2009/06/12
【衆院外務委 議事録】 尖閣諸島上陸調査について問う

武正委員 民主党の武正でございます。

 それでは、質疑を行わせていただきます。

 内閣官房副長官、それから総務副大臣、環境大臣政務官にも御出席をいただき、また海保並びにJICAさんからもおいでをいただいておりますが、まず、尖閣諸島上陸調査要請につきまして質疑を行わせていただきます。

 お手元の資料一ページ目にありますように、去る三月三十一日に、石垣市長から、これは河野太郎外務委員長あての「石垣市による尖閣諸島への上陸実地調査について」という文書でございますが、同様の文書も外務大臣に出されたということであります。

 それから、それを受けまして、去る四月二十一日、決算行政監視委員会第一分科会で、私から河村官房長官の方に、こうした要請が出て、政府とすれば要請が出れば政府内で検討するということだったんだけれども、どうでしょうかということに対しまして、現時点で関係省庁と連携して対応を検討している、こういうことである、こういう要望が出ておりますので、早期に結論を出すように、この努力を今求めている段階でありますと官房長官からお答えがあったんですけれども、現時点、どのような政府部内の検討をされているのか。官房副長官、お答えをいただきたいと思います。

○松本内閣官房副長官 尖閣諸島三島については、もともと私有地でありますが、平成十四年四月から政府が、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を図ることを目的といたしまして、賃借を開始しております。この賃借の目的に照らして、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっているところでございます。

 このような中で、石垣市長から、三月三十一日付の書簡におきまして、固定資産税課税のための実地調査を行うために尖閣諸島に上陸することを要請されました。

 政府といたしましては、今般の要請について検討を行った結果、五月二十二日、石垣市長に対し、平成十四年四月から政府が尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持を図ることを目的として尖閣諸島三島の賃借を開始している、政府としては上陸実地調査がこれまで行われていないと承知しており、石垣市として、その必要性、上記目的、尖閣諸島をめぐる状況も総合的に勘案して適切に対応されるよう望む旨、回答をさせていただきました。

 以上です。

武正委員 今のことは、上陸実地調査については認められないという趣旨なんでしょうか。適正にというのがちょっとよくわからないんですが。

○松本内閣官房副長官 上陸を認めないという回答ではなくて、適切に対応していただきたいという旨の回答をさせていただきました。

武正委員 これまで内閣官房などに石垣市から上陸要請をしたけれども、上陸は困るんだ、こういうようなことを言われていたということを聞きまして、三年前、ちょうど外務委員会が視察をした折に口頭で石垣市長から要請を受け、この間、四回、五回と国会でこうして取り上げさせていただいたわけでありまして、改めてこうした文書も「上陸実地調査について」ということで出ておるんですけれども、それについての回答は、適正に判断してくれということでは要を得ないんですが、いかがですか。もう一度、政府としてはどのように考えておられるんですか。

○松本内閣官房副長官 このやりとりに関してでありますが、石垣市長が別件で外務省を来訪された際に外務省幹部から回答させていただいたものでございまして、石垣市長からは、先ほど御答弁申し上げました回答の内容につきまして了解をしていただいたと聞いているところでございます。

武正委員 それは伝聞でありますので、やはり文書には文書でということでありますので、その回答文書をぜひ御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○松本内閣官房副長官 石垣市長に対して政府としての回答を直接伝えるため、別途文書で回答することについては予定をしてございません。

武正委員 とすると、今のは口頭ということですか。

○松本内閣官房副長官 そのとおりでございます。

武正委員 これは要請文が出ているわけですから、これだけ国会で取り上げているわけですから、やはり政府としての回答を文書として出すべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。そしてまた、それをぜひ当外務委員会に御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○松本内閣官房副長官 ただいまも御答弁させていただきましたように、現在のところ、別途文書での回答は予定をしてございません。

 御本人も、石垣市長そのものも、外務省幹部からの回答に対して御了解をいただいたと承知をしているところです。

武正委員 外務委員長、これは外務委員長あてに送られている文書でありますが、ぜひ理事会で御協議をお願いして、外務委員長あてにもこうした要請が出ているわけですので、やはり政府としての回答は、当外務委員会に対してもきちっと見せていただきたいと思いますので、文書として御提出をいただけるよう、理事会での協議をお願いしたいと思います。

