民主党代表選挙、サハリン・フォーラム、沖縄ビジョン
2002年08月30日 民主統一同盟インタビュー
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代表選 政権を取れるリーダーシップを■
今回の代表選については、6月ころから1期生のなかで、いろいろ意見交換をしてきました。
私はこれまで2回の代表選で、鳩山さんを応援してきました。鳩山さんの果たしてきた役割については、心から敬意を表していますが、地元を回っていても、やはり鳩山さんでは政権を取るだけの支持が民主党に集まらないと、感じてきました。
岡田政調会長にも期待していたのですが、どうも名乗りをあげられないようだ。ということで鳩山さんでも菅さんでもない「第3の候補」が必要だ、という認識を共有してきまた。
そういう時に2期生が、世代交代による新しいリーダーを、と訴えて動き出し、われわれ1期生にもよびかけがありました。どうもマスコミ報道が先行しすぎているきらいもあって、もう少しお互いの価値観や考えを共有するなかで考えていこうと思っていたのですが、「第2期民主党を作る有志の会」という形で動き始めたわけです。
われわれ1期生の有志は7月31日に、新しい民主党の顔としては、野田佳彦さんが望ましいということで、数名の議員が野田さんに出馬を求めました。
このときには松沢さんがすでに名乗りをあげていましたし、前原さんも出るだろうと言われていました。そこで野田さんも「出ます」と言われたわけです。
翌日、4名の方がマスコミも入れた場でそれぞれ、出馬の決意を表明しました。
当選2回、3回という若い議員が党首選に名乗りをあげられるというのは、やはり民主党の活力だと思います。
ただその後、1本化のために1ヶ月を要したわけですね。ただし「第2期民主党を作る有志の会」事務局の5名の議員も、4名それぞれを応援する議員も、若手が1本化しなければ新しい党首はつくれないという認識は持っていました。
ようやく1本化のルールができて、9月23日に向けて、鳩山さん、菅さん、横路さん、中野さんという先輩を相手にした代表選が始まることになります。
1本化のためにこれだけ時間がかかったというのは、われわれにとってもはじめての経験だったということもありますし、4人も手を挙げてしまうと、やはりそう簡単には下ろせないということになるんですね。
自民党ならまず、出ないように抑えるすべがありますし、ポストや利害での根回し、裏取引といろいろなことができるんですが、民主党にはそういうものはありませんから。ですから文字通り、お互いの意見交換・議論を通じてオープンに合意形成をしていくという以外にありません。そうするとやはり、時間はかかりますね。
8月1日にマスコミを入れて4名が決意表明しましたが、ああいうふうにやってしまうと、もう引っ込みがつかなくなるということもあるのかな、ということはありますね。あの時点では、推薦人が1人でもいれば手を挙げられるということだったのですが、代表選に立候補するためには20人以上ということですから、ちょっとその差がありすぎたかもしれません。
ただやはり今回は、政党における合意形成の新しい1歩をつくる貴重な模索だと思います。
与党自民党の場合には、それぞれいろいろな利益代表の人たちの集まりですから、意見や利害が対立してガチンコ状態になった場合も、背負っているものが重いですから、そう簡単に譲れません。
まただからこそ、やたらなことでは手を挙げられないような重たさがありますね。
民主党の場合はそういうものはありませんから、やりたい人が手を挙げられるので4人も「乱立」する結果になったとも言えるわけです。
――今後は地方選挙でも、既得権のしばりがなくなるにつれて、出たい人が自己責任で何人も手を挙げるようになってくると思います。
そういう時に、利権やポストでの根回しでなく、議論を通じて合意形成していくうえでの「作法」が普通の市民にも必要とされてくると思います。
■サハリン・フォーラム 対ロ外交再構築への糸口■ 先日はじめて、サハリン・フォーラム(8月19・20日)に参加してきました。故末次先生がやってこられた安全保障問題研究会とサハリン州との共催で、今年で5回目になります。
原口議員が熱心に取り組んでいるのですが、今回は自民党からの参加者もなく、議員の参加は私1人ということになりました。ただロシアからも州議員が参加していましたし、日ロの外交担当者、民間の研究者も含めて、厚みのある議論ができたと思います。
鈴木宗男議員の問題もあったので、どういう雰囲気かなということもあったのですが、第4回までのフォーラムでは、「北方四島の問題は存在しない」とか「ソ連時代の日本との約束をロシアは必ずしも継承していない」といった理屈・無理難題を、ロシア側は当然のように主張していましたので、わたしもきちんと反論しなければと準備していきました。
