政権交代のために国民主権の波を   2002年10月27日 民主統一同盟シンポジウム
パネリスト
松沢成文 衆議院議員(民主党)
原口一博 衆議院議員(民主党)
大塚耕平 参議院議員(民主党)
中塚一宏 衆議院議員(自由党)
達増拓也 衆議院議員(自由党)
武正公一 衆議院議員(民主党)
古川元久 衆議院議員(民主党)
 
民主党再生のためになにをなすべきか

【司会・石津】
それではパネルディスカッションを開始してまいります。
本日は、「政権交代のための国民主権の波を!」ということで進めております。基調でも申し上げましたように、政権交代の展望というものをもう一度、国民主権の発展、われわれの言葉で言うと草莽崛起ということですが、そこから再構築するということです。

小泉政権はご覧の通り、国民の命も生活も守らんという政府になってしまっています。命のほうはもちろん、拉致問題があります。生活のほうは国民経済そのものがもう破綻している状況で、なおこの後に及んで「他人事」ということになっているわけですが、ではこういう政府を国民の力で取り替える―政権交代をどのようになしとげていくのか。
当然、政権交代のためには政党が必要なわけですが、いまそのような政党があるかといえば、あると思う方はそうはいらっしゃらないと思います。

基調にもありましたように、これはやはり「急がば回れ」ということで、最低でも十年タームくらいで、普通の国民が主権者として自己責任を果たすというところで選挙活動の前線に立たないとだめだと。政治文化の基盤そのものを構造的に入れ替えなければならない、ということかと思います。
その意味も含め、政治家と主権者とのどういう関係を作っていくかということとしてこのディスカッションをしていきたいと思います。

一応三つほど、こちらでテーマを考えております。一つは、民主党の再生と政権交代ということです。今日のメッセージの中で玄葉光一郎・衆院議員が端的におっしゃっています。「自民党の解体なくして、改革なし/民主党の脱皮なくして改革なし」と。
自民党の解体なくして改革なし、これはどなたもそうだと思いますね。自民党を解体すると言った小泉さんはこのザマですから、本当に解体をしないと改革はなし。同時に、民主党の脱皮なくして改革なし、ということだと思います。この問題について代表選挙の総括も含め、どういうふうに考えていらっしゃるかを、まずお伺いしたいと思います。

二番目には、経済と外交の二つにテーマを分けますが、どちらも非常に危機である。この崩落しつつあるような破局にわれわれ自身が向き合う、永田町がどうこうという話ではなくて、国民自身が危機に向き合って、それで政権交代で政治を変える以外には生活を守ることもできないんだというところに持っていくようにしたいわけです。
そこで経済と外交と二つテーマを設けて、お話を進めていきたいと思います。
当初、本日は六時までということで予定していたんですが、ご存知のように民主党の石井紘基代議士がお亡くなりになられまして、今夕お通夜があります。その関係で、民主党のみなさんはどうしても五時半には会場を出なければならないということになりましたので、その時間になんとか終わるようにしたいと思います。

それではさっそく始めていきたいと思いますが、まず最初の「民主党の再生と政権交代の道筋」ということです。
この民主党の脱皮というのは、執行部の首をすげかえれば何とかなるというほど単純なものではないということが、一方わかってきているわけです。なぜなら、今度の代表選でのサポーター票の結果(投票率が50%、鳩山票が一位)というような問題が含まれてくるからです。つまり基盤からの総入れ替え戦をやっていかなければいけないということになってきているわけですが、代表選の総括も含めまして、政権交代に向けてこれからどのように民主党の脱皮をはかっていくか、お話しいただきたいと思います。

達増さんと中塚さんは自由党なんですが、他党のことに口を挟むなということではなくて、民主党はとりあえず野党第一党ですので、これをどう立て直すかは、政権交代にとっては非常に重要な問題であるかと思いますので、ぜひ口を挟んでいただきたいと思います。

【松沢成文】
みなさん今日は。民主党の松沢成文でございます。今日はこのシンポジウムに参加させていただくということで楽しみにやってきました。
若手の結集と言うことで来たんですが、私は三期生でだんだん中堅になってきていまして、本当に若手のすばらしい方が今日はたくさんおりますので、私もいい刺激をいただきたいと思っています。
民主党の再生と政権交代ということですが、民主党は先月代表選挙がありました。私たち若手―私たちといってひと括りにしてはいけないのかもしれませんが、私は少なくとも民主党の新しいリーダーシップを作らないと政権交代までいかないと考えています。

大変失礼な言い方ですが、鳩山さん菅さんはもう民主党を率いて四年近くやってきて、その中でいくつかの選挙もあったけれども、なかなか政権交代というところまでいかない、国民のみなさんから見るとちょっと賞味期限が切れてきたかな、こういう感じもしていまして、政権から遠ざかる一方であったというのが最近の状況でありました。

自民党の政治腐敗、スキャンダルはここまでひどくて、根っこから腐って支持率も下がっていっても、その分、では民主党に次はやらせてみようかという期待が高まらない。この状況を打破していくためには、やはり新しいリーダーシップを作らなければいけないと、つねづね思っておりました。
私が理想形として描いたのが、イギリス労働党のトニー・ブレアの、党首から首相になったこの三年くらいの動きなんです。ご承知のように、イギリス労働党は労働組合の影響が大変強い政党でした。それで保守党の長期政権を許してきてしまったわけです。そこにトニー・ブレアという新しい政治家が出現して、ある意味で労働組合支配と戦ったわけです。

労働党の古い党綱領の中にある国営企業化条項というのを撤廃しようと―当時サッチャー自由主義革命がほとんど終わっているような状況の中で、まだ労働党は党綱領の中に主幹産業は国営企業じゃなければいけないと、こんな古いものを持っていたんです―全国の労働組合の幹部とケンカをしながらトニー・ブレアは頑張ったわけです。
その姿を見ていた国民は、この新しい労働党の若いリーダーは単なる労働党のリーダーではないと、将来首相になる器だと。こうやって国民の期待を集めていったんです。この新しい顔で労働党が生まれ変わって、総選挙で勝利してブレア労働党政権ができあがった。
これを日本でも実現できないか、やるべきだということで、私も(代表選に)手も挙げたんですが、今回は若手からたくさん手が挙がって、そのままみんなで選挙に突入したらこれはどうしようもない状況になってしまいます。そこで(候補者)一本化をしようということで、一ヶ月かかってしまったんですが、野田さんに一本化して代表選挙を戦いました。

残念ながら現職の鳩山さん、菅さんはやはり強いですよね。若手も一本化に一ヶ月もかかってしまったという、ちょっと誤算がありまして、今回は残念ながら負けてしまいました。
しかし私は、民主党の中でリーダー交代は既定路線に入っていると思っておりまして、次の代表選挙では確実にそうなると思います。

ただ先ほどお話がありましたように、民主党の顔だけ変えればすべて政治が変わっていくのかというと、そういう問題ではない。ただ顔が変わって新しいリーダーシップの下に国民の期待につながっていけば、政権交代を実現できる可能性がある。政権の交代自体が、日本の政治を大きく変えるチャンスになるわけです。ですからまず、この路線を目指そうと思っていました。

ただ私はもう少し大きく考えると、日本の政治の中で本当に既得権益と戦っていく志のある政治家と、大変失礼な言い方ですが、まあ今のままうまくいけばいいじゃないかと、次も自分が当選できるなら無難にやっていこうやと、こういう意識の政治家、この二種類がいるんですね、国会には。
本当の改革を目指す、自分が血を浴びても改革をやるんだという人間が集まらないと結局、自分一人が踊るだけで全く改革は進まない。今の小泉さんと自民党の関係を見ていれば明らかです。そういう意味で、新たな政界の再編は私は必要だと思っています。

また今は経済の問題が最大の課題ですが、今後例えば日本国憲法をどうするかなんてことになったら、ものすごい政治のエネルギーが必要です。私は、自民党がアメーバーのように大きくなって憲法を変えられるとは全然思っていません。国会議員の中で本気で改革をしてこの国を変えよう、憲法も変えていこうという人間が一挙に結集する、そういうエネルギーによってしか、こういう大きなハードルは越えられないと思っていまして、そういう面を考えても政界の新しい動きが必要だと思っています。

【原口一博】
みなさんこんにちは、衆議院議員の原口でございます。
私は、国会Gメン・石井紘基議員と一緒にさまざまなところ―例の北方支援に対する疑惑や、JCOの事故や、RCCなど―に行きました。そういうときに一番着ていた服―もうテカテカになっているんですが―を今日は着てきました。

私たちは、闇の世界と戦う、既得権益と戦う、そして古い政治を終わりにさせる、そのために民主党を作りました。右とか左とか、保守とか革新とか、あるいはエセの保守であったり、エセの革新であったり、そういったものを超えて、あるいは労働組合であろうがなかろうが、市民であろうがなかろうが、いや自立した市民のみなさん、そういう人たちを中心に大きなダイナミズムを作るために、この民主党を作りました。
鳩山さん菅さんの時代で、議員数は減ってはいません。しかしそれぞれの出自・古いしがらみを超えたダイナミズムを国民のみなさんにお示しする、そして民主党が古い政治―日本の政治風土というのは風呂敷によく例えられます、その風呂敷の中にいれば安心だ、ごった煮の自民党の政治を続けていれば安心だと、この結び目を解くのが私たちの仕事でありました。

そのダイナミズムをこの代表選挙で、私たちは見せることができたのか。六月から準備し、私も第二期民主党を作る会の事務局をやらせていただきました。四人の方が手を挙げて、一本化に一ヶ月かかってしまいました。松沢さんは、その中で非常に理性的に頑張ってくれましたが。
ある意味で、理想を言いながらもガチンコの勝負を一回もしたことがない、目と目で「あっ、こう考えているな」を思えていた関係でしたが、今度の代表選で勝った人間は、七月の時点では次の総理候補でしたから、なかなか誰も降りないという状況になりました。ダイナミズムを完璧に失いました。なぜ私たちがこの代表選に若手を結集したかという、その原点すらも失いかけそうになりました。

