県議会レポート24号
選択肢の多様化に向けた教育政策 |
■「学級崩壊」は環境不適合の表れ
小中学校という義務教育過程の「学級崩壊」は、とても心の痛む問題です。9年前、私が埼玉県会議員選挙に初挑戦した頃、先生方はすでに深刻な状況を指摘しておられました。以来、この病理的背景をつかもうとする方々の努力もむなしく、効果的な対応を行えるまでに至っていないのが現状です。いまでは、表1(過去5年間の県内および国内公立高校退学者の推移)に見られるように、高校退学者も増加傾向にあります。これは、原因はともかく、少なくとも環境不適合を起こしている子供たちが増えているということであり、将来的に、とても憂慮すべき問題と言えます。
表1:県内及び全国の公立高等学校中途退学者の推移
全日制(在籍生徒数は4月1日現在)
区 分 |
埼 玉 県 |
全 国 |
在籍生徒数 |
退学者数 |
比 率 |
在籍生徒数 |
退学者数 |
比 率 |
平成 6年度 |
166,180 |
3,088 |
1.86% |
3,290,504 |
49,346 |
1.50% |
平成 7年度 |
162,209 |
3,313 |
2.04% |
3,188,540 |
50,174 |
1.57% |
平成 8年度 |
153,399 |
3,719 |
2.42% |
3,062,416 |
58,332 |
1.90% |
平成 9年度 |
149,450 |
3,783 |
2.53% |
2,951,429 |
59,276 |
2.01% |
平成10年度 |
144,937 |
4,076 |
2.81% |
2,877,880 |
59,158 |
2.06% |
|
出典:文部省・県教育局 |
|
■「教育の選択肢」が必要
それでは、私たちに何ができるでしょうか。難しい問題ですが、一つ言えることがあります。それは、「教育の選択肢」を増やす、ということです。そして、この方向ですでに模索が始まっています。たとえば、表2(品川区の学区自由選択制:本年4月開始)における品川区の政策がそうです。また、公立でも、「中高一貫教育6年制」を導入する学校が全国的に増える傾向にあります。これまで、教育の「軸」はどちらかと言えば、教育制度の側の都合にありました。しかし、大変なことですが、何とかして子供たちに「軸」を置いた教育を実践して行こうというのが、公教育、私学教育に拘わらず、「選択肢の多様化」の持つ革新的な意味だと思うわけです。
■「学級崩壊」は社会問題
重要なことは、「学級崩壊」は単なる教育問題ではない、ということす。学級崩壊という事態に追い込んだ社会の問題が何だったのかを直視する必要があります。私たちにしても、家庭や学校や地域社会の問題を避けてこなかったでしょうか。すなわち、「地域社会の崩壊」はなかったでしょうか。何に腰を落ち着けて打ち込めばよいか分からない時代に、私たちは信じるに足る揺るぎない方向性を子供たちに示す必要があります。そして、自分を見失うといった孤独感に、決して子供たちを陥らせないことです。
■文部行政の「規制緩和」がなぜ必要か
そのために、政治に何ができるでしょうか。私は、さまざまな可能性を社会に根づかせることだと考えています。同時に、過去の教訓を活かし、励まし合える凝集力の高い社会を創る上で、「歴史教育」が重要だとも考えています。さらに「情報教育」「英語教育」の効果をあけることが必要です(表3)。特に、英語力の基本に「日本語(国語)力」と人前で話す「説明力」を培うべきです。これらは、いずれも文部行政の「規制緩和」を必要とするものです。
「選択肢の多様化」の実現には、他人と「違う」ことを素晴らしいと評価できる社会が求められます。子供たちが何を職業とし、どう生きるべきかを考えるとき、社会の内側からこそシグナルが発信されなくてはならないと思います。また、歴史的事実は一つですが、歴史に対する認識はさまざまです。次代は海外から日本への人材受け入れに積極的であるべきで、その前提として「日本とはどういう国か」という認識を議論を通じて作りたいと考えます。 |
|