1997年12月8日



(4)入札制度の改善について
武正  
 入札制度の改善について伺います。
 このたび、公共工事コスト縮減対策に関する埼玉県行動計画が発表されました。
平成11年度末までに10パーセント以上の縮減を行うことを目標としたものです。

 県営サッカースタジアムについては、 その公費と工期を縮減しようという、 全国都道府県としては初めてとなる入札時VEを取り入れたことは、 画期的な取組と評価する一方、 苦渋の選択とも受け取るところです。
 というのは、これまでのJV方式、分離分割発注に慣れていた地元建設業界からは、一社単独のVE方式に不安の声があがっているからです。地元建設業界の育成という観点からどのような対応を考えているのか、住宅都市部長に御所見を伺います。

 さらに、 建設省の審議会では、 経営審査の点数配分について、 完工高の比率を低めて技術力の比重を高めようという動きがあります。 完工高の比率が高いことにより赤字覚悟の受注を競う業者が出てくる等の反省からですが、 県内建設業界にとっても、 WTOの入札では、 県内外の区別がなくなる中で、 さいたま新都心など、 県内のビッグプロジェクトへの入札が経営審査点数の足切りにより不可能になったことが指摘されています。 点数を上げようにも、 完工高の比率が高ければ実績が問われる。 実績を上げたくても入札できないという点です。

 さて、12月には、 行政改革委員会の規制緩和小委員会の最終報告で、 公共工事のコスト縮減のためにも、 談合防止や行き過ぎた中小企業優遇の是正が必要であるとして、 一般競争入札を拡大すべしということが打ち出されました。

 建設業は、 欧米、 日本を問わず地域性の高い業種であり、 雇用吸収力や経済波及効果が最大の業種の1つであることを考えるとき、 必ずしも規制緩和になじまないことが指摘されます。 しかしながら、 大競争時代を迎える今、 技術力をはじめ、 ISO基準など、 品質システム、 環境管理を含め、 各企業の総合力が否応なく問われることも事実であります。
 説明責任、情報開示という時代の要請と、地元建設業界の技術力向上、経営体質の強化の方策とのバランスをいかにとるか、土木部長の御所見を伺います。

 また、土木建築、建設技術の向上、継承という観点から伺います。
 経営審査の点数には、 技術者の数を加点しています。 技術者には、 建設業法、 技術士法、 職業能力開発促進法などの技術者、 技能者が挙げられています。 聞き及ぶところ、 例えば斜面に石を積むやり方一つとっても、 最近は、 雨が降ると崩れてしまうというケースもあるとのこと、 その独特の技術は継承すべきものです。

 しかし、 例えば、 新建材により左官屋さんが減り、 洋風化により畳屋さんが減り、 パネル工法により建具屋さんが減りとのこと、 時代の流れとはいえ、 手づくりの、 そして後ほど触れる技能五輪全国大会の本県開催とも絡み、 大事な大切な分野と考えます。
 一方、 県職員の検査員の方々の目も、 とかく、 大きさ、 厚み、 形などの面にその視点を置かざるを得ないのは分かりますが、 その技術力への評価という視点も必要ではないかと考えます。
 以上、企業の技術者養成の確保と県の検査体制について、建設業界を指導する立場から、土木部長にお伺いいたします。

三澤邁策住宅都市部長 
今回のスタジアムの入札につきましては、 御指摘のとおり、 厳しい財政状況の中で工事費の縮減が強く求められるとともに、 ワールドカップサッカー大会開催までの期間が短いことから、 工事期間内の履行が絶対の条件であり、 こうしたことから、 VE制度も導入した1社による発注方式がこれらの効果を最大限に期待できるものと判断したところでございます。

 御質問の、県内業者の育成につきましては、県政の重要な施策であると認識をしており、本スタジアム建設につきましても、県内企業の参入や県産品の調達について、あらゆる機会をとらえ、受注者にできる限り配慮するよう要請してまいります。

小池久土木部長 
 まず、 地元建設業界の技術力向上、 経営体質の強化の対策と入札時の透明性の確保とのバランスをいかにとるかについてでございますが、 一般競争入札は、 通常の指名競争入札に比べまして、 手続の透明性、 競争性、 客観性の高い入札制度であると認識しております。 現在、 21億6,000万円以上のWTO政府調達協定適用対象工事をはじめ、 おおむね10億円以上の工事において一般競争入札を導入しているところでございますが、 さきに策定いたしました公共工事コスト縮減対策に関する埼玉県行動計画の施策の中におきまして、 一般競争入札等の導入の拡大を掲げているところでございます。 これは、 一般競争入札の対象工事を拡大するとともに、 経営事項審査点数などの入札参加条件を緩和することで、 より多くの建設業者の入札参加を可能にしようとするものでございまして、 地元建設業界の技術力向上や経営体質の強化に配慮しながら、 今後、 試行を行った上で段階的に実施してまいりたいと存じます。

