ページ目のこういった一連の表を見て、やはり国会の関与を、この海賊対処法案、もっとかませるべきである、国会が関与をしていくべきであるというふうに思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

○金子国務大臣 いろいろな議論があるということは浜田大臣からも答弁があったところであります。

 第一義的には海上保安庁がこの任務に当たるということは、本海賊対処法案第五条で定めております。特別な場合、つまり海上保安庁が対応できないというときに、この七条で、防衛大臣が、必要があるということで、内閣総理大臣の承認を得て必要な行動をとるということであります。八十二条の海警行動というのは、潜没潜水艦もそうでありますけれども、これは国会の関与を求めておりません。

 今度は、八十二条に一項を、自衛隊法を改正しまして八十二条の二項でありますけれども、こういういわば海賊行為に対しても自衛隊がその任に当たるんだということを改めて自衛隊法で定めるという位置づけで、同じ八十二条の扱いをしているということでありますし、同時に、先ほど答弁がありましたように、かなり細かい、具体的にどの地域で、どの部隊で、どの装備で海賊対処に海上自衛隊が当たるということについて細目を決めて、それを閣僚が協議し、総理大臣が承認し、遅滞なく国会に報告をするという手続を踏んでおりまして、我々としては、国会の関与、なるべく国会の文民統制がきちんとコントロールできるようにという意図で、この法案をこういう枠組みで出させていただいております。

武正委員 私は、この三ページの表を見ても、旧テロ特措法で事後承認だったものが承認規定なし、新テロ特措法になってしまったことなども含めて国会の関与が緩くなっているということも見てとれますと、特に今回、海警行動について、海警行動で一万二千キロ先まで海上自衛艦を派遣するといったことも非常に無理があるということもあわせて、今、警察活動だから報告はなくていいんですということも含めて、やはり国会の関与というものを新法ではきちっとかませていくべきだということを改めて提起させていただきたいと思います。

 そこで、海上警察の国際連携の必要性ということで、お手元の資料四ページをごらんいただきたいと思います。これは、民主党が政府の新テロ特措法への対案としてまとめたテロ根絶法案、この第二十八条で航行の安全確保ということをうたいました。

 読みますと、第二十八条、「政府は、公海上その他の海上における我が国の船舶の主要な航路帯においてテロリストによる攻撃等から航行の安全を確保することの重要性にかんがみ、海上警察の国際間の連携の促進に努めるとともに、航行の安全に関する条約その他の国際約束についての関係諸外国の誠実な履行の確保を働きかける等、公海における航行の自由の確保のための国際社会の取組に積極的かつ主導的に寄与するものとする。」ということを民主党のテロ根絶法にうたったわけであります。

 公海航行自由の原則、これを最大に享受してきたのがやはり日本であるという認識に立ってこうした条文を入れたわけでありますが、私は、今回の新法にもこの公海航行自由の原則、これが、それこそ世界的なインフラともいうべき公海を自由に航行できるんだ、この最大享受国日本として、国連海洋法条約を受けて国内法の整備をする以上、こういった規定をこの法案にも入れていくべきではないのかなというふうに思うんですが、これについて、海洋担当大臣、御所見を伺いたいと思います。

○金子国務大臣 御党が提出されました二十八条、趣旨、意図するところは今回の法案の中にも相当に盛り込まれていると思います。

 特に、海上交通の要諦でありますマラッカ・シンガポール海峡を含みます東南アジア海域、これは平成十二年ごろから海賊事案が多数発生しました。これらの事案の大部分は、沿岸国の内水及び領海で発生したものであり、沿岸国の海上保安機関の法執行能力の向上が急務でありまして、そういう意味で、諸外国の誠実な履行の確保を働きかけていくということがそれなりに盛り込まれておると思います。

 さらに、海上保安庁では、沿岸国の海上保安機関の法執行能力向上を支援しますとともに、沿岸国の海上保安機関の連携協力を推進してまいりまして、具体的には、沿岸国の海上保安機関で構成される長官級会合に参加し、最大限の協力を行ってきました。また、アジア海賊対策地域協力協定、ReCAAP、先ほど先生御指摘されましたけれども、これに基づきまして、沿岸国の海上保安機関等の連携を図るために設置されました情報共有センター、ここに職員も派遣し、積極的に貢献をしております。

 そういう意味で、今委員御指摘の部分は相当取り込まれ、また実行されていると認識しております。

武正委員 私が言っているのは、この新法に具体的にそういった記述がやはりあってしかるべきではないのかなというふうに思うんですが、今盛り込まれているというふうに言われましたけれども、それをどういうふうに読み込んだらよろしいんでしょうか。

○金子国務大臣 まさに第一条、この法律の目的のところに、今おっしゃられたことが書き込まれております。つまり、海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶云々の件、並びに、御党二十八条の部分は、多分、海洋法に関する国際連合条約においてすべてという条文の中に精神が盛り込まれているんだと思います。

 そういう意味で、足らざるところはまた、どういうことがということを御指摘いただきながら、一緒に考えてまいりたいと思っております。

武正委員 日本が海洋国家として、そして貿易立国として、世界の海が、特に公海が、無害通航権ですか、あるいは旗国主義、要は、船がどこへ行ってもそこは日本なんだという、これはすばらしい法律というか、お互いの共通のルールだと思うんですね、主権尊重ということも含めて。そしてまた、そうしたいろいろな港、港に立ち寄る、寄港するというのも、非常にどの国もオープンですよ、こういうシーマンシップの指摘もありましたが、こういったもののメリットというか、これを最大に享受している日本である。そしてまた、それゆえに、それができていない国、あるいはそれができていない地域に対して、国際貢献ということで、日本がそれを積極的に、主体的に果たしていくということは日本にとってでき得る、また、日本がそういった能力を持っている、知見を持っているということになるのであろうというふうに思いますので、ぜひそうした趣旨をこの法律に盛り込んでいくということが必要ではないかというふうに思います。