二〇〇五年には、わが国の経常収支が赤字になります。竹中改革も小泉改革もエセ改革はダッチロールをしていますが、このことがもうはっきりしているからこそ、それを超える、国民のみなさんをしっかり統合するダイナミズムを作るために、代表選に挑戦しました。しかし候補者一本化に一ヶ月かかっている間に、昔のタコツボの中にみんなが戻っていきます。五十五人くらい私たちのところに結集した人間が、次第に五十人を切り四十五人になるということを経験しました。

私はみなさんに率直にお詫びをしなければいけない、一番反省すべきは私だと思っています。
しかし、この中で見えたものもある。自分たちの姿というものがよく見えました。自分たちがいる位置というものがよくわかった。民主党が今どこにあるかということも、よくわかりました。
私は労働組合に関しては、松沢さんとは若干違う意見を持っています。私たちの民主党には、労働組合支配というものはありません。そうではなくて、労働組合から選ばれている議員とそうでない議員との、いわゆる選別、あるいは一体感のなさ、これが問題なのであって、既得権益を振りかざす労働組合が何か言ってくればこれをはねのける力は、私たちは持っていると思っています。

しかし既得権益を持ったその組合選出の国会議員とそうでない国会議員と、これは達増さんと一緒の新進党の時にも感じたことですが、同じ同志であるにもかかわらず出身母体によって区別される、選別される、これは政党じゃないんですね。ここを乗り越えていくことが、私たちの仕事だと思います。
労働組合のみなさんでも、既得権益と戦っているみなさんは味方なんです。今でも自民党の半分の数しかない。あれがだめだ、これがだめだなんてことを言うのではなくて、むしろ多くの人たちを巻き込んでいく、そのダイナミズムを見せることができる、それが私たちだと思っています。

今、民主党の総務局長を岡田さん(幹事長代理)のもとでやっています。五つのことで民主党を再生しようと思っています。
それは、私たちが持っている新しいネットワーク型の政党としての姿をきっちり見せること。情報を共有して、目標を共有して、志を共有して、そしてそこに至るプログラムを共有できるような戦略の一体化、これをまずめざしています。

もう一つ、私は今までの民主党の財務体質も全部洗ってみました。九七パーセントが政党助成金依存です。これはもう政党ではない。企業団体献金、個人献金、あれが悪い、これが悪いという前に、まあじつに個人献金というものが少ない。つまり公的なものにオンブにダッコ、それで政治活動をやっている。この状況では、私たちは政権に届きません。私が自民党であれば、政党交付金を半分にする、あるいは四分の一にする。これで民主党は終わります。

こういう体質を財務から、情報から、ひとつひとつ練り直して、一月党大会に向けて思いっきり脱皮できるように、国民のみなさんに「これなら民主党だ」と言っていただけるような政策と戦略と改革への道筋、これをお示しできるように切磋琢磨していきたい、このように考えています。
最後に、石井紘基議員について一言申し上げます。まっすぐな人物でした。大きな闇の世界と一緒に戦ってきて、いろいろな情報も持っていました。古い政治がいっぺんに終わりになるような情報でしたから、私はそれで命を落としたのではないか、あってはならないことだと強く思います。

いずれにせよ私たちがやらなければいけないことは、金融の改革、経済の改革、そして外交の改革であり、それは私たちの国を売り渡した人間、正義を売り渡した人間、秩序を売り渡した人間との戦いであるということを、ここでみなさんと確認できればと思ってやってきました。ご清聴ありがとうございました。

【武正公一】
民主党衆院議員・武正公一でございます。きょうはよろしくお願いします。
私は中塚さんと同じく、二〇〇〇年の六月二十五日初当選です。私は、二〇〇〇年六月二十五日の総選挙というのは、自分がその選挙で当選したからではありませんが、やはり国民のみなさんが、日本の政治を変えてくれというすごい期待を持って、これまでの投票行動も大きく変えたような、そんな選挙だったのかなと思っています。

というのは、衆議院で一年生議員が確か百二名当選しました。これは衆議院議員の五分の一にあたりますか(五分の一が入れ替わった)。その百二名のうち民主党では四十三名も当選したわけです。衆議院の約一割です。民主党会派の三分の一が一年生議員です。私はやはりこの二〇〇〇年六月二十五日の選挙が原点だと肝に銘じて、事あるごとに発言をしよう、勇気を持って言おうということで活動してまいりました。
やはり今民主党再生、あるいは政権交代というときに、この原点というものを確認しなければならないと思っています。

私は埼玉一区で、二〇〇〇年総選挙では都市部で民主党が躍進しました。そして地方では「一区現象」ということで、一区で躍進をいたしました。その後民主党では、今度は一区から・都市から地方だというような流れができました。
ただ私は埼玉だからじゃありませんが、待てよと、まだまだもっと都市政党として、都市政策を極めるべきではないかと思い、そのような発言をしましたが、なかなか党としての方向性がはっきりせずに今日まで来たところがございます。

二〇〇〇年の総選挙がピークになる危険があるよとも言われていますので、ここでやはり原点に立ちかえって、はっきりとした党の方向性を、政策でも打ち出すべきだと思っております。
今回の代表選挙で、私も野田さんの陣営の一人として働かせていただき、大変得るものがありました。九月二十三日、二十四日を経て痛感したのは、民主党には若手議員がたくさんいる、これがやはり党の売りだろうと思います。優秀なそしてやる気のある行動力のある若い議員がたくさんいる。ただその反面やはり経験が乏しいので、ともすると謙虚さを失うことがあるのではないかと、そんなご批判を受けております。

そういった意味では、今回の代表選挙を通じて若手議員、当選回数の若い議員も、もっとしたたかにならなければいけなかったと反省しております。
やはりある面で政治は権力闘争であり、その最たるものが自民党橋本派といわれていますが、民主党には派閥がありません。だからコミュニケーションとか、先ほど原口さんの言った情報の共有とか、そういうところでもっともっと政党文化を成熟させなければいけない、これも課題として感じております。
そういった意味でも、われわれはもう一度新規まき直しをやらなければいけない。私は岡田さんの下、政権戦略委員会―六名の議員で構成―に、代表への諮問ということで入っています。その中で今のような話、二〇〇〇年の総選挙の原点、そして党として取るべきもの、捨てるべきものをはっきりさせよう、あるいは党内の情報共有やコミュニケーション、これをどうやって働かせるか、こういったところをなんとしても早く打ち出して、それを実現させたいと思っています。

ただやはり、党も進歩しています。今回の代表選挙で私は新人(予定候補)の方々に大変感銘を覚えています。党首、幹事長からさまざまなアプローチがある中で、野田候補に入れた新人が八十三名のうち二十二名おりました。そして二十四日の夜ですか、新人が新代表に向けてということで文を作っております。三年前、われわれの時にはなかったことです。それをさっそく受けて、先ほどの政権戦略委員会では新人からの要望に対する答えを出しております。こうしたことは、民主党が前に進んでいることの現われだと思います。

最後になりますが、私は去年の厳しい参議院選挙後の両院議員総会で、総括ということで一番目に手を挙げて、民主党の中にも族議員がいると、この族議員としっかり対峙して―対峙というのは「やっつける」じゃなくて、しっかり向き合おうと発言しました。
労働組合についての指摘もありますが、やはり民主党の中でしっかりと、役所のお先棒を担ぐような議員はいてはいけないと。立法府、国権の最高機関でありますから、その役割を果たせるそんな政党にしっかりと生まれ変わらせる時期かと思っておりますので、これからもみなさんと共に歩んでまいりたいと思います。ありがとうございました。

【大塚耕平】
みなさんこんにちは。参議院議員の大塚耕平でございます。
今日は参議院議員は私一人です。去年の参議院選挙で当選させていただきましたので、まだ一年。二年前の十月はサラリーマンをやっていましたので、おそらく政治や民主党を見る目というのは、今日壇上に座らせていただいている人間の中では一番、皆さま方に近いのではないか、こんなふうに思っております。
民主党をどうやって再生させるのか、三つほど申し上げます。まず民主党が変わるためにはやはり日本の環境、民主党を取り巻く環境も変わっていかなければいけないと思います。

よく日本は変わらない、変わらないと言われますが、私はずいぶん変わってきたなと思います。
私は一九八三年に社会人になりましたが、その当時、自民党が単独政権を組めなくなるなんてことは想像もしなかったですし、細川さんのような非自民政権が成立するなんてことも想像しませんでした。私は金融界出身ですが、大きな銀行の名前が全部なくなるなんてことも、想像もしなかったですし、古川さんは大蔵省ですが、大蔵省の名前がなくなるなんてことも想像しなかった。変わらないようで変わっているということを、まず現状認識として申し上げたいと思います。

そういう中で二点目として、今民主党は確かに低い評価を受けていますが、政治がカタストロフィーに向かっていて、もう悲観しかできないような状況かというと、私は悲観も楽観もできないと思っています。今回、私どもの党で言いますと鳩山さんが代表になって、中野さんが幹事長になったわけですがこれはすべて後の結果であって、そういう人事、あるいはそういう代表選になってしまったことがどういう歴史的意味を持ったかということは、あとで評価されることですので、あまり今の時点でああだこうだと分析してもしようがないなと思っております。

ここにおります同世代の議員―私を含めて―が議員でいることも何かの巡り合わせ、天の采配ですし、小泉、鳩山というのも天の采配ですので、こういったことが結果として五年後、十年後に何をもたらす、何を導くためのキャスティングなのか、これをあまり分析してもしようがないと思っています。
したがって二点目に申し上げたいことは、それぞれが持ち場で最善を尽くすということではないかなと。ネルソン提督がトラファルガー海戦のときに「総員持ち場で最善を尽くせ」みたいなことをおっしゃった。あるいは理科の授業で「ブラウン運動」なんていうのもありました。分子がそれぞれいろいろな運動をして、結果としてどうなるかはわからないというそういう話です。