 次に、 企業の技術者確保についてでございますが、 建設業法上、 一定規模以上の工事現場ごとに専任の技術者を設置しなければならないこととされております。 そこで、 県の入札参加資格審査における業者の格付けに当たりましては、 経営事項審査の総合評点のほか、 一定の資格を持つ技術者の人数を考慮した上で決定しているところでございまして、 企業側の技術者確保への努力や技術力の向上に対する意欲を高めることに寄与しているものと考えております。

 また、 現在、 優秀な建設技術者の表彰や各関係団体が行います技術研修への講師の派遣に積極的に努力するなどいたしまして、 技術力の向上を図っているところでございます。
 今後とも、建設業界団体など関係機関との連携を図りながら、技術者養成の指導に努めてまいりたいと存じます。

 次に、 県の検査体制についてでございますが、 工事検査の実施に当たりましては、 出来形寸法、 品質の適否を検査いたしますとともに、 工事成績評価要領などにより、 現場技術者の技能についても評価する体制をとっておりますが、 今後、 更に検査技術の向上に努めてまいりたいと存じます。



(5)官民の人事交流とNPO(非営利組織)との連携について

武正  
 官民の人事交流とNPO(非営利組織)について伺います。
 本年10月3日、4日と東京で開かれた97国際円卓会議の第4セッションに参加された坂東副知事は、公務員制度を柔軟にすべきこと、特に官民の人事交流の必要性を報告しています。
 私は常々、 官民の人事交流が行なわれ、 多種多様な人材が民間から本県に採用されれば、 県職員間の切磋琢磨と、 いわゆる民間のルールは官になじまないという指摘を克服し、 情報開示や情報化などの時代の動きへの俊敏な対応など、 メリットを多とするものであります。
 一方、地方分権をしぶる中央省庁の声として、いわゆる受皿としての都道府県、市町村の職員の方々の能力を問う声があります。

 本県にも、 政策立案自治体、 経営感覚にあふれた自治体、 市町村のリーダー役、 あるいはサポーター役としての自治体が望まれる今、 県職員の方々の能力や経験や識見が本県発展の重要な鍵を握ることは言うまでもないところであります。 そのためにも、 民間企業、 団体での経験、 また、 本県への民間企業からの職員としての積極的な受け入れが必要ではないでしょうか。 このことについて、 中川副知事にお伺いいたします。
 さらに、県職員の年齢制限の撤廃、期限付き採用、専門職の職員採用拡大が必要と考えます。
 まず、 年齢制限については、 職員の年齢構成を適切に維持していくためにも必要との声がありますが、 年齢制限を見直すことにより、 官民の人事交流を積極的に行う道を開くことにもなるのではないでしょうか。

 公設試験研究機関についても、優秀な人材の確保という点では、科学技術会議も客員研究員制度の導入について指摘されているところであります。
 そのような中で、 中途採用の弾力化、 職員の任用に関する規則の中の、 選考の対象となる職の再検討など、 職員の任用に関する規則の見直しも必要と考えます。
 以上、人事委員会委員長にお伺いいたします。
 また、中央省庁、市町村との本県の人事交流についても伺います。
 いわゆる国から県、 県から市町村へと肩書を上げながら降りてくるやり方は、 地方分権時代にはそぐわないと考えますが、 地方分権の過渡期でもあり、 官官の人事交流を平らなかたちで行うことは、 本県の力量を高める意味でも依然必要であると考えます。
 以上、総合政策部長にお伺いいたします。

 次に、 NPO (非営利組織) との連携についてですが、 福祉や環境保全、 まちづくりや国際協力など、 様々な分野で近年活発に行われるようになってまいりました市民活動は、 住民自らが地域課題の解決に自主的に取り組むという意味で、 地方分権を支える大きな力であり、 今後ますます行政とNPOとの連携が重要とされるところであります。 したがって、 冒頭のワールドカップ本県開催、 あるいは県内諸施設の運営等にも、 NPOの参加が期待されるところであります。
 例えば、 現在設置が検討されている県女性センターについては、 その管理運営の体制について既に検討経過報告も出されていますが、 こうしたNPOを含め、 どのような管理運営の考え、 方策、 具体案があるでしょうか、 考えられるでしょうか。 坂東副知事に御所見を伺います。

中川浩明副知事 
21世紀を間近に控える今日、 これまで以上に広い視野を持ち、 自ら政策を立案し実行できる人材や、 コスト意識など、 経営感覚に優れ、 社会経済の変化に敏感に対応できる人材など、 多様な人材の育成確保を積極的に進めなければならないと考えております。
 こうした人材の育成確保に当たりましては、御指摘のとおり、民間との人事交流は重要な方式であると考えております。

