1998年12月8日



本県の唯一の国立大学である埼玉大学と本県との連携の強化充実について

(1)地域共同研究センターの支援組織づくりを含めた全般的観点から

武正
 埼玉大学は、昭和24年、旧制浦和高校、埼玉師範学校、埼玉青年師範学校を母体に設立されました。当初、文理学部、教育学部の2学部で発足し、今や教養学部、教育学部、経済学部、理学部、工学部を擁する総合大学となりました。埼玉師範前身の埼玉県師範は、明治7年に始まり、その後、女子師範ともども県内教育界の人材の育成を担ってきました。
 平成9年度も、本県教員採用の小中学校教員の約32パーセント、高校教諭の約9パーセントが埼玉大学出身であります。本県教育行政を語るとき、埼玉大学抜きには語れません。

 また、旧制浦和高校は、大正10年の開学時に、県知事、県議会挙げての招致運動を行い、招致に成功した経緯がありました。卒業生5,000人余りは、日本の各界で活躍をされた方、されている方を多く輩出しております。正月、旧制高校の弊衣弊帽を身にまとい寮歌を歌うOBの姿、あるいは、昔学校の所在した北浦和公園、県立美術館からの行進など、出身学校への誇り、プライドを感じるところであります。

 埼玉青年師範学校は、熊谷市に昭和19年に設置されました。その前身は、大正11年、県立熊谷農学校に併設・開所された県実業補修学校教員養成所にさかのぼります。
 これまでは、文部省所管の国立埼玉大学と埼玉県は、戦前の経緯にもかかわらず、また、戦後も様々なかかわりがある中で、建前上はざっくばらんな話がしずらかった感があります。しかし、現在、国立大学としても、地域とのかかわりをこれまで以上に求められているのが現状であります。

 本県についても、さきの職員のキャリアアップを含め、本県の教育行政の在り方など、埼玉大学とのより積極的な取り組みが必要です。特に、平成6年オープンした埼玉大学地域共同研究センターについては、全国54の国公立大学同様施設のうち29で、既に都道府県あるいは地域経済界が中心となった支援組織がオープンしたにもかかわらず、本県にはいまだその機運が見えません。
 文部省では、地域共同研究センターが活発になると、次に大学生、大学院生、教職員の起業化を支援する施設をつくるとも聞いております。

 埼玉大学は、来年度創立50周年を迎えます。そうした節目の年を機会に、さらに本県とのかかわりを強めることについて、地域共同研究センターの支援組織づくりを含めた全般的な観点から総合政策部長に伺います。

青木信之総合政策部長
 県が大学との連携を図りますことは、県内企業における技術開発力の向上や県民の生涯学習意欲の高まりへの対応、また、県政の諸課題について、大学が有する研究成果の活用といった点で大変意義があるものと認識をしております。
 埼玉大学とは、これまでも、県立試験研究機関との共同研究や、本県の政策課題に係る専門知識を得るための職員の派遣、大学開放講座の開催など多くの施策を実施してきたところでございますが、今後、なお一層の連携強化が必要であると考えております。

 特に、埼玉大学地域共同研究センターは、民間企業との共同研究や民間企業からの技術問題に関する相談機能を有しておりまして、このセンターと県との連携を図りますことは、行政、大学、民間が協力しあって、地域経済の活性化を図る上でも重要であると考えておりまして、御質問の地域共同研究センターの支援組織づくりにつきましても、このセンターからもお話を伺いまして、他の地域の例なども参考にしながら、埼玉大学や関係部局と連携した働きかけをしてまいりたいと存じます。



(2)工学系の技術面の連携について

武正
 我が会派では、平成7年度に東北大学半導体研究所を、そして本年度は、北海道大学先端科学技術共同研究センターを視察いたしました。
 半導体研究所は、本県にセミナーで来られた西沢潤一先生がつくられ、長年、産学共同を進めてきました。また、札幌では、嘉数センター長に話を伺いましたが、本年8月に施行された大学等技術移転法、いわゆるTLO法施行の意義を聞き、今後、大学の知識、ノウハウ、知恵をいかに民間分野に移転していけるかどうかが国立大学に、そして地域経済の将来を左右するとの話でした。
 そこで、工業系の技術面の連携について、労働商工部長に伺います。  

島村秀夫労働商工部長 
現在、県内には6つの工科系大学があり、工業技術センターを中心に各種の交流を進めているところでございます。特に埼玉大学につきましては、平成10年度、3つのテーマについて共同研究を実施しており、また、県内企業の高度な技術課題に対応するための技術アドバイザーを依頼するなど、連携しているところでございます。
 お話にございましたとおり、本県産業技術の高度化、多様化を進める上で、地元大学との連携を図ることは極めて重要であり、県といたしましては、今後とも一層の充実強化に努めてまいりたいと存じます。



(3)分析センターとの協力について

武正  
 本県が重視している環境分野では、分析センターがあります。センターによると、ダイオキシンのように特化した分析機器をそろえるのは、本県環境科学センターに依頼させていただく一方、広く分析、研究、調査などで大いに埼玉大学分析センターを利用していただきたいとのこと。
 そこで、分析センターとの協力について、環境生活部長に伺います。  

■ 中野健一環境生活部長
 環境科学国際センター(仮称)は、環境科学の総合的中核機関として平成12年春のオープンを目指して整備を進めており、このセンターの研究機能につきましては、これまで公害センターで培ってまいりましたものを更に充実強化させ、より高度な研究機関とするため、国内や海外の研究機関との共同研究や人材の交流、あるいは県内外の大学からの客員研究員の受入れや派遣など様々な方策を検討しているところでございます。

 この中で、埼玉大学をはじめとする県内の大学とも積極的に交流したいと考えておりますが、お話のありました分析センターとの協力につきましても、機器の相互利用を通じた分析、研究などを進められるよう、御提言の趣旨を踏まえて検討してまいりたいと存じます。