2009/06/17
【衆院外務委 議事録】 ウズベキスタン、ペルーとの投資協定について問う

武正委員 民主党の武正でございます。

 条約について質疑を行わせていただきます。

 お手元の方に資料を今配付させていただいておりますが、過去の、ここに一覧表がありますが、投資協定を、ベトナム、カンボジアと、それからタイでしょうか、と比較をする。今回、ウズベキスタン、ペルーということで、今言った三つと、あるいは日本の従来型の投資協定とどこが違うのかという一覧表であります。

 この中で、上から七つ目の枠にありますのが汚職防止努力義務ということでありまして、自国の法令に従い、腐敗行為を防止するということで、今回のウズベキスタンについては第九条でしょうか、それからペルーについては第十条ということで、それぞれ条文がございます。

 昨年、カンボジアとの投資協定を当委員会で審議したときに、やはりこの汚職防止努力義務の条文というのが非常にユニークというか特徴的でありましたので、そこで伺いたいわけですが、ウズベキスタン、ペルーにはあるんですけれども、以前、カンボジアにはもちろんここにあるんですが、ベトナムになかった理由、これをお答えいただきたいと思います。

 また、カンボジアの投資協定、昨年この条文が入って発効をして、もう一年そろそろたちますが、それの抑制効果というんですか、これがどうなのか。また、これはそれぞれ国内法令にのっとってというふうに書いてあるんですが、一体カンボジアではどういう法令でこういう腐敗防止の法令があるのか、ちょっと承知しておりませんので、以上、まとめてお答えいただけますでしょうか。

○伊藤副大臣 時系列から申し上げますと、ベトナムとの投資協定は二〇〇四年なんでございまして、カンボジアは御存じのように二〇〇八年でございます。

 投資協定の交渉に当たっては、これまでもその内容の向上に努めてきているわけでございますけれども、近年では、現地公務員等による汚職行為が我が国企業による投資活動にとって大きな阻害要因とならないように、それを確保することが非常に重要になってきているという歴史的な流れがまずございます。

 こういった背景から、投資等を含むEPAについて、二〇〇六年署名の日・フィリピンEPAにおいて初めて腐敗行為防止に向けた努力義務に関する規定が盛り込まれ、投資協定としては、昨年発効した日・カンボジア投資協定及び日・ラオス投資協定において同様に、初めて腐敗行為の防止に向けた努力義務に関する規定が盛り込まれたわけでございます。

 カンボジア政府は、みずからの開発戦略において、グッドガバナンスの向上を最優先課題として挙げておりまして、その中で汚職撲滅に取り組んでいます。このような取り組みの一環として、カンボジアは二〇〇七年九月五日に、腐敗の防止に関する国際連合条約、国連腐敗防止条約にも加入しております。また、汚職防止について国内の関係法令の整備を引き続き進めていると承知しておりまして、日・カンボジア投資協定の締結はこうしたカンボジアの努力を後押しする効果もあると考えます。

 なお、日・ベトナム投資協定は二〇〇四年でございますけれども、腐敗行為防止に向けた取り組みを協定上の義務として規定にはこの時点でしなかったわけでございますが、そのような取り組みの重要性については今ベトナムとも十分認識を共有できるものと考えております。

 また、カンボジアの国内法については、お許しがあれば参考人から答弁させていただきたいと思います。

武正委員 今のお話で、二〇〇六年ぐらいからスタートしたということでありますが、たしかベトナムは、例のカントー橋の崩落事故ということで、この間もやはり安全操業というか、安全を旨とした円借款の見直し、あるいは第三者的なチェック機関のあり方など、そうしたことも合意をしているようでありますので、やはりこうした条項もベトナムとも入れていく必要があるのではないかなと。これは指摘にとどめておきます。

 そこで、今回のウズベキスタン、ペルーも同様に、この条文、汚職防止努力義務があるんですが、ウズベキスタン、ペルーでこれに応じた国内法の整備がされているのか、あるいは先ほどの国際連合条約を批准しているのか、伺えればと思います。

○伊藤副大臣 ウズベキスタンにおける腐敗行為防止に関する国内法令としては、ウズベキスタン刑法第五部、国家機関の機能、行政、社会組織の手続に関する犯罪における公務員の権利濫用第二百五条、収賄行為第二百十条、供賄行為第二百十一条、賄賂あっせん第二百十二条、買収第二百十三条、報酬の強要第二百十四条に係る罰則規定などがございます。