 県におきましては、 現在、 民間企業等4団体へ職員を派遣し、 業務に携わる中で、 民間の柔軟な発想や経営感覚を学ばせており、 また、 民間企業からも、 県行政に民間の知識、 発想を生かすため2名の職員の派遣を受けております。 さらに、 平成7年度から、 民間企業の経験者を非常勤の行政監察員として2名採用いたしまして、 民間の経営感覚を活用した監察業務を行わせているところでございます 。
 今後は、 こうした民間企業との人事交流や民間からの人材の採用について、 更に広く検討を行い、 積極的な人事交流の実現に努め、 多様な人材の育成確保に努めてまいりたいと考えております。

新井修市人事委員会委員長 
 地方分権の推進や 「環境優先」 「生活重視」 の県政推進のためには、 様々な行政需要に対応できる優秀な人材の確保が重要であると考えております。 本県では、 これまでも、 民間の経験を公務遂行に生かすために、 幾つかの民間企業などに職員を派遣したり、 民間人を受け入れたりしているところでございますが、 人事委員会といたしましても、 任命権者と連携を図りながら積極的に対応してまいりたいと存じます。

 また、 試験研究機関の一部の研究員につきましては、 選考による採用により、 外部の研究機関などから受け入れて活躍をしているところでもございますが、 今後、 更に研究機能の高度化や活性化を図るために、 高度な知識や経験を積んだ研究員が必要であると認識しております。
 いずれにいたしましても、 豊かな彩の国づくりのため、 これからの県政を担う優秀な人材の確保を目指し、 実際に職員を採用し配属する任命権者と協議し、 連携を深めながら、 武正議員の御提言の趣旨を踏まえ、 専門職や研究職の年齢制限の見直し、 中途採用の弾力化などの採用試験制度の検討に一層努めてまいりたいと存じます。

武田茂夫総合政策部長 
 国との人事交流につきましては、 これまで、 国の職員の専門的知識や幅広い政策立案能力を活用し、 県行政の一層の推進を図ることができること、 また、 組織の活性化を図ることができることなどから、 実施してきたところでありまして、 県における、 その職にふさわしい人材の派遣を国に要請してきたところでございます。 また、 市町村との人事交流につきましても、 県からの職員の派遣に当たりましては、 市町村からの強い要請に基づき、 その職にふさわしい人材を派遣しているところでありまして、 市町村の行政の進展や職員の資質の向上に成果を上げているところでございます。

 このような国や市町村との人事交流につきましては、 県や市町村の複雑かつ多様化する行政への対応や組織の活性化のため、 今後とも必要であると考えておりますが、 こうした人事交流により派遣を受けた団体の職員の意欲を損うことがないよう、 県が派遣を受ける場合や市町村に派遣する場合の派遣ポストにも十分留意をしながら、 地方分権の時代にふさわしい人事交流を進めてまいりたいと考えております。

坂東眞理子副知事 
 埼玉県女性センター (仮称) の管理運営体制についてでございますが、 女性センターの設置については、 平成9年度に基本構想検討委員会を設置いたしまして検討を進めているところでございます。
 女性センターは、 男女共同参画社会づくりの拠点施設であり、 地域で女性問題解決のための様々な自主活動を行っている団体やグループ、 すなわちNPOと行政との連携を図り、 その活動を支援することがセンターの機能の柱の一つであると考えております。

 また、センターの管理運営に当たりましても、県民の参画を図ることが重要であり、参画の具体的な方法として、運営協議会の設置やボランティアとしての参加などが検討されております。
 いずれにいたしましても、検討委員会での議論を深めまして、今後とも、NPOを含めた幅広い県民参画の方策を図ってまいりたいと存じます。




(6)介護保険法案について


武正
 介護保険法案について伺います。
 介護保険法案が今国会でほぼ通過する見通しとなり、平成12年度からの導入が決定しました。以下、4点を福祉部長にお伺いいたします。
 まず、 県においては、 5年を1期とする介護保険支援計画を作成することとされていますが、 どのような手順で作成されるのか伺います。

 第2点目は、要介護認定についてであります。
 介護保険制度では、 この要介護認定は、 被保険者に対する保険給付額まで決定する極めて重要な事務であり、 市町村によって、 その対応力におのずと差がついてくるものと予想されます。 県では、 市町村に対して要介護認定をどう指導していくのか、 公平な基準設定づくりをどう進めるのか、 さらに、 市町村で認定が難しいときは、 広域的実施や県への委託が可能となっていますが、 そのときの対応はどうするのか伺います。

