県議会レポート26号

 

医療・保健・福祉政策
■予防医療にシフト
健康は、何ものにも変えがたい活動の基本条件です。病気にかかると、本人だけでなく家族や企業にも影響を与えます。医療費の増加は、社会全体にとってもマイナス要因です(表1)。少子高齢化が進む今後は、予防医療の重要性がさらに増すことになります。
表1:国における国民医療費と老人医療費の推移
年度 国民医療費 老人医療費
(億円) 伸率(%) (億円) 伸率(%)
H5 243,631 3.8 74,511 7.4
H6 257,908 5.9 81,596 9.5
H7 269,577 4.5 89,152 9.3
H8 285,210 5.8 97,232 9.1
H9 290,651 1.9 102,786 5.7
出典:医療費ハンドブック平成12年度版
表2は、総合健康診断を実施した全国市町村数と実施率ベスト3の都道府県を示しています。埼玉県では実施団体が一つもありません。口腔内の健康管理は、全身の健康管理につながるとの指摘もあり、予防医療の充実が図られるべきです。
表2:総合健康診断(平成10年度実績)
全国 市町村数 実地市町村数 実施率(%)
3255 291 8.9
1.熊本 94 48 51.1
2.大分 58 25 43.1
3.山梨 64 24 37.5

■医療費増額に歯止めを
破綻寸前の健康保険組合が出始め、国民皆保険の仕組みが揺らいでいます。平成11年度の全国の健康保険組合の収支は過去最高の赤字額となり、平成10年度の3倍を記録しました。主な理由は、高齢者医療費の増大と企業倒産による保険料収入の減少です。このため、国民健康保険も保険料(税)引き上げが続き、未納率も上昇しています(表3)。 したがって、予防医療と合わせて保健活動の徹底が必要です。

横浜市にはボランティアの保健指導員が7770人います。戦後の公衆衛生普及活動は、今や中高年の生活習慣病予防と育児支援に重点が移っています。子供が「切れる」原因が食品内容にあるとの指摘もあり、食材と料理に関する教育である「食育」の充実も必要です。保健所の保健婦さんの数に限りがある以上、ボランティアやNPO(非営利団体)が活動しやすい環境を整えなくてはなりません。また、患者さんを乗せた後も受入れ先の病院が見つからず、立往生するということがないよう、救急医療体制の整備と救急救命士の充実強化を行います。
表3:国民健康保険税の収納率の推移
年度 埼玉県
収納率(%) 未納率(%) 収納率(%) 未納率(%)
H5 94.41 5.59 90.96 9.04
H6 94.28 5.72 90.88 9.12
H7 94.32 5.68 90.69 9.31
H8 94.04 5.96 90.13 9.87
H9 92.38 7.62 89.46 10.54
H10 91.82 8.18 88.82 11.18
出典:「社会保障統計年報平成10年度版」(国)
「平成10年度国民健康保険事業状況」(埼玉県)

■充実した福祉環境の整備
介護保険制度は、病院での寝たきりや老老介護などの介護地獄の解消を目的に、この4月にスタートしました。しかし、昨年9月の突然の見直しで介護報酬単価の確定が遅れたことから、ケアプランや、それを作成するケアマネージャーの不足が指摘されています。ケアプラン作成者と介護サービス提供者の分離、介護認定やケアプラン作成に対する不服申立て機関を充実します。今年3月に年金改正法が成立しました。主な内容は、5%支給額の減額と65歳支給への繰り下げです。しかし、140兆円に上る年金積立金の厚生省による単独運用は省益拡大であり、5年ごとの見直しは小手先との批判は免れません。支給繰り下げとなった65歳まで働ける仕組みがあるかどうかも不安材料です。また、障害者福祉については、バリアフリーが大原則です。バリア(障害物)を取り除き、主体的に社会に参画できるよう、法律面での更なる充実をします。