 なお、ウズベキスタンは、これは二〇〇八年七月二十九日締結でありますが、国連の腐敗防止条約の締約国でもございます。

 また、ペルーでございますが、このペルーにおける腐敗行為防止の国内法令としては、公共部門における利益誘導規制法、公務員の職務、給与に関する基本法を公布するための法令第二百七十六号、公務における倫理法などが挙げられます。

 なお、ペルーは、米州腐敗防止条約及び国連腐敗防止条約、これは二〇〇四年十一月十六日締結でありますが、締結国でもございます。

武正委員 そうはいってもと言うと怒られますけれども、どうもやはりODAなり、あるいは特に途上国へのこの後話が出る投融資、どうしても、さまざま今言われたような腐敗というものが必ずついて回るというか、あるいはそれがもう当たり前なんだというようなことが言われているわけなんですね。

 ここで、こういう条文で、「努力を払うことを確保する。」という書きぶりですから、当然、罰則規定もないわけでありますが、これをどうやって担保するかということだと思うんですね。

 カンボジアの例で、連合条約を批准し、国内法も整備していますよということなんですが、やはりこれを有効ならしめるために、我が国がせっかくこういう条文をこうやって投資協定で入れているわけですので、やはりその担保をする、その補完措置というんでしょうか、ここをどのようにお考えなのか伺えますでしょうか。

○伊藤副大臣 カンボジアの例で申し上げますと、まずカンボジア政府は、みずから開発戦略においてグッドガバナンスの向上を最優先課題として挙げており、その中で汚職撲滅にも取り組んでいるわけであります。

 我が国としては、このカンボジア政府による汚職撲滅を含むガバナンス向上努力を支援するために、法整備支援、こういった部分などの技術協力を行っております。また、日本・カンボジアの投資協定の合同委員会においても、必要に応じて、汚職対策の重要性について指摘してまいりたい、そのように考えております。

武正委員 ウズベキスタン、ペルーはいかがですか。これからこれを批准した後、発効していくわけですが、何かそういうような、今のようなお考えがあるのかどうか、あれば伺いたいと思います。

○伊藤副大臣 それぞれの国で個別事情があると思いますけれども、基本的にはカンボジアと同様の取り組みをするということでございます。

武正委員 もう既に出ておりますけれども、改めて、過去署名したEPA、FTA、租税条約、投資協定に腐敗防止条項はどの程度盛り込まれているのか、あるいはそういう方針が、あるいは、きょうも審議しております社会保障協定はちょっとそぐわないのかもしれませんが、政府としての考え方、何か統一性があるのかどうか、伺えればと思います。

○伊藤副大臣 過去に署名したEPAでは、日・タイEPA、日・インドネシアEPA、日・フィリピンEPAにおいて、腐敗行為の防止に関する規定が盛り込まれております。

 また、投資協定については、今回御審議いただいている日・ペルー投資協定及び日・ウズベキスタン投資協定に加え、日・ラオス投資協定及び日・カンボジア投資協定にも同種の規定が盛り込まれているわけでございます。

 なお、租税条約につきましては、基本的には腐敗行為の防止に関する規定は設けておりません。

武正委員 例えば、腐敗防止条項を設けることを相手国が拒否をする、あるいはそれをためらうという事例というものはあるんでしょうか。

○伊藤副大臣 個別の国について今お答えする資料がないわけでございますが、最後に御説明をした租税条約について、なぜ設けていないかという件に関しては、租税条約はそもそも二重課税の回避あるいは脱税の防止を目的として、締約国の課税当局間における課税権の配分や課税当局間の協力について規定することがその中心内容となっているわけでありまして、他方、腐敗防止に向けた取り組みというのは、税関とか財務省関係だけでなくて、政府職員全般にわたる問題であるということでございますので、これを踏まえれば、主に課税当局を規制する租税条約よりも、二国間の経済関係全般を広く扱うEPAや投資協定において、政府全体に課せられる義務として規定することの方がより適切であるという考えでございます。

武正委員 聞きたかったのは、租税条約じゃなくて、EPA、FTA、特に、これからもっと結びなさい、もっと短期間で結ぼうじゃないかということが、きょう委員会でほとんどの委員から出ているこの投資協定に、腐敗防止条項を盛り込むことが、何らか促進を阻害する、投資協定を結ぶことを阻害する要因になる可能性があるのかどうかを聞きたかったんです。