 第3点目は、マンパワーの養成確保であります。
 介護保険制度においては、 高齢者の日常生活動作や問題行動の状況など、 要介護認定の調査を行う介護認定調査員や介護サービス計画を作成する介護支援専門員 (ケアマネージャー) など、 新たな担当者による業務が求められており、 これらの養成確保は県の重要な役割の1つと考えます。

 特に介護支援専門員については、 医師、 歯科医師、 看護婦、 保健婦など、 幾つかの職種が想定されていますが、 例えば、 助産婦、 栄養士、 歯科衛生士などが、 幅広く、 その候補者になり得るものと考えます。 同じことはホームヘルパーの確保についても言えます。
 多くの職種が介護支援専門員になれるように、 また、 ホームヘルパーを含め、 その候補者となり得るであろう潜在している看護婦、 保母などの有資格者の発掘や登録を積極的に進めるべきと考えます。

 このことは、 県歯科医師会が未就業の歯科衛生士の登録を行っていますが、 幅広い人材の登録を、 保健・医療・福祉の連携を目指し、 健康福祉部が誕生する今こそ、 横断的な登録、 発掘、 養成が求められるところですが、 以上、 福祉部長の御所見を伺います。
 第4点目は、民間活力の活用について伺います。
 介護保険においては、 現在の措置という制度が、 利用者本位の制度として、 自らの選択に基づいたサービス利用となるとされています。 利用者がサービスを選択できるようにするには、 従来の市町村や社会福祉協議会だけでなく、 民間企業も含めた多様な事業主体の参入が必要です。

 既に、 農協、 生協、 労働団体、 あるいは医療法人、 企業などの名前が挙がっていますが、 良質な民間事業者が参入しやすい環境整備が必要であるとともに、 現に、 各地域で高齢者介護に大きな役割を果している任意団体についても、 サービス提供者へと高めていく必要があります。 特に、 NPO法案設立後は、 これらの団体に法人格が与えられる可能性が高く、 より自立と責任が問われてくるからです。

 そこで、 現状では、 どのような業種の民間事業者が、 どの程度、 本県で事業展開をしているのか、 そして、 県として、 民間事業者の参入やNPOの育成や参加を図るためどのような方策を講じていくつもりであるかをお伺いします。

野澤通泰福祉部長 
 まず、 介護保険事業支援計画の策定手順についてでございますが、 都道府県介護保険事業支援計画は、 国の基本方針に即して作成することとされておりますが、 国の基本方針は平成9年度中に示される予定になっております。 したがいまして、 平成9年度には計画策定体制の検討等を行い、 平成10年度に策定委員会等を設置し、 鋭意検討を進めますとともに、 市町村との調整を図り、 平成11年度の早い時期には老人保健福祉圏域ごとのサービス基盤の必要量をまとめ、 平成11年度中には支援計画として取りまとめる予定でございます。

 次に、 要介護認定についてでございますが、 県では、 市町村が要介護認定事務を熟知するとともに、 市町村が単独で実施できるか否かをはじめとする要介護認定に当たっての様々な課題の検討を行うため、 平成8年度から要介護認定のモデル事業を実施しているところでございまして、 平成8年度には3地域の3市1村において、 また、 今年度は13地域の36市町村で実施しておるところでございます。

 県といたしましては、 円滑かつ適切な要介護認定審査ができますよう、 この事業を通じ得られましたいろいろな課題や問題点を踏まえ、 国に対し、 判定基準に関することを含めました必要な意見を提示いたしますとともに、 市町村や審査判定を行う介護認定審査員等に対し、 適切な研修や指導を行ってまいりたいと存じます。

 また、 介護認定審査会の単独設置が困難な市町村につきましては、 数市町村による共同設置を支援いたしますほか、 県への委託による実施を協議してまいりたいと考えております。
 次に、 マンパワーの養成についてでございますが、 潜在している有資格者の活用は、 有用な方策の1つと考えております。 既に、 歯科衛生士のみならず、 ホームヘルパーにつきましては、 多くの市町村や社会福祉協議会で、 また、 看護職は県看護協会で登録が行われておりますので、 横断的な発掘、 登録につきましては、 これらとの関係も含めまして今後検討してまいりたいと存じます。

 次に、 民間活力の活用についてでございますが、 現在、 市町村が民間企業に委託しておりますのは、 ホームヘルプサービスが5市町、 配食サービスが3市、 訪問入浴サービスが31市町村、 寝具乾燥消毒サービスが14市町村でございます。 また、 24時間巡回型ホームヘルプサービスにつきましては、 16市町で実施しておりますが、 このうち3市が民間企業に委託しているところでございます。
 介護保険制度においては、 民間事業者のみならず、 非営利民間団体も在宅サービスの提供主体となることができることとされておりますので、 県といたしましては、 制度についての周知や在宅サービスに関する情報提供を行うことによりこれらの団体の育成を図りますとともに、 市町村に積極的な活用を図るよう働きかけ、 多様な事業主体の参画による基盤整備に努めてまいりたいと存じます。