つまり、私自身も今与えられた仕事ならびに国民の皆さんからお預かりしている議員という自分のフィールドで最善を尽くすということ、そして各議員が最善を尽くすということ、そして皆さま方のように政治に関心を持ってくださっている方がそれぞれのお考えで、できる限りの行動をする。そういうことの結果として、どういう社会が五年後、十年後に生まれてきているかということを虚心坦懐に見てみたいと、こう思っております。
そういう考えなものですから、民主党を再生させると言っても、あんまり妙案があるわけではありません。ただ最後に三点目として、やはり一年前まで私は(永田町の)外にいましたので、自民党と民主党、他の党も含めて言っていることを冷静に聞いていましたが、明らかに民主党の方が政策論的には正しいです。

そして小泉さんになって、ちょっといい加減にやろうとしたりごまかしてやろうとしている面はありますが、大きな方向は五年前、十年前の自民党政権下では考えられないようなことが今起き始めていますので、戦略と戦術という言葉であえて申しあげれば、大きな戦略、大きな方向としては日本は少し舵を切り始めているのは明らかだと思います。

そういう中で、民主党がその方向をさらに確かなものとして進めていく舵を握らせてもらえるかどうかは、これは戦術の話になってきます。その戦術としてどんなものがあるかというのが、どうやって民主党を再生させるのかということだと思います。
結論的に今、これだというのはありませんけれども、一つは党首を変えるということもそうであったかもしれません。しかし自民党との差別化という面では、党首を変えることだけではなくて、例えば官僚組織との対峙力、対決力という面で自民党とは全然違うよと、相当ハイレベルなものがあるという面で差別化をしてみなさんにご覧いただくということもあろうかと思います。

あるいはNPOを含めて、いろいろな政治的な考えをお持ちのみなさんとネットワークを張るという面において、自民党とは全然違うということを見せるというのも一つの戦術だと思います。どの戦術がベストだということは私自身も結論は今ありませんので、きょうの議論を通じて何か気づかせていただければ幸いだと思っています。
最後に。民主党のイメージを変えるということで、先ほど松沢さんがブレアのお話をされました。私も詳しい事情は知りませんが、イギリス労働党の場合は、ブレアを使ってイメージを変えようと回りが思ったわけです。今回の民主党は、ブレアたらんとする人たちが自分たちが出れば変わると言ったわけで、ちょっとベクトルの向く方向が逆だったと。

私はぜひ二年後には、松沢さんをはじめ立派な先輩方、同僚がいますので、むしろちょっと上の世代の先輩方が、「よし、こいつを使って民主党のカラーを変えてやろう」と、回りからそういう声が出てくるように、これからの二年間しっかりわれわれの世代の議員が仕事をする、これが実は最大の地に足のついた戦術ではないかなと、こんなことを申し上げまして終わらせていただきます。
どうもご清聴ありがとうございました。

【古川元久】
みなさんこんにちは。衆院議員の古川元久でございます。
私は、今の日本をどう再生するかということと、民主党を再生させることとは一つの点で軌を一にしているのではないかと思っています。それは、なぜこういう状況になったのかということをきちんと総括して、どこにどういう原因があり、責任がどこにあるのかということをはっきりさせることではないかと思っています。
今の日本は本当に政治も経済も行き詰まって、全く出口の見えない状況になっていますが、こういう状況に陥っている最大の原因は、過去にいろいろな問題について責任のあったこと、あるいは誤った政策が取られたこと、そういったことについて総括もされていないし、責任も問われていないということにあるのではないかと思っています。

例えば北朝鮮の問題についても、拉致事件が二十四年間も放置されてきた。このことの、政府やその間ずっと政権を握ってきた自民党の責任というものは問われていません。なぜ二十四年間も放置されたのか、一体誰にどういう責任があるのか。そこをきちんと総括していかないと、これから国交正常化交渉をやっていく上でも、過去に自分の身に覚えのある人たちが係わったのでは、決して正しい国交正常化交渉などできないと思いますし、拉致問題もきちんとした形では解決できないと思っています。

同じことは経済問題についても言えまして、なぜここまで銀行の不良債権問題がおかしくなってしまったのか。公的資金の注入は四年前にも行われました。どうしてそれがうまく機能しなくて、またこういう状況になったのか、こういう過去の責任、そして過去の政策のどこがおかしかったのか、そういうことについてきちんと総括しないで、またここで再び中途半端な形で公的資金の注入などをやっても、同じ過ちを繰り返すことになります。

私が、政権交代がないと全ては変わらないと思っているのは、こうしたことは同じ政権が続いている限り、総括ができないと思っているからです。政権交代の最大の目的というのは、政権交代によって新しい政権が過去の政策の誤り、あるいは責任をきちんと明らかにしていくことです。その中で新しい道に進んでいくということがなければならない。それをやるためには政権交代が必要なんです。その政権交代を実現するために、われわれは民主党に集まってきているわけです。

先に行われた代表選挙で、そういう政権交代に一歩でも一日でも早く近づかなければ、この国の今の状況は極めて危ういところにあると。その認識から私自身もここにいる他の議員と共に、若手―新しい代表ということで行動したわけです。
今から振り返ってみますと、私たち自身の、民主党自身の総括―政権交代が目的で集まってきたわれわれなのに、ここまでのところでいくつかのチャンスがあったのに、なぜ政権を獲得できなかったのか。そこについてのきちんとした総括と責任というものを、みなさん方にも提示することができなかった。そして党員、サポーターの人にもきちんとそれを伝えられなかったのではないかと思います。

その総括の上で若手の中から新しいリーダーを出して、どのようにどういう形で民主党が変わっていくのかを提示する、そういうことまできちんと示すことができなかったということが、今回の代表選挙で若手が及ばなかったことの一つの原因ではないかと思っています。

「隗より始めよ」じゃないですが、まず民主党の中で、過去を総括できない今の政権に代わってしっかりと総括できるようにするためには政権交代が必要であって、その政権交代を実現するための政党としてわれわれは民主党という政党に集まっているんだと。したがって国民のみなさんに、今の政権に代わって民主党に政権を任せてみようと思っていただけるためには、今まで自分たち民主党が期待を持っていただけなかった部分について、そこをどう総括して、このように変えるから、こういう形にするから、それにみなさん期待してくれときちんといえるようになっていかなければいけないと思います。

そういう過去の総括、責任の追及というものをきちんとやっていくことが、民主党の再生、そして政権交代につながると思いますし、それがじつは今の日本のこの状況を変えることにつながっていくと、こう思っています。

【達増拓也】
こんにちは。小泉総理を激怒させた達増拓也でございます。(注/日朝交渉についての達増議員の質問に、小泉総理が逆ギレした)。テレビに映っているとわかっていて度を失う指導者というのは、だいたい一年以内に失脚いたします。田中真紀子・前外務大臣がそうでありました。そのへん、楽しみにして見ていただければと思います。
今日はネクスト・キャビネットとまでは言えないかもしれませんが、ネクスト・ネクスト・キャビネット、あるいはネクスト・ネクスト・ネクスト・キャビネットくらいの感じではないかと、ちょっと緊張感を持って参加しています。  

野党協力の関連で民主党代表選について言えば、自由党の公式見解は、野党が協力すれば勝てない小選挙区はない、野党協力で政権を取ろうということに尽きるわけです。が、それだけではおもしろくないので、個人的な見解から分析をさせていただきますと、今回の民主党代表選挙は、客観的に政治学的分析としてみれば、きわめて当然の結果なんだと思います。

民主党の議員さんたちの中で、誰か一人代表を選ぶとなれば、やはり鳩山さんになるのでありましょうし、また鳩山さんが選ばれるにあたって一番功績のあった中野寛成さん、サポーター票も含めてですが、鳩山さんを当選させる多数を形成するのに一番功のあった中野寛成さんが幹事長になるというのも、全く当たり前の話で、論功行賞と批判されましたが、政治の世界で論功行賞というのは全く当たり前の話でありまして、そういう意味では当然の結果だったと見ています。

ただし、当然の結果があるべき結果かというと、多分そうではないのでありましょう。
なぜああいうことになったのかを、外部者としていろいろ分析しますと、多数であることを優先する体質というのがあるんじゃないのかなという気がします。その逆は、少数であることを辞さない体質、純化路線―自由党が政局の局面局面で見せてきた純化路線でありますが、純化の哲学は、真実と共にあることと多数と共にあることのどちらかを選べと言われれば、真実と共にあることを選ぶというものです。だから小沢さんたちが自民党から出る、新進党も解党する、自自連立も離脱する、さらには(人気絶大な)小泉さんであろうが真紀子さんであろうが、そういう多数と共にある人に食ってかかるということにつながります。

近年見ていますと、多数が誤っていることが多いんです。田中真紀子さんを持ち上げたこともそうですし、小泉さんにいまだに六〇、七〇パーセントの支持率を出していることもそうですし、おそらく民主党代表選も多数の誤りということなんでありましょう。
歴史的にみれば、近衛文麿総理の誕生を大歓迎して、大政翼賛会をみんなでお祝いして、そして真珠湾攻撃を「これで局面が打開できる」「すばらしい」と日本人の過半数がそう思ったそうでありますが、それもやはり多数の誤りだった。二十世紀産業化社会における大衆政治を、二十一世紀の情報化社会においていかに超克していくか、という課題があるんだと思います。

そこで真実と共にある少数者の連帯という形で、政党のあり方も再編していくべきではないか。
民主党代表選に絡めて言えば、例えば若手が「もう若手でいくしかなかろう」「上の人がそれについてこないなら、若手だけで新党を作る、分裂をする」と―自由党の公式見解は、民主党は分裂してもらっては困る、民主党は分裂しないで頑張って野党第一党でちゃんとやってください、というのが公式見解ですけれど―「民主党若手だけで独立しちゃうぞ」と本当の本気で見せれば、上の人たちがビビッて妥協してきた可能性もあったんじゃないか。