○河野委員長 政府が文書を発出すれば外務委員会あてに提案をいただきますが、政府が文書で出すかどうかは政府がお決めになることですので、それは政府において御判断をいただき、文書で発出される場合は、外務委員会に御連絡をいただくようお願いをいたしたいと思います。

武正委員 それでは、総務副大臣がお見えですのでお答えをいただきたいと思うんですが、この間、総務省としては、「地方税法に基づきまして、実地調査を行うということは同法にのっとった行為であるというふうに総務省としては考えている」と、これまで山崎副大臣、秋葉政務官に当委員会でお答えをいただいたんですが、この見解は、石垣市長の尖閣諸島への上陸実地調査、固定資産税評価、年に一回、地方税法四百八条にのっとってということに対しての見解としては同様ということでよろしいでしょうか。

○倉田副大臣 お答えいたします。

 従前同様、地方税法の四百八条というのがございますので、固定資産税の課税に当たって、地方税法に基づいて、実地調査を行うということは同法にのっとった行為であると考えております。

武正委員 それで、関係省庁との検討というものはこの間ずっと行われていなかったと承知をしておるんですけれども、今回、この石垣市長からの要請を受けて、関係省庁との検討をどのように行って、どのような結論に至ったのか、総務省としての今の御所見を伺いたいと思います。

○倉田副大臣 国内でも一般的にそうでありますけれども、尖閣列島、これは原野であります。御承知のとおり、総務省が固定資産評価基準というものを出しておりまして、状況が類似する他の原野の単価を用いて評価すればそれでよろしいということにもなっております。

 今のところ、特段の現地調査というものが必要か否かということについては、いまだ結論を出しておりません。

武正委員 関係省庁との協議は行ったんでしょうか。行ったとすれば、どちらと、いつ行われたのか。これは、河村官房長官がたしか四月の上旬に記者会見で述べて、そして私の質疑は四月の下旬だったと思うんです。いかがでしょうか。

○倉田副大臣 総務省と内閣官房とそれから外務省とですか、やったと聞いております。

武正委員 その中で協議をして、先ほどのような、総務省とすれば類似の地点をもって判断ができる、ですから、この地方税法四百八条、もう一度読み上げますが、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」、国内法のこの施行についてはする必要がないという結論を総務省として得たということでよろしいですか。

○倉田副大臣 先ほど言いましたように、課税標準によっても出ます。したがって、実地調査をすることは法にのっとったものではありますけれども、特段の必要性まではあるのか否かということについては、いまだ結論を私ども出しておりません。

武正委員 特段の必要があるかどうかは結論を出していないということですか、総務省。結論が出ていないということですか。もう一度お答えいただきたい。

○倉田副大臣 現段階ではそのように考えております。

武正委員 ということは、総務省としては、まだやはりこの四百八条、年に一回実地に調査させなければならないというこの法律を課税権者である市町村長がきちっと履行することについて、今回のこの要請について、これについての判断というものはまだしていないということだと理解してよろしいでしょうか。

○倉田副大臣 先ほど言いましたように、固定資産税課税標準によって従前行ってこられており、いまだ、特別これから現地調査を云々ということまでの必要性を、今のところ、あるのか否か、その判断はまだしておりません。

武正委員 判断をしていないということですか。もう一度、最後のところ、ちょっと聞き取りづらかったので。

○倉田副大臣 特段の調査をすべきというところまでの必要性について認識していないということです。

武正委員 地方税法は総務省の所管の法律ですよね。地方の首長が固定資産税を評価する地方税法四百八条にのっとって上陸をしたいと。しかも、この要請を出しておきながら、その必要がないというのを、所管省庁がなぜそういうふうに判断するんですか。国内法にのっとって履行したいという要請じゃないですか。

○倉田副大臣 四百八条の規定に関しますけれども、実地調査というのは、全部の資産について細部にわたって行われなくても、固定資産税の状況を知り得る程度に行われていれば結構である、このように解釈しておりますから。