○伊藤副大臣 ちょっと手持ちの資料で一覧表がないので、少し不正確になると。私の記憶するところでは阻害要因になるということはないと思いますし、この腐敗ということが貿易・投資のいろいろな重要な案件になってから、常にそのような条項を盛り込むという方向で日本の外務省は締約に向けております。

武正委員 ぜひそういう統一性を持って臨んでいただきたい。そして、あわせて、やはり相手国の理解を得られるような説明で、速やかに投資協定を多数の国と結んでいただくようお願いをしたいと思います。

 そこで、今回のウズベキスタン、ペルー、先ほど来、外務省さんからは大変豊かな鉱物資源というような御説明がありましたが、特に豊かな鉱物資源の獲得にこの両協定を政府、民間企業などはどのように活用していこうと考えているのか、また、JICAはどうなのか、外務省としてお答えをいただきたいと思います。

○中曽根国務大臣 ウズベキスタン、ペルー両国とも、お話にありますように鉱物資源が非常に豊かな国でありますが、そういうところから、日本企業も、近年、ペルーの鉱物分野での活動を活発化させておりますし、また、ウズベキスタンの鉱物資源にも関心を示し始めているところでございます。この両国におきまして、この協定を結ぶことによりまして、日本企業にとりましては、一層安定的で、また予見可能性の高いそういう法的基盤に立って投資を行うことができる、そういうふうに考えております。

 我が国といたしましては、こういう資源やエネルギーの確保のために、両国のまずは政治的安定、それから市場の透明性の向上、また投資環境の整備、さらに資源輸送路の安全確保など、幅広い施策を進める必要がありますが、ペルーにおきましては、投資環境改善小委員会が設置されることにもなっておりますので、そのような委員会も活用しながら、両国との長期にわたる安定的な二国間関係を構築すべく、またお話ありましたJICAなどの関連機関とも連携をして取り組んでいきたい、そういうふうに思っています。

武正委員 民間企業がこの協定をどのように活用するのか、この投資協定によって、民間企業が特に鉱物資源の獲得に積極的に乗り出していく場合にどのようなことが期待されるのか、この点はいかがですか。

○中曽根国務大臣 これは一番大事な点といいますか、民間企業の立場から見ますと、投資家の権利の保護とか、それから投資の自由化というものもあります。そして、投資環境整備のための法的な枠組み、これを提供するものでありますから、先ほど申し上げましたけれども、この協定を結ぶことによりまして、民間企業にとりましては投資を安定的に行うことができる、そういうことになると思います。

武正委員 そこで、来週閣議決定をする骨太方針に、JICAの投融資、これが盛り込まれるであろうということで、既に第二十二回の海外経済協力会議でそうした点が了解をされているわけでありますが、お手元の資料、二ページをごらんいただきたいと思います。

 これは株式会社日本国際協力機構が、この間、JAIDOが出融資をした案件でありまして、ここに今回の投資協定が結ばれたウズベキスタンとペルーが入っております。ペルーが平成五年、一九九三年、それからウズベキスタンは平成六年、一九九四年であります。

 ペルーについては水産加工ということでありまして、またウズベキスタンについては絹紡績ということでの投資案件でありますが、それぞれ出資をした額、五千九百万円あるいは四千二百万円ということでありますが、キャピタルゲイン、ロス、減損、貸し倒れ償却額、評価差額、配当累計等では、それぞれマイナス五千九百万円とマイナス三千六百万円というふうになっているんですけれども、それぞれの出融資、これがどういうものであって、結果、どういうふうになったのか、今回、ウズベキスタン、ペルーとの投資協定、そしてこれからまたJICAが出融資を行う可能性もあるという中で、やはりこれを参考にしていく必要があると思うんですが、それぞれお答えをいただければと思います。

○伊藤副大臣 まずは前段に、JAIDOは、委員御指摘のように、株式会社として独立した経営を行う組織であって、個々の案件に対する出融資の判断を政府が行ったわけではございません。

 その前提で御説明申し上げれば、お尋ねのウズベキスタンの投融資事業については、年百二十トンの絹紡糸といいますか絹の糸の生産をして、主として日本向けに輸出することを目指して、日・ウズベキスタン合弁会社を設立し、JAIDOは同社に対して一九九六年に四千二百万円を出資した案件と承知しております。この事業は、原料供給にトラブルなどがあり、三千六百万円が償却される結果になったと承知しております。

