2009/05/22
【衆院外務委 議事録】 日露首脳会談の成果について問う

武正委員 民主党の武正でございます。

 それでは、質疑に移らせていただきます。

 まず、谷内政府代表の三・五島発言ということできょうも出席をお願いしたんですが、お出にならないということなんですが、その理由について御報告いただけますでしょうか。

○中曽根国務大臣 谷内政府代表の本委員会への出席問題につきましては、まず、私どもといたしましては、外務委員会の御要望を踏まえた対応を検討したいと考えております。

 本日の委員会に関しましては、伺いましたところ、谷内代表は、日経新聞社主催の国際交流会議「アジアの未来」二〇〇九に出席をするということで終日対応はできない、そういうふうに承知をいたしております。

武正委員 きのう、参議院の予算委員会には出席をされまして、そのとき民主党の峰崎委員から、これからも、政府代表でありますし、官邸に部屋を持っておられてさまざまな交渉に当たられるという、外務大臣の申し出により内閣の任命という立場から、このように答えておられます。

 私は外務大臣のお申し出により内閣の方から任命されておりますが、内閣の方から出るようにと御指示があればそれに従うつもりでございますということでありますので、ぜひ、外務大臣そしてまた内閣の方から、積極的に国会での説明責任に応じるようにお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、この委員会の御要望を踏まえた対応を私どもはしたいと思っておりますが、ただ、御本人もいろいろな御予定もあろうかと思います。きょうのあしたということであれば、どうしても避けられない日程もあろうかと思いますので、これは政府代表だけじゃなくて民間的な仕事もあるわけで、そういう点も理解をすることもやはり大事だと思います。

 ただ、私は、そういう意味では、本人も出席するという意向でございますので、多少日にちの余裕を持ってそのようなアレンジをするのが好ましいのかなと思っております。

武正委員 今、委員会の申し出によりということでありますから、これは理事会にて御協議をいただきたいと思います。

 委員長、いかがでしょうか。

○河野委員長 理事会で協議いたします。

武正委員 それでは、昨日も参議院の予算委員会で取り上げられた件ということで、本来であれば谷内政府代表に伺いたい点でございますが、資料一ページをごらんいただきたいと思います。

 ファクタという雑誌の中で手嶋龍一さんが今回の三・五島発言について述べておられる部分でありまして、その中で、先ほども同僚委員から指摘がありましたが、毎日新聞のインタビュー記事、ただ、そのインタビューの生のものがどういったものであるのかということで手嶋さんが紹介されている一節があります。左側のページの第一段目の左側から五行目以下でありまして、これを読みますと、「シベリア・パイプラインから百万バレルが極東に供給され、その半分を日本が引き受けるとか、環境協力、生態系の保存について協力するとかであれば、三・五島の返還でもいいということになるかもしれない」。かぎ括弧つきでありますから、手嶋さんいわく、このようにインタビューには答えたんだろうということであります。それが、三・五島でもいいというところだけが毎日に載ったという、そういう記載であります。

 外務大臣はいろいろ谷内さんともやりとりをされていると承知をしておりますが、こういった趣旨の発言をされたということでよろしいでしょうか。

○中曽根国務大臣 ただいま委員が御紹介されました、これは雑誌ですか、この記事について私は初めて今読んだところでございますが、谷内政府代表にこのインタビューでのことにつきまして確認いたしましたところは、昨日の予算委員会でも本人が述べておりますように、個人的には三・五島返還でもいいのではないかと考えているという発言は行っていない、そして、いろいろな全体の流れの中で誤解を与えたところがあったかもしれない、そういう点については自分としてもこれは申しわけなかったということです。

 そういう意向を表明しているわけでありまして、新聞社との本当の実際のやりとり、あるいはこれを編集された形であのような形になったのかとか、事実関係、詳しいことは私は承知しておりませんが、政府の立場は、再三申し上げておりますように、北方四島の帰属の問題を解決してロシアとの間で平和条約を締結する、そういう基本方針に変わりはございませんし、これにつきましては、新聞社にもこれをはっきりと伝えているところでございます。

