通信・放送委員会設置法案

2003年04月24日

第一五六回

衆第一七号
通信・放送委員会設置法案

目的)

第一条 この法律は、通信・放送委員会の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的とする。

 (設置)

第二条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、通信・放送委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

 (任務)

第三条 委員会は、情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通及び電波の公平かつ能率的な利用の確保及び増進を図るための規律に関する事務を行うことを任務とする。

 (所掌事務)

第四条 委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 符号、音響、影像その他の情報の電磁的方式による発信、伝送又は受信(以下「情報の電磁的流通」という。)のための有線又は無線の施設の設置及び使用の規律その他情報の電磁的流通の規律に関すること。

 二 電気通信業及び放送業(有線放送業を含む。)の発達、改善及び調整のための規律に関すること。

 三 日本放送協会に関すること。

 四 非常事態における重要通信の確保に関すること。

 五 周波数の割当て及び電波の監督管理に関すること。

 六 電波の監視及び電波の質の是正並びに不法に開設された無線局及び不法に設置された高周波利用設備の探査に関すること。

 七 電波が無線設備その他のものに及ぼす影響による被害の防止又は軽減に関すること。

 八 電波の利用の促進に関すること。

 九 有線電気通信設備及び無線設備(高周波利用設備を含む。)に関する技術上の規格に関すること。

 十 所掌事務に関し、条約又は法律(法律に基づく命令を含む。)で定める範囲内において、情報の電磁的流通及び電波の利用に関する国際的取決めを協議し、及び締結すること並びに国際電気通信連合その他の機関と連絡すること。

 十一 所掌事務に係る一般消費者の利益の保護に関すること。

 十二 所掌事務に係る国際協力に関すること。

 十三 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき委員会に属させられた事務

 (職権の行使)

第五条 委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。

 (組織)

第六条 委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する。

 (委員長及び委員の任命)

第七条 委員長及び委員は、人格が高潔であって、情報の電磁的流通及び電波の利用に係る規律に関し、公正な判断をすることができ、かつ、高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

4 次の各号のいずれかに該当する者は、委員長又は委員となることができない。

 一 破産者で復権を得ないもの

 二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

 三 国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

 四 電気通信事業者、放送事業者(有線放送事業者を含む。)、電気通信役務利用放送法(平成十三年法律第八十五号)第二条第三項に規定する電気通信役務利用放送事業者、有線電気通信設備若しくは無線設備(高周波利用設備を含む。)の機器の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わずこれと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。次号において同じ。)若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)

 五 前号の事業者の団体の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)

5 委員長及び委員の任命については、そのうち三人以上が同一の政党に属することとなってはならない。

 (任期)

第八条 委員長及び委員の任期は、五年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員長及び委員は、再任されることができる。

 (身分保障)

第九条 委員長及び委員は、次の各号のいずれかに該当する場合並びに次条第二項及び第三項の場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。

 一 第七条第四項各号のいずれかに該当するに至ったとき。

 二 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認められたとき。

 (罷免)

第十条 内閣総理大臣は、委員長又は委員が前条各号のいずれかに該当するときは、その委員長又は委員を罷免しなければならない。

2 内閣総理大臣は、委員長及び委員のうち二人が既に属している政党に新たに属するに至った委員長又は委員を直ちに罷免するものとする。

3 内閣総理大臣は、委員長及び委員のうち三人以上が同一の政党に属することとなった場合(前項の規定に該当する場合を除く。)には、同一の政党に属する者が二人になるように、両議院の同意を得て、委員長又は委員を罷免するものとする。ただし、政党所属関係に異動のなかった委員長又は委員を罷免することはできないものとする。

 (服務等)

第十一条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

3 委員長及び委員は、在任中、営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行い、又は内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事してはならない。

4 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。

 (委員長)

第十二条 委員長は、委員会の会務を総理し、委員会を代表する。

2 委員会は、あらかじめ委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。

 (会議)

第十三条 委員会は、委員長が招集する。

2 委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。

3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

4 委員会が第九条第二号の規定による認定をするには、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。

5 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、前条第二項の規定により委員長を代理する者は、委員長とみなす。

 (規則の制定)

第十四条 委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、通信・放送委員会規則を制定することができる。

 (資料提出の要求等)

第十五条 委員会は、必要があると認めるときは、関係行政機関に対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。

 (国会に対する報告)

第十六条 委員会は、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。

 (事務総局)

第十七条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務総局を置く。

2 事務総局に事務総長を置く。

3 事務総長は、事務総局の局務を統理する。

4 事務総局に官房及び局を置く。

5 内閣府設置法第五十三条第四項から第六項まで及び第六十三条(第五項を除く。)の規定は、前項の官房及び局の設置、所掌事務の範囲及び内部組織について準用する。

6 第四項の規定に基づき置かれる官房及び局の数は、三以内とする。

 (地方事務所)

第十八条 委員会の事務総局の地方機関として、所要の地に地方事務所を置く。

2 前項の地方事務所の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。

3 第一項の地方事務所には、所要の地にその支所を置き、地方事務所の事務を分掌させることができる。

4 前項の支所の名称、位置及び管轄区域は、内閣府令で定める。

 (罰則)

第十九条 第十一条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、平成十六年四月一日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。

 (任命のために必要な行為)

2 第七条第一項の規定による委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為は、この法律の施行前においても行うことができる。

 (委員長及び委員の任命手続の特例)

3 第七条第二項及び第三項の規定は、この法律の施行後最初に任命される委員会の委員長及び委員の任命について準用する。

 (委員の任期の特例)

4 この法律の施行後最初に任命される委員のうち二人の任期は、第八条第一項本文の規定にかかわらず、内閣総理大臣の定めるところにより、四年とする。

 (関係法律の整理)

5 この法律の施行に伴う関係法律の整理については、別に法律で定める。

     理 由

 通信及び放送の分野における規律に関する事務を公正かつ中立に行わせるため、内閣府の外局として、通信・放送委員会を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約一八四億円の見込みである。