(7)福祉部と衛生部の組織統合及び県立病院の経営改善について

武正  
 福祉部と衛生部の組織統合及び県立病院の経営改善について伺います。
 本県県政世論調査では、県民の県政の要望の第1位に挙げられているのが、健康にかかわる諸施策であります。来年度より健康福祉部が誕生するところも、こうした県民の要請に応えるため、保健・医療・福祉の連携を強めるためと理解し、両部統合のメリットを遺憾なく発揮するためにはどのようなことが考えられ、準備を進めなくてはいけないか、坂東副知事に伺います。
 両部統合により、その職員数は4,000名となり、そのうち2,000名は県立5病院と総合リハビリテーションセンターの職員数となります。国の行政改革会議の最終報告で、いわゆる独立行政法人に国立病院を加えることがうたわれましたが、上記6施設についても、経営の自立性、県民サービスの向上が求められるのは時代の要請と考えます。

 現在、 県立5病院では、 県一般会計からの繰入れが126六億円に上ることは、 高度医療の不採算部門であることを考えるとやむからぬこととも受け取りますが、 今般、 健全な財政運営のための中期的計画にも、 県立病院の経営改善が盛り込まれたように、 より一層の工夫改善が求められるところであります。 それが、 県5か年計画に盛り込まれる、 県高齢者中核医療機関の設立、 運営の方策づくりに反映するとも考えます。
 そこで、県立病院の経営の在り方も含めて、今後の経営改善方策について衛生部長にお伺いいたします。

坂東眞理子副知事 
 ライフスタイルや疾病構造の変化に対応し、 保健・医療・福祉サービスを一体的、 総合的に提供できる体制づくりを進めるため、 県におきましても、 保健・医療・福祉の連携を強化するために、 10年度の福祉部と衛生部の統合に向けて準備を進めております。
 この両部統合に当たりましては、 専門的なサービス供給体制を確保するとともに、 保健・医療・福祉の連携のとれた施策展開が可能となるような組織づくりが重要と考えております。

 具体的には、 保健・医療・福祉政策の企画調整機能を強化するとともに、 高齢者等に対する保健福祉施策を総合的に推進するため、 成人保健と高齢者の在宅福祉サービスや生きがい対策との連携の強化、 また、 精神障害者を含めた障害者の社会参加や在宅施設サービスに関する施策の総合的推進体制の強化、 母子保健と児童福祉の連携による総合的な子育て支援施策の推進体制の強化などを基本方針として、 組織の統合、 再編に向け検討いたしております。
 福祉部と衛生部の統合によるメリットが十分に発揮できるような組織づくりを進め、 今後とも保健・医療・福祉が有機的に連携した総合的な施策を推進してまいりたいと存じます。

遠藤明衛生部長 
 県立病院は、 御指摘のとおり、 高度専門医療のほか、 公衆衛生部門や研究業務を担っておりますことから、 診療報酬のほかに一般会計からの繰入金によって運営しているところでございます。
 しかしながら、県民の医療ニーズに応え質の高い医療を継続して提供してまいりますためには、経営の健全化は欠かせないことであると存じております。

 したがいまして、 現在、 各病院に経営改善対策委員会を設置し、 検査業務の委託化、 在庫管理の見直し、 病床利用率の向上や平均在院日数の短縮化など、 支出の削減、 収入の確保について努めているところでございます。 今後、 地域医療機関との連携を強化し、 医療資源の有効活用を図りますとともに、 近く、 民間病院の経営者を含めた有識者の御意見をお聞きする場を設け、 民間の経営手法を導入した経営体制の確立に向けまして一層の工夫改善を行ってまいりたいと存じます。
 さらに、 県民サービスの向上と県立病院として取り組むべき新たな課題に対応してまいりますため、 御提言いただきました国の行政改革の趣旨も踏まえました検討を進めてまいりたいと存じます。




(8)基本健康診査、がん検診の受診率向上策について

武正  
 基本健康診査、がん検診の受診率向上について伺います。
 本県のがん検診率は、全国最下位です。子宮がん、乳がんも同じく最下位であり、こうした傾向は10年連続しているところであります。
 肺がん、 大腸がんを含めた5がん検診率は、 平成7年度、 いずれも1ケタ台であり、 平成11年度に30パーセントにしようという厚生省の目標に、 今の推移では遠く及ばないところであります。
 基本健康診査も下位で、およそ3人に1人という受診率であります。