 ただ、誤解を与えるような発言というのはやはり好ましくない、そういうふうに思います。

武正委員 繰り返しますが、この手嶋さんが書いているようなことをインタビューの中で言われたんだということは、外務大臣としては承知されていないということでしょうか。

○中曽根国務大臣 私は、今初めてこのことを委員の御紹介によりまして知ったということでありまして、このような発言をされたか、されないかは承知しておりません。

武正委員 なかなか政府代表も出てきていただけませんので、ぜひ外務大臣の方から、きのうも予算委員会でこのことは峰崎さんが取り上げておりますので、こういった趣旨で発言しているのかどうかの御確認をお願いしたいと思います。

○中曽根国務大臣 一つ一つの記事について確認をするのがいいのかどうかわかりませんけれども、今の委員のそのような趣旨は、本人にお伝えしたいと思います。

武正委員 この間の外務委員会でも私取り上げましたが、やはり諸文書、諸合意という中で、九三年の東京宣言というものが私は非常に大事だというふうにこの間も取り上げたわけでありまして、ただ、どうしても四島の帰属の確認、そして平和条約の締結ということを皆さんは言われるんですけれども、九三年の東京宣言では、まず第一に「歴史的・法的事実に立脚し、」、そして「合意の上作成された諸文書」、そして「法と正義の原則」という三つの前提があっての、先ほど大臣が言われたことに至るわけであります。

 今回、緊急アピールということで、日本国際フォーラム緊急提言委員会、こういった新聞記事ですね。ごらんになったと思いますが、この第一でも、やはり国会決議ということでの四島帰属ということ、さらにまた、特に、国会決議であれば、日露修好通商条約百五十年でしたでしょうか、そのときに択捉以北に国境が画定した、まず第一というようなところから始まっておりますので、やはり歴史的、法的事実に立脚して、先ほども同僚委員から指摘があった点、こうした点も踏まえて交渉をしていく必要があるというふうに考えております。

 そこで、今回の日ロ首脳会談における成果について、領土問題、そしてまた領土問題以外もあったと思うんですが、どのように総括されているか伺いたいと思います。

○中曽根国務大臣 先ほども松原委員の御質問にお答えいたしましたけれども、麻生総理とプーチン首相との会談には私も同席をいたしましたけれども、相当長時間にわたり、日ロ関係また国際情勢について突っ込んだ話し合いが行われました。

 会談では、まず両国関係の基本的な方向性といたしまして、日ロが戦略的に重要なパートナーとしての関係を構築していくということ、それから、そのためには、アジア太平洋地域における日ロ双方の関心事項の実現が大切であるということ、そういうことで一致をしたわけでございます。

 日ロ間の協力につきましては、麻生総理から、我が国といたしましては、極東・東シベリア地域を開発し、アジア太平洋地域への統合を目指すとのロシア側の関心にこたえる用意があるということ、これをお伝えいたしました。その上で、二〇一二年のウラジオストクAPECの準備や、さらにエネルギー、省エネ、運輸などのロシア側が関心を示している分野などで互恵的協力を進めていくということで一致をいたしました。

 さらに、原子力協定、それから刑事共助条約などの今後の日ロ協力において極めて重要な意義を有する文書に署名を行ったところでございます。

 なお、大事な北方領土問題につきましては、両首脳は、第一に、両国間に平和条約が存在しないことは、幅広い分野における日ロ関係の進展にとり支障になっていること、それから、第二に、領土問題という日ロ間の障害を取り除くためには、北方四島の帰属の問題の最終的な解決を図る必要があるということ、第三番目に、この問題を我々の世代において解決するために、これまでに達成された諸合意、諸文書に基づき、現状から抜け出すための、双方に受け入れ可能な方策を模索する作業を加速させるということで一致をしたところでございます。

 その上で、七月のイタリアでのサミット、ここでのメドベージェフ大統領との首脳会談において、北方領土問題についてさらに詳しく話をするということで一致をし、麻生総理から、その際、これまでのやりとりを踏まえたロシア側の取り組みについて説明を伺うということを期待していると表明をしたところでございます。