さっき大塚さんがブレアの話をしました。ブレアはやはり年配の人たち、長老がブレアを立てて打開しようということでやったわけで、やはり上の人たちがその気にならないと、若手を立てて党をリニューアルしていくことはできないんだと思うんです。年配の人たちの納得を得るためには、じつは年配の人たちを恐怖させるしかないというような政治力学があったのかもしれません。
ただ、民主党より深刻なのは自民党とか与党の側で、与党こそ多数であることを最優先させ、多数であるためには真実も何もいらない、という体質でやっている。自民党はもちろんそうですけれど、公明党もそうなっちゃったし、保守党というのはまさにそのために、多数派と共にあるために生まれた政党であって、それが結党の原点、あとは二の次という政党なわけであります。

そういうのが今や与党として日本の政治をやっているわけで、うまくいくはずがありません。経済にしろ外交にしろ次々に真実を見失って、何をやってもうまくいかないのは理の当然であります。したがって少数者の連帯、真実と共にある少数者の連帯というのをいかに作っていくか。それは原口さんがさっきおっしゃったネットワーク政党とか、大塚さんがおっしゃったNPOとの連携とか、そういうのともつながると思います。

拉致被害者家族のみなさんも、真実と共にある少数派だったわけです。当初、誰も相手にしてくれなかった。でも国交正常化優先、コメを支援してもいいみたいな多数派には与せず、あくまでも真実と共にある少数派としてやってきたがゆえに、今ようやく日の目を見つつある、そういう形だと思います。

経済、社会を語るには「大衆から分衆へ」という言葉は、十年以上前から出ていると思うんですが、そういう経済社会の実態にあわせた政治のあり方、政党のあり方を作っていく、二十一世紀情報化社会にふさわしい、大衆民主主義を超克した情報民主主義とでも言うべき新しい型の政党を野党で作っていければ、そういう連帯は結果として過半数を超える。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」と言うんですが、多数であることを二の次にすることで、結果として多数を獲得できるということができるんではないかと思います。

【中塚一宏】
みなさんこんにちは。自由党の衆議院議員・中塚です。こんなに長い間黙っていたのは、当選してから本当に久しぶりのことです。
政権交代と民主党の再生というお話ですが、私は両方ともキーワードは「しがらみ」ということなんだろうなと思っています。

私は二〇〇〇年に当選して、議員は二年ちょっとなんですが、大学を卒業してすぐ秘書になって五年間、その後政党の政策関係の職員を五年間やりましたので、そういう意味では十二年この世界に身をおいております。この建物(砂防会館)は私にとっては大変懐かしいところなんです。ここの三階に経世会、自民党竹下派の事務所がありまして、私はその竹下派の議員秘書をしていたものですから。そのころから小沢一郎党首と―当時自民党の幹事長でしたが―付き合いがあったんです。そういったところから考えると、世の中変わらんなあと。さっき着実に変わっているというお話がありましたが、私は世の中変わらんなあと、特に政治の世界は何も変わっていないなあという思いでいっぱいです。

政権交代がなぜ必要かというのは、もうみなさんよくおわかりだと思うんですが、何といっても政権与党というのは、今の制度仕組みで票と金を取るということなんです。だから自民党というのは政党じゃないんです。今の制度仕組みで票と金を取るという、制度仕組みそのものなんです。だから自民党が構造改革なんかできるわけないんですね。補助金のピンハネと護送船団行政のねじまげでやっている党が、補助金を廃止したり護送船団行政をやめたりなんていうのは、「おまえ自殺しろ」と言うのと同じわけですから、絶対にできないです。

もう一つのしがらみというのは、これは民主党の再生というか野党の連携ということとも関係してくるんですが、人間関係のしがらみということです。
私が政治の世界に入ったのが平成二年で、政界再編というかそういうものが始まりはじめたのが平成四年とか五年くらいで、もうかれこれ来年で十年になるんです。

この十年間にいろいろなことがあったわけですが、結果的にはくっついたり離れたりということばっかりで、このことが政治家同士の人間関係をすごく悪くしているという部分があると思います。それは自民と民主の間もそうでしょうし、自民と自由の間はもちろんそうなんですが、民主と自由の間でもそうなんです。中身の話に入る前に、「あいつが言っていることだから、何かたくらんでいるに違いない」みたいな、そんなことばかりが先行する。
「悪い奴だっていうのは、どう悪いんだ」という話になるんですが、「あいつは悪い奴だから、あいつの言っていることには注意しろ」みたいな話になって、結局、政策とか中身の話に入っていけない部分があるんです。

今日は当選回数も、また年齢も若い議員が集まっていますので、そういう意味では、当選回数の多い議員や各党幹部のような人間関係の悪さというのはないわけですから、もっと政策の中身を合理的論理的に話をできていける関係ができるんじゃないかなと思っています。

政権交代をめざすということで、今日は補欠選挙の投票日ですが、全国七つで野党統一候補を立てることができました。
よく野党はバラバラだと言われますが、じつは自民党だってバラバラなんです。左は共産党より左の人もいるし、右はとてつもない右の人もいるわけで、自民党だってバラバラなんです。なぜ結びついているかというと、票と金が取れるからみんな自民党という所帯の中にいるだけの話で、結局、政権与党であり続けるということが自民党という組織の目的なわけです。だから野党でも、与党になるんだということで集まれないわけはないというふうに、これはわが党の公式見解でもありますし、私自身の考えでもありますが、そう思います。

もちろん政党政治、議院内閣制ですから政党というのは大変重要なことで、理念なり政策なりをもとに政党というのはあるわけですが、民間企業でも、ライバル会社のことばかり言っているのではなくて、消費者を見て仕事をしなくちゃいけないのは当たり前の話なんで、政治家だって政党だって、いい政治をするということが一番の命題になるわけですから、小異を残して大同につくという言葉もありますが、政権を取ると、今の政治を変えるということで一致できれば―まずその一致点を見出した上でないと、なかなか連携というのは難しいんだろうなと考えています。

【戸田代表】
整理をするために、簡単にコメントします。
第一に、民主党の代表選挙に関して、ああいう結果になってブレているということはないなと。それぞれ自分が代表選挙でやろうとしたことを社会に、つまり他の人にどのように伝えたらいいのかということで、いろいろ考えている。 

政官業癒着の自民党の代表選ではございませんから、そこでの問題意識で共通しているのは、政策は圧倒的に自民党よりも民主党の方がまともであると。それを見える姿で伝えるためには、どうするかということです。そういう社会の変化を反映した政策を作ってきたのは、ウチによく来てくれるような若手の議員ですね。
それを社会に見える形にするために、代表選に打って出ることによって見える姿にしよう、そういう組織表現を突破口に開くべきだ。これは前原、野田ということできた部分に関しては一致しています。そのことを一番強調しようとしたのが、松沢さんの最初の提起だったわけです。

一方、この状態をどのように伝えるのかということには、日本における政党の問題がある。永田町で、ウォンツを持ったかたまりができつつあるというのは、一つは民主党、もう一つは別の道で自由党、この二つです。しかしながら、わが国の政党の総括をどう提起するかという教訓は、まだ日本にはありません。そういうことは誰もやっていませんから、当然、このメンバーも先輩たちから教育されていません。
潜在的にはウォンツを持った、社会の変化をどのように政治権力として表現するのかということの萌芽的な―萌芽的というのは、問題意識を超えて組織表現へ―という点が入っている。これが入っているからブレていない。それが第一です。

ですからフォロワーとしても、そういうふうに聞くべきです。質問するときも、揺り戻さないように質問したり、もっと言えば、あの代表選挙をあなたは、自由や民主主義社会における政党をどう作るかという問題意識でやられましたか、と問うように、そこから不徹底等々を断ち切っていくというふうに、フォロワーの側からも攻め込んでもらいたいと思います。

それと自由党の位置というのは、達増さんの言われたように、真実とともにある少数派としてスジを通すというところにある。世の中を変える、価値観まで変わるときは、残念ながらやはり少数の人たちから、急がば回れの精神で訴えていくしかないわけです。拉致被害者の家族会もそうです。
社会が古い利益分配等々では回らなくなったときに、それが社会の声になってきます。ですから達増さんの言う自由党の役割に徹していただきたい。今から自由党が、わけのわからない俗的多数派になっても意味がないわけですから。

重ねて、やはりいろいろ問題点はありましたけれども、若手議員―政策ということで政治を論じていこう、ウォンツで見ていこうという部分がはじめて、権力を意識して行動したのが今回の代表選挙です。この教訓は今すぐ見えないとしても、日本が変わることに成功したときには、あの時の決断が、舞台が本格的に始まる予兆だったんだなというふうになると思います。
ぜひ、パネラーの皆さんが言われたことを具体化するために臨時国会で奮闘し、よしんば一月民主党の定例大会で次の方向が見えるようになりますと、日本の危機にどう立ち向かうかという点でも力にもなると思います。

危機だからこそ政権交代を

【司会・石津】
それでは政策論議に少し入っていきたいと思います。時間が押しているんですが、やはり経済と外交両方をなんとかやりたいと思います。
経済、外交どちらも、大変な状況です。経済では不良債権の処理とデフレ対策と産業再生をリンクしなければならないということですし、外交ではイラク・北朝鮮の問題があります。北朝鮮との交渉は、核と拉致問題、どちらもあいまいにはできません。しかも米朝、南北ルートが機能していないこの時期に、日本が窓口になっているという状況です。