 こうした結果は、人口急増、平均年齢が若い、東京が近いという理由のほか、PR不足もあり、検診が行われることの周知が不足しているからと考えます。
 平成6年度、 県国民健康保険課が作成した県健康づくり意識調査報告書でも、 基本健康診査が行われていることを知っていた方は40パーセントにすぎず、 知らないと答えた方が52パーセントに上っています。
 そこで、これら受診率の向上への取組と今後の見通し、並びに方策を衛生部長にお伺いいたします。

 また、働き盛りの40代、50代の男性の受診率が低いと言われます。そうした年代の、特に自営業者の方が急に病気にかかり、入院することを、よく耳にします。
聞いてみると、仕事に追われ健康診査を受けていないケースがほとんどであります。
 例えば、 青果商組合やそば組合のような自営業の業種別組合に対して、 こうした健診を集団で、 あるいはそれぞれが個別に、 いずれにしても、 こうした団体に対して受診の働きかけを行うこと、 できれば補助制度を設けることについての御所見を伺います。

 さらに、総合健康診査についても伺います。
 基本健康診査、 がん検診の受診率を向上させるためには、 歯周病対策を含めた総合健康診査の導入が求められますが、 近県との比較の上、 本県の現状と課題並びに見通しについて伺います。
 以上、衛生部長の御所見を伺います。

遠藤明衛生部長 
 まず受診率の向上についてでございますが、 本県の健康診査の受診率が低いことは御指摘のとおりであり、現 在のところ目標の達成は極めて厳しい状況にありますが、 県といたしましても、 実施主体である市町村に足を運び、 市町村の置かれた地域の実情に応じた事業の実施に意を払い、 受診率が向上するよう、 市町村とともに努力しているところでございます。
 具体的には、 地域の医療機関が必ずしも十分ではない地域においても住民の方が身近に健康診査を受けられるよう、 土曜日や日曜日、 休日の集団検診の実施、 地域の病院や診療所での個別検診の実施を更に推進するとともに、 衛生委員など、 地域のボランティアを活用した啓発活動等により、 住民への健康診査の周知徹底を図ってまいりたいと存じます。

 次に、 自営業の業種別組合に対する受診の働きかけについてでございますが、 老人保健法に基づく健康診査は、 職場での健康診断を受診する機会のない方々にその機会を提供することを目的としておりますことから、 健康診査に関する情報提供を積極的に図るよう、 市町村を指導してまいりたいと存じます。 御提言のありました補助制度につきましては、 現在実施しております老人保健法に基づく補助がございますので、 御理解を賜りたいと存じます。
 次に、 総合健康診査についてでございますが、 これは、 40歳及び50歳の節目を迎えれた方々に行うものでございまして、 平成7年度には全国で7.6パーセントの市町村が実施という、 低い実施率でございます。 関東地方で実施している市町村は、 群馬県内、 東京都内に各2市町村、 千葉県内に1市町村という状況でございます。

 普及の問題点といたしましては、 実施医療機関が事実上総合病院に限られてしまうこと、 歯周疾患検診を行うための歯科医療機関との連携が不十分であること、 対象住民が限定されて不平等感があることなどが挙げられようかと存じます。
 このような事情の中で、 平成10年度において総合健康診査の実施を計画している市町村もございますので、 県といたしましては、 このような市町村に対しまして積極的に支援してまいりたいと存じます。




(9)対国外商工施策について

武正  
 本県の対国外商工政策について伺います。
 本県の多くの県民が海外に赴任しています。さらに県内企業も進出しています。
例えば、海外進出企業の実態把握はされているのでしょうか、お聞かせください。
 また、 県では外資系企業の誘致に取り組んでおりますが、 海外に赴任している県民、 あるいは進出している企業のコミュニケーションづくり、 ネットワークづくりが企業誘致にもつながるものと考えます。
 以上、労働商工部長にお伺いします。

 また、 現在、 ジェトロ (日本貿易振興会) の海外事務所には、 延べ40人が各都道府県から派遣されています。 過日、 日本・メキシコ移民100周年に合わせ県議会から派遣されたおり訪れたジェトロ・ロサンゼルス事務所にも、 5つの県から職員が派遣されておりました。
 本年11月3日、 県行政組織・定数等改革検討委員会からの最終報告概要には、 大阪・東京商工観光両事務所の廃止が盛り込まれておりました。 財政状況の厳しい折、 やむを得ない措置とも考えますが、 関西方面からの企業誘致を主眼の大阪事務所の廃止を考えますと、 企業誘致が後退した感をぬぐえず、 だからこそ、 このジェトロ海外事務所への県職員の派遣により、 主として外資系企業の誘致への積極的な取組が必要と考えます。 中川副知事の御所見を伺います。