武正委員 例えば、この要請を見ていただきますと、きょうは環境省の政務官もおいでなんですが、「当該調査を実施することについては、地方税法上の問題のみならず、過去に日本国民である住民が経済活動を行い、生活を営んできた歴史的文化財の保存とセンカクモグラをはじめとする希少な動植物保護のための調査研究にも大きく貢献するものと考えます。」ということでありまして、資料の二ページにセンカクモグラについての実態、それから三ページ目には「我が国における絶滅のおそれのある野生生物の種数」ということで出ておりますけれども、センカクモグラを初め尖閣諸島におけるこうした絶滅危惧種、動物、植物等、実態について、環境省からお答えをいただきたいと思います。

○古川大臣政務官 センカクモグラあるいはセンカクツツジ等希少な野生の動植物が尖閣諸島にはございます。その生育、生息状況について、これまでも情報を収集し、現状把握について努めているところでございます。

武正委員 資料をごらんいただきたいと思うんですけれども、センカクモグラのところですね、二ページ目一番下のところ、「生息地の現況とその動向」ということで、見てまいりますと、ちょうど二行目からでしょうか、「一九九一年船上から行われた島の片側の簡単な目視調査だけで三百頭以上が目撃されている。」ヤギですね。「陸上調査によれば、ヤギは標高三百六十メートル余の山頂まで分布し、多数のヤギ道を作っており、海岸域の一部では草原の拡大が始まっている。全島は森林に覆われていることから、カウント数は生息数の一部にすぎない可能性が高く、今後一層急速な大増殖と激しい植生破壊、裸地化、土壌流亡などが進行する可能性がある。」ということで、これまでも日本哺乳類学会から二〇〇二年十二月、ヤギの根絶を求める要望書が環境省に出されているということでありますが、こうした事実を把握されておられるかどうか。また、これに対して環境省としてどのような取り組みをされているのか。

 また、横畑泰志富山大学の准教授によりますと、センカクサワガニなど、やはり固有種、これも絶滅危惧種でありますが、固有種に悪影響を与えるので、早急にヤギの駆除が必要ということで、野生化したヤギが増殖し、植物を食い荒らし、島のがけ崩れが深刻化していると。二〇〇〇年の状況調査では、衛星写真を見れば、一三%が裸地になっているというようなことであり、繁殖し過ぎたヤギが地表を固定している植物を食い荒らしていることががけ崩れの原因、緑地がなくなり川が枯渇するため絶滅危惧種のセンカクサワガニなど島の固有種がすみかを奪われている、こういったことも横畑准教授は指摘をしているんですが、この点の認識について、また、環境省に日本哺乳類学会からヤギの根絶を求める要望書が出されたことについて、環境省としてどのような対応をされたのか、お答えをいただければと思います。

○古川大臣政務官 尖閣諸島の魚釣島の状況につきましては、野ヤギの生息状況等について状況の把握に努めておりまして、平成二十年度には、航空写真及び衛星画像を解析して植生図を作成するなどしております。その結果、この野ヤギの生息によりまして植生に影響が生じているということについては承知をいたしております。

 ただ、では、即座にそれを駆除する段階、その必要性があるかどうかということについては、全国的な種の保存の観点から、優先度が必ずしも高いとは言えないというふうに考えておりまして、環境省としましては、現時点で野ヤギの駆除ということを考えていないという状況でございます。

武正委員 二〇〇三年に、保護団体の求めによりまして、小笠原諸島の、鳥島で、今度はアホウドリの繁殖地ということでやはり保護活動を行っているわけなんですけれども、この尖閣諸島では南小島がアホウドリの繁殖地というふうに聞いているんですけれども、この点は把握をされていますでしょうか。

○古川大臣政務官 委員御指摘のアホウドリの件について、状況の認識はしております。承知いたしております。ただ、対策を打つべしという喫緊の緊急性といいますか、必要性を感じているというところには至っておりません。