こうした非常に難しい局面で、小泉「疑似」改革はいよいよ完全なダッチロールに入って、いつ投げ出してもおかしくない、責任はいっさい「丸投げ」ということになっています。これに国民がいかに向き合うか。その覚悟を固めるための問題整理も含めて、お話をいただきたいと思います。
申し訳ありませんが時間の関係で、経済については大塚さんと古川さんの方から、外交の方は原口さんと達増さんの方で、問題整理をしていただいて、その上で意見、コメントという形で他の方のご発言をいただきたいと思います。
それでは最初に経済の方を、大塚さんからお願いします。

【大塚】
時間もないので単刀直入にやります。
今、経済政策論争はたいへんわかりにくくなっていますが、経済政策とか経済の構造はわりに単純だと思います。どういうことかと言うと、今日は経営者の方もいらっしゃると思いますが、企業を経営するときにコントロールできる変数といいますか、要素は三つしかないんです。価格か量かコストか、この三つしかないわけです。

業績が悪いからといって、価格を上げたら業績が良くなるかというと、売れていないのに価格を上げたらもっと業績が悪くなっちゃうかもしれません。売っている製品に変わりがないのに、売れる量だけ増やそうと思っても、これは増えませんね。だから一時的に利益を増やそうと思ったら、コストを落とそう、人件費を削ると。そういうことが今起きているわけで、じつは日本全体も同じです。
ちょっと思い起こしてください。新聞の経済記事のキーワードは何でしょう。景気対策、デフレ対策、財政再建、あといくつかありますけれども、キーワードはこの三つでしょう。

景気対策というのは、今申し上げたことからすると、売れる量をいくら増やせるか―日本国としてGDPを増やす―ということです。デフレ対策というのは、価格を上げなければいけない、なんで上がらないんだと。財政再建は、経済政策をやるときになるべくコストを低くやりたい、行政がえらいコストをかけてしまっていると。
だからじつは、日本全体を日本株式会社と考えると、量と価格とコストをいかにマネージするかということがポイントになってきています。

したがって例えば景気対策が最優先と、景気対策をやればすべてが解決するといっても、これは論理的に何も根拠がないのです。今申し上げたように、製品のラインナップが同じなのに、急に景気がよくなるはずがない。つまりこれをやるためには新産業、新しく売れるものをつくるということが背景になければいけないわけです。
デフレ対策、これが第一歩で日本の経済は良くなるというのも、今申し上げましたように、価格だけ上げて日本の業績が良くなるかといったら、ならないですね、多分。

一時的には、財政再建というのは即効性を持ちます。コストを下げたらその分プラスになりますが、では縮小均衡ばかりでいいか、本当に継続的に発展できるか。これは会社を例にとってお考えいただければわかると思いますが、グッとコストを圧縮して今期の利益は上がっても、来期以降拡大していくかということです。拡大していくときには、人も増やさなければいけないし設備投資もしなければいけないわけです。

そのようにお考えいただくと、今私が申し上げられることは、景気対策も重要、デフレ対策も重要、そして財政再建も絶対にあきらめちゃいけないと。この三つをきちんと、それぞれ各論で何をやるかということをつめて、三つともあきらめない。これが経済の基本的なポイントではないかなと思っています。
また不足の部分は、後ほどコメントさせていただきます。

【古川】
私は、不良債権処理の話に集中して一言申し上げたいと思います。
ここ数日竹中プランに対して、銀行の経営者の人たちが、そんなことをやるんならもっと貸し渋りや貸し剥がしをするぞと、中小企業を、つまり貸出先の企業を人質にとって自分たちの経営に関与するなというような行動に出ています。まさにこれが、不良債権問題がここまで長引いてきた最大の理由だと私は思います。

要するに、金融システムを安定させるというのは何のためにやっているかということを、銀行の経営者はわかっていないと思うんです。公的資金を使うべきだと、われわれも言っていますが、それは決して銀行を救うためではありません。まさに銀行の先にある貸出先の、そういう人たちを守るためには公的資金の注入がやむをえないという話であって、銀行を守るなんてことは全く最初から考えていないです。銀行経営者の人たちは、そこをまったくわかっていない。

過去に公的資金を注入したときにも、しっかりと経営陣の責任を問わなかった、そのことのツケがここにきて不良債権処理の問題がダッチロールしている最大の理由だと思います。
不良債権を処理するのは、決して銀行を救うためではなくて、一日も早く金融システムを回復させてお金がちゃんと民間の企業の中に流れるようにする、そのためにやるんだということ、そのためにどうしたらいいのかということです。これが、不良債権処理の問題を考えるときに、一番私たちが頭の中においておかなければいけない問題だと思っています。

そういうことですから、不良債権処理の問題と企業再生の問題は、別に分けてやらなければいけないんです。四年前の金融国会のときも、金融システムをきちんと機能するようにすることと、企業再生というか産業再生を一緒の枠内でやろうとしたんです、時の政府は。われわれは、これは違うものだと主張したんですが、それが一緒くたになってしまった。
だいたい、企業再生も含めて金融庁にやらせようなんてことが間違いでありまして、金融システム回復のための不良債権処理と、産業再生というのは全く別の視点で、別の形でやっていかなければいけないということを申し上げたいと思います。

(竹中プランで)もっと問題だと思っているのは、政策責任者の体制が全くできていないということなんです。金融庁の事務方は、柳沢大臣のときから変わっていないんですから。本当に政策転換で変わるのなら、事務方も全部変えるべきです、基本的に責任のあるところは。それをやらないわけですから、ここの間で(竹中大臣と官僚との間で)そもそも綱引きがある。

また財務省の塩川大臣は変わっていません。ですから、ここもずれている。その上みなさんご承知のように、政府と与党は全く反対です。いわば飛行機がもう下降を始めている、目の前に地面が見えて墜落しそうだというときに、コックピットの中で操縦士と副操縦士がケンカしあっていると。こんな状況の中では、どんな政策を言ったって実現しないわけです、実現する前に墜落してしまうわけですから。

まずやっぱり政策―どういう中身でも―についての責任を取る、取れる体制をきちんとやらないとだめです。太平洋戦争のときに、戦局はどんどん悪くなっているのに陸軍と海軍がケンカをして、その中でどんどん日本がああいう形で追い込まれて無条件降伏せざるをえなくなったと、そういう状況が近づいていますから、まずやはりきちんとした経済政策―中身は何であれ―をきちんと一体的に実行できる体制を作るということが、私は非常に大切なことだと思っています。

【石津】
経済政策は実際の生活の問題に絡まってきているので、最近は私たちの街頭活動でも経済を何とかして欲しいと声はあるんです。ただ、これをしてくれれば全部ハッピーでバラ色になるという世界ではもうないわけで、すべてがうまく行くような政策を一つだけ出してほしいというわけにはいかない、ということを私たちも理解する必要があります。

何をどうすればどうなるという手順、それから政策パッケージ、そして古川さんがおっしゃったように誰が責任を取るのかということを見すえて経済政策の問題を論じて、政治家とのつき合いをしていく必要があると思います。
他の方で、何かコメントあるいは追加のご発言がありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
自由党でどちらか、いかがですか。

【中塚】
不良債権の話なんですが、頭取、経営者の責任とともに、もう一つは金融機関のビジネスモデルの問題が、私は大変大きいと思っています。担保を取らなければ金を貸せないなんていうビジネスのやり方がもう行き詰まっているわけです。担保もほとんどが目減りをする、資産デフレというわけです。

じゃあ不良債権っていったいどうするのよ、という話になると、それは金融機関が自分の利益で償却するのが当たり前の話なんです。それができないから低金利にして、本当はみなさんがもらえる利息を銀行に残してやるとか、それでも間に合わないから税金を入れてやるみたいな話になるんです。要は、金融機関がもっとちゃんと自分たちの経営技術を駆使して、儲けられるようにしなければいけないわけです。そういう意味で、ビジネスモデルの問題は、一つ大変大きいなあと思います。

あと企業再生ということとは別に、不良債権というのは銀行から見れば不良債権なんですが、借り手の方から見れば、要は景気が悪い(から借り手がいない)という話なわけです。四年前の資本注入の失敗というのは、もちろん不良債権の額などがいいかげんだったということもありますけれども、それに加えてやはり景気、経済というものをおろそかにしてきたということだろうと思います。
古川さんがおっしゃった四年前の金融国会の時でもそうですが、よく政治家が役人にだまされるというか、丸め込まれるという話があるんですが、役人は時には政治家を脅かします。結局、そういう政治家の票というのは役所の権限に基づいて集まっているわけです。

族議員と言われますが、やはり政権交代がなければ、霞ヶ関の役人が「どうせ自民党政権が続くんだよ」と思っているうちは、自民党では絶対にいい案は出ないということを、最後に申し上げたいと思います。

【石津】
司会の特権として、松沢さんに伺いたいと思います。
今お話に出た九八年の金融国会のときは、ああいう金融危機というのは戦後初めて経験したということもあって、実際はよくわからないままにとにかく大変だと、政局にするのはまずいということで、民主党は判断したわけですね。当時は菅代表だったと思いますが。

今回の危機というのは、ある意味ではそのとき以上に深刻です。つまりあのときはまだ、個別銀行の処理の問題で済んだわけです。ところが現在は、不良債権処理は必要なんですが、といって日本経済全体の浮沈と密接に結びついていますので、単なる銀行の処理の問題ではなくなっている。
今回、国家的危機・経済有事だから政局にしたらまずいということで、ブレない保証、保証というのは失礼ですが、ブレない取り組み方というのはどんなふうにお考えでしょうか。

【松沢】
今回の竹中案は、みなさんお気づきだと思うんですが、民主党がこれまで主張してきたこととかなり近いんです。この前ある新聞に海外の方からの忠告が書いてあって、むしろ民主党はこの竹中案に乗って―ある意味で政府・自民党の分断にもなりますから―それで一気に突っ走れという忠告がありました。これは一つの方法です。

