1998年12月8日



環境対策について
(1)環境対策と経済関連諸対策との連携

武正
 環境対策というと、いわゆる公害防止の観点から、これまで経済対策とは二律背反のものと思われがちでした。すなわち公害防止のためのコストは、企業経営に産業振興にとって、余計なコスト増につながるマイナス要因と思われてきました。しかし、例えば、10月に幕張で開催された廃棄物処理・再資源化展、ウエステック98では、閉会2時間前なのに入口は長蛇の列、出展企業300社、来場者85,000人は、まさに環境ビジネス真っ盛りを感じさせるものでした。

 そこで、環境対策をプラス思考で、経済関連諸対策との整合性を前向きな連携を取っていく必要性を以下伺います。
 平成9年度に発表された大気汚染常時監視測定結果では、浮遊粒子状物質では56地点中54地点で、ベンゼンでは22地点中21地点で目標値を達成できませんでした。
 さらに、窒素酸化物の平成12年度の排出総量のクリアも現時点では困難と見られていることなど、排出ガス対策が遅れていることを物語る数値があります。

 本年9月16日に開催された県都計審では、浦和市より3,000通を超える意見書が出され、都市計画道路田島大牧線の拡幅などが主要議題でした。
 平静な住宅地である別所地区を東西に分断する田島大牧線を16メートルから25メートルへ都市計画道路の拡幅を求める声に対し、我が会派代表の笠原委員から、県内1時間道路網構想などの道路整備に環境対策の視点を求める発言がされました。
 環境影響評価条例の改正案が今定例会に提出されていますが、道路をめぐる義務基準は、東京都の1キロ4車線、神奈川県の5キロ4車線、川崎市の4車線すべてに比べ、10キロ4車線と緩いのが現状です。

 アセスメントの基準を厳しくすると、道路整備に遅れが生じるという危ぐがあるとすれば、例えば、県内1時間道路網構想との整合性をとる意味から、2年かかるアセスメント期間を半年や3か月で結果を出す効率的なアセスメントの工夫などで解決できないでしょうか。
 県内1時間道路網構想などの道路整備と大気汚染や騒音などの環境対策との整合性をとり、前向きな連携を図ることについて、環境生活部長の御所見を伺います。

 さらに、環境ビジネスの振興を図るという観点から、現在策定中の県独自の雇用確保産業振興プラン(仮称)と環境対策との整合性をとることについて、労働商工部長の御所見を伺います。
 環境対策を取り巻く諸情勢が激変している中で、以上の環境対策と経済関連諸対策の整合性をとることを盛り込むことを含め、環境基本条例の改正の必要性について、武田副知事の御所見を伺います。

■ 中野健一環境生活部長 
 御指摘のとおり、道路整備などの事業と環境対策の整合を図ることは大変重要であり、環境影響評価条例の対象とならない小規模な事業であっても、環境配慮が必要なことは当然であると認識しております。
 環境影響評価は、事業を実施する区域と、その周辺地域の環境の現況を調査し、事業の実施が環境にどのような影響を及ぼすかを予測、評価する制度でございます。この環境の調査は、動植物や風速、風向が季節によって変化するため、どうしても最低1年の調査が必要となります。また、調査結果を住民に公開し、住民が意見を述べる手続は欠くことができない重要なものと考えております。

 お話にございました環境影響評価の対象事業規模を引き下げ、調査や手続を簡素化して、環境影響評価の期間を半年程度に短縮することは基本的に困難であると存じますが、事業計画の内容や実施地域の状況によりましては、既存の文献や調査結果によって、環境への影響が少ないと判断された場合には、調査項目や調査方法を簡素化するなどの方法により、調査期間を短縮できるようにするなど、御提言を踏まえ検討してまいりたいと存じます。

■島村秀夫労働商工部長 
 環境問題への関心の高まりは、産業活動をはじめ、県民の消費行動や生活様式に様々な変化をもたらしております。こうした変化を積極的にとらえることは、新たなビジネスチャンスや新産業の創出に結び付くところでございまして、お話のとおり、環境対策と連携し、これを本県の雇用の創出と産業の振興に生かしていくことが重要であると存じます。そのため、現在策定中の雇用確保産業振興プラン(仮称)でございますが、ここにおきましても、環境対策との整合性を十分図ってまいりたいと存じます。

■武田茂夫副知事 
 環境基本条例の改正の必要性についてでございますが、環境基本条例は、自然界の再生能力及び浄化能力の範囲内で人間の諸活動が営まれる環境と経済の調和した資源循環型社会の実現を目指すものでございます。つきましては、今後とも、環境対策と経済対策との連携した資源循環型社会の実現を目指し、本県の環境の保全、創造に最大限の努力をしてまいりたいと存じます。
 お話の環境対策を取り巻く諸情勢の変化への対応につきましては、この条例の理念を実現するための総合的な計画でございます環境基本計画の見直しの中で、的確に反映されますよう検討してまいりたいと存じます。



(2)CO2削減について

武正  
 さて、二酸化炭素の削減について、本県は、1990年レベルに比べ、1人当たり20パーセントの減を2010年にすることしておりますが、総量で調べますと、2パーセントの減でしかありません。さらに、これは、人口推計で出しておりますので、人口の伸びが下回ると総量の削減も怪しくなります。総量の10パーセント削減に目標設定を高く掲げる必要性を感じます。
 二酸化炭素削減対策について、1人当たりではなく、総量の明示及び1990年レベルに比べ、10パーセント削減まで踏み込むことについての御所見も武田副知事に伺います。

■ 武田茂夫副知事 
 本県の二酸化炭素の削減目標につきましては、平成7年の埼玉サミットの際定められた温室効果ガスの国際的削減目標や、我が国の地球温暖化防止行動計画における削減の考え方、将来のエネルギー消費の見込みなども踏まえまして、平成8年3月に策定した地球温暖化対策地域推進計画において、2010年までに県民1人当たりで、1990年に比べ20パーセント減という削減目標を定めたところでございます。

 この目標の決め方につきましては、議員御指摘のように、総量を基本にすべきであるとの御意見もございますが、本県としては、当面は、この計画で定めました目標値を基に、現時点で取り得るあらゆる手段を用いまして、削減目標達成に向けて努力してまいる所存でございます。  この地球温暖化対策地域推進計画につきましては、今後の本県の取組の成果をはじめ、国際的な動きを踏まえた国の取組の動向や社会経済、技術革新等の状況などを考慮しながら見直してまいりたいと存じます。この見直しに当たりましては、御提言の趣旨も踏まえまして検討してまいりたいと存じます。