 ペルーの方でございますが、ペルー投融資事業については、漁船が老朽化し非効率のものになっているペルーの水産業復興のために、サメ、イワシなどの捕獲、加工した上での製品を輸出して、外貨の獲得を目指して、JAIDOは日本・ペルーの合弁会社に対して一九九三年に五千九百万円出資した案件と承知しております。この事業は、漁船の操業不振などもあり、五千九百万円が償却される結果になったと承知しております。

武正委員 それぞれの事業は、その後も今も存続しているんでしょうか。

○伊藤副大臣 ウズベキスタンの方でございますが、原材料にトラブルが生じ、為替の影響を受けて財務状況が悪化し、二〇〇二年に本事業から撤退したものと承知をしております。

 ペルーの方でございますけれども、やはりペルー沖におけるサメの漁などの操業不振が原因となって債務超過の状況となったことから、一九九六年に撤退したものと承知しております。

武正委員 今回、JICAの投融資機能を再開するということでありますが、JBICとJICAでどのように投融資を分けるのかというと、JICAの方がいわゆるリスクのあるものというようなことが言われているわけなんで、そうしますと、JAIDOについては、今、民間企業というふうなお話でしたけれども、ここにはOECFから六十三億円が投資をされて、うち四十六億円でしたでしょうか、これが債務処理されているわけでありまして、やはり、この案件の、どういう形でこれが選ばれたのか、そしてその結果がどうだったのかというのは、非常に参考になるというふうに思うわけです。

 これは、ざっと見ますと、それこそ、ウズベキスタン、ペルー、それぞれ今言ったように絹紡績と水産加工ということでありまして、どうも、この投資協定がねらっているような鉱物資源、両国の鉱物資源というようなお話がありましたが、鉱物資源についてJICAが投融資をするような分野というのは多分少ないのではないのかなと。リスクがあり、そしてなかなか民間企業が投融資をしないような分野にということになってきますと、やはりこうした非常にローテクというか、こういった分野が多分今も並ぶのではないのかなというふうに思うんですね。

 そのときにどういうような観点でこのJICAの投融資を考えていくのかということがこれから大変問われると思うんですね。過去の実施案件の成功例、失敗例や問題点を十分研究、評価するということを海外経済協力会議でも合意をしておりますので、この点についてどのような観点でこのJICAの投融資を考えていくのか、お答えをいただきたいと思います。

○伊藤副大臣 人も国も機関もそれぞれ失敗から学ばなければならないと思います。

 JAIDOの件から先に申し上げますと、やはりこの人員体制、審査体制が不十分だった点というものがあるのではないかと思います。

 JICAの投融資業務についても、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが重要だと思いますし、大変な毀損があったわけでございまして、JAIDOの債務状況が悪化して、結果として旧OECF援助出資金の多くが毀損する事態に至ったことは、まことに遺憾なことだと考えております。

 今後のJICAの投融資業務については、関係省及び第三者の知見をよく導入して、過去の実施案件の成功例そして失敗例等のことをよく十分に分析、研究、評価して、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが必要である、そのように考えております。

武正委員 外務大臣にも伺いますが、経済財政諮問会議の骨太の方針にこれが盛り込まれるという報道がありますので、まだ二十三日の閣議決定前で、明言はできないのかもしれませんが、今そういう方向ということでありますが、やはりこのODAとこうした投融資あるいは民間の投資がうまく連携するような戦略的なODAというようなことで、このJICAの投融資も新たにスタートするというふうに聞いているんですね。

 ただ、鉱物資源の投融資に本当に結びつくのかというと、過去のこのJAIDOを見ても、どちらかというとローテク中心あるいはリスクがあるものというところもありますので、本来鉱物資源を開発するためのODAとうまく連携した投融資というところに本当に行くのかどうか、ここら辺もやはり踏まえていく必要があると思うんですが、外務大臣としての御所見を伺いたいと思います。

○中曽根国務大臣 今お話ありましたように、資源のない国、我が国としては、そういうような鉱物資源、これは大変貴重でありますし、そういう点の獲得といいますか、そういうものを十分視野に入れながら、ODAにいたしましても投融資にいたしましてもやはり検討していくということが大事だと思いますし、今副大臣から御答弁申し上げましたけれども、JICAの投融資業務につきましても、過去の例というものを十分に検証して、今後新しい体制を確立していくということが大事だ、そういうふうに思っております。

武正委員 以上で終わります。