ただ、経済というのはみなさんの生活そのものにかかわってきますから、不良債権処理のハードランディングだけではだめなんです。同時に先ほど言っていた、企業の再生、あるいは補正予算を組むなりして、失業や倒産の問題にどういう具体的な手当てをするかというセーフティネットの問題をしっかりしなければならない。
要するに手術するなら輸血だとか点滴をしっかりしながら、でも思い切って悪いところは切り取るという方法をとるべきなんです。民主党は今議論を始めていますけれども、一つずつ考えていくべきだと思います。

今、経済評論家はみんな、竹中案でやったら日本経済は大パニックになると言っています。それにまたひるんで、民主党の政策をわからないところに―景気が重要だ、デフレ対策が重要だと逃げちゃったら、自民党の守旧派と同じように見られてしまいます。
確かに竹中案それ自体は、問題は多いと思いますよ。ただ基本的な方向として私たちが言っていたことと近いわけですから、ここをしっかりとらえることと、同時に輸血と点滴の部分も忘れないで、民主党はこれで行くんだと力強く示さないといけない。そういう力強い方策が出せれば、一つ民主党の出番が出てくると思います。私見です。

【武正】
先々週ですか、民主党の中野幹事長から、三十兆円枠突破容認のような発言が出て、それが新聞に出たことがございました。先週、民主党のネクストキャビネット、国対筆頭理事会議、両院議員総会と、私は三度そのことを確認いたしまして、幹事長からはそういった意味の発言ではないということがございました。
先ほど大塚さんから、財政再建とデフレ対策と景気対策、この三つはセットなんだよというお話がありましたが、その中でもあまりどこかが突っ走っちゃうとやはりバランスを欠くということで、私はその発言をしたんです。

バブル後の十年を見ると、財政出動百三十兆、これで建設業に従事される方が百万人増えました。建設業で十万社を増えたんです。扇国土交通大臣に質問すると、「この十万社を守らなければならない」というか、「十万社増えている、だから仕事を与えなければいけないんですよ」というような発言があるんですね。

しかしこの百三十兆が本当に日本の構造改革に寄与したかというと、建設業がセーフティネットとして、そこが雇用の受け皿となってしまったわけですから、あいかわらずやはり構造改革は十年経っても進んでいないんじゃないか。これはやはり、断続的に構造改革をしていかなければいけないわけです。
ただこれからいよいよ公的資金の投入と、不良債権処理加速ということで、デフレ対策が注目されます。今年の二月、民主党が打ち出したデフレ対策の中で、私は資産デフレ―デフレの中でも今資産価格が目減りしているのがとくに問題ですので、住宅ローン減税とか住宅ローン控除、これを目玉にしていくべきではないかなと思っています。

またデフレ対策として、例えば中小企業の信用保証、三十兆ありましたが、これをまた再びということがすでに出ております。これをまた繰り返したい気持ちはよくわかるんですが、ここはやはり金融システムを安定化するという根本的なことをやらないと、また何十兆も信用保証を名目を変えてやって、果たしてそれがいいのかなあと、これはなかなか言いづらいところですが、そう思います。
やはり今回の竹中さんの政策も含めて、わが党として、変に媚びてはならない、妥協してはならないなと。その中で民主党として主張すべきところを主張していくというところが問われていると思います。

【原口】
先週私たちは予算委員会で、竹中さんの問責決議をしました。これは彼の政策に対してではなくて、彼の政治姿勢、それから彼の金融監督責任者としての責任に対して出したんです。
不良債権の処理というのは一気に、公正にそして責任を明確に、これが原則です。それを抵抗勢力に、「こんなふうにやっていいでしょうか」なんて聞いて、それでもって変更する。「でかい銀行は潰すことがあるかもわからない」と言いながら潰す、こんなことはありえないです。一気にメスでスパッと切れば、それで済む話なんです。

ところが前の通常国会でも議論しましたが、今、公的資金を注入しようとすれば預金保険法百二条しか、法律の根拠はないんです。これはいわゆる金融危機ないし金融危機の恐れがある、というときです。九八年の時に私たちは、自由党さんも一緒に、公的資金注入の責任追及の枠組みを作らないとすぐ困ることになると言ってきた。しかしそれを無視して、「まあ困ったら百二条を使えばいい」と安易なことでやってきたので、今に至っているんです。

私は経済の話をするときに、世界の経済からまず話をすべきだと思います。アメリカは大変なデフォルトが起こっている、民間企業に。三年連続ダウが下がるというのは、一九二九年の恐慌以来です。
ヨーロッパはどうか。この間ドイツに行ってまいりましたが、東ドイツに対して西ドイツから送った一・六兆マルクがほとんど日本と同じような古い公共事業に使われていて、ドイツの経済は確かEUの三分の一ですが、これが今回の洪水によってまた厳しい状況になっている。

このように世界経済全体がデフレ傾向にあるときに、私たちはデフレ・ギャップを何で埋めるのか。麻酔やあるいは栄養注入、これをなんでやるのかということをきっちり出すべきなんです。
私たちは今年の予算委員会で、当初予算の組み替えを出しました。今自民党がやろうとしているのは、これなんです。だったらなぜ当初からやらないのか。そして今、減税の議論をしていますが、企業にとって一番負担が大きいのは年金保険料です。多くの企業がここの事業主負担を忌避するために、雇用が生まれない、むしろ雇用―正規雇用が減っている。ここに一番の大きな問題がある。

私たちは今回の代表選挙で、古川さんが中心になって年金のスウェーデン方式―これはみなさんがお支払いになった年金は必ず、みなさんの老後の安心に資しますということを提案しました。こういうことをやらないと、だめなんです。 
あるいは貸し出しリスクが百で、国債を持っているリスクがゼロであれば、銀行は貸し出しません、国債を買います。ここを変えなければいけない。

またさっき武正さんがお話した信用保証の積み増し、これは三十兆やった。これも一つの政策でしょう。しかしこれだけでは中小企業の構造改革にはならない。中小企業はずっと過少資本といわれている。この中小企業の財務体質、構造そのものにメスを入れていかなければいけないと思います。
このことをサボりながら、わけのわからない預金保険法の百二条で公的資金をいれようとか、あるいは抵抗勢力に「どうしましょうか」とお伺いをたてながらダッチロールをする。こんなふうに腐った、さびついた鋸で「切りますよ、切りますよ、切りますよ」と言われている間に、患者は死んでしまいますよ。

私たちは、こんなことをやらせてはならない。ですから、小泉さんには早く変わって欲しい、そして私たちの政権でこういう政策をやらせて欲しい。これはぜひみなさんにご理解いただきたいと思います。

【達増】
自由党しか言わないので私から言いますけれども、減税であります。先週のNHK日曜討論で藤井幹事長が「減税をやれ」と言いました。あとから増税でカバーするのではない、減らすだけの恒久減税をやれと。財源は歳出のカット、節約でやると。
そうしたら山崎拓さんはじめ与党幹事長のみなさんが「エエッ、無理だ」みたいな感じで、山崎さんはニヤニヤしながら「これ以上無駄はもうありませんから節約できません」というようなことを言っていたわけです。

ところが思い出していただきたいのは、例えばムネオハウスというのは、二億円でできるものに四億二千万円の予算がついて、差額が不正献金に回された。それから今日の選挙にも関係ありますが、千葉の井上・前参議院議長が辞めるはめになったのは、七億円くらいの事業について六千万円の不正献金がそこから捻出された。そういうメカニズムなんです。

口利きをして何百万、何千万を政治家に回すということは、山形県でも加藤紘一さんの秘書がやっていたわけでありますし、業際研でもやっていた。全国にあるわけですよ。
こういうムダを省き、さらには地方に対する補助金を、今中央で細かく刻んでいるものを一括して交付するような、そういう効率化をすれば自由党内での試算では、八十兆円の予算のうち十兆円は浮かせることができるだろうと。だから十兆円の減税ができるわけです。

十兆円の減税は大減税です。これで景気回復。これは、今の与党にはできません。そういう十兆円の大減税をやると発表すれば、株価は上昇し始めるでありましょう。半年くらいで株価は二万円台までいくでしょう。一年後には二パーセントくらいの成長率の軌道、景気も回復軌道に乗るでありましょう。
そのくらいになったら、銀行の不良債権をバッサバッサと切ればいいんです。二パーセントくらいの成長軌道に乗っていれば、リストラされた人たちも別の職に就くことができるでしょうし、ボロボロになった銀行を一部でも買ってやろうとか、あるいは全体を買ってやろうという日本人で余裕のある人が―外国に叩き売らなくても日本人が―買うことができるようになります。

しかし今のままで不良債権処理を加速化すれば、それはデフレ無限スパイラルで落ちていくだけで非常に危険なんです。やはり成長軌道を確保してから、成長軌道が確保できそうになってきたら、今のルールより厳しいルールでそこは処理する。

銀行がルールの変更は困るとか言っているんですが、これも政権交代すればルールを変更できるんです。自民党中心の政権はダラダラやっていたようだが、われわれはそうではありませんと言って政権交代すれば、バサッと切れる。そういう意味でやはり、経済政策と政権交代も不可欠だと思います。

【大塚】
僕も減税は、選挙前はやれやれと言っていたんですが、ぜひみなさんにご理解いただきたいのは、減税というのを従来型の景気対策だと思わないで下さい。減税というのはつまり、政府が民間のみなさんから集めて公的部門に渡す資金の量を減らすという意味なんです。景気対策で減税なんて新聞が書くものですから、みなさんが錯覚するのですけれども、そうではないのです。

公的部門に資金が回ると、具体例はもう申し上げませんが、ろくな事に使われないから、民間資金の金融市場も逼迫してしまう。だから、無駄な公的部門を縮小するための減税なんです。そこのところを、マスコミを含めた世論がきちんと理解してくださるようになると、大きく流れが変わってくると思います。
蛇足になりますけれども、ちょっとだけ辛気臭いことを申し上げます。日銀―私の古巣―が名目金利をゼロにしていますね。名目金利をゼロにしている中で、公的部門が税金で民間から資金吸い上げると、これは資金の取り合いが民と官で起きますから、実質金利が上がるんです。