 今回のプーチン首相の訪日は、二月のサハリンでの首脳会談に続きまして、日ロ関係をより高い次元に引き上げる上で重要な一歩になった、そういうふうに思っております。

武正委員 きょう、朝日新聞の方ですかね、この日ロ首脳会談でのやりとりが記事となっておりまして、「五六年宣言では未来永劫解決しない 首相、「四島一括」を主張」と、非常につぶさにプーチン首相とのやりとり、あるいはその前に、プーチン首相と森元総理との会談でのやりとり、これが報道されておりますが、これは大臣は見られましたでしょうか。また、こういったことがあったのかどうかを伺えればと思います。

○中曽根国務大臣 その新聞、詳しくは私は読んでおりませんけれども、そのような記事が載っていたことは承知をいたしております。ただ、首脳同士の、あるいは過去の日ロ間の会談、外交交渉でのやりとり、これの逐一についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げれば、この十二日の麻生総理とプーチン首相との会談では、先ほども申し上げましたけれども、麻生総理からプーチン首相に対しましては、政府の基本的な方針であります北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという、そういう基本方針のもとに、この四島の返還を実現していくという我が国の立場を明確に伝え、そして日ロ関係をより高い次元に引き上げていく、そのためには、この帰属の問題の最終的な解決を図る必要があるということを訴えて、ロシア側の姿勢を強く問いかけたところでございます。

武正委員 きのうも参議院の予算委員会で、総理が、ペルーAPECのときに、メドベージェフ大統領から、新たな創造的で型にはまらないアプローチという提案があったんだ、あちらからあったんですよと。二月のサハリンでは、それについてお互いにやろうということで合意をしたわけですから、日本もそういったアプローチをということだと思います。ただ、これは、九八年、当時の小渕元総理がモスクワで結びました日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言、この創造的というのは実は九八年がスタートだったのではないのかなというふうに私は思うわけであります。

 ただ、先ほど、今回の日ロ首脳会談の成果として、エネルギー、環境を挙げられました。今お手元の方に、これは外務省さんから二度にわたって資料を出していただきました。まず二ページ目は、小泉総理就任以降署名した日ロ間の国際約束一覧ということで、六本出ております。こんな少なくないでしょうということで再度出していただいたのが、後でお配りをした二枚紙ということでございまして、これは、小泉総理就任以降の首脳会談等の機会に日ロ政府間で作成された法的拘束力を有しない文書。この法的拘束力というのは一体どういうことかなと思うんですね。日ロ行動計画なども入っておりますので、かなり日本政府のさまざまな政策を縛っている、規定しているというふうに把握をするわけです。

 これらを見ますと、私は、日ロ行動計画は特に六つの合意をしておりますが、そのうちの一つが領土問題、あとの五つが領土問題以外ということにあらわれているように、どうもやはり、この間、領土より経済をというような政府の交渉が日ロ間で行われ続けているのではないのか、国際約束とかこの文書を見る限りそのように考えるわけですが、この点について外務大臣はどのように御認識をお持ちでしょうか。

○中曽根国務大臣 今、委員からも外務省が提出いたしました資料の紹介がありましたけれども、こちらの二枚紙の方の法的拘束力を有しない文書というのは、これは国際約束ではない政治的な文書でございます。

 領土問題に対する交渉といいますか、こういうようなものが少ないのではないかということでございますが、これは、事の性質から、外交交渉をずっと継続して行ってきているわけでありまして、文書にして発信するものというものも、委員御案内のような、今まで過去のいろいろなものがありますけれども、今のところといいますか、これらの経済的なものに比べれば、確かに量的には少ないかもしれません。

 私たちとしては、これが実質的な交渉の進展につながるように、引き続いて努力はしていきたいと思っております。

武正委員 時間の関係で、外務大臣の「ゼロへの条件 世界的核軍縮のための「十一の指標」」について、これを聞きたかったんですけれども、その後の、今回の首相、外相のゴールデンウイーク中の訪問とあわせて、私は指摘にとどめさせていただきます。