 そこでお伺いしたいんですが、ジブチ会合について先ほど来指摘がありますが、コード・オブ・コンダクト、行動指針、この署名が、たしか十六カ国中九カ国だけでしたでしょうか、七カ国ぐらい署名をしていなかったというふうに思うんです。

 例えば未署名のサウジアラビアとかオマーンなど、やはり財政的に豊かな周辺諸国は、いわゆる海上警察などの装備や人も持っております。私は、こういった国もぜひジブチ会合の行動指針に署名をしてもらって、先ほど来話があるReCAAPのような条約を早くアデン湾周辺諸国で締結をしてもらう、そういう働きかけがあっていいのではないかと思うんですが、外務大臣、そういう行動指針署名の働きかけを日本として主体的に担うということについてのお考えはいかがでしょうか。

○中曽根国務大臣 議員御指摘のジブチ会合、これは、周辺諸国によります海賊の防止のための協力とか、また海賊の情報共有センターの設置など、そういうものを規定したもの、これが行動指針でございますけれども、お話しのように、ソマリア海域の周辺十六カ国及びソマリア暫定連邦政府によって採択をされたものであります。

 この行動指針には、ジブチ会合に参加した周辺九カ国が署名をしているところでございますが、これはソマリア沖の海賊対策のための地域協力の推進に資するものでございまして、より多くの周辺国が署名することが期待をされているところでございます。

 我が国といたしましても、関係の周辺国に対しまして、今後、種々の機会に働きかけを行いたいと考えているところでございますが、日本としては、側面的な支援を行って、まず、当事国といいますか周辺国がこれに署名するということを私どもとしては働きかけを行っているところでございます。

武正委員 一説には、なぜコード・オブ・コンダクトの署名、行動指針の署名をためらうかというと、各国の軍艦が当然ソマリア、暫定政府ではありますが、領海内に入っていくことなども含めて、やはり周辺諸国には、主権を各国の軍艦によって侵害されるのではないのか、そういう危惧があるのではないのかという指摘があります。これはたしか、インドネシアやマレーシア、あのときに、やはり津波の被害を受けて、各国の軍艦がマラッカ・シンガポール海峡に行ったときにも、やはり、インドネシアが特にそうだったというふうに聞いておりますが、各国軍艦が入ってくることについてのアレルギーというか拒否感がある、こういうのはやはり主権国家として当たり前のことなのかなと。だからこそ、コーストガード、海上警察、あるいは周辺諸国の海上保安能力の向上、こういったことが必要なんだというふうに考えるわけであります。

 そこで、外務大臣に伺いますが、先ほど来、ソマリアは無政府状態なんだという指摘を多くの委員がされていたと思います。ただしかし、ソマリアについては、ソマリランドが独立宣言をしたり、プントランド、つまりソマリアの東側の北側が自治地域化していたりということで、暫定政府は南西部でありますけれども、そういった意味では、ジブチ合意を経て、TFG、ソマリア暫定政府については、このジブチ会合に政府を代表して出たり、あるいは、累次の国連決議ではソマリア暫定政府と加盟国が協力をするようにという記載もあり、あるいは、国連には常駐代表が送られている、こういった経緯もあるわけです。

 日本政府としてはソマリア暫定政府を承認していないという立場は了解をしておりますが、このソマリア暫定政府への協力、先ほど川内委員からも、では、実際にその支援が届いているのかという話もありましたが、このソマリア暫定政府についての御認識、あるいは、例えばこれを承認する可能性があるのかどうかも含めて、御見解を伺いたいと思います。

○中曽根国務大臣 ソマリアは、一九九一年以来、武装勢力間の抗争がずっと続いているわけでございます。二〇〇五年には、今委員からお話ありましたソマリア暫定連邦政府、TFG、これが樹立をされたところでございますが、この政府、いわゆるTFGも、いまだ国土全土を実効支配するには至っておりません。我が国は、そういうところからも政府として承認をしていないところでございます。

 なお、昨年の八月には、暫定連邦政府とソマリア再解放連盟の穏健派、これはイスラムグループ穏健派でございますが、との間で、武力行使の停止等を含むジブチ合意が成立をしたわけでございます。また、ことしになりまして、暫定連邦政府におきましては、新しい大統領それから新しい内閣が誕生いたしまして、新議会も誕生しつつあります。

 しかし、この暫定連邦政府には、すべての勢力が参加しているわけではございません。このような動きがソマリア全体の和平につながるかどうかということは、今後の動向を私どもとしては慎重に見ていく必要があると考えております。

 我が国といたしましては、実効的に支配をする政府が今は存在していない、そういう状況に加えまして、治安等の問題により、先ほどからお話ありますけれども、ソマリアへの二国間援助の実施も非常に困難な状況となっておりまして、そういう意味で、国際機関を通じた協力を実施してきているわけでありますが、今後も、ソマリアの安定化のために積極的に協力をしていきたいと思っています。

武正委員 中長期的には、やはりソマリアの国情安定、これが海賊対策には欠かせませんので、特に日本外交というものが、イスラム諸国とある面直接的な、武力行使というようなことは日本では認められておりませんが、そういったことが一切ないだけに、特にイスラム諸国に対して物が言える、こういったところをぜひ外交で活用する必要があるということを申し述べまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。