武正委員 聞くところでは、この南小島では三百羽のアホウドリが生育をしているということでありまして、こうした絶滅の危惧があるアホウドリについては、資料の三ページ目の、絶滅危惧で第2類になるわけなんですけれども、こうしたものについての保護ということが、鳥島では進められているけれども、南小島では進められていないということかと思います。

 ちなみに、この三ページ目で、尖閣諸島にいる絶滅のおそれのある種は、絶滅危惧種、1Aが先ほどのセンカクモグラを含めた十三種、そして1Bが三種、そして1類が一種ということで十七種、そして、絶滅危惧第2類がアホウドリを含めて七種、準絶滅危惧が三種の、計二十七種ということだそうであります。そして、二十七種中、尖閣諸島の固有種がうち十種ということであります。

 こうした絶滅危惧種に対する対応、先ほど環境政務官からヤギの駆除は必要ないというお話がありましたけれども、こうした点も、石垣市長からも、やはり動植物の保護のための調査研究も必要なんだという要請文が出ております。

 先ほど官房副長官は、いや、石垣市長は納得したんだというお話でありますが、私はやはり、国と地方自治体との今の関係の中で、完全に地方分権がまだなされていない中で、こうした要請というものを重く受けとめて政府としても取り組みを行っていただきたい。ましてや、それを文書で回答を出せないというのはいかがなものかというふうに思うわけであります。

 加えて、総務省におかれましては、地方税法の担当省庁でありながら、他の類似のものを類推して、それでいいんだというようなことを言われてしまいますと、これだけ尖閣諸島、実態も大変な変化をしている、激変をしている状況でありますので、やはり上陸をして調査をしていくというのは至極もっともなことだ、ましてや所管省庁でありますので、やはり地方税法にのっとった履行を認めていくべきだというふうに思います。

 また、きょうは海保さんがおいででございますが、海上保安庁がこの間も灯台の維持、補修のために上陸をしているわけでありますので、政府が何人たりとも原則認めないということがここでもう崩れているわけでありますので、これら固定資産税の評価、調査、並びにまた絶滅危惧種の調査等も含めて、やはり日本の法律にのっとった履行を当然認めていくべきだというふうに思っております。

 最後に海保さんに伺いますけれども、実際、海保さんが飛行機で例えばアホウドリの生息状況とか島の状況などを写真撮影しているということを聞いているんですけれども、例えばそうしたものを地元の石垣市などに提供することは可能なのかどうか伺いたいと思いますし、最近灯台の補修のために上陸をしたとすれば、それがいつなのか、この一年以内の上陸の日時がわかれば教えていただきたいと思います。

○米岡政府参考人 お答え申し上げます。

 いつ灯台の点検を行ったかにつきましては、昨年、平成二十年四月十一日に実施したところでございます。

 また、尖閣に関しましては、航空機等で、飛んでいる写真が提出できないかにつきましては、これは、大変申しわけございませんが、私の方は交通部というところで、警備等のための航空機の運用等というのは私と違う部署で担当しておりますので、これについてはちょっと回答を差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 官房副長官、最後にもう一度お答えをいただきたいんですが、我が国固有の領土である尖閣諸島に対して、国内法にのっとった履行がなぜ阻まれるのか。それから、こうした絶滅危惧種が存在する貴重な島でありますので、そこが今、ヤギが三百頭もふえて、そうした絶滅危惧種がなくなってしまうおそれもあるといったところに対して、なぜ必要がないというふうに断じることができるのか。

 やはり国内法にのっとった当然の履行を進めていくべきだと思いますので、ぜひ政府として前向きな検討を求めたいと思いますが、最後に官房副長官に御回答をお願いしたいと思います。

○松本内閣官房副長官 内閣官房、外務省及び総務省を中心といたしまして、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理の必要性を踏まえつつ、地方税法に関する固定資産税の実地調査の性格や尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に勘案しながら、環境省、文化庁とも連携をして検討させていただいたところでございまして、今般の要望に係る検討結果について、今、各御担当から御説明をさせていただいたところであります。

 基本的には、石垣市長にもお答えをしたところでございまして、私どもは適切な判断を期待しているところでございます。

武正委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。