実質金利は「名目金利から物価変動率を引く」という単純な式で決まります。今、名目金利を日銀がゼロに押さえている中で、公的部門が民間から資金を集めていると、これは数式上デフレが起きるのです。
なぜデフレが止まらないかというと、お金をみなさんから吸い上げて余計なことに使っているからなんです。ここのところを直さない限り基本的な構造は変わらないので、減税は景気対策ではなくて―長期的には景気対策になりますが―公的部門を縮小させるためのものだということを、ぜひご理解いただきたいと思います。

【石津】
ありがとうございました。
湾岸戦争で大勝したブッシュ(父)政権に勝った選挙で、クリントンのスローガンは「it’s economy,stupid!」ということだったわけです。戦争に大勝して人気絶頂の政権でも、経済がうまくいかないと変わらざるを得ない。経済政策というのは政権交代のメイン・イシューですし、こういう状況ではなおさらだと思います。

そういう意味でも、小泉改革ではダメだ、われわれにやらせろという力強い声をぜひ皆さんに上げていただきたいと思います。国民の方も「なんとかしてください」ということではなくて、私たちの十年後、二十年後をどうするかという観点から、体系だったパッケージということで経済を理解していくようにしていきたいと思います。

経済の問題については引き続き、毎月の定例講演会でも取り上げていきたいと思いますので、またそちらのほうでやっていきたいと思います。

 続きまして外交です。イラクと北朝鮮というのは、今日の森本さんのご講演でも、切り離せない問題であるというところを明らかにしていただいたわけですが、こちらの方も小泉政権は、ほぼ当事者能力を失っていると。ここをどう方向づけていくかということも、非常に重要な問題になってくると思います。
達増さんと原口さんからそれぞれ七分程度でお話をいただいて、もし時間の余裕があれば他の方からもご意見をいただくと、申し訳ありませんがそういうことにさせていただきたいと思います。

【達増】
日本外交のさまざまな問題点の本質を理解するために役に立つであろうポイント、一番大事な点だと思うのはODAなどの利権外交が、この十年間日本外交を蝕んできたということであります。
冷戦が終わり、日本外交が迷走を始めました。冷戦が終わって湾岸戦争があって、日本外交が目標を喪失する。これはどの国の外交も迷走するのですけれども、日本外交の場合は迷走の中で、じゃODAだということで、官僚もODAに走るし、それに族議員が乗っていく。そういう構造ができてしまったと思います。

冷戦中には全然仲良くできなかったロシア、そして北朝鮮。そこに新しい利権を開拓しようということで、ロシアについては鈴木宗男問題です。そして北朝鮮についても前のめり外交で、関心ある議員と外務省が一緒になって非常に安易にコメ支援をする。また北朝鮮側が過去の清算で賠償せよ、補償せよと。これは経済協力をしろ、ODAを出せということでありますが、一連の交渉の中で非常に安易に、それに耳を傾けてきたということがあります。

もう一つ、対中国ODA問題も非常に額が大きいですし、謝罪外交の問題とも絡んで、とにかく仲良くしてどんどんODAを増やそうということが、日本外交を歪めてきたと思います。
今回の日朝首脳会談で署名された平壌宣言も、ある意味そういう経済協力・前のめり外交の総決算という形になっています。各方面から指摘されていますが、経済協力については非常に具体的に定められている。どういう内容のものにするのか、そして具体的な規模についても国交正常化交渉の中で協議すると、はっきり書かれているわけです。

平壌宣言では、十月中にこの国交正常化交渉を始めるとはっきり約束し、十月から始まる国交正常化交渉の中で何を協議するかとして書かれているのは、まず経済協力。具体的な内容と規模について誠実に協議すると書かれています。

あとは在日朝鮮人問題、文化財の問題、そして財産権の放棄の問題といった、技術的というかそういう感じのことなんです。つまり、経済協力について日朝国交正常化交渉の中でやりますと、十月から始めますという約束が、一番はっきり書いてあることなのです。

拉致と安全保障については、安全保障については安全保障協議の場を作ると書いてありますけれども、国交正常化交渉の中とは書いていませんので、並行してやるのか後回しにするのか決まっていないです。それから拉致問題については、これは総理大臣が血相を変えて「拉致の問題は書いてあるじゃないか。どうしてそれが読めないのか」と騒いでいましたが、拉致のようなことをこれからはやらない、ということは書いてあるのです。日本人の安全に関わるようなことはこれから起きないように措置を取ると書かれているのですが、過去に起きた拉致事件について協議するとは一言も書いていない。過去に起きた拉致について言及がない、と言ってもいいわけです。

したがって、非常に大きな譲歩をした感じになります。曲がりなりにも今までの日朝国交正常化交渉―今まで十一回もすでにおこなわれていますが―では、お互い言い合いの形でありますが、北朝鮮が経済協力だ、過去の清算だというのに対し、日本側からは人道上の問題―拉致の問題ですね―とかミサイル問題、その他いろいろあると、全部議題として取り上げられていたにもかかわらず、平壌宣言では経済協力のことだけは議題としてはっきり定められているけれども、拉致についてははっきり議題として定められなかった。

これは簡単に言えば、安否情報さえ得られればそういう大妥協をしてもいいと、外務省田中局長を中心に事前にそう判断してしまった、小泉さんがそれに乗っかったということです。
安否情報、消息情報とでも言いましょうか、誰がどこにいるみたいな情報という認識で、あんなにたくさん亡くなっているという情報が出るなんて事前に予想しなかったのでしょう。非常に安易な宣言文になっているのですが、安否情報ということで大変ショッキングな死亡情報が含まれたものを渡されて、頭が真っ白になりつつも、当初用意した大幅譲歩したような平壌宣言は一言一句いじらないで、そのままサインしてしまったというのが結果です。

小泉内閣は、経済政策について丸投げしているという問題があるのですが、外交についてもこれは外務省に丸投げして、外務省のお膳立てでやっている。その外務省のやり方というのは、ここ十年続いてきたODA利権、経済協力・前のめり外交の流れがいまだ変わっていない。ここに問題があって、これはまさに政権交代しないと直せない問題だと思います。

【原口】
私はまず、世界外交の流れからお話ししたいと思います。
外交とは何かと考えたときに、やはり交流と対話による平和の創造、これが一番だと思います。そして国益の極大化。この観点から見ると、世界の中でいくつかの克服すべき課題がある。一つはアメリカのユニラテラリズム、一極主義。これに対して何ができるか。アメリカの友人たちの中にも、このような状況ではダメだという動きが出てきました。

もう一つはたくさんの資本、あるいは資源が世界中を動くというグローバリズムの中で、本当にそれでいいのか。今、地域の現場ではスピードと競争ということから、むしろゆっくりと丁寧に、そして人が人であるために何が必要か、人に対する投資という形に変わってきています。
一方で、実体経済の何十倍ものお金が世界を駆け回っている。このことが、貧困と紛争を逆に拡大化させている。これにどう答えていくか。これが私たちの課題です。そしてアジアにおいては、アジアの冷戦をどう終結させるか。このことが私たちの課題です。

これらの課題に答えられる体制が、日本の国内にあるか。これはまったくありません。むしろ今、達増さんがお話しになったように、他国と通じてあるいは石井議員が追及してきたようなものと結託して、私たちの財政、あるいは外交を私物化しているという状況です。

そこで北朝鮮とイラクに絞ってお話をしますが、なぜアメリカは北朝鮮とイラクとで姿勢を変えているのか。イラクに対しては、体制を変えるということをやっています。北朝鮮に対しては、対話と四カ国あるいは六カ国の枠組みでと言っている。なぜか。この背景にあるものを、私たちはしっかり見ないといけない。
一つは、核をもう開発済みのところと、それから開発が中途である、すぐ止めなければいけないところとの違いがありましょう。

もう一つはパイプラインの利権。特にロシアの中央部、中央アジアのところにあるパイプラインの利権。これが韓半島を通してさまざまな利害対立の焦点になっている。このことに対してどう向き合うかということが違うので、北朝鮮に対しては対話ということを言っています。

九月三十日にアメリカ議会の予算局(CBO)が発表したイラク攻撃の戦費に関する試算があります。ペルシャ湾への兵力派遣だけで、九十億ドルから百三十億ドル。戦争の遂行だけで、毎月六十億ドルから九十億ドル。戦争終了後の米軍の帰還だけで、五十億ドルから七十億ドル。さらにGHQ方式と言っていますから、占領で毎月十億ドルから四十億ドル。
さきほど経済のところでお話をしましたが、アメリカは大変な民間企業のインバランスを起こしています。つまりなかなか財政が拡大しない、そういう状況の中でこういうことをやるということを、私たちは押さえておかなければならないと思います。

小泉訪朝については、(北朝鮮の)ウラン濃縮ということがわかっていたにもかかわらず、日朝平壌宣言というああいうまったく外交文書としてなっていないものに署名をする。これは私たち国民を裏切ることです。
拉致議連として私たちはずっとやってきましたが、小泉さんは何と言っているか。「北朝鮮は大変な国だ。けしからん国だ。拉致して殺す」と。市井のみなさんがお話しになるときには、確かにそういう印象はあるかもしれない。しかしあの死亡とされた八人のみなさんの情報は、矛盾だらけです。本当にあのときそこに台風・大雨があったのか。天気図を見ても、そんな状況にはない。あるいは二回も火葬をする。そんなこともありえない。そして九月の海で水泳をすることもありえない。そういう人たちに対して「殺す」という言葉を使っているわけです。