しかし会議のなかでは、団長はじめみなさんがビックリするほど、ロシア側は「おとなしい」のです。
なぜなのかということなんですが、ひとつは地方に対するプーチンの掌握がかなり効いてきているということがあります。
プーチンは7つの連邦管区に大統領代行を置いて、地方をコントロールしているわけです。
ちょうど23日から、ウラジオストックで金正日との首脳会談がありましたから、プーチンの意向に気を使って、極東にプーチンが来る前に日本とあまりもめたくないということもあったのではないでしょうか。
ただ会議の場を離れると、やはり「本音」が出てくるということはありますね。議員交流の活動として私は、統一ロシア(下院のプーチン与党)のユジノサハリンスク支部の代表などとも意見交換したのですが(彼らもフォーラムの出席メンバー)、そこでも「できれば領土問題を棚上げして、経済協力できないか」といった話がでました。もちろん「領土問題は棚上げできない」と言いました。
相変わらずだなという気もしますが、ロシアは「北方四島はサハリン州に帰属している」としているわけです。そのサハリン州がこれまでは、中央政府と日本との交渉にはお構いなしに、勝手なことを主張してきた。そこでやはり、サハリン州とも意見交換をすすめていかなければならないと、このフォーラムを始めたのです。
その積み重ねができてきているということは、評価に値すると思います。
今回はピースボートの問題があって、これが議論のかなりの部分を占めました。500人ほどが乗ったピースボートの船がサハリン・コルサコフを経て北方領土の国後島を訪問する、という問題です。
日本側が問題にしたのは、ロシアとの間では北方領土へのビザなし渡航が合意されているにもかかわらず、それを踏みにじるような国後島訪問を前提にした、ピースボートのコルサコフへの寄港をなぜロシアは認めるのか、ということです。
ロシア側の説明は、コルサコフは国際港であり、外国船に対しては領海内48時間、上陸については8時間以内ならビザは必要ない、これは国際法だというものでした。
ただ帰国して私もいろいろ調べましたが、そういう(時間を明記した)国際法は存在しません。 国際慣習法でもありません。
ロシアの国内法にも、今のところそういう記載は見当たりません。 ロシア側の主張は、かなりいいかげんなものだったと思います。日本との間に築いてきたもの(ビザなし渡航を含めて)を壊すようなことをサハリン州が認めたというのは、やはり問題ですね。
日本の外務省も、「ロシアの実効支配を認めることになる」という懸念もあって、サハリン州にあまり強く言えなかったようです。外務省ルートでできないのであれば、サハリン・フォーラムの意義もそうですが、ここは民間でもっと働きかけていく必要があるのではないか。 「再発防止」のためにも、これからが大事だと思います。
戸田政康(民主統一同盟代表)
戦後ずっとロシアは領土問題の存在を認めず、ようやくこの十年くらいで、「東京宣言」で領土問題を認めるところまでもってきたわけです。ビザなし渡航はそこででてきたことですから、日本と日本国民がここまで積み上げてきたものを壊すのか、ということでサハリン州にもピースボートにも毅然と言うべきなんです。
日中国交回復の時も、直前になって中国が尖閣列島の領有権に触れ始めたが、国交回復交渉の時、日本はそのことを言っていないわけです。つまり中国の主張を黙認したに等しい。
こういう形で外交をやってはダメなんです。
■復帰三十周年、沖縄の新しい政策を■
8月26日、那覇市で民主党の「沖縄ビジョン」を発表しました。今年は復帰30周年にあたることもあって、沖縄政策をもう一度整理しようということで始めたもので、私が座長としてまとめました。民主党ホームページにくわしい内容は掲載されていますが、キーワードとしては5つです。「自立・独立」「一国二制度」「東アジア」「歴史」「自然」です。
民主党は分権型連邦国家を主張していますので、自立はもちろん(政府の沖縄政策も「自立」は言っている)、もっと踏み込んで「独立」と。もちろん、日本からの独立という意味ではなくて、独立の気概を中央政府が挫くことのないように、ということです。過去に(大田県政当時)やはりそういうことがあったわけです。
復帰から30年で、6兆7000億という中央からのお金が沖縄につぎ込まれたといわれるのですが、一人あたりの投資額としてはじつは全国で第14位程度なんです。過大な基地を沖縄が負担している、その対価としてかなりのお金がいっているというイメージからすると意外に思われるでしょうが、案外そうではないのではないか。沖縄でも、本土より高い補助率で行政投資が行われていると思われているのですが。もちろん「思いやり予算」などは除いています。