平田勲労働商工部長 
 まず、海外進出企業の実態把握についてでございますが、主として大手メーカーの海外進出に合わせて、自動車、家電、電機機械などの加工組立企業を中心に、中国、東南アジア諸国をはじめとする25か国へ、本年12月現在、193社が進出しているところでございます。

 海外進出している企業からの情報などによりますと、生産コストの低減、受注策の拡大などの面で成果を上げている一方、進出国によっては、為替変動に伴い資材費人件費の高騰などが見られるほか、中間管理者や技術者の不足、製品不良率の高さなど、様々な課題を抱えているところでございます。

 次に、海外進出企業のネットワークづくりと企業誘致についてでございますが、海外進出企業のネットワークづくりは、海外経済情報などに関する正確な情報を収集し県内中小企業へ提供することによって、国際競争力の強化を図るため、その情報源の一つとして必要なことと認識しているところでございます。また、外資系企業の誘致のためには情報収集ルートを多面的に構築しておくことが必要であり、このようなネットワークもその一つとして活用してまいりたいと存じます。

中川浩明副知事 
 ジェトロ海外事務所への県職員の派遣による積極的な外資系企業の誘致についてでございますが、 県では、 これまで、 豊富な情報網やノウハウ、 人材などを有する金融機関系のシンクタンクや外資系のコンサルタント会社を活用いたしまして、 本県への進出情報の収集や、 本県立地環境のPRなどに努めるとともに、 在日外国大使館、 在日投資促進機関などとの情報ルートの構築にも努めておるところでございます。

 また、 ジェトロからは、 海外主要国の経済状況、 企業誘致政策などの情報を収集するとともに、 主催のセミナーに積極的に参加するなどいたしまして、 人的ネットワークの形成を図り、 外資系企業の誘致を推進しているところでございます。
 御提言のジェトロ海外事務所への職員の派遣についてでございますが、 豊富な海外情報を有するジェトロとの連携は、 外資系企業の誘致にとっても、 また、 国際経済交流の促進や海外情報の収集、 本県情報の発信などにとりましても有効な方式であると認識をいたしております。 費用対効果など、 総合的な観点から、 今後の研究課題として検討をしてまいりたいと存じます。




(10)体系的な人材育成を中心とした技能振興と技術振興の連携について

武正
 体系的な人材育成を中心とした技能振興と技術振興の連携について伺います。
 過日、 NHKのドキュメンタリーで、 本年スイスで開催された第34回技能オリンピック、 技能五輪の模様が放映されました。 溶接、 型枠、 工場配電などの技能を競う2年に1度の世界大会であります。 過去1位、 2位を誇った日本は、 38種目中2種目でしか金メダルが取れませんでした。 金メダルは、 10個の韓国、 8個の台湾、 スイス、 7個のフランス、 4個のドイツ、 オーストリア、 3個のオーストラリアの後じんを拝しました。  日本の高度成長を支えたのは、 製造業においては、 教育の普及、 手先の器用さ、 勤勉さ、 技能の伝統継承と各種QCサークルの推進による品質管理の徹底等が挙げられております。

  近年、 工場ではロボット化が進み、 現場の技術者が、 机に向かい事務に、 あるいは営業にという傾向が進んでいます。 例えば、 12年前、 県北の電気メーカーの技術者は、 工場配電で日本一となりましたが、 現在、 既に管理部門に回っていると聞いております。

 これからの先端技術開発には、 例えば試作品開発など、 こうした人間の手先、 頭、 経験を駆使した技能というものが欠かせないんだということが指摘されておりましたが、 ヨーロッパはもちろん、 国策として技能振興に取り組んでいるオーストラリアは、 今回3個の金メダルを獲得しています。

 ところが、 技能と技術という言葉の持つ意味は、 どこが違うのでしょうか。 広辞苑では、 技能は技芸を行う腕前、 技術は物事を巧みに行う技と書いてあります。 その持つ意味の重なる範囲が大きいことは確かであります。 行政組織で使用する用語で言えば、 労働省では技能、 通産省や科学技術庁では技術、 文部省では技能と技術というふうに区別できます。 ですから、 本県でも、 旧労働部が技能振興を、 旧商工部が技術振興を、 教育局は双方をそれぞれ担ってきました。 人材育成では、 旧労働部が高等技術専門校で、 旧商工部が県立試験研究機関や中小企業振興公社で、 教育局が専門高校で行ってきました。
 本年度からの労働商工部の誕生で、 まさに、 これまでそれぞれ行われておりました技能振興と技術振興の連携と、 体系的な人材育成を行うことが世界的な時代のすう勢である技能を大切にすることで、 先端技術開発につなげると考えます。