 この間、外務大臣も精力的に外国訪問をされまして、そのときに、外務省の外相の会談の記録を見ますと、積極的にこの十一の指標を取り上げられておられる。これはやはり外務大臣の姿勢として評価をしたいというふうに思います。IAEAの事務局長選挙があるからとは言いませんが、やはり、唯一の核被爆国として、日本としての姿勢を、十一項目という、多元的にわかりやすく示したということで、また、それを積極的に外相会談で取り上げられていること、重ねて評価をいたします。

 ただ、この後防衛副大臣にお聞きをします海賊なんですけれども、海賊について、今回、総理と外務大臣が大型連休中に取り上げた場面というのは、EUとの間、そしてエジプトとの間、二回だけというふうに私は承知しておりまして、これから場合によっては国会の会期延長の最大の理由の一つとされる海賊法案、政府としての取り組み、あるいは国会でのやりとりを踏まえると、やはり諸外国との間でも、この海賊問題、そしてまたそれについての日本の姿勢、また国際社会でやるべきあるいは協力すべき事柄、こういったことをもっと積極的に発言をしていっていいのではないのかなというふうに思うわけでありまして、これは指摘にとどめさせていただきたいと思います。

 そこで、お手元の資料では、一番後ろになるんでしょうか、護衛実績、アデン湾・ソマリア沖における護衛実績を、四月一日から五月十三日まで十七回、五十五隻、出していただいているんですが、一回ごとの隻数を見ると、一隻から多いときで七隻、でも、五十五を十七で割れば三・二隻ということなどを見ると、当初国会での説明では、日本関係船舶二千隻、三百六十五で割れば一日七隻近くと。これは大体二日から三日の割合でこうして護衛していますので、七に二なり三なり掛けますと、十四隻とか二十一隻が対象となるはずなんですが、実績は三・二隻。少ないなというふうに思うんですが、防衛副大臣、これはどうしてこういう隻数になっているのか、お答えをいただきたいと思います。

○北村副大臣 お答えします。

 アデン湾を通航する日本関係船舶は、昨年の実績では約二千隻であると言われ、今御質問にもございましたとおり、一日平均で五、六隻となっております。

 これらの船舶のすべてが護衛を受けるとの説明を政府から行ったことはございませんけれども、日本関係船舶の護衛に際しましては、船舶運航事業者等から国土交通省へ申請が行われ、防衛省と国土交通省との間で調整を行いまして、護衛を実施するということになっております。

 アデン湾を通航する日本関係船舶の中には、運航のスケジュールが護衛日程と合わない、あるいは速度の遅い船舶にスピードを合わせるなどのことから、護衛の申請をしない船舶もあると承知いたしております。

 いずれにいたしましても、日本国民の人命、財産の保護のため、これまで合計六十二隻の日本関係船舶を護衛してまいりました。今後とも、日本関係船舶の護衛の任務を着実に果たさせていただきたいと考えておるところでございます。

武正委員 部門会議で聞きましたら、何か足の速い船は海賊の攻撃を受けないんだということだったんですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。何か十ノット後半以上は海賊の攻撃を受けないんだということを聞いたんですが、それは事実でしょうか。

○北村副大臣 詳しい知見を私、大変不勉強で恐縮ですが、持ち合わせませんけれども、私いろいろ聞いております中では、やはり船の大きさ、特に舷側部分が高いか低いかというのが、非常に標的になりやすい、なりにくいと。もちろん、海賊が使っている船の船速によっていろいろな場面があるのではないかと思いますが、その点につきましてはさらに勉強させていただきたいというふうに思います。

武正委員 何か説明では、船足が速いから、これは船足が遅いところに速い船が一緒に合わせると海賊の攻撃を受けてしまうので、船足が速い船はどんどん自分たちで勝手に行くんです、こういう説明でして、国会で当初説明を受けた話とどうも違うなといったところもあったわけでありまして、これはまた、参議院にまた舞台は移るわけですが、引き続き当委員会でも取り上げていきたいというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。