やはりここで沖縄が自立するためには、「1国2制度」的な思い切った特区のようなものが必要ではないか。沖縄新法でも「自由貿易特区」とか「金融特区」が盛りこまれてはいるのですが、たいした優遇措置にはなっていないんですね。
例えば沖縄は東アジアの中心に位置していて、台湾とも近いわけですから、「1国2制度」の特区ということで、台湾とのビザなし渡航を認めてはどうか。難しいかもしれませんが、中国にも片目をつぶってもらって。あるいは入国規制についても、沖縄はかなり厳しいんですね。あの海域では覚せい剤の密輸とか不審船などいろいろありますので。こういうことにはきちんと対処しなければなりませんが、一方でやはりアジアの人材が集えるような場所にするために、入管制度も沖縄については緩和してもいいのではないか。
それから、介護保険料が沖縄は全国一高いのです。なぜかというと、沖縄は島が多いので、1つの町でも10の島に分かれていると、10ヶ所に施設を作らなければならないということになるからなんです。 さらに沖縄の特徴として土建屋さんが多いので、介護保険だ、じゃ施設を作れということになった。下手をすると、1月の介護保険料が6000円くらいになってしまうんです。
今でもそうなんですが、昔から沖縄ではユイマールとかムンチュウという同族意識が強いんです。そういうなかでおじいちゃんやおばあちゃんの面倒を見るという場合、多少対価を考えてもいいのではないか。厚生有働省は、家族介護については対価を認めないのですが、もう少し大きな「同族」的コミュニティーを対象にしてもいいのではないか。こういったようなことを、「1国2制度」として考えてはどうかということです。
また、地方交付税や補助金を一括して用途を限定しない(地方が自由に使える)一括補助金にするというのは民主党の主張ですが、沖縄については他にさきがけてそれをやると。
在沖米軍の整理縮小も大きな課題です。今回も普天間基地の移設先とされているキャンプシュワブ沖を見てきましたが、橋本内閣のときに突如として、キャンプシュワブ沖への移転という話がてできたわけです。それまでは嘉手納基地への統合なども検討されていたのです。
ジュゴンの生息地でもあるサンゴ礁に作ることがいいのかどうか。当初は建設費一兆円と言われていた施設が今回、3300億円になりましたが、それをつくっていいのかどうか。「十五年使用期限」という問題も、もうどこかへとばされてしまっています。
やはり嘉手納への統合を含めて、選択肢を検討すべきではないかということです。
もちろん日米地位協定も、運用改善ではなくドイツ並みのものに改正するべきです。
「沖縄大使」という制度があります。これは2000年サミットの時につくったもので、沖縄からアメリカや米軍への要望を伝えるという性格もあったのですが、下手をするとこの沖縄大使が逆に壁になってしまうのではないか。
沖縄の基地問題は安保問題であり、外交問題なのですが、そういう場に地方自治体が出るべきではないということではなく、やはり基地を抱える地元自治体として参加する場があってもいいのではないか。
分権型国家をめざすのであれば、それぞれの地方の主体性を認める意味でも。そして「沖縄大使」のありかたも見直すべきではないか。そんなことも「沖縄ビジョン」にははいっています。
また道州制の議論のときには、九州・沖縄といわれることが多いのですが、九州と沖縄はいっしょでいいのか。道州制の下でも、沖縄はひとつの独立した地域としてあっていいのではないか。
じつはこのビジョンは,沖縄ビジョン協議会という地元の皆さんとの共同作業でまとめたのですが、彼らに言われたことで非常に印象に残っていることがあります。
沖縄にはつらい歴史―地上戦をはじめとして―があるとか、沖縄は年間所得が全国平均の7割しかないのでそれをレベルアップしなければ、という視点で沖縄を見るのではなく、沖縄の持っている潜在力を、日本の発展のため、アジアの発展のために利用してほしいのだと。そういう前向きのプラス思考で沖縄に取り組んで欲しいと言われたんです。
沖縄ビジョン協議会では、世代的にもすでに地上戦を知らない30代、40代のみなさんが多かったことと、復帰から30年たって今度の沖縄振興計画は第4次ですが、また10年後に第5次をやるのかと。
やはり、自立できる経済ということへの要望が強かったですね。
沖縄の持っているポテンシャルやアジアのなかでの位置、そういうものをアジアと世界の発展に貢献するために活用させてもらう。そんな姿勢で今回のビジョンをまとめました。
(8月30日 聞き手/戸田政康、石津美知子 タイトル、小見出しとも文責は編集部)
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