 さらに、本県の中小企業を中心とした産業振興に寄与するところは大であると考えます。
 また、 公設試験研究機関からの特許出願件数が最下位とされる本県では、 来年度から熊谷と川口の2か所に工業系の試験研究機関の集約を図り、 研究開発の高度化を図ろうとしています。
 さらに、地域産業集積活性化法により、製造業支援を行うことも聞いております。
 2000年には技能五輪全国大会を本県で開催することも決定しております。
 そこで、体系的な人材育成を中心とした技能振興と技術振興の連携について、労働商工部長の御所見を伺います。
 スペシャリストの育成ということで、 専門高校の発展に、 また、 高等学校産業教育フェアも開催している本県では、 理科教育の振興、 物づくりの重要性の認識を教育現場でどのように具体化しているのでしょうか。

 また、人材育成の連携という点では、本県の工業高校、卒業高校の進路について、県の高等技術専門校に行く割合を含め、その内訳をお聞かせください。
 また、 中教審では中高一貫教育が取り上げられております。 伝え聞くところ、 腕時計の細かい仕事などは、 15歳ぐらいから始めてはもう遅いとスイスでは言われています。 このことは、 本県の工業技術センター整備検討委員会委員長を務める有間理化学研究所理事長も、 専門分野における中高一貫教育の必要性を指摘するところであります。
 以上、教育長の御所見を伺います。

平田勲労働商工部長 
 優れた技能者や技術者の人材育成は、 産業を支える上で極めて重要なことと認識をしております。 これまで、 技能者の育成は、 高等技術専門校における職業能力開発や企業内教育訓練などで実施をし、 技術者の育成は県の試験研究機関、 あるいは国等の研修機関を通じて実施をしてきたところでございます。

 本県中小企業のより一層の振興を図るためには、 製品の高付加価値化や新たな産業の創出が求められており、 独創的な発想や高度な加工組立を可能とする熟練技能と高度な生産技術の連携による相乗効果を発揮させることが必要不可欠であると存じます。
 そこで、 個別に実施をしてまいりました技能者や技術者の人材育成の連携強化が必要であると考え、 本年度、 マイスター養成事業の一環として、 現役の鋳造技能者の技術向上を図るために、 鋳物機械工業試験場及び川口高等技術専門校を活用しまして、 実技を含む技術研修を開始をしたところでございます。

 今後におきましても、 工業技術センターの整備、 高度職業能力開発施設の設置の検討、 高等技術専門校の体制整備を進め、 それぞれの機能を生かし、 相互に連携を図りながら、 技能と技術の水準を高めるための体系的な人材育成に積極的に努めてまいりたいと存じます。

荒井桂教育長 
 今日、 科学技術が著しく高度化、 細分化、 専門化する一方で、 青少年の理科離れ、 科学技術離れが指摘されております中で、 県教育委員会といたしましても、 理科教育及び物づくりの教育につきまして、 その重要性を深く認識しているところでございます。
 理科教育の振興につきましては、 平成9年度には、 高校生を対象に、 大学や試験研究機関などで先端技術に触れることができる彩の国未来の科学技術者育成事業を実施し、 科学技術への興味関心を高めたところでございます。

 小・中・高等学校におきましても、 実験、 実習、 観察を取り入れた体験学習を重視して平素の授業を進めますとともに、 科学教育振興展覧会や理科教育研究発表会の場で、 日ごろの活動成果の発表を奨励するなど、 児童・生徒の科学する心の育成に努めております。
 また、物づくりの教育についてでございますが、中学校では技術家庭の授業で木材や金属などの材料を使って作品の制作などを行っております。
 お話にございました産業教育フェアでは、 小・中学生が特別参加として作品展示やロボットコンテスト等に参加し、 いきいきと活動しておりました。

 工業高校では、 専門科目の実習において物づくりの基礎を学び、 さらに、 先端技術を導入してロボットやソーラーカーの作製など、 日常的に物づくりの教育を進めているところでございます。
 また、 御支援いただきました埼玉県工業高校生アイデアロボットコンテストは、 参加台数も年々増加し、 本年は130台以上のロボットが参加して盛大に催すことができました。
 次に、 本県の工業高校卒業後の進路につきましては、 平成9年3月に工業高校を卒業した約3,000名のうち、 大学、 短大、 専門学校等への進学者の割合は31.0パーセント、 就職者は61.3パーセントでございまして、 進学者のうち、 本県高等技術専門校への進学者は19名でございました。

 また、 専門分野における中高一貫教育についてでございますが、 十代の早い時期から技能・技術に関する興味・関心を深め育ててまいりますことは、 優秀なスペシャリストを育成する上で大きな効果があるものと考えております。 現在、 埼玉県高等学校教育振興協議会で、 中高一貫教育にかかわる課題と問題点などについて協議を重ねているところでございますので、 その中で、 専門分野における中高一貫教育についても十分に御意見をいただき、 その審議を踏まえて検討してまいりたいと存じます。