県議会レポート25号

 

科学技術・産業政策
■技術・産業・生活の関係
次の時代に、私たちはどのような暮らしをしているでしょうか。私は、このことを考え続けるのが政治家だと考えています。この問題は「科学技術」や「産業」と深く関係しています。というのは、「技術」の向上は、産業の「生産性」の向上を介して生活水準の向上を導くという関係にあるからです。私たちの生活は、あらゆる面で「技術」に依存しています。この重要な科学技術や産業の分野で、いま大きな変化が起きています。

■「技術創造の場」の再構築
これまで、民間大企業は自ら「中央研究所」を持ち、基礎から応用・開発研究まで手がけてきました。しかし、キャッチアップ過程を終了し、グローバルな競争環境に直面する中で、民間企業はコスト的に「基礎研究」を抱えることができなくなっています。一方、大学では、知識の社会的還元が限られる傾向にあったことから、社会的要請を前提とした「大学の再定義」が必要になっています。これが、企業と大学の「産学協働・連携」の背景にある事情です。この「技術創造の場」をどう再構築すべきかという問題は、私たち生活のエンジン設計にかかわる重要な問題と考えています。

■「競争秩序」の確立と「秩序ある環境」の整備
表1(将来性の高いビジネス)は、環境、介護支援、職業紹介、訓練などが、将来性の高い分野であることを示しています。新たな事業が台頭するときは、必ず既存の産業秩序との間であつれきが起こります。利用者の立場からは、新たなビジネスの芽がつぶされないこと、既存のビジネスもサービスを向上させること、が望まれます。政治は、参入・退出ルールを伴う「競争秩序」をきちんと作る必要があります。

表1.将来性の高いビジネス
産業 市場規模(単位:億円)
1993年 2010年 年間平均成長(%)
情報・通信関連 32,096 253,412 12.9
エネルギー関連 1,385 6,297 9.3
環境関連 73,805 203,030 6.1
医療・福祉関連 25,975 78,011 6.7
新流通・物流関連 91,401 385,616 8.8
人材流動化・育成関連 17,744 63,740 10.9
ビジネス支援関連 20,500 79,287 8.3
出典:野村総合研究所(NRI)

ベンチャー企業は、その性質上、どんどん増えるものではありません。さまざまな試行錯誤と膨大なビジネス・プランの中から、見込みあるほんの一握りが新規事業として飛び出してくるわけです。したがって、バラマキ型のベンチャー支援策は本質的な処方箋ではありません。重要なことは、さまざまな可能性の「芽」を見つけ、足りない資金や技術や経営ノウハウを縦横に利用し合える「環境」をどう作り出せるかということです。政治はこの透明性ある「秩序ある環境」の整備を担うものだと考えています。

■包括的な「情報政策」の実施
私たちの暮らしは、インターネットの登場によって、双方向のコミュニケーションを前提とした変化の渦中にあります。通信回線網の整備と通信回線料の低減化は、産業インフラとしても、生活インフラとして、これまで以上に重要な意味を持ち始めています。私は、たとえば、埼玉県や合併政令指定都市を「インターネット・シティー」と位置づけ、包括的な「情報政策」を考える中で、情報ネットワークから排除される「情報弱者」を決して作り出さない社会を実現したいと考えています。