国会議事録 衆議院本会議及び委員会での質問記録

2005年7月13日 【外務委員会】

赤松委員長 
次に、石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。
これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 
民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。
石綿の使用における安全に関する条約の締結について承認を求めるの件について、賛成の立場から討論を行います。

統計のある一九九五年以来、厚生労働省の調べでは、六千人がアスベストを原因とする中皮腫で死亡し、うち二十八社三百八十二名が労災認定されています。潜伏期間が長いため認定が少ないと言われるゆえんです。さらに、被害の拡大は家族のみならず周辺住民に及び、被害は職場でとどまっていません。二〇四〇年までの中皮腫による死亡は十万人と言われております。

昭和六十一年、一九八六年、ILO総会で本条約は採択されましたが、翌年政府は、労働安全衛生法そのほかの関係法令によりおおむね実施されているところであるが、なお若干の問題もあり、さらに検討を加えることといたしたいという報告書を添付し、衆参全国会議員に条約を配付しました。そして、ことし、十九年目にして国会承認を求めたのであります。

適用範囲と定義、一般原則、保護予防措置、作業環境と労働者の健康の監督、情報と教育などから成る本条約は、当然批准すべきものであります。しかし、総会では日本等の反対もありアスベスト使用禁止の原則は盛り込まれなかった。アスベスト被害防止の最低基準であるにもかかわらず、批准が今日に至ったことは、遅きに失したと言わざるを得ません。

採択後、ヨーロッパを中心に、ドイツ一九九三年批准など、相次いで批准をしております。なぜ十九年も批准に要したのかという問いに、政府は国内法の未整備、代替品未整備と答弁をされますが、それは言いわけにすぎないと言わざるを得ません。行政の不作為を指摘し、あわせて、条約配付にもかかわらずそれを放置してきた国会も、その責任を問われなければならないと思います。

ようやく昨年十月一日から、労働安全衛生法施行令により、石綿含有製品の製造、使用などが禁止となっております。そして、厚生労働省は、二○〇八年からアスベスト全面禁止を打ち出しました。

しかし、一九七〇年から九〇年まで年間三十万トンの石綿輸入の八割以上が建材に使用されたため、二〇二〇年から二〇四〇年にアスベストが使われた古い建造物の解体がピークを迎え、石綿の粉じんが飛散するおそれがあります。また、現在、中皮腫の治療は、これといった治療法が見つかっておりません。

まずは、実態調査による現状把握と情報公開によりその被害の実態を明らかにした上での、関係団体等はもちろんでありますが、広く国民各層への周知徹底が必要であります。また、労災認定の速やかな実施と、家族、周辺住民などへの認定の拡大、あわせて環境省初め関係各省庁の連携により、政府を挙げての徹底した総合的な対策を求めるものであります。

また、改めて、本条約の審議は、条約と国会審議のあり方を問題提起しております。政府にとって都合の悪い条約はたなざらしにする。一方、二〇〇一年の国際組織犯罪防止条約による今国会で審議中の刑法等改正、共謀罪の創設などは積極的に対応する。このように、条約批准、国内法整備を政府の恣意的な裁量に任せることは、憲法七十三条二項及び三項、内閣の専権事項としての外交処理、条約締結の範囲を超えていると言わざるを得ないのであります。本条約の採決に当たって、附帯決議や条約に留保をつけることもできないことは、やはり見直すべきであります。

加えて、昭和四十九年二月二十日、大平外務大臣の外務委員会答弁にあるように、年間約七百本の政府締結の行政取り決めは、国会とりわけ外務委員会に提出し、必要によっては当委員会で質疑できるようにすべきことも申し添えて、本条約に対する賛成討論といたします。

ありがとうございました。(拍手)
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