予算委員会では、こんなことをテレビの前で国民のみなさんにお示しするのはあまりにも申し訳ないと思って言いませんでしたが、まさに宰相としての器ではないわけです。
私たちは、この北朝鮮のウラン濃縮が誰のお金で、どの技術で行われているのか、解明する必要があると思っています。パキスタンと言っていますが、本当にそうでしょうか? 万景峰号から流れていく莫大なお金。あの朝銀に対する公的資本の注入についても質問しました。

竹中大臣は、私が超法規措置を金融庁に求めているかのようなことを言っていました。そうではありません、逆なんです。朝銀だけを特別扱いにしてやってきたのは、彼らなんです。法律に則ってやる。そして私たちの国益を極大化するためにやる。この当たり前のことができていないことが、私たちの足元を崩しているんだということを申し上げておきたいと思います。

そしてイラクについていうと、おそらく国連決議という形になるのでしょうが、私はアメリカの友人たちに言っています。国連憲章五十一条は戦争の違法化なんです。集団的であろうが、個別的であろうが、戦争は違法なんです。その違法であることをやってしまえば、それはアメリカみずからの民主主義を壊すことになる。だから法律に違反しないで、何ができるかを、それはきわめて狭い道かもわからない、大変な道かもわからないが、それを模索すべきだと。

最後に、よく総理は北朝鮮と自分が交渉しなければわからないじゃないか、その道を閉ざしてしまえば終わりじゃないかと言っています。
それはそうかもわからない。対話は大事です。しかし彼らは最初から国際的な法律の枠組みを無視しています。たとえば拉致は人道に対する罪ですから、国際司法裁判所に訴えることができる。あるいはルワンダやユーゴスラビアでやっているように、国連安保理に訴えて特別裁判所を作って、そこで裁くことができる。国家の罪として裁くことができるのです。それを何もしないで、わけのわからない譲歩を重ねながら宣言には何も入れない。これは隷属外交以外の何ものでもないのです。

この人たちが地域において利権屋と結んでいる。外国の訳のわからない利権グループと結んでいる。この汚い手を叩き切る。このことが私たちの外交再生の第一歩だと申し上げて、私のお話を終わります。

【戸田代表】
集約に入ります。本当は予定は六時までだったのですけれども、石井絋基さん―私ともいろいろ縁がありますので―のお通夜ということですから。

まず一つは、小泉“疑似”改革政権が生まれて一年半になります。この小泉“疑似”改革政権の早い段階で昨年、参議院選挙がありました。そして国民は、小泉“疑似”改革政権を選びました。世論では一時、支持率九〇パーセントまでいきました。それを私たちは「国民の選択の誤り」と鮮明に言っています。
つまり、主権者としての未成熟がその誤りを犯している。別の言い方をすれば、国民主権として、自由や民主主義の観点からの責任意識がわかっていない。したがってこの一年半は、主権者の未成熟を徹底的に問う。疑似有権者から主権者へ脱皮するように、問うてきました。そのように問うていかないかぎり、民主党の脱皮ということについても、主権者としての共有感は国民の中に生まれません。

まずこの一年半の時間の使い方を、このようにやってきたということ。時間の使い方をウォンツ、方針からどうやって一致させるか、これが戦略・戦術なんです。一年あいだの時間をどう使うかというところまで固まっていないと、今の国家存亡の危機を突破することはできません。これをまず第一に言っておきます。あとは基調に書いてありますから、それをしかと読んでもらいたい。

二点目に、歴史の大きな変わり目のときには、相当しっかりしている人でも森に迷い込みます。しっかりした登山家でも予想外の猛吹雪等々が起こると危ないです。大前提として、今直面している冷戦後の改革というのは、確かにわが国は“戦後の虚ろ”ということでドジばかりしていますが、一方深い意味で、歴史的な大きな転換です。

したがって世界的にも、大変なところに迷い込むことになるんです。森本さんの表現を借りれば、行く手にトンネルの出口はかすかな光として見えるが、周りは真っ暗、何がでてくるか分らないなかを手探りで進んでいる、ということです。ただし日本の迷い込み方というのは,世界のそれなりのところと比較すると、ムチャクチャなんですよ。
そのときに本当の勇気が問われます。森に迷ったら、元に戻る勇気をもたなければダメです。元に戻る勇気を持っているとはどういうことか。次の方向はわからないけれども、その方向に一生懸命にやって迷ったら戻るためには、通ってきた道に目印をつけていなければならない。局面局面をしかと総括をして、その結果、失政十五年というなら戻ってこられます。

与党の場合は、二十年前のところにもどって来るというのは不可能です。何でもアリで無茶苦茶なんですから、見失っています。民主党のなかには一応ある程度、この十年間はどうやってここまできたかを記憶している人がいるでしょう。
株価は二十年前に戻ってしまいました。経済政策は、バブルの前まで戻ってこの十五年間の論点を整理できる者が民主党にいるなら、一応金融とかを口でしゃべれる与党の人だったら、それに対して逃げられないでしょう。このように構えてもらいたいです。

三点目です。民主党の代表選挙とも関連しますが、学者は正しいことを言ってもらわなければ困りますが、政治家は、政治判断は、「賢明か愚劣か」です。正しい理論や政策に武装されていないと、賢明な判断はできませんが、政治は賢明であるか愚劣であるかなのです。賢明であるためにこそ、国家の基本政策に対する事実と経過と、次の時代の基本的な価値観は何かという正しい見解を持っていないといけない。持った上で、世の中にはそこまで考えない人がいますから、それとうまく、正しく妥協する賢明な判断をするためにも(正しい多数派形成)、そのことが必要なのです。

それからもう一点。じつは国民主権の運動というのはどういうことかと申しますと、それは普通の人が真面目に日本を変えなければあかんと思ったときにわかることなんです。常情の民、つまり普通の民です。普通の人ほどじつは、常情の改革に対して素面なんです。常情の民ほどが、非武装中立という改革を戦後支持しました。常情の民ほどが、戦前の全体主義を認めるような自主憲法制定みたいなことを言いました。常情の民は、実現不可能な誤った革命・改革に、平時には心を動かされるのです。民主主義の成熟度が弱いところほどそうです。四点目に、このことを理解する必要がある。

今、ようやく「急がば回れ」と。憲法に書いているでしょ、国民主権というのはこういうことなんですということに、普通の人が「そうだなぁ」となってきました。この深い意味をしっかりつかんで下さい。
そうすると、今日もみんな言いましたが、経済や外交が今後ますます複雑なことになりますが、「だから政権交代なんだ」という結論が出せないのは間違っていると。こういうふうに考えてもらいたいと思います。
それでは松沢さんが一言、言いたいそうなので。

【松沢】
パネラーの最長老ですから、まだおそらく喋り足りなかった方ばかりだと思いますが、最後に一言、御礼を込めてご挨拶を申し上げます。
今、みなさんの周りでも、日本の政治が変わらない、本当に嫌になったと思っている方がほとんどだと思います。ただ部分的に見ていただくと、地方の政治はものすごく変わっていっているところがあるんです。例えば長野県も変わりすぎて困っちゃっているぐらいです。あるいはこの前、横浜で中田市長が誕生した。住基ネットの問題も、市民の選択制を取り入れた。あるいは都内だと、山田宏・杉並区長がいわゆるレジ袋税―大衆課税で環境税をつくっていこうという発想で、他の地方自治体の新税とはまったく違います。

これはなぜかというと、地方自治体首長の選挙というのは、みなさんが選挙に行って簡単に政権交代が起こせるんですね。で、その権力をもった市長さん、あるいは知事さんが自分の思ったとおりに経営できるわけです。
ところが国の方は議院内閣制なので、政局だとか、永田町のゴタゴタで政策が進まない、改革が進まないということなんです。

そこで私の方からみなさんにお願いがあるのですが、国の政治も政権交代が起きるようにできる仕組みの改革を、できる部分が二つあるのです。まず一つは一票の格差をなくすことです。これが一番単純なんです。この前の改正でも二倍ありますから。一票の格差を是正すれば、この前の総選挙でさえ、自民党は政権をもう失っているはずですよ。

もう一つは、これも簡単なんですが、単純小選挙区制にすればいいのです。国民のみなさんの選択で多数が政権を取ります。ところが今は、比例代表がくっついていますから、そこに第三党、第四党、第五党がいて、それが第一党、第二党のどちらにつくかで政権が変わってしまうのです。総選挙が終わって連立を組む過程で、政策がメチャクチャ変わってしまって、国民にフラストレーションが溜まっていってしまう。

自由党が偉いと思うのは、今自由党は第四党か第五党ですよね。それでも単純小選挙区制導入、政権交代を起こそう、二大政党を目指そうと言っているのです。社民党、共産党は大反対です。
私は政権交代を仕組みとして起こしやすくするためには、一票の格差を是正することと、単純小選挙区制を導入することだと思います。これは政治的にはすごく難しいですよ。自民党は大反対します。既得権益ですから。ただこういう国民運動を起こしていけば政権交代の可能性になるわけで、ぜひみなさんにもそういう運動を起こしていただきたいと思います。

今日はそれぞれ喋り足りなかった方が多くて、また皆さんも質問があったと思いますけれども、本当にありがとうございました。私たち、がんばっていきますのでよろしくご支援をお願いします。

【石津】
司会に代わってお礼を言っていただいて、ありがとうございました。
今日は時間が足りなくて、パネラーのみなさんにも聴衆のみなさんにも申し訳ありませんでした。また別に機会を設けて、それぞれのテーマで定例講演会などやっていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

それから今日ご来場のみなさんは、ご自分ではそうは思っていらっしゃらないと思いますが、回りには自民党はどうしようもないけど野党もなぁという方がたくさんいらっしゃると思います。ぜひ、こういう形で新しい受け皿が準備されているんだ、それを自分たち自身でもっと支えていこうということを、回りの方にも広めていただきたいと思います。
来年の統一地方選も、足元から政治文化を入れ替えていくための強力な活動にしていきたいと思います。
これでシンポジウムの方は終わりにさせていただきます。長い時